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Time goes by, Life goes on...

2050年の技術 英『エコノミスト』誌は予測する

2017-06-26 23:12:00 | 書籍


エコノミスト誌自らのアナリストやさまざまな分野の専門家が2050年の世界を技術の面から斬る一冊。

目次は以下。

■はじめに 破壊的で大規模な技術の変化「メガテック」

〈第一部 制約と可能性〉

■第1章 日本のガラケーは未来を予測していた
過去、現在、SFで描かれる未来。この3つが2050年を見通すための鍵になる。
15年前、スマートフォンの登場を予測した人々は、日本の女子高生に注目した。

■第2章 ムーアの法則の終わりの先に来るもの
チップの極小化によるコンピュータの高性能化(ムーアの法則)は、原子のレベルに
近づき限界を迎えつつある。だが、そこからコンピュータの発展の未来が見えてくる。

■第3章 第7の波、AIを制する者は誰か?
メインフレーム型コンピュータの第一の波を制したのはIBM。第二の波はパソコン。
その波を制したビル・ゲイツは、遥か未来のAIの登場について当時考えていた。

■第4章 なぜデジタル革命では生産性向上がみられないか?
経済学者のロバート・ゴードンは、産業革命と比べると、今日のデジタル革命では、
生産性、労働賃金、生活水準はほとんど上がっていないと指摘したが、その盲点は?

■第5章 宇宙エレベーターを生み出す方程式
どんな技術が実現可能か。物理学者はその答えを導き出す方程式をすでに手に入れてい
る。タイムマシンや光速を超える情報伝達は実現しないが、老化や疾病は克服できる。

■第6章 政府が「脳」に侵入する
人間の脳はインターネットに接続され、図書館、スーパーコンピュータ、宇宙望遠鏡
と直結する。だが同時に、スパムやマルウエア、ウイルスも一緒に取り込んでしまう。

■特別SF1 傷つく自由(アレステア・レナルズ)

〈第二部 産業と生活〉

■第7章 食卓に並ぶ人造ステーキ
世界人口は約100億人に達するが、食糧危機は起こらない。細胞培養を通じて、多く
の食品が工場で製造されるからだ。牛乳も卵も、生産に生身の動物は必要なくなる。

■第8章 医療はこう変わる
集中治療室での診断情報の解釈から難易度の高い外科手術まで、学習能力をもったAI
が担うようになる。一方、糖尿病、癌などでは予防用ワクチンの開発が進むだろう。

■第9章 太陽光と風力で全エネルギーの3割
太陽電池は透明な軽量フィルムとなり、自宅の窓やカーテンはもちろん、衣服でも
発電が可能になる。原発は先進国では廃炉が進み、中国、インド、ロシアのみに。

■第10章 車は編まれ、住宅は印刷される
3D印刷の市場規模はまだ67億ドル程度だが、2040年には1兆ドルを超える。その未来
を見抜いた中国は、すでに大量生産ラインで活用。建物まで印刷している。

■第11章 曲がる弾丸と戦争の未来
すでに西側のスナイパーの狙撃距離は2475メートルを記録。今後は、空中で軌道を
修正できる弾丸の開発で、照準線の向こうに隠れている敵を狙撃できるようになる。

■第12章 ARを眼球に組み込む
誰もがスマートフォンの代わりにARメガネを使いはじめる。街からは看板や信号が
消え、他言語はリアルタイムで翻訳。その技術はやがて眼球自体に取り入れられる。

■特別SF2 博士の救済(ナンシー・クレス)

〈第三部 社会と経済〉

■第13章 人工知能ができないこと
AIがわれわれを超える知性を持つことを心配する人は多い。しかし、アルファ碁は
対局の最中に火災報知器が鳴り響いても、次の一手を探しつづけるだけだ。

