ブリヂストン美術館ナイトが開催されました

今年、60周年を迎えたブリヂストン美術館を締めくくるスペシャルイベントとして企画された「ブリヂストン美術館ナイト」。



準備に2週間、告知は僅か1週間ほどしかなかったものの、蓋を開ければ大盛況。ブログ、Twitter、Facebookの各SNSユーザー約100名にお集まりいただきました。

と言うわけで、当日の様子をごく簡単にレポート。まずはホールでのトーク・イベントです。


トークイベント「ブリヂストン美術館開館60周年を振り返って」

ブリヂストン美術館の島田館長のご挨拶、そして司会進行を務めてくださった新畑泰秀学芸課長のお話に続き、第一部として「学芸員対談:ブリヂストン美術館VS三菱一号館美術館」が。

ブリヂストン美術館の賀川さんと三菱一号館美術館の阿佐美さんがご登壇。


第一部「学芸員対談 ブリヂストン美術館VS 三菱一号館美術館」からブリヂストン美術館学芸員の賀川恭子さん

まずはブリヂストンの賀川さんより60周年の展覧会を振り返っていただいた上で、阿佐美さんに三菱一号館の生い立ち、そしてコレクションなどについてお話いただきました。


第一部から三菱一号館美術館学芸員の阿佐美淑子さん

その後はお二人のトーク。三菱一号館の床材のお話やドニの作品が大き過ぎて入らなかったなど、ちょっとした裏話も。ちなみにお二方、そもそもご友人ということで軽妙で気さくなやり取りが続きましたが、規定の時間により終了。もっと突っ込んだお話を聞くために長く時間をとれば良かったかとも思いました。

第二部のセッション、「アートブロガーさんを交えての意見交換会」では、6次元の中村邦夫さん、そしてお馴染み青い日記帳のたけさん、そして不肖私はろるどが壇上へ。


第二部「アートブロガーを交えての意見交換会」からコンスタンティン・ブランクーシ「接吻」(1907-10年)

ここでは新畑さんのお力添えを賜りながら、開催中の「気ままにアートめぐり」から気になる2~3点を挙げていくという趣向。会場の方に挙手を願ったりしながらの進行となりました。

トップバッターは6次元の中村さん。超力作のチャート表「ブリヂストン美術館を10倍楽しむ方法」を元に、現代彫刻と古代彫刻の関係を問いただす鋭いお話が。


「ブリヂストン美術館を10倍楽しむ方法」(荻窪6次元でも無料配布中!)

これがまさに目から鱗。普段、何かと見落としがちな彫刻についての理解が深まります。ジャコメッティなどを引用しながら、現代彫刻がいかに古代エジプトやギリシャを志向しているかということについて語っていただきました。

続いては青い日記帳たけさん。コローとセザンヌの二本だて。


第二部からカミーユ・コロー「イタリアの女」(1826-28年)

「コローを挙げたのは何も三菱の高橋館長がコロー展を企画されたからではないよ(笑)。」との掴みでぐいぐいと「イタリアの女」についてのお話を。

またセザンヌでは「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」を挙げながら、同じシャトー・ノワールを描いた二点の作品をご紹介。


第二部からポール・セザンヌ「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」(1904-10)

このブリヂストン美術館所蔵の作品の特異性、つまりこれだけがサント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワールの両方を描いているということなどについて語って下さいました。

さてラストは私はろるどがカイユボットとザオ=ウーキーを。

カイユボットを引用したのは、もちろんドビュッシーとの関係。実はこのイベント、そもそも6次元で開催したドビュッシー・ナイトから話が膨らんで実現した企画なのです。


第二部からギュスターヴ・カイユボット「ピアノを弾く若い男」(1876年)

しかしながら私は素人。大したお話は出来ませんでしたが、カイユボットの「ピアノを弾く若い男」、ピアノ上に積まれた楽譜集、ドビュッシーの師であるマルモンテルの教則本だということについてお分かりいただけたでしょうか。

また当日、話し忘れてしまいましたが、この楽譜、譜面台のものと同一ではありません。カイユボットの弟がモデルだというピアノを弾く男の口元に注目して下さい。少し開いていることが見て取れるのではないでしょうか。

