あやしい女の人の正体

こんばんは、へちま細太郎です。

今日の昼間、近所のおばさんがやってきました。 あの、おとうさんにお見合いを持ち込んできた人です。
「あのお見合いの話ですが…」
「お断りしませんでしたか？」
おばあちゃんは、何を今頃、という表情をしています。
「その、もういっぺん考え直していただけないかしらねえ」
「ねえ、と言われてもねえ」
「その、あちらのお嬢さんがどうしても光一さんとお付き合いしたい、とそう申しまして」
あのおとうさんとおつきあいしたいって？ ぼくが耳をそばだてて様子をうかがっていると、藤川先生が隣にきました。
「その、だいぶ思い詰めてるらしいのですよ」
「へ、へえ」おばあちゃんは疑いぶかげにおばさんを見ています。 黙ってきいていた藤川先生ですが、
「もしかして」
とつぶやき、携帯を取り出してデータフォルダーをあけました。そして、おばさんとおばあちゃんの会話に割り込み、
「この人？見合い相手って」
「あらあらまあ」
おばあちゃんたちは携帯をのぞきこみ、口をおさえました。藤川先生が昨日撮った写メで、おとうさんに抱きついている女の人が写っていました。
「何てことを」おばさん、ぼうぜんとしてます。あやしい女の人は、見合い相手だったんだ。
思い詰めてストーカーになっちゃったのか。
気の毒な女の人だなあ。