都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「FACE展2016」 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
「FACE展2016 損保ジャパン日本興亜美術賞展」
2/20-3/27
東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催中の「FACE展2016 損保ジャパン日本興亜美術賞展」を見てきました。
いわゆる公募形式によって現代美術絵画を紹介する「損保ジャパン日本興亜美術賞展」こと「FACE展」。今年で4回目です。
事前に857名の出品作品を審査。6次に渡り入選審査が行われたそうです。結果、71作品が入選。さらに賞審査を経て、グランプリ以下、計9作品が入賞しました。
会場内の撮影が出来ました。
遠藤美香「水仙」 2015年 木版画 グランプリ
栄えあるグランプリに輝いたのは遠藤美香です。作品は「水仙」。生い茂る水仙の中を歩く女性を後ろから捉えています。画面はモノトーン。水仙は密です。見渡す彼方まで葉も花が群生しています。女性はワンピースを着ているのでしょうか。柄物の洋服です。ちょうどお尻の辺りを両手で抱えています。濡れないようにしているのでしょうか。完全なる後ろ姿です。顔の表情は一切伺えません。
遠目ではペンか何かのタブローに見えましたが、近づくと感触が違うことに気づきました。木版です。細かに彫りを入れては衣服なり水仙を象っています。緻密です。そこに作品の魅力が詰まっていると言えるかもしれません。
三鑰彩音「曖昧」 2015年 岩絵具・箔・麻紙 優秀賞
優秀賞は3点。うち三鑰彩音の「曖昧」に惹かれました。モデルは若い女性、やや伏し目がちです。こめかみの辺りに両手を当てています。よく見るとネイルは金色、ヘアバンドも同様に金色でした。素材は岩絵具に箔。つまりは金箔を貼っているのでしょう。
印象深いのは大きく左右に垂らした髪の毛です。と言うのもご覧の通りに赤やオレンジ、さらに緑色の模様と化しています。一部はひし形。いわば装飾的です。さらに目をこらすと腕の肌色が透けていることに気がつきました。繊細な筆触です。口元も瑞々しい。日本画の質感を巧みに引き出しています。
青木恵美子「おおいつくすように」 2015年 アクリル・油彩・パステル・キャンバス
作品はいずれも平面ですが、何も具象だけに留まりません。例えば青木恵美子の「おおいつくすように」です。アクリルに油彩の一枚、深い群青が一面に広がり、下部には素早い筆致で黄色、緑、ないし白や赤などの色面が連なっています。右から左へ流れ出すような動きを感じたのは私だけでしょうか。光の軌跡。時折、飛び跳ねるように色が上へ掠れてもいます。鮮やかな色彩が目に染みました。
井澤由花子「スプーンの中の夢」 2015年 水彩・紙 審査員特別賞
色彩美といえば井澤由花子の「スプーンの中の夢」も同様かもしれません。鬱蒼とした草木のモチーフ。右側に幹のような面が見えますが、天地は判然とせず、全てが色彩の渦に飲み込まれるように描かれています。素材は水彩です。それゆえの透明感。筆触が断片的なのも面白いところです。
絵の端に裸の小さな子供が描かれていることに気づきました。この広がる森は彼ないし彼女の夢の表れなのでしょうか。どこか幻想的な世界を表しています。
左:中山紘樹「Danchi Mode」 2015年 油彩・パネル
何気ない日常の光景を絵画へ落とし込んだのが中山紘樹です。その名も「Danchi Mode」。ずばり団地です。部屋が整然と並ぶ団地を真正面から描いています。おそらく晴れの日なのでしょう。たくさんの洗濯物が干してあります。生活の気配も立ち上がってきました。
無機的なものの中の暮らし。建物の汚れなど、細部の筆も細かい。やや厚塗りです。スペインのリアリズム絵画を連想させる面もありました。
いわゆる「新進作家の登竜門」(パネルより)として位置付けられる「FACE展」ですが、作品の出展にあたり、年齢の制限が一切ないのも特徴です。入選者も20代から80代までと幅広い。また会場内には作品の解説があるわけでもありません。なんら先入観もなく作品の前に立ち、お気に入りの一枚を探して歩くのも面白いのではないでしょうか。
小川直樹「彷徨」 2015年 油彩・キャンバス 審査員特別賞
そのお気に入りといえばオーディエンス賞です。会期中、終日で投票受付中。一人一票で「あなたの選ぶこの一点」を挙げることが出来ます。投票用紙は受付でいただけます。