■第14章 プライバシーは富裕層だけの贅沢品に
コンピュータはすでに医師よりも正確に乳癌の発症を予測できる。だが、その認識パタ
ーンは膨大かつ曖昧で、人間の理解を超えている。ゆえに因果関係の把握は不可能だ。

■第15章 10億人の経済力が解き放たれる
アフリカでは農民のほとんどが女性である。市場価格を知らない彼女たちは、業者の
言い値で取引し、貧困状態にとどまっている。彼女たちを救うのはスマートフォンだ。

■第16章 教育格差をこうして縮める
中産階級の子供が最初の2年で親から語りかけられる言葉の数は、労働階級の子供と比
べて数百万語多い。幼児教育から始まるこうした格差を、技術の力でいかに埋めるか。

■第17章 働き方は創意を必要とされるようになる
私たちは現在、毎日150回以上携帯電話を確認し、メッセージ等の通知に10.5秒に
1回の割合で作業を中断させられている。こうした働き方はいつまで続くのか。

■最終章 テクノロジーは進化を止めない
「産業革命は蒸気電力の開発から始まった」。実は、これは誤解である。技術の誕生は
革命の結果に過ぎず、原因ではない。今も昔も、テクノロジーに意思などないのだ。


見ての通りの、今話題の技術からの2050年の世界を予想する内容。目次を見るだけでも、勉強になります。

本書の面白いのは、エコノミスト誌の科学担当、経済コラムニストなど自社のライターから、MIT教授などの学者や起業家など民間からも寄稿されている点。なお、15章はビル・ゲイツの奥さんでビル&メリンダ・ゲイツ財団の共同創業者で共同会長のメリンダ・ゲイツさんの寄稿です。

各章にはまとめがあり、それをみるだけでも勉強になります。

AIをはじめとしたすでに実用化されたものから宇宙エレベーターや曲がる弾丸などSF的な(しかし本気で開発をしている)ものまで多岐に渡ります。

2050年と言えば、今から33年後。まだ生きているとは思うけど、現役ではないだろうから、どこまで未来を見届けられるかわからないし、そもそもここに書かれた内容(ある程度今の時点で予測している技術や社会)は、その時にはもう古い技術になっているのは確かだと思います。でもこういう予想は面白し、大切なことだと思います。そしていろいろな技術は、出来る限りの平和利用してもらいたいなぁと思います。技術には必ず負の局面があるのは仕方ないことですが。


科学者18人にお尋ねします。宇宙には、だれかいますか?

2017-04-24 22:37:00 | 書籍


久しぶりの書評です。

地球外生命体、アストロバイオロジーに関して、その道の権威たちに質問をする内容。理系心をくすぐります(笑)

目次は以下。

---
はじめに 佐藤勝彦 
マンガ「糸」 ウィスット・ポンニミット 
地球外生命探しの今 

01 井田茂(東京工業大学地球生命研究所〔ELSI〕教授・副所長) 
「地球中心主義に、縛られてはいけません」 

02 高井研(海洋研究開発機構 深海・地殻内生物圏研究分野分野長) 
「出会えないと思っています。でも、我々は孤独ではないです」 

03 須藤靖(東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授) 
「あまりにも危険。直接接触することはお勧めしません」 

04 成田憲保(東京大学/自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター 助教) 
「"宇宙における生命"というテーマは未開拓な部分も多く、ニッチながら面白いです」 

