EUは、日本から見て遠くにある地域ですが、EUに所属する国々の対立、そしてEUとそれ以外の国の対立から、重要な問題点が見えてくるため、私たち日本人に何かを考えさせるようです。
(ドイツ・メルケル首相)トルコは200万人の難民をかかえているのに、国際的な援助は多くありません。その為、EUと加盟国は、トルコの負担を軽減したいということです。:ワールド・ニュース NHKBS1 2015/11/30
これは
- 2014年3月にロシアがウクライナ領クリミア半島を武力併合したため、ロシアがEUから経済制裁され、通貨ルーブルや原油価格が下がる事態が重なって、経済的に低迷した。
- 2015年9月にロシアがシリア空爆を開始。それ以前から何かにつけロシアはシリアのアサド政権を支援してきた。
- 2015年10月31日 ロシア機がISの犯行でエジプトのシナイ半島上空で爆破され墜落し全員が死亡。
- 2015年11月からロシアがシリアISやその他の反政府勢力への空爆を開始。
- 2015年11月24日トルコ戦闘機が、領空を侵犯したとして、ロシアの空爆機を撃墜。
- 2015年12月初旬ごろ、ロシアが2016年1月からトルコへ経済制裁〔トルコからの一部品目を輸入禁止とする〕をすると発表。
という流れの中の生まれた発言で
EUに経済制裁されたロシアが、トルコを経済制裁
という落語を演じています。分りやすく例えるならば
ある中学校にいじめなど素行不良な生徒がいて、担任に叱責されたのを恨み、別の生徒をいじめ始めた
ということでしょうか。
- 昨年以来EUはロシアを制裁してきたので、今回のトルコによるロシア機撃墜で「決定的な落ち度がなかった」トルコの支援にまわりロシアへの経済制裁を継続することになったのでしょうか。いやむしろNATOが、加盟国トルコの側からロシアを監視してきた結果、とも言えます。
- とにかく今回の事件で、ロシアがトルコを経済制裁しようとしているけれども、滞っていた「トルコのEU加盟議題」を再度とりあげることに繋がり、トルコにとっては追い風となっているようです。
のでしょう。ただし
EUすべての加盟国がドイツのメルケルが言う通りにトルコを支援するか、と言えば、そうとも言えないようで、難民問題でも見られるとおり異論が続出するでしょうから、実際にEUがトルコを支援するためには、大きな壁を乗り越えなければならないでしょう。
EUは、似たような民族が殺りくを繰り返した歴史を反省して
- なんとか統合して、ヨーロッパ地域でのむだな対立をなくそうとしたのですが
- 一定以上の統合が実現し、今や28カ国の大所帯ともなり、あらゆる議題で必ず反対する国が出てきました。巨大なEU内でむだな対立が増え始めたようです
- 離散していることで必然的に発生する対立問題を「統合」で解消しようとしたのですが、統合の結果、今度は巨大組織内での対立に悩まされることになったのです。
- このような離散と統合の繰り返しを、我々人類は経験してきました。その時には最善の選択だったと思われ、少しずつ発展してきたはずですが、新たな問題が生まれるとは予想できなかったのです。
- 中国でいえば、かつての離散状態(今のシリアと同じ)から、中国共産党が暴力的に統合し、さらに外部侵略(これを中国共産党はむなしく「解放」と呼ぶ)を繰り返しておりますが、中国はその統合・巨大化により不可避的に発生した「統治能力の欠如」という矛盾を解決できず、今や崩壊寸前の状態です。
言い替えると
離散状態・内戦状態では、不可解な殺りくが無数にみられますが、これをなくそうと統合化し巨大になると、またまた内部対立が発生して、ふたたび分裂・離散するのでした。
離散状態→統合→離散状態→統合 ・・・・
国には、様々な要素が絡んで、適度の大きさなるものがあるのですね。
ことの深刻さは
派閥・流派こそ違え、広大なロシア連邦も含めたキリスト教系の国同士の対立と和解の繰り返しでしたが、ここにシリア内戦にともないISなどイスラム教系国が絡んでイスラム教の難民が増えてキリスト教系の国家へ向かったことが、新しい問題になってきたようです。
もしも、ですが(あり得ないかも知れませんが)
キリスト教とイスラム教の統合があれば、これこそ画期的なことと言えます。
しかし上述の通り、統合して巨大化すると、必然的にほころびが出てくるもので、それぞれの宗教内での分裂をそのままにして、異教徒間で統合が可能なのかどうか。
通常はあり得ないと思われます。
キリスト教とイスラム教の対立が表面化してくると、半年ほど前の
- ギリシャのユーロ圏離脱、ドイツ世論調査で賛成過半数〔2015年06月13日ロイター〕
- ユーロ圏「残留」68%、離脱を上回る ギリシャ紙調査〔2015年6月28日朝日〕
などの当時深刻と受け取られたニュースが、どうでもいいとは言えないものの、それ以上に優先しなければならない問題が勃発したため、かすんでしまったかのようです。
こんな時に必ず
「いやこの問題は宗教対立ではない」と双方が主張するでしょう。しかし歴史をさかのぼって考えると、宗教対立でないはずが、ありません。
ことの本質に立ち戻って、対立の原因を考える必要がありそうで、そこに日本が果す役割が、ありそうに思われるのでした。
あ~ぁ、対立はさらに続くのでしょうか、分りませんね(笑)。