宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

『男おひとりさま道』上野千鶴子(1948生れ)、文春文庫、2009年

2016-02-05 17:59:06 | Weblog
はじめに
A 女おひとりさま341万人。男おひとりさま139万人。(2010年)
A-2 男性は「ご不自由でしょう」と言われる。下半身のご不自由。
A-3 男おひとりさまに、生きる道はあるか?イエス!

第1章 男がひとりになるとき
B 増えている男おひとりさま:死別シングルアゲイン、離婚シングルアゲイン、非婚ずーっとシングル。
C 男性も85歳を超えると3人に一人はシングル:死別シングルが大多数。
D 家裁への離婚の申立人の7割は女性。
D-2 1966年に、離婚における親権帰属が、夫方親権から妻方親権が多数となり、逆転。
D-3 日本は共同親権がない。
E 40代前半から非婚シングル激増。40-44歳の非婚率は、男28.6%。女17.4%(2010年)
E-2 この世代の非婚シングルの男6割、女7割は、親にパラサイト。

F 死別シングルの老後、その例:男性82歳、3年前に妻と死別。ガラーンとした持ち家。子どもたち3人は、父親を入れる老人ホームの検討を始める。年金は、そこそこある。
F-2離別シングルの例:男性64歳。44歳の時離婚。二人の娘は妻へ。その後、妻、再婚。58歳で早期退職。結婚する気はない。
F-3 非婚シングルの例:男性54歳。40歳の時、地元の両親のもとにもどる。父親はすでに亡くなる。

G 増えている男性の家族介護者:①夫婦の間で看護・介護を引き受ける。②在宅家族介護者の3分の1は男性(夫または息子)。
G-2 夫に介護される妻は、幸せか?①定年後の夫は張り切る!介護者主導型介護。②妻への支配が強まる。
G-3 男おひとりさまに交際相手がいる割合:60代6割、70代5割。
G-4 妻の介護とは別に、夫は「終身セックス契約」から解放されてよい。

H 息子による介護:例えば、非婚シングルが母親を介護する等々。
H-2 高齢者虐待の加害者のトップは、実の息子。息子は、親の年金パラサイトなので、親を施設には入れない。

I 母(妻)と死別して10年間、ひきこもりと孤独だった上野氏の父。高齢期ひここもりor老年うつ病。
I-2 妻を「便利な他者」と考えて、取り換え可能と考える夫(男性)も多い。
I-3 死別シングル男性と再婚する女性は、まずいない。①「セックス付き家政婦」には、ならない。②死別の女おひとりさまが再婚すると、遺族年金受給権を失う。③再婚したら再び介護要員となる。④事実婚がよい。死別シングル女性は、ボーイフレンドが欲しいとは思う。⑤アラフォーから下の非婚シングル女性は、「条件」が高く結婚しなかったので、「条件」を落とすことはない。

J 現在、30代後半男性は4人に一人、30代前半・20代後半男性は3人に1人が、生涯非婚との人口学的シュミレーション。
J-2 「非モテ」系に徹せよ!女をひとり「所有する(モノにする)」などと、考えるべきでない。
J-3 素人の女性とセックスより、プロのサービスのほうがよいと思う者も多い。ヴァーチャルな女性に萌えるのもよい。
J-4 「結婚していなければ、男は一人前でない」との男たちの呪縛。


第2章 下り坂を降りるスキル
A 人生のピークは、女は30代(出産・育児に夢中)、男は50代(職場で地位・収入最高)。
A-2 下り坂のスキルが必要。昨日できたことが、今日できなくなる

B ベビーブーム世代は、青春時代が高度成長期で、「時間が経つと今より良くなる」と楽観的。30年後、不況とデフレスパイラルの若い世代(団塊ジュニア世代)は、「時間が経てば今より事態が悪くなる」と思う。

C 80歳超生きるのは、女性の4分の3、男性の2分の1。
C-2 女性は親業の定年が早い。女は余生が長く、下り坂のスキルに長じている。
《評者の感想》親業の定年について、上野氏は「末の子の義務教育が終わった時」と言うが、「末の子の就職が決まった時」ではないか?