05 小林憲正(横浜国立大学大学院工学研究院教授)
「宇宙のあちこちで、ポコポコできているでしょう」 

06 鳥海光弘(海洋研究開発機構 特任上席研究員/東京大学名誉教授) 
「宇宙人と関わるなら、多様な地球生命と触れ合うべき」 

07 丸山茂徳(東京工業大学地球生命研究所〔ELSI〕特命教授) 
「我々は孤独なのかもしれません」 

08 長沼毅(生物学者/広島大学大学院生物圏科学研究科教授) 
「凶暴性を持たない知的生命であることを期待します」 

09 半田利弘(鹿児島大学大学院理工学研究科・理学部物理科学科教授) 
「銀河中心を横から見た姿を教えて欲しい」 

◎鼎談 佐藤勝彦×内田亮子(人類学者)×縣秀彦 
「知的生命は旅を続けるのか」 

10 山岸明彦(東京薬科大学生命科学部応用生命科学科教授) 
「ロボットになら、会えるかもしれません」 

11 藤井友香(NASA Postdoctoral Program Fellow) 
「どこで見つかっても、おかしくはありません。」 

12 堀安範(自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター特任助教) 
「いるとすれば利己的で、その環境に適応できた生き物でしょう」 

13 鳴沢真也(兵庫県立大学西はりま天文台天文科学研究員) 
「知的生命はレアだが、どこかには存在する」 

14 ピート・ハット(プリンストン高等研究所宇宙物理学教授) 
「なぜ生命という存在が、可能なのでしょう」 

15 縣秀彦(自然科学研究機構国立天文台准教授) 
「食べなくても知的活動ができる生命が、いるかもしれません」 

16 田村元秀(自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター長) 
「地球外生命はいると思います」 

17 関根康人(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学准教授) 
「どうやら、僕は知的生命がいてほしいと思ってないようです」 

18 矢野創(JAXA宇宙科学研究所学際科学研究系助教) 
「「誰」がいるかは、考えかた次第です」 

地球外生命をより深く知るための 20冊
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見ての通り、新しい学問なのでさまざまな分野の権威たちが取り組んでいます。

本書ではアストロバイオロジーを研究するこれらの専門家達に対し、
Q1: 自身の研究内容
Q2: 「生命の定義」についての独自の見解
Q3: 地球生命はどこから来たのか
Q4: 地球外生命体が発見されるとしたらどんな所か
Q5: どうすれば地球外"知的"生命体を発見できるか
Q6: 地球外生命体が見つかったときのアクション
Q7: 知的生命体がいる世界にはどんな社会があるか
Q8: 人類は太陽系を越えて天の川銀河にひろがりうるか
の8つの同じ質問をする構成です。

話が難しく(当然ですが)、みなさんそれぞれ違った切り口での解説ですが、総じて
1) 地球外生命はいる
2) 但し、見つけられないまたはずっと先になる
3) しかも見つけられるとすると太陽系内だろう
4) でもどんなやつかはわからないし、きっとコミュニケーションも取れないだろう
5) 太陽系外に移り住むのは距離、時間の観点から難しいだろうが、DNA(情報)だけならあり得るかも。
ってな感じです。

学問は、今ある状態を数学公式や実験により証明するものですが、そもそも今目の前にある地球上生物についてもすべてを解明できているわけではないし、ましてや38億年前にどうって生物が誕生したかもわかっていません(というよりもどうやってアミノ酸が生成されたかすら)。

よって、生命体にとって今の地球のような環境が唯一無二なのかですらわからないわけで、僕が生きているうちに解明できるかも怪しいと思います。

ただ、だからと言って研究してもしようがないという訳ではなく、人類としても、地球上の生命体としても大切な研究であり、個人的にも非常に面白い話だなぁと思います。

太陽以外の恒星の周辺の惑星(系外惑星というらしい)の発見が加速度的に増え、2017年1月時点で3500個以上あるそうで、その中には地球に似た大きさや重さの惑星(スーパーアースというらしい)もあるそうで、それも地球外生命の存在に興味を持たせる一因なのだそうです。もしかしたら、地球がよりもっと発達した文明があり、100年単位で地球を観察している知的生命体がいるかもしれません。だいぶSFですが。

