譲位
「譲位」の意味は
- 「生きているうちに」が前提
- 位を譲ること
でしょうか。死んでからでは本人の意志で「譲る」わけにはいかないのですから。
こうして「譲位」の後、決まりに従って最上位の皇位継承者へ位が移るのでしょう。
退位
これに対して「退位」の意味は、直接的には「位を退く」ことで、その次の「位」が誰に移るのかについてはやや曖昧で
- (生前)に「位を退く」・・・・・・その後には触れていない
- (死後)なりゆきとして自然に「位を退く」・・・・・・その後には触れていない
- その後ですが、空位、途切れ、断絶
などが想定されます。いずれもその後、法の定めるところに従って次の人に位が移ることになるのでしょうが。
私の印象では、「誰かに譲る」意味としては、「退位」よりも「譲位」のほうが強いのです。
「譲位」にも「退位」にも、「天皇としての公式行事への参加(義務)」がなくなる、という意味があるのでしょう。
1つの説に過ぎませんが
せいぜん【生前】
(亡くなった人が)生存していた時。存命中。しょうぜん。
「-をしのぶ」「ー愛用の品」⇔没後⇔死後
広辞苑第六版
引用したからといって、私が広辞苑を唯一のものとみなしているわけではないことを、改めて申し添えます。
こう言っておかないと、引用した説を全面的に信頼しているに違いない、と固く信じるかたがいらっしゃるようですので、冒頭で「1つの説に過ぎませんが」とし、なおかつ「唯一のものとみなしているわけではない」と申し添えました。
引用する説としては、自分の説に近いことが多いと思われるものの、必ずしもそうとは限らないのであって、日本がどこかの独裁洗脳国家と大きく異なるところでした(笑)。
ではなぜマスメディアで
「譲位」ではなく「退位」が使われたのか
ですが・・・・・・。
私は、旧制度の臭いを漂わせる「譲位」ではなく、新しい制度の臭いを漂わせたい「退位」を、やや「断絶」の意味があるのを避けるためか、頭に「生前」を入れ、敢えて使ったのではないか、と愚考します。
「生前退位」は「歴史の書物にない表現」 皇后さま違和感表明 NHKの反応は・・・・・・
NHKは7月13日午後7時のニュースで、「独自 天皇陛下『生前退位』の意向示される」と字幕をつけて第一報を流した。この後、主要各紙や放送各局も一斉に後追い報道したが、全てのメディアが「生前退位」という表現を使っていた。
ただ、「生前退位」という表現には、当初から疑問の声が一部の識者などから出ていた。宮内庁関係者が「天皇陛下は生前退位という言葉を使われたことはない」と指摘していたとされる。6年前に天皇陛下からご意向を聞いていたという東京大学名誉教授の三谷太一郎氏が「天皇陛下は『譲位』という言葉を使われた」も証言している。・・・・・・
そもそも「退位」という言葉自体に「生前」の意味は含まれているから、「生前退位」は屋上屋を重ねた不自然な表現である。「生前」は「死」を、「退位」は「断絶」を想起させ、不吉な予感を与える。・・・・・・
NHKの第一報は次のように「ご意向」をかなり的確に把握していた。
天皇陛下は、「憲法に定められた象徴としての務めを十分に果たせるものが天皇の位にあるべきだ」と考え、今後、年を重ねていくなかで、大きく公務を減らしたり、代役を立てたりして天皇の位にとどまることは望まれていないということです。・・・・・・
私個人としては、天皇陛下の「ご意向」を表すときは「譲位」、制度論の文脈では「退位」という表現がふさわしいのではないかと考えている。・・・・・・
:楊井人文 | 日本報道検証機構代表・弁護士 2016年10月22日 7時8分配信
皇后もまた「生前退位」は旧制度ではみられなかったと認めているようですね。
「生前退位」はNHKが使い始めたようで、確かに
「生前」は「死」を
「退位」は「断絶」を
想起させるのかも知れず、もしも皇太子に位を譲る意図ならば、天皇本人が使っていたらしい
「譲位」
のほうが無難だったのかも知れません。ただし前述の如く
「譲位」だとなんとなく旧天皇制を思い出させ、かといって「生前譲位」も「譲位」が生前に限るため、変な日本語になるようです。
よって「退位」という言葉を使い、丁寧なことにその頭に「生前」を付けて「生前退位」にしたのでしょうか。
そしてこれに異論を唱える人がいるのです。
さてさて、皆様はどう思われますか。