D PPK(ぴんぴんころり)は、老いを拒否する(or恐れる)思想である。
D-2 サクセスフル・エイジング(成功加齢):死の直前まで中年期を引き延ばすこと。
D-3 「歳の取り方まで、人から“成功とか失敗とか”言われたくない」と上野氏。

E 下り坂のスキル(1)「弱さの情報公開」:カラダは壊れるし、ココロも壊れる。「助けてくれ」と言うこと。
E-2 男には、「弱さを認められない弱さ」がある。
E-3 病気になったものは「自己管理が悪い」と非難。認知症で生きる価値がない者は「処分」したらよい。
E-4 老いは、誰にも、やって来る。

F 下り坂のスキル(2)「定年後にソフトランディングする」:Cf. 商工業者、女性に定年はない。
F-2 河村幹夫さん(1935生れ):人生には「雇用定年」(会社が決める)、「仕事定年」(自分が決める)、「人生定年」がある。Cf. エリートサラリーマンの上りは、大学教師。

G 下り坂のスキル(3):高齢者ベンチャーのススメ。起業せよ。
H 下り坂のスキル(4):定年は夫婦の危機である。男のADL(Activities of daily living)の自立が不可欠。
H-2 「濡れ落ち葉」、「かまって族」、「ワシも族」にならない。「夫婦定年」の問題。(Cf. 「夫婦定年」+「親業定年」=「家族定年」)

I 下り坂のスキル(5):「社縁」以外の人間関係が豊かなこと。ただし助走期間(50歳代、40歳代に開始)が必要。例①釣りキチの釣り仲間。例②少年野球チームの監督:少年たちと若い母親たち。
I-2 会社の出世競争とは無縁な者に見られる?

J 下り坂のスキル(6):職場や家庭でない第3の居場所作り。
J-2 居場所づくりは、女に学べ。血縁、地縁、社縁でない「女縁」!
J-3 男は同性の男から「おぬしできるな」と言ってほしい生きもの。男はパワーゲームが好きなので、「女縁」のような友情は、育たないかもしれない。「男の友情」はあてにならない

K 下り坂のスキル(7):「おひとり力」。
K-2 下り坂のスキル(7)-2:自然は最良の友。
K-3 下り坂のスキル(7)-3:「居場所」(=「ひとりでいてもさみしくない場所」)をつくる。
K-4 山頭火はお大師様と「同行二人」(ドウギョウニニン)。
K-5 ソロー『森の生活』。鴨長明『方丈記』。松津武四郎の寄せ木細工の寓居(ICU)。


第3章 よい介護はカネで買えるか
A 夫婦の「老老介護」:①介護は「体重との闘い」!②妻が少しでも離れると、不機嫌になる夫。③妻の「分」を果たし親族から後ろ指をさされたくない。④過去の妻の恨みつらみが老後の仕返しになる。Ex. 若い頃、夜泣きする子に関し「うるさい黙らせろ」と夫が妻に言う。
A-2 ワンマンな父親・夫の介護は、めんどうで、娘も妻も大変。
A-3 娘は、「男おひとりさま」の父親を介護しない。まして嫁は介護しない。施設に入るように言う。

B 介護の理想は、個室ケア。
B-2 理学療法士・三好春樹氏は、全室個室のユニットケアに反対。(151頁)

C 年寄りは、家にいないでほしい。⇒デイサービス、ショートステイへのニーズが多い。
C-2 本来は、いくつになっても、要介護になっても、普通の市民生活が送れるのが理想。
C-3 高齢者施設は、監獄や収容所に近い。人の集団性・画一性・効率性、空間の孤立性・自己完結性、時間の計画性・統制性・非限定性、これらが高いほど、施設度が高い。(岡本和彦)

D 施設よりも、自宅をバリアフリーに改装する方が望ましい。


第4章 ひとりで暮らせるか
A 自立は、①経済的自立、②精神的自立(妻や母親に依存しないこと)、③生活的自立(家事や暮らしの能力があること)、④身体的自立(カラダが思うように動くこと)が必要。
A-2 団塊世代は、旧世代の夫族と異なる。
A-3 団塊ジュニア世代になると、女性にもてるための条件のひとつに、「料理がうまい」という項目が入ってきた。