表紙にもなっていて、巻頭のマンガ「糸」のウィスット・ポンニットの絵がかわいいです。

日本スターバックス物語 - はじめて明かされる個性派集団の挑戦

2016-08-28 22:00:16 | 書籍


数々あるスターバックス本の中で、北米以外で初めて進出したスターバックスジャパンの設立から成長を描いた書籍です。

著者は、スターバックスジャパンの立ち上げ責任者だった、梅本龍夫氏。ただし、2005年にはスターバックスジャパンを去り、経営コンサルタントを経て、今は立教大学大学院の特任教授をされているそうです。

本著の目次は以下。

第1部 出会い(日本スターバックス物語の主人公たち、アメリカ発のコーヒーは成功するのか? ほか)
第2部 日本上陸(フォロワーがいない、スターバックス、いいね! ほか)
第3部 商売開始(「ダブルトールラテ!」、自分で考えて動く ほか)
第4部 山あり谷あり(サザビー・ショック、スピリットはどこへ ほか)

スターバックスジャパンは、元々米国スターバックスの100%子会社ではなく、商社のサザビーとの合弁会社でした。サザビーはアニエアス・ベーや最近ではフライング・タイガーの日本進出を行った経験を持ち、飲食業ではアフタヌーンティーを独自の展開している商社です。

本著は時系列的には2015年の1000店達成まで描かれていますが、著者が2005年にスターバックスジャパンを去ったこともあり、ほとんどが、サザビーからの日本出店提案と交渉、創業後の苦労、ハワード・シュツルや鈴木陸三さんたちのエネルギッシュな方たち、そしてスターバックスとコーヒーに情熱を持った方たちの奮闘を描いた物語です。

1990年代中盤の、まだアメリカですら大きくなかったスターバックスコーヒーを日本に持ってこようと考えた当時のサザビー関係者の先見性と日本を知らないアメリカ人たちの、50:50の出資比率を含めた文字通りの対等な交渉は、お互いに大変タフなものだったと思いますすが、それがあったからこその日本での成功であったと思います。

飲食や海外企業との合弁に限らず、これから新しいチャレンジをされる方には面白い内容だと思います。

ただ、上場後の変化や、最終的に上場廃止するまでの交渉などが描かれていないのが残念です(旧株主としても)。もちろん語ることのできない交渉もたくさんあったと思いますが、いつの日にか明かされることを期待します。



糖質

2015-09-18 13:00:59 | 書籍
お米大好き、麺類大好き、食べるの大好きなので大変つらいですが、体重が落ちなくなったのと、筋肉修復に時間がかかるようになってきたので、頑張ってみます。

ちなみに、糖質を摂らないと頭がボーッとするは必ずしもそうでは無いらしく、たんぱく質さえ摂っておけばエネルギーが作り出せるらしい。


トップグローバル企業のリーダーが選ぶ世界で勝てる人

2014-11-23 14:06:39 | 書籍


元インテル日本法人社長の吉田和正氏による、グローバル社会で価値残っていくために必要なことを、氏の経験を通して綴った著書。目次は以下。

序章 このライバルたちと戦う準備はできているか?
1章 「世界で勝てる人」が秘める3つのベクトル
2章 「変化」との向き合い方が勝敗を決する
3章 イノベーションの火種はこうしてつくられる
4章 今、日本企業とビジネスパーソンが目指すべき道
終章 「日本人」だからこそできることがある

高校卒業後に渡米し、アメリカの大学を卒業後にインテル本社に入社、その後インテル日本法人代表を務めた方で、生粋の外資系メーカーの方。私みたいに、すでに出来上がった日本人だらけの外資系に入った人間とは苦労のレベルが全く違うと思います。従って、書かれている内容も、すでに私自身経験済みで克服したこと、直面していること、まだ見ぬ越えねばならないハードルなど多岐にわたっており、非常に面白い内容です。

日本の企業にいても、国内の仕事しかしていない人にとっても、今後避けては通れないグローバル化。よって、外資系ではなく、また国内ビジネスしか従事しない人にも、とても参考になり、刺激になり、自分を考え直すきっかけになる著書だと思います。

