ロイターやハーバード・ビジネス・レビューのライターを務めるピーター・シムズ氏の著書。原題は「Little Bets - How breakthrough ideas emerge from small discoveries」なお、本書もsmall betを経て完成したもので、本題は元々副題だったそうです。
目次は以下の通り。
第1章 「大きな賭け」対「小さな賭け」
第2章 成長志向のマインドセット
第3章 素早い失敗、素早い学習
第4章 遊びの天才
第5章 問題は新しい答え
第6章 質問は新しい答え
第7章 大から小を学ぶ
第8章 小から大を学ぶ
第9章 小さな勝利
第10章 あなたの「小さな賭け」
よくあるこの手の社会学の書籍同様、米国における試行錯誤の例として、コメディアン、グーグル、アマゾン、HP、ピクサー、建築家や米軍等多岐にわたる具体例を挙げ、そこに共通する、小さな賭けと試行錯誤の繰り返しを勧める内容。
全てが多様化しかつ短周期化した現代において、過去のトップダウン、ウォーターフォール方式では、対応できなくなっており、まず小さな賭けを行い、沢山の失敗とちょっとの遊び心を持って試行錯誤しながら、問題点を見つけ、改善するプロセスを繰り返し、大きな成功を得ると言うのが主旨。
物事には「許容できる失敗」があり、まずはその範囲で賭けを行うこと。制約問題を具体化し、それに集中させることで、克服すべき課題を明確にする。などこじんまりした印象ではあるが、よほどの天才でない限り、新たなすごいものを創造することは難しく、かつ大きな失敗が許されない時代。小さなモデリングから始め、サンプリングし、より確実で現実的な方向に進めることが遠回りの様だが、今の時代に受け入れられるのだと思う。そういう意味では、使いもしない機能を盛り込んだ製品を作り出し、ヒットを産み出せない日本のメーカーは、まだまだ旧態依然とした、メーカー主導のハードウェア思考、大規模生産であり、ソニー、シャープですら埋没してしまう原因の1つなのだと思います。
また、別の視点からみた「運の良い人」の特徴として、自分の周囲に興味を持ち、多種多様な人々と会い、話し学ぶ、「外交性」が機会と知識という報酬を得ていると分析。これは一般的に年を取るごとに失われていくものだが、それでもいくつになっても社交的でいて、かつ凝り固まらずいろいろな人の意見を聞けると言うのは、成功した人の共通項だと思います。忙しくなるとどうも人と話すのが億劫になってしまうので、そこは意識して外向きにしておかないといけません。
本著の最後は、計算機科学者のアラン・ケイ氏の言葉を引用。「未来を予測するもっとも確実な方法はそれを自分で創り出すことだ」。少しでもこう言える人生。運が良かったと言える人生を送る為には、アンテナを高くし、色々な意見に耳を傾けながら、目の前を通り過ぎるチャンスをつかみ損ねないようにしたいですね。