宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

『サクリファイス』近藤文恵(1969生)、2007年、新潮文庫

2013-06-02 23:19:33 | Weblog
 第1章 チーム・オッジ
 A プロのロードレースチームであるチーム・オッジ。エースが石尾豪(33歳)。チーム最年長が赤城さん(36歳)。石尾さんの同期が篠崎さん。「ぼく」つまり白石誓(チカウ)(23歳)(愛称チカ)と伊庭が新人。エースの石尾さんはクライマー、山が強い。伊庭はスプリンター、平坦地中心。赤城さんは、どちらもできるオールラウンダー。
 A-2 エース以外のチームメンバーは、エースを全力でアシストする。
 A-3 白石は18歳の時、インターハイ、陸上、中距離3000mで1位。しかし大学で、自転車開始。大学2年で、チームのエースとなる。白石は山が得意。
 A-4 伊庭は、スプリント能力を持ち、山でも大崩れしないなら、エースになる可能性。
 A-5 赤城さんは、7年以上、エース石尾のアシスト。
 A-6 斉木監督。
 B ツール・ド・ジャポンには、チーム・オッジ15人のうち6人が出場できるが、新人のぼく、白石も伊庭も選ばれた。

  第2章 ツール・ド・ジャポン
 A ぼく(白石)の高校時代の彼女、香乃は「私のために勝ってよ!」と試合のたびに、白石に言った。
 B  第1日目、大阪ステージは、泉北(センボク)周回コース。エースの石尾さんが、ぼく(白石)を、新人スプリンター伊庭のアシストとして使うと、指示。伊庭は4位に入る。監督が、白石は、石尾の次の山岳のエースになるかもしれないと、言う。
 C ぼく(白石)と香乃は、中学時代から、恋人同士。香乃のために走り、インターハイ、陸上、中距離3000mで1位となった白石を、香乃が捨てる。香乃は、白石の友人、高崎を恋人とする。
 D 第2日目、奈良ステージは、ゴールスプリント勝負で、伊庭が2位となる。

  第3章 南信州
 A 1日の移動日を挟み第3日目、南信州ステージ。山岳コース。
 B 「今日は、お前で行け!」と監督。ぼく(白石)が、ステージ優勝。大金星。
 C スペインのサントス・カンタンが、日本人選手を欲しがっていることを、白石は知り、それを伊庭にも告げる。

  第4章 富士山
 A 1日の移動日を挟み第4ステージは、富士山での山岳タイムトライアル。ロードのような駆け引きはなく、各人が一人で走る。
 B 「エースの石尾が、クラッシュで、袴田を下半身不随にした。エースの石尾を怒らせるな」と篠崎さんが言う。
 C ステージ優勝は石尾さん。ぼく(白石)は5位。総合成績では1位白石、2位石尾さん。監督の指示で、ぼくとエースの石尾さんの部屋が、明日から、別にされる。今日はまだ、ぼくは、石尾さんと一緒の部屋。
 C-2 ノーマークの選手が、何かの間違いで、リーダージャージ(総合1位のジャージ)を着ると、リーダージャージ・マジックが起きることがある。

  第5章 伊豆
 A 第5日目は、伊豆ステージ。山岳。エースの石尾さんがアタックをかけ先頭。ぼく(白石)もリーダージャージ・マジックで、石尾さんについていく。ところが、石尾さんの自転車がパンク。石尾さんは、ぼくに「行け」と言わず。「来い」と言った。40秒のロス。そのまま行けば、ぼくは、ここでもステージ優勝できたかもしれない。
 B しかし、ぼくは、「アシストに徹する」と自分自身に確認。かくて、石尾さんに、「ぼくが引きます」と言う。結果は、エースの石尾さんがステージ3位。総合1位。ぼくは、「下り」を武器に総合10位に踏みとどまる。
 C 翌日、第6ステージは、平坦コース。東京ステージ。チーム・オッジが総合優勝。

  インターバル
 A 初野香乃は、今、スポーツ取材記者。障碍者による車椅子でのラグビー、ウィールチェア・ラグビーを取材。選手の袴田と話す。袴田は、元チーム・オッジのロードレーサーだが、事故で脊髄損傷。
 B 香乃が「白石誓が友人だ」と告げると、「ツール・ド・ジャポンでステージ優勝した期待の新人だ」と、袴田が驚く。そして、「彼も、ぼくと同じ目にあうかもしれない」と言う。袴田は、エースの石尾を恨む。頭角を現してきた袴田を、石尾が、意図的にクラッシュして、脊髄損傷させたと確信する。