また、著者が頻繁に言う日本の強み、特殊性を大事にすることも忘れてはなりません。いくら外資系で働き、英語が流暢に話せ、外国の文化や欧米のやり方を理解したとしても、我々が日本人であり、現地法人としては、日本の内と外ギャップを埋め、ブリッジしていくことが役割です。そのためには、海外を知ることも大事ですが、日本を知り、日本のお客さんを理解すると言うことが、日本の企業にいるよりもより重要になります。

理系思考 エンジニアだからできること

2014-09-28 21:33:56 | 書籍
理系思考 エンジニアだからできること
久しぶりに図書館で斜め読み。東北大学、カリフォルニア大を卒業し、29歳で東芝の半導体部門に入社するも、その後コンサルティング会社を経験し、現在は早稲田大学ビジネススクール客員教授等を兼務している大滝 令嗣氏の著書。日本の文系社会とそれに甘んじている理系への問題提起と提言を綴っています。

目次は以下の通り。
序章 「つぶしのきかないサラリーマン」になるという危機感
第1章 エンジニアを大切にしない日本
第2章 見方を変えれば、いまの仕事もうまくいく
第3章 いつか、人の上に立ったとき
第4章 エンジニアを卒業するなら
終章 エンジニアは錬金術師

このブログでも再三書いてますが、文系偏重社会の日本。これは文系の人だけではなく、技術にこだわり、主張や表現をしない理系にも問題があるのですが、海外で工学を学び、東芝に就職(この時点でなんで?ではありますが)し、いろいろなやりにくさや閉塞感を感じた、コンサルティングファームに転職した氏の率直な想いが綴られています。

例えば、「組織に埋没していくエンジニアたち」「エンジニアを飼い殺しにする大企業」「下手な指揮者はいないほうがマシ」など、外から見たことのある人や感覚がフレッシュな人には当たり前ですが、日本の社会に埋没していて、疑問にすら思わない人が多いことが問題。

著書は、特に若いエンジニアに対し、自分の将来を自分で設計し、市場価値を意識すること。理系だからこそ転職しやすいし、時には起業を考えよとアドバイスし、世界を豊かに出来るのはエンジニアであり、夢へと続くとし本著を締め括っています。

もちろん、すべての人が転職や起業をすれば良いわけではなく、1つのことをコツコツやるのが得意な人、日本の企業にいて能力を発揮できる人だってたくさんいるだろうし、それも大事なことだと思います。

肝心なのは自分が何をしたいのか、何が出来るのか、どうなりたいのかを、自分自身で考えること。そして今の環境である程度(数年)の経験を積み、自分にも会社にも向いていないと思ったら、もったいないと思わずチャレンジしてみることだと思います。

自分の経験からすると、30代前半までには新しい環境にチャレンジしておくことが大事だと思います。そうすれば、その後のキャリアアップへのハードルも越えていけると思います。

僕もまだまだ頑張ります。


プロ野球お金にまつわる100 の話

2014-07-22 23:49:47 | 書籍
プロ野球お金にまつわる100  の話
週刊モーニングで連載中のグラゼニ(読んでませんが)の主人公、凡田夏之介と週刊ベースボールのコラボによる、プロ野球のお金にまつわるあれこれの話。

目次は以下。

はじめに
1章 高額な契約金は退職金の前払い!?
2章 契約更改という名の密室のドラマ
3章 意外にお金がかかるプロ野球選手の生活
4章 セカンドキャリアをどうする? 引退後の道
5章 球団経営は大丈夫か?
6章 メジャー・リーグのマネー事情

まだドラフトなどのない大昔から、最近のNPB、MLBや韓国、台湾リーグの球団経営、引退後の選手の生活など多岐にわたる話が並びます。

興味深いのは、戦後の野球界は、プロ野球より学生野球が盛んで、プロの誘いを断って、大学に行く選手も多かったとか、それを変えたのもやっぱり長嶋さんだとか、ライバルの村山さんは背が低くて評価が低くて、せっかくのチャンスの大学選手権も肝炎で登板できず、結果阪神電鉄職員採用後、大阪タイガース出向の形をとったという村山さんらしい反骨の歴史など、プロ野球の知られざる歴史。