B 非婚シングルのパラサイト率(母親が“主婦”!):男性20代82%、30代79%。女性20代88%、30代65%。これがこのまま、持ち上がる可能性もある。
B-2 清潔なシーツ、毛くずの落ちていない洗面台は、男おひとりさまのたしなみ。いつでも彼女が呼べる。

C 「食べることと、出すこと」ができれば、ひとり暮らしができる。①配食サービスもある。②コンビニ弁当もある。スーパーにもいろいろ置いてある。一人暮らしの都市インフラが整備された。③コンビニの配達もある。④生協の食の宅配。
C-2 家族でも「個食」化している。各人が別々のものを食べる。

D 「カネ持ち」のほかに、「人持ち」・「友持ち」が重要。
D-2 60代の「非婚男おひとりさま」は、もう結婚しない方がいい。①いまから巣作りは無理。②彼女を、換えられるようにしておいた方がいい。
D-3 一人の親友より、10人の「ユル友」がよい。内面の共有はいらない。機嫌よくいられればいい。目的別に友人を持つ。ユル友ネットワークが大切。
D-4 ただし友人づくりは、家族づくりよりムズカシイ。
D-5 友人を知人に降格したり、知人を友人に昇格させたり、自分で調整する。

E 選択縁:志、教養、趣味、思想信条、ライフスタイル、学歴、経済水準が共通しているグループから、友人を作る。
E-2 選択縁の人間関係のお作法:①自分と相手の前歴は言わない。引退すればみな同じ。だれかれの前歴も言わない。②子の自慢など、家族のことは言わない、また相手の家族のことは聞かない。③学歴は言わない、聞かない。④おカネの貸し借りはしない。“純粋異性交遊”でワリカン。⑤相手は、名前で呼ぶ。「役職名」で呼ばない。⑥「男がリーダー、女がフォロワー」という固定観念は捨てる。⑦特技や能力はひけらかさない。
E-3 選択縁=女縁は、要するに、鎧を脱いだおつきあい。

F 高齢者男おひとりさまは、ありあまる時間をどうつぶすか?
F-2 趣味にはコミュニティがあり、特に男の場合、パワーゲームがある。
F-3 遊びのスキルor文化資本は一朝一夕では身につかない。投資もいるし、若い頃から趣味にしていないと無理。老後に突然は難しい。
F-4 大企業定年退職者の地域デビューは不可能。学歴も文化も違う、異人種同士。
F-5 「学問は、自分がすっきりしたいだけの、死ぬまでの極道」と上野氏。学問は、ヒマつぶしメニューとしては、よくできている。人生は壮大なヒマつぶし。

G ススムさん73歳、「男おひとりさま10か条」:58歳で妻と死別。
①トイレを汚さないため、いつも腰かけ、立小便はしない。②料理をきちんと学ぶ。③たまにお弁当を作って出かける。時には女友達を誘う。④いつもきちんとした服装でいる。⑤買い物かごを持参。⑥見知らぬ人と話す(相席など)。それ以上発展しないのが無責任でうれしい。⑦会合・グループで、仕切らない。⑧無香料の化粧水を顔から首筋までつける。⑨姿見を買い、自分の外見を確認。⑩花があると家の中が華やかになる。

