太田記念美術館にて『闇と光―清親・安治・柳村』が開催されています

明治時代初期、浮世絵師の小林清親らによって描かれた光線画は、西洋に由来する油彩画や石版画などの表現を木版画に取り入れ、のちの新版画の先駆けとも呼ばれるほど新たな世界を切り開きました。



その光線画の魅力に迫る『闇と光―清親・安治・柳村』の内容について、WEBメディアのイロハニアートへ寄稿しました。

「光線画」を知っていますか?明治の人々が見た闇と光。 | イロハニアート

まず会場では光線画の始祖である小林清親の作品が紹介されていて、「夜」と題したコーナーでは明治時代の暗い夜の中、ガス灯の点る東京の街を描いた作品などを見ることができました。

輪郭線を省略し、色の面で人物を捉え、ぼかしや網目、短い横線によって陰影をつけるのが光線画の特徴で、いずれも光と闇の対比を強調して描いていました。



吉原遊廓の南西にあった神社を舞台とした『浅草田甫太郎稲荷』に心を引かれました。誰もいない神社から鳥居越しに川面を望んでいて、あたりは裏寂れるようにして静まり返っていました。この神社は幕末こそ多くの参拝客で賑わっていたものの、明治に入ると廃れたとされていて、清方はかつての名所だった頃を懐かしむようにして描き出しました。

この清方の弟子だったのが井上安治で、四つ切判のシリーズの『東京真画名所図解』を出版しては、文明開化にて変化する東京の風景などを描きました。

もう1人の浮世絵師である小倉柳村は、生没年や経歴が不明とされていて、光線画を手がけたものの作品はわずか9点ほどしか残されませんでした。

とはいえ、湯島天神の男坂の上に立つ2人の男性を満月ともに描いた『湯嶋之景』などは、情緒深く、かつミステリアスな雰囲気をたたえていて、清親や井上とは異なった魅力が感じられました。


最後に展示替えの情報です。会期中、前後期にてすべての作品が入れ替わります。

『闇と光―清親・安治・柳村』出品リスト(PDF)
前期:11月1日(火)~11月23日(水・祝)
後期:11月26日(土)~12月18日(日)

詳しくは公式サイトより出品リストにてご確認ください。


前後期をあわせて出品される約200点の光線画は、当時制作された作品の約9割に相当します。まさに光線画の展覧会の決定版といえそうです。

12月18日まで開催されています。

『闇と光―清親・安治・柳村』 太田記念美術館@ukiyoeota
会期:2022年11月1日(火)~12月18日(日)
 *前期:11月1日(火)~11月23日(水・祝)、後期:11月26日(土)~12月18日(日)前期と後期で全点入れ替え。
休館:月曜日、および11月24日(木)、25日(金)。
時間:10:30~17:30(入館は17時まで)
料金:一般1000円、大・高生700円、中学生以下無料。
住所:渋谷区神宮前1-10-10
交通:東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅5番出口より徒歩3分。JR線原宿駅表参道口より徒歩5分。
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