将棋NHK杯の番組解説〔NHKEテレ2015/01/18放送〕で
- 佐藤:穴熊にすると少し偏ってしまうきらいがあるんですね。
- 清水:やはり手数(てすう)がかかるという・・・・。
- 佐藤:手数(てかず)がかかります。
「手数」を、聞き手の清水市代女流六段が「てすう」とし、解説の佐藤天彦八段は「てかず」としております。
佐藤(福岡市出身1988- )は遅咲きの有望株で近年、タイトルホルダーに何回も勝っている実力者。
一方、佐藤康光九段という名人位も経験した羽生世代の棋士もいるので、佐藤(天)と佐藤(康)とでも区別しましょうか。
佐藤(天)は2ヶ月後の2015年4月に始まる順位戦からA級八段として戦うことになっており、すでに竜王戦では1組に在籍しその実力を発揮しています。
広辞苑第六版では
てすう【手数】(→)「てかず」に同じ。
てかず【手数】
①それに施すべき手段の数。てすう。
②その物事または他人のために特に力を尽くすこと。
③ボクシングで、パンチを繰り返す回数。
としております。
ところで将棋界では、妙なことですが「手」を2通りに読み分けており、
- て・・・・「先手後手・7手詰・手番」を「せんてごて・ななてづめ・てばん」
- しゅ・・・・「好手・悪手・妙手」を「こうしゅ・あくしゅ・みょうしゅ」
と読ませています。
正しいかどうかは別問題で、どちらかが正解というものではなさそう。つまり習慣上そうなっている、ということでしょう。
そしてその「習慣上の違い」を、それぞれの人がなんとか理由付けをして「こちらが正しい」と主張して譲りません。これが日本語のおもしろいところでしょうか(笑)。
つまり、元々の和語/外来の漢語のちがいでしょうか。
- たび(旅)/旅行
- お造り/刺身
- やま/山 〔やま登り/登山〕
など無数にみられるようです。
そういえば英語にも和語と漢語に似た
元々のアングロサクソン語/外来のラテン語系
の違いがあるらしい。
和語と漢字の違いと同様に、微妙に違うと言いたがる人(異なる前例に意味づけをするだけの場合もある)がいますが、大ざっぱに言えば同じ意味なのでしょう。
和語と漢語を使い分けるのと同様に、これらを使い分けることができればいいですね。
「自由」の意味で
freedom〔フリーダム〕 /liberty〔リバティ〕
「動機」の意味で
motivation〔モチベーション〕/incentive〔インセンティブ〕
最近とみにみられるのが
「モチベーション」で、使う人によっては、何となく品がなさそうな気も・・・・(笑)。
そういえば、「かっこう」を付けたがる人は「モチベーション」、「もったいぶる」人は「インセンティブ」と言っているような気がします(笑)。これから注意して聞いてみてくださいね。
疑い深い人のために、辞書にあたっておきましょうか。
motivation
━ 【名】
【U】 [具体的には 【C】] 〈…する〉動機(づけ), 刺激, やる気 〈to do〉
incentive
━【名】
Ⅰ 【U】 [具体的には 【C】]
1 〔行動などへの〕刺激, 動機 〔to〕(類語 ⇒motive 1)
2 〈…させる〉誘因 〈to do〉
Ⅱ 【C】 奨励金; 報奨物.
━ 【形】
Ⅰ 刺激的な, 鼓舞する.
Ⅱ 【A】 (能率向上などの)奨励(用)の; 報奨(用)の
語源 ラテン語「(歌で)励ます」の意
New College English-Japanese Dictionary, 6th edition (C) Kenkyusha Ltd. 1967,1994,1998
将棋を離れて「手」を見ると
て
手弁当 手書き 手当たり次第 お手洗い 手入れ
手薄 手品 手習い 手紙 手厳しい 手切れ金
手に汗を握る 手配師 手はず 手前
しゅ
手記 手術 手段 手中 手話 手裏剣 手芸
などがあります。
もしも、どういう日本語や外来語を使うか、によって、その人の素性や人となりを直感できる、とするならば、なかなか興味深いものですね(大笑)。