「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」 横浜美術館

横浜美術館
「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」
1/26-3/24



横浜美術館で開催中の「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」のプレスプレビューに参加してきました。

20世紀が生んだ世界的な報道写真家、ロバート・キャパ。実はその存在は元々、二人の人物によって創り出されたフィクションであったことをご存知でしょうか。


「ゲルダ・タロー」展示室風景

その二人とはアンドレ・フリードマン(1913~1954)とゲルダ・タロー(本名ゲルタ・ポホリレ。1910~1937)。1930年代にパリで知り合った二人は「ロバート・キャパ」という人物を作ることで、報道写真の仕事の道を切り開きます。

しばらくするとタローは写真家として自立。フリードマン自身がキャパに取って代わりますが、1937年、スペイン内戦のさなかにタローが27歳の若さで死亡。またフリードマン自身も後にインドシナ戦争の取材中に地雷へ接触して亡くなってしまいます。

まさに戦場の写真家。生と死の隣り合わせの極限を撮り続けた写真家です。

そして本展ではキャパの二人、つまりはフリードマンとタローの業績を紹介。300点もの写真、資料によって知られざる二人の関係を解き明かしています。


撮影者不詳 「ゲルダ・タロー、グアダラハラ戦線」1937年7月 ICP

まずはゲルダ・ポホリレ、通称タローから。岡本太郎に由来するペンネームを使った彼女、当初からフリードマンとともに写真家として活動をスタート。スペイン内線の取材に参加し、特に女性兵士を多く被写体におさめました。


ロバート・キャパ「セロ・ムリアーノ付近、コルドバ戦線」1936年9月5日 横浜美術館

そしてゴルドバ戦線ではいわゆる「キャパ」としての名声を高めた「崩れ落ちる兵士」を撮影。まさに決定的瞬間、あまりにも有名な作品ですが、これをフリードマンではなくタローが写したのではないかという説も存在します。

「キャパ」の写真は一体どちらが撮ったのか。二人の写真家による一枚の作品、また別の作品。その比較検討も展示のポイントかもしれません。

それにしてもタローの死は早すぎます。戦線で取材していた彼女は1937年7月25日、乗っていた車が共和国軍の戦車に追突されてしまいます。翌日に病院で死亡。いつしか「キャパの彼女」という以外、歴史の記憶から忘れ去られていきました。

実は出品のタローの写真はほぼ日本初公開です。言わば本展はタロー復権の一つの切っ掛けになるのかもしれません。


「ロバート・キャパ」展示室風景

さて続いてはタロー亡き後のフリードマン。キャパの190点余にも及ぶ作品を時系列で。こちらは全て横浜美術館のコレクションです。

冒頭はタローとの共同活動期。先にも触れたスペイン内戦での作品などが紹介されています。また1938年には日中戦争の取材のために中国へも。1943年からは連合国軍に同行し、第二次世界大戦の取材も始めました。


ロバート・キャパ「ノルマンディー海岸、オマハ・ビーチ」1944年6月6日 横浜美術館

強烈なのはノルマンディー上陸作戦時の一枚。「Dデイ、オハマビーチ」です。まさに作戦のさなか、上陸軍の第1陣の船に乗船した彼は、無我夢中、まさに死にものぐるいでかの歴史的修羅場をカメラに収めました。

率先して戦場へと乗り込むフリードマン。それはパリ解放でも同様です。パリ入城へのフランス軍戦車の後を追い、当時フランス人以外は禁じられていたパリ解放の瞬間、凱旋のパレードを写し出しました。(フリードマンはハンガリー人です。)


ロバート・キャパ「東大寺・奈良」1954年4月21日 横浜美術館 他

また展示では戦後、日本に取材した一連のシリーズも。約20日間、東京から熱海、また奈良、大阪などの関西を回った彼は、「桜の花よりも、その下に生きている日本の人々の方が魅力的だ。」と語り、あくまでも一般の人々の暮らし、日常を見つめ続けました。


ロバート・キャパ「ナムディンからタイビンへの道、ヴェトナム」1954年5月25日 横浜美術館

そしてタローと同じく、フリードマンの死も突然です。日本滞在中にインドシナ戦争の取材依頼を受けた彼は一路ベトナムへ。戦地を取材して歩きながらも1954年5月25日、北部ベトナムで地雷を踏んで死亡。僅か40歳で人生の幕を降ろしました。

未だ語り尽くされない二人の「ロバート・キャパ」。迫力ある作品はもとより、その激しくドラマチックな人生にも胸を打たれました。

3月24日まで開催されています。

「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」 横浜美術館
会期:1月26日(土)~3月24日(日)
休館:木曜日。但し1/31は開館。
時間:10:00~18:00(入館は17時半まで)
料金:一般1100(1000)円、大学・高校生700(600)円、中学生400(300)円。小学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体。要事前予約。
 *毎週土曜日は高校生以下無料。
住所:横浜市西区みなとみらい3-4-1
交通:みなとみらい線みなとみらい駅5番出口から徒歩5分。JR線、横浜市営地下鉄線桜木町駅より徒歩約10分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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