実はこれ、彼は歌いながら弾いている、つまり譜面は教則本ではなく、歌曲かオペラの一節ではないかということなのです。

カイユボットから弟、そしてピアノ上の楽譜、またマルモンテルを通してドビュッシーへと至る展開。音楽と美術を繋ぐ作品としてお示し出来たのではないかと思っています。


第二部からザオ=ウーキー「07.06.85」(1985年)

最後のザオは駆け足になってしまいましたが、客席でも好きだと言って下さった方が多かったのは嬉しいポイント。

本当はザオとスーラージュが一緒にブリヂストン美術館へ来館したというエピソード、さらにアンフォルメルを通して展示中の白髪一雄や田中敦子といった具体との関係、また作家とも関わりを持つことのできる現代美術の面白さなどをお話したかったのですが、時間の都合で辿りつけませんでした。

少し時間を延長してのトークイベントの後は、特別鑑賞会とカフェでの懇親会へ。


懇親会(一階ティールームにて)

鑑賞会では展示室でギャラリートークも。また参加者と美術館の方との懇親会では終了の20時を過ぎても大勢が残られるほどの盛況となりました。

ブリヂストン美術館では初めてのイベント。幸いにもお手伝いすることが出来ましたが、ご参加下さった皆さん、如何だったでしょうか。次に繋げるためにも忌憚なきご意見を頂戴出来ると嬉しいです。

なおツイッターのハッシュタグ #ブリ美ナイト でイベントの様子を追っかけられます。

それでは改めてイベントに向けての多大な準備をして下さった美術館の方、また当日のスタッフ、そして何よりもご参加いただいた全ての皆さんに感謝申し上げます。本当にありがとうございました。



「気ままにアートめぐり 印象派、エコール・ド・パリと20世紀美術」 ブリヂストン美術館
会期:10月26日(金)~12月24日(月)
時間:10:00~18:00(毎週金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休館:月曜日(ただし7/16 、9/17、10/8は開館)
料金:一般800(600)円、シニア(65歳以上)600(500)円、大学・高校生500(400)円、中学生以下無料。
 *( )内は15名以上の団体割引。
住所:中央区京橋1-10-1
交通:JR線東京駅八重洲中央口徒歩5分。東京メトロ銀座線京橋駅6番出口徒歩5分。東京メトロ銀座線・東西線、都営浅草線日本橋駅B1出口徒歩5分。



「シャルダン展 静寂の巨匠」 三菱一号館美術館
会期:2012年9月8日(土)~2013年1月6日(日)
休館:毎週月曜。祝日の場合は翌火曜休館。(但し12月25日は開館。)年末年始(12/29~1/1)
時間:10:00~18:00(火・土・日・祝)、10:00~20:00(水・木・金)
料金:大人1500円、高校・大学生1000円、小・中学生500円。
 *「アフター6割引」対象日:平日の木曜・金曜 時間:18時~20時 料金:1000円。
住所:千代田区丸の内2-6-2
交通:東京メトロ千代田線二重橋前駅1番出口から徒歩3分。JR東京駅丸の内南口・JR有楽町駅国際フォーラム口から徒歩5分。
コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
美術館ナイト (chariot)
2012-12-04 06:21:32
はろるどさんのお話も面白く、あっという間に時間が過ぎてしまいました。また機会があれば是非お話を伺いたいものです。
 
 
 
当日はドタキャンとなってしまいました (わん太夫)
2012-12-05 14:25:45
ご案内いただき参加の予定でしたが,

当日朝から体調が優れず,

已む無く失礼をしてしまいました。

前日お会いしたときは平気だったのですが・・・・・・


とても盛会のようで何よりでしたね。

次回は是非是非と思っております。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2012-12-09 19:48:10
@chariotさん

こんばんは。先日はご参加下さりありがとうございました。

>お話も面白く

素人の話で本当に恐縮です…ですが、楽しんでいただけたようで何よりでした。

美術館さんのご協力にも感謝感謝です!


@わん太夫さん

こんばんは。

>当日朝から体調が優れず,已む無く失礼をしてしまいました。

何とそうとは存じ上げずに…。お体の具合如何でしょうか。

また是非やりたいですね!
 
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