H 「男女を問わず、おひとりさまには声をかけやすい」。これは、おひとりさまにとって、利点。
H-2 海外一人旅は、「助けてもらう自分」を経験するのに、良い訓練。

I 上野氏「男おひとりさま道10か条」
①「衣食住の自立は基本のキ」:食事、睡眠、規則正しい生活、清潔。
②「体調管理は自分の責任」。
③「酒、ギャンブル、薬物などにはまらない」:周囲を巻き添えにしたらとんでもない。
④「過去の栄光を誇らない」:自慢しいは嫌われる。
⑤「人の話をよく聞く」:居場所を見つけたければ人の話を聞く。相手のことを聞いてあげる・・・・これだけで30分はもつ。ただし本気で相手に関心を示す。
⑥「つきあいは利害損得を離れる」:利用せず、利用されず。
⑦「女性の友人には下心をもたない」:髪型でも料理でも女性を褒めるのは大事。女性を一人ゲットするとほかの女性は去る。男女を問わず多様な友達がいい。
⑧「世代の違う友人を求める」:グチとくりかえしが多い年寄りの話はダメ。教える、導く、説教するはタブー。⑨「資産と収入の管理は確実に」:家計管理権を妻に委ねる夫は日本特有。少ない給料のやりくりの責任を妻に押しつける責任回避。寝たきりなって、他人様のお世話になれる金額を確保。葬式と墓の費用は残す。
⑩「まさかのときのセーフティネットを用意する」:入院キット、連絡網、貴重品のしまい場所、緊急時の連絡先リスト、既往症・アレルギー一覧。1日に1回か数日に一度、顔を合わせたり連絡する人間関係をつくる(隣人、お店の人、デイサービス職員、ヘルパーさんなど)。死んだとき、発見が遅れると困る。
I-2 以上、女の立場から上野氏が「男おひとりさまのここがイヤ」、「あそこがダメ」からの提言。


第5章 ひとりで死ねるか:高齢おひとりさまの「在宅ひとり死」が可能になってほしい
A 施設での死でなく、「在宅ひとり死」の可能性。「孤独死」ではない。
A-2 「在宅ひとり死」が可能となる条件は、①24時間対応の巡回訪問「介護」、②24時間対応の訪問「看護」、③24時間対応の終末期「医療」。

B 在宅ターミナルケアのお医者様は、人柄のいい人が多い。
C 人生を楽しむのに障害の有無は関係ないと、障害のある人たちが教えてくれた。
D がんの余命宣告を受けた時:①生活費の心配が減る。②好きなことに金が使える。

E 訪問介護ステーション、看護ステーションを組み合わせた在宅ターミナルケア。24時間対応医療OKでも、患者に安心感があると、月に2回程度しか夜中の電話はない。(「ケアタウン小平」山崎章郎(フミオ)医師)
E-2 24時間対応医療のためには、①複数の医師によるリスク分担、②医師の出番を減らす訪問看護のサポートが必要。Ex. 大阪府泉南の生協「オレンジコープ」
E-3 在宅医療に、歯科が重要。Cf. 施設が、入れ歯を外させるところがあるが、これは虐待。
E-4 訪問介護が必要:ヘルパーさんが短時間でも1日4-6回、見守りに来る。
E-5 これらに加えて、訪問リハビリ、訪問入浴、医療ソシャルワーカー、ケアマネージャーなど多職種連携があれば、最末期でも「在宅ひとり死」は可能。
F 「在宅ひとり死」がよいと上野氏。どんなあばら屋でも自宅がいちばん。

G 現在、病院死84%。在宅死12.5%。
G-2 家族の意思で、終末期に病院に入る。「自分が見ていられないから病院へ!」となる。「在宅看取り」の“抵抗勢力”は家族。
G-3 「死ぬのに医者はいらない」。
G-4 「在宅看とり」の実践:日本在宅医学会(中野一司・大会長)など。日本最強の口うるさい三婆、樋口恵子、大熊由紀子、上野千鶴子を集めシンポジウム。
G-5 医療も介護も、地域差が大きい。志ある医療関係者がいるかどうか、による。

I 終末期の痛みのコントロールは、今の医療水準で可能。
I-2 「在宅看とり」のため、我が家のバリアフリー改装と介護用品のレンタル費用は、必要。 

J  在宅ターミナルケアは、よいことずくめ。①本人の満足度高い。②施設介護より、インフラ投資がない分、コスト安い。③終末期医療のコスト抑制。④高齢者が終末期に貯蓄を放出するので、地域の雇用拡大・需要創出。

K 死の前の「和解のススメ」。父親と息子、母親と娘など。もちろん大団円はなく、いつも中途半端なのが人生。他人とのわだかまりなどほっておけばいいが、家族とは、死ぬ前に、和解するのがよい。


文庫版へのあとがき
L 男性が、「老いを受けいれるのがむずかしい」のは、「弱者になることを受け入れるのがむずかしい」から。

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