  第6章 リエージュ
 A リエージュ・ルクセンブルクの5日間のレースに、チーム・オッジの精鋭の一人として、ぼく(白石)は出場できることとなる。ツール・ド・ジャポンでのステージ優勝、総合10位の活躍による。
 B ツール・ド・ジャポンに参加していて、知り合いになったサントス・カンタン(スペイン)のマルケスが、「監督が、お前を欲しがっている」と、ぼく(白石)に言う。サントス・カンタンは、アシストが欲しいのだ。
 C ぼくは、新聞取材の香乃と偶然、会う。香乃は「3年前、袴田の人生を狂わした石尾さんに、注意した方がいい」と言う。ぼくは、「あれは事故だと聞いている」と答える。

  第7章 リエージュ・ルクセンブルク
 A 「袴田さんが、好きなの」と香乃が言う。
 B 「石尾は、わざと袴田を巻き込んでクラッシュした」と赤城さんが、ぼくに言う。

  第8章 惨劇
 C エースの石尾さんが、クラッシュで即死。チーム・オッジは、レースを中止し、帰国。

  第9章 喪失
 D 「袴田は自己輸血をしていた。それを知った石尾は、袴田をつぶした。エースが自らの勝利を汚すことは、アシストの犠牲を汚すことでもあると、石尾は言った」と赤城さん。
 D-2 アシストの赤城さんが、「エースの石尾が、7年間、憎らしかった。しかし、あいつの勝利は、俺の勝利だった。」と言う。石尾さんが死に、赤城さんは引退した。
 E 石尾さんと同期の篠崎さんも、引退した。
 F 袴田は、石尾が死んで、憎しみのエネルギーを失う。

  第10章 サクリファイス
 A ぼく(白石)が、事故死した石尾さんのボトルを、たまたま持ち帰った。そこから禁止薬物のエフェドリンが見つかる。当日、石尾さんの調子が悪かったと、聞いていたので、何か毒物が入れられたのではないかと、ぼくは思った。そこで、ボトルの中身を友達に調べてもらった。
 B 石尾さんにボトルを渡したのは、篠崎さん。ぼくは、彼に、事情を尋ねにいく。
 C 篠崎さんは、袴田の気が治まればと、袴田から頼まれて、エフェドリンを入れたボトルを石尾さんに渡した。
 C-2 袴田は、石尾が、ドーピング検査を避けるため、リタイアするだろうと考えた。リタイアさせることが、袴田の意図だった。
 D 袴田は、レースの途中で石尾に、「ボトルにはエフェドリンが入っている」と、告げた。
 D-2 石尾さんは、しかし、「理由もなくリタイアはできない。アシストやスタッフを納得させる理由が必要」と思った。そこで事故を演出。下りの猛スピードで前輪をロック。石尾さんは、単なる怪我でなく、即死。

  第10章 サクリファイス(続)
 E しかし、思い出してみると、あの日持ち帰った石尾さんのボトルは、水が飲まれていなかった。彼は、自分のドーピング検査を恐れる理由がない。つまりリタイアする理由がない。
 F 袴田は、前日、香乃が、ぼく(白石)にプレゼントしたワインにもエフェドリンを入れた。袴田が、石尾さんに「白石と、おそらく伊庭も、エフェドリンを飲んでいる」と言った。袴田の憎しみは、深い。
 F-2 それを聞き、石尾さんは、チーム・オッジの「レース中止」が必要と決断した。単なる「リタイア」ではだめだ。「リタイア」ではサントス・カンタンの監督は、白石、あるいは伊庭への興味を失う。だから、石尾さんは「レース中止」を演出するため、わざとブロックに頭を突っ込んだ。
 F-3 彼は、「アシストたちの夢や嫉妬をくらい続けていた」と知っていた。「アシストの重さも尊さも知っていた」。だから、彼は「自分に、何の得にもならない」のに死んだ。サクリファイス!
 F-4 なお、石尾さんは、ワインのエフェドリンの話を袴田から聞いたとき、当然にも「自分のボトルにもエフェドリンが入っている」と思ったので、レース中、ボトルの水は飲まなかった。

  終章
 A 今、ぼく、白石は、スペインに来て1年半。アシストの仕事をきちんとこなしてきた。来年からは、フランスのチームに移籍する。
 B 伊庭は、日本のチャンプとなる。今や、チーム・オッジのエース。
 C 香乃は、袴田と結婚した。

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