その他にも、最近の選手は真面目で飲みに行かないというありがちな話から、フランチャイズが広いパ・リーグの中で一番大変な日本ハムは遠征費だけでざっと年間2,3億円などびっくりする話。

球団経営危機が叫ばれ、企業実業団の廃部、独立リーグの採算の問題など国内の野球環境は衰退する一方、世界から優秀な選手を一方的なポスティングとFA制度で釣り上げ、膨大な放映権料や不公平なWBC分配金などますます潤うMLB。やっぱりスポーツもビジネスなのです。


阪神戦・実況32年。甲子園の放送席から見続けたタイガースの真実

2014-06-21 22:29:17 | 書籍
阪神戦・実況32年。甲子園の放送席から見続けたタイガースの真実
ラジオ大阪、中部日本放送を経てサンテレビに移り、70年から01年まで32年間サンテレビボックス席で実況を勤めた、西澤 暲(あきら)氏が綴る我らが阪神タイガースの真実。

第1章 お家騒動に、21年ぶりのV。虎、激動の’80年代(「ベンチがアホやから」発言の真実。江本孟紀を引退させたのは僕!?/キャンプで川藤幸三が食堂を出るのは、いつもいちばん最後だった ほか)

第2章 虎のスター百花繚乱ー江夏、田淵、掛布らが輝いた’70年代(野球解説者・掛布雅之を育てたのは、僕ら関西の放送人だった!?/“飛ぶバット”のおかげでお蔵入りになった、掛布雅之の幻のCM ほか)

第3章 ああ暗黒時代。勝てなかった’90年代の、愛すべき虎たち(吉田義男が虎の将として見せた3つの顔/ホームシックにかかったオマリー。それを癒した100万円超のFAX機 ほか)

第4章 忘れじの虎の名選手たち(精密なコントロールで320勝。小山正明は、素顔も“精密機械”/熱血漢、村山実のユニフォームを脱いだ素顔は、情に厚く優しい男 ほか)

「おわりに」であるように著者が実況を勤めた32年間で、1879勝2164敗153分けで借金285(思ったよりと少ない)。うち11年は最下位。そんな我らがタイガースも実は昔は強くそしてクセも華もあった集団でした。

江本の引退の引き金は西澤さん、給料いらんから現役を続けたいと訴えた川藤、江川の件で不遇な現役生活を送った小林繁、甘えん坊だった田淵、その他弱い時代のダメ外人や新庄、井川、濱中など選手と向き合ってきた西澤さんだから知り得る情報満載で、阪神をより好きになります。

新庄以来、こじんまりしたタイプが増えた阪神(プロ野球全般がそうでしょうが)。今日も本拠地であっさり完封負けのタイガース。勝とうが負けようが生活が変わるわけではありませんが、それでも一喜一憂の毎日です。


東京2020 計画地図 - 世界が注目する7 つのエリア

2014-06-13 21:22:33 | 書籍
東京2020  計画地図 -   世界が注目する7  つのエリア
東京都政の現在と将来をビジネスチャンスの視点で研究しつづける、都内に勤務する有志の組織という東京都市計画研究会による2020年の東京の形を纏めた著書。目次は以下。

1 江東~臨海部はオリンピックで都心軸を引き寄せる―鉄道3線もLRT・BRTも走る!
2 銀座~豊洲が賑わいで連続する街になる―路面電車が走り川も流れる!?
3 新橋~虎ノ門が東西を貫く大動脈になる―環状2号線があのシャンゼリゼに!
4 浜松町~竹芝は空路と海路の玄関口になる―外国人観光客があふれる!
5 品川~田町は空路と陸路の目的地になる―運河もかかえる超ド級のサウスゲート!
6 日本橋~日比谷に川辺の街が大復活する―東京都心に江戸市中が出現!
7 渋谷~神宮が新宿を超える大都会になる―近未来を先取りして川も復活!

