前中日ヘッドコーチ、森繁和氏の著著。世の中のナンバーツーに送る指南書です。ちなみに野球一筋(?)のカタギの方です。ヘッドコーチながら、自らドミニカに出掛けネルソンやブランコを発掘。中日退団の際は、全員が森と一緒に退団する。とまで言わしめたほどの親分肌です。
目次。
序章 投手会の夜
第1章 なぜしぶといチームは完成したのか
第2章 教えるより考えさせるコーチ術
第3章 落合博満監督の凄さ
第4章 参謀の心得
終章 選手への愛情は決してなくさない
内容は、以前紹介した落合前監督の『
采配』に呼応したような話が多く、表の落合(と言っても明るい意味ではなく)と、裏の森の対比が面白い。
打者出身の落合氏は、投手起用については一切を森氏に任せ、8年間のうち落合氏が決めた先発は、1年目開幕戦の川崎憲次郎だけ。物議を醸した日本シリーズの山井交代劇も、森氏と山井投手で話、落合氏が承諾したという裏があるそうです。その他、浅尾が入団当時はチャラかったとか、ドミニカではマルチャンのお陰で選手を発掘できた。など、プロ野球ファンには面白い話ばかり。
そんな森氏ですが、現役引退後一度もユニフォームを脱がずコーチになり、西武、日ハム、横浜を経て、落合氏に半ば強引に中日に誘われ、23年間もコーチを勤めあげた、名コーチ、名参謀。
そんな中でも落合氏は、とにかく勝つということを考え、そのために必要なこと、優先すべきことをコーチ、選手に科し、強いチームを作り上げました。つまり、マネジメントとして落合氏が明確なビジョンを示し、中間管理職の森氏がその為の方法論を考え、社員である選手を動かしたわけで、強いチームが出来ていくわけです。
落合氏だけでも森氏だけでもこういうチームを作れなかったと思うし、お互いがお互いを理解し、認めあい、尊重しあえてこそ、こういう強い組織が作れたわけで、組織と言うのは運や巡り合わせがあるわけです。
私は落合型か森型かというと森型だと思いますが、いまだ、『これだ!』という監督には出会っておらず、これからも出会えるかは分かりませんが、そういうチャンスがある時を考えながら、自分の視野や引き出しを広げておくことが、今の課題だと思います。もちろん、いつか監督転向もありです。
沢山の選手を見てきた森氏ですが、潰れない選手、伸びる選手の共通点として「孤独な時間をきちんと過ごせること」をあげています。ポイントは「きちんと」で、ただボーッと時間を過ごすだけでなく、壁にぶつかったときに自分と向き合い、人のアドバイスを仰ぎながらも、自分で決断し乗り越えることが大切なわけです。これってスポーツに限らずなわけです。
そして、終章にあるように選手に愛情を持つこと。上下関係関係なしに、他人に対して、愛情と尊敬の念を持つことが、なによりも大切なことなのです。