宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

小熊秀雄「たばこの好きな漁師」(1920年代)(『小熊秀雄童話集』より④)2009/6/25

2009-06-25 21:47:56 | Weblog
 たばこ好きで怠け者、その上、乱暴者の漁師の話。そこは烏賊釣りで栄えた漁村だった。夜、漁師がたばこを吸っていると大きなくさめを聞く。それはたばこ嫌いの箒星の天女のくさめだった。漁師は天女の美しさに魂が抜けた人のようになる。
 翌晩、怠け者の漁師は天女に嫁さんになってくれと頼むが、たばこが嫌いだと断られる。漁師は怒り、竹で長く巨大なキセルをつくり天女の箒星にたばこの煙を吹きかけた。天女は苦しみ海に落ちる。漁師は天女が持つ金の箒を探しそれを高く売り払おうと考え海の中を探す。金の箒は見つからない。天女も見つからない。
 ただ星の形をした赤い色の魚とも虫ともつかないものがたくさん現れる。それが「恨めしい。私を天から落としたね」と言う。これ以後、漁師たちの釣り針に烏賊は一つもかからない。ただ赤い気味の悪い海星ばかりがかかる。村は見る影もなく寂れた。
 怠け者で乱暴者の漁師が犯した罪。天女が殺された。天女はたばこを吸う漁師に煙が苦しいからたばこが嫌いと言っただけ。ところが漁師は独善的で天女の願いを聞かない。それどころか天女が美しいから嫁になれと頼み、断られると恨んで天女を海に落とす。死んだ天女の化身の赤く気味悪い海星が悲しいが共感を呼ぶ。

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