書店を見回すと、至るところにある2020もの。もともと近い将来で数字の並びもキャッチーなので将来予想本として結構ありましたが、オリンピックが決まり一層のフィーバーぶり。

本書ではよく報道されている、お台場、晴海のオリンピックエリアや、品川再開発。晴海や汐留の旅客船などの外国からの来訪者受け入れのハードウェアについて詳しく紹介。なるべく、羽田発着枠やアクセスがよく言われますが、旅客船舶も大きな延びしろあります。

残念なのは、公共交通、道路や河川の再開発などハードの投資は目を見張るものがありますが、人等のソフトウェアはどうなのでしょう?

本書では、東京オリンピックで多くのものを得て、多くのものを失った。と何度も出てきます。環境面においてもそうですが、2020年に向け、人的リソースへの投資も加速していくべきだと思います。


ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国―「経営と技術」から見た近代化の諸問題

2014-06-05 21:18:58 | 書籍
ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国―「経営と技術」から見た近代化の諸問題
日経BP社日経BPビジョナリー経営研究所上席研究員兼日経BPイノベーションICT研究所上席研究員(つまり日経のライター)の谷島宣之氏による、日本のビジネスモデルや習慣の問題点、改善点を説く著。

目次は以下です。

第一章 [実態]経営と技術を巡る珍現象
1-1. ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国
1-2. 金を払って人に会う米国人、タダでも会わない日本人
1-3. トップがセールスする米国、表敬訪問する日本
1-4. 協会にうるさい米国、曖昧にしたい日本
1-5. 「協調性」を最重要視する世界各国、重視しない日本
1-6. 外資系に努めるとなぜ右傾化するのか

第二章 [総論]明治以来の難題に取り組む時
2-1. 適応異常に克つ
2-2. 全体像の力
2-3. 機能美を感じる
2-4. 今こそ自己本位
2-5. 立体思考の勧め
2-6. あえて労働集約

第三章 [原因]「言葉のインフレ」は恐ろしい
3-1. 専門家同士もわからない英略語
3-2. ”インテグリティ“をお持ちですか
3-3. ドラッカーの重要語に新訳が誕生した瞬間
3-4. 数値目標の暴走をどう防ぐか
3-5. 「言葉一つを生み落とす厳しさ」

第四章 [対策]答えは三十年前からそこにある
4-1. 古くい新しい「ITの前にビジネス」という教え
4-2. デザインがダメならカイゼンしてもダメ
4-3. 成功の担い手は意志あるマネジャと張り切る若手
4-4. 「システム内製」こそ理想の姿
4-5. “技術の暴走”に社長が備えておくこと

冒頭は、タイトルにあるソフトウェアの内製、外注の話から始まり、日本の企業と海外企業の違いを紹介。大筋は一章の表題を見てもらえば分かりますが、あるある話ばかりで、これなら、自分でも本書けるなと思うような内容。なお、本文にもありますが、日本の場合のソフトウェア外注ってだいたい子会社、孫会社が多いので、内製と言えば内製ですが、一方で海外企業では、子会社孫会社っていう概念がそもそもありません。

二章以降は、日本企業の問題点、原因と対策と来て、この辺りからは日経ビジネスの焼き直しのような内容で、あまり真新しい内容はないですが、日本企業がITを活用することや、海外流経営の導入という未だにハードウェア経営という点は納得できて、ただそれを今の経営者に言っても無駄だと思うのが私の意見。もっと若い世代に責任と権限(特にこれ)を与えることで、人も育つし、本当のグローバル化も出来ると思います。一人ないし少人数でアウェイに出て、自分の力で乗り越えてこそ。