へちま細太郎

大学院生のへちま細太郎を主人公にしたお話。

ぼくはくそガキらしい

2009-05-06 22:13:44 | へちま細太郎

こんばんは、へちま細太郎です。

須庭寺ってお寺は、かなり大きくて広くて、お墓もたくさんあって、庭もきれいだった。
ぼくは土曜日から今日まで、この須庭寺に押し込められ、田植えだ掃除だ仏像磨きだ、とこき使われていた。夜は本堂で寝ろ、と言われ仏像に囲まれて、雨の音を聞きながら布団に潜り込んでいた。
まぢ、こえよ~と最初の晩は生きた心地もしなかったけど、田植えの疲れと仏像磨きのおかげか仏像に愛着を持っちゃって、ぐっすり眠りこんでしまった。
様子を見に来た藤川先生が、
「度胸の座ったガキだね」
と、呆れてしまったらしい。
あとから藤川先生が教えてくれたんだけど、おとうさんや剛おにいちゃんも本堂に泊まらせられたことがあったみたいで、一晩で逃げ帰ったとか。ついでに言うと、広之おにいちゃんは仏像に蹴りを入れちゃったらしい。
「安物でよかった」
と、住職さまと御隠居さまがホッと胸をなで下ろしたというオマケ付きだけど。
一通りの作業が終わってから、
「何で逃げ出さなかったのか?」
と、厭味な副住職さんと藤川先生に聞かれても、
「別に」
と答えるより他に言いようがない。仕方がないから、
「こわかないじゃん、作りものだし」
と付け足してみた。
「仏罰があたるぞ」
えらそうに副住職さんがすごんできたけど、
「あんなにきれいに磨いてあげたんだから仏罰があたるわけないよ。あたるとしたら、埃だらけにした副住職さんたちだと思うけど」
と、ムカついたから言い返してやった。
「このくそガキっ
それまでぼくの返答にこらえていた藤川和尚さんは、元ヤンキーのせいかつい頭に血が上っちゃったようだ。
「てめえ…、ぶっとばされてえか
と、僧侶にあるまじき発言をして、
「ガキ相手に何やってんだ」
あわてた藤川先生に後ろから羽交い締めされ、
「少しは悟りを開いたかと思ったら、全然だめじゃん、このおっさんは」
と、バックドロップを決められてのびてしまった。
「さて、帰るか、細太郎」
藤川先生がのびた和尚さんを足でつつきながらぼくを振り返った。
「うん」
ぼくは大きくうなづいて、副住職さんをそのままにして須庭寺をあとにした。

ところで、ぼくはなんのためにこのお寺にきたんだ?
誰も教えてくれないんだけどさあ…。