秋山淳「降り積もるもの」 2015年 日本画・麻紙 審査員特別賞
色々迷いましたが、私は審査員特別賞を受賞した秋山淳の「降り積もるもの」に入れました。集計結果は会期終了後に同館WEBサイト上で発表されるそうです。そちらにも期待しましょう。
「FACE展2016」会場風景
3月27日まで開催されています。
「FACE展2016 損保ジャパン日本興亜美術賞展」 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
会期:2月20日(土)~3月27日(日)
休館:月曜日。但し3月21日は開館、翌22日も開館
時間:10:00~18:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般600(500)円、大学・高校生400(300)円、中学生以下無料。
*( )は20名以上の団体料金。
住所:新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン日本興亜本社ビル42階
交通:JR線新宿駅西口、東京メトロ丸ノ内線新宿駅・西新宿駅、都営大江戸線新宿西口駅より徒歩5分。
「FACE展2016 損保ジャパン日本興亜美術賞展」
2/20-3/27
東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催中の「FACE展2016 損保ジャパン日本興亜美術賞展」を見てきました。
いわゆる公募形式によって現代美術絵画を紹介する「損保ジャパン日本興亜美術賞展」こと「FACE展」。今年で4回目です。
事前に857名の出品作品を審査。6次に渡り入選審査が行われたそうです。結果、71作品が入選。さらに賞審査を経て、グランプリ以下、計9作品が入賞しました。
会場内の撮影が出来ました。
遠藤美香「水仙」 2015年 木版画 グランプリ
栄えあるグランプリに輝いたのは遠藤美香です。作品は「水仙」。生い茂る水仙の中を歩く女性を後ろから捉えています。画面はモノトーン。水仙は密です。見渡す彼方まで葉も花が群生しています。女性はワンピースを着ているのでしょうか。柄物の洋服です。ちょうどお尻の辺りを両手で抱えています。濡れないようにしているのでしょうか。完全なる後ろ姿です。顔の表情は一切伺えません。
遠目ではペンか何かのタブローに見えましたが、近づくと感触が違うことに気づきました。木版です。細かに彫りを入れては衣服なり水仙を象っています。緻密です。そこに作品の魅力が詰まっていると言えるかもしれません。
三鑰彩音「曖昧」 2015年 岩絵具・箔・麻紙 優秀賞
優秀賞は3点。うち三鑰彩音の「曖昧」に惹かれました。モデルは若い女性、やや伏し目がちです。こめかみの辺りに両手を当てています。よく見るとネイルは金色、ヘアバンドも同様に金色でした。素材は岩絵具に箔。つまりは金箔を貼っているのでしょう。
印象深いのは大きく左右に垂らした髪の毛です。と言うのもご覧の通りに赤やオレンジ、さらに緑色の模様と化しています。一部はひし形。いわば装飾的です。さらに目をこらすと腕の肌色が透けていることに気がつきました。繊細な筆触です。口元も瑞々しい。日本画の質感を巧みに引き出しています。
青木恵美子「おおいつくすように」 2015年 アクリル・油彩・パステル・キャンバス
作品はいずれも平面ですが、何も具象だけに留まりません。例えば青木恵美子の「おおいつくすように」です。アクリルに油彩の一枚、深い群青が一面に広がり、下部には素早い筆致で黄色、緑、ないし白や赤などの色面が連なっています。右から左へ流れ出すような動きを感じたのは私だけでしょうか。光の軌跡。時折、飛び跳ねるように色が上へ掠れてもいます。鮮やかな色彩が目に染みました。
井澤由花子「スプーンの中の夢」 2015年 水彩・紙 審査員特別賞
色彩美といえば井澤由花子の「スプーンの中の夢」も同様かもしれません。鬱蒼とした草木のモチーフ。右側に幹のような面が見えますが、天地は判然とせず、全てが色彩の渦に飲み込まれるように描かれています。素材は水彩です。それゆえの透明感。筆触が断片的なのも面白いところです。
絵の端に裸の小さな子供が描かれていることに気づきました。この広がる森は彼ないし彼女の夢の表れなのでしょうか。どこか幻想的な世界を表しています。
左:中山紘樹「Danchi Mode」 2015年 油彩・パネル
何気ない日常の光景を絵画へ落とし込んだのが中山紘樹です。その名も「Danchi Mode」。ずばり団地です。部屋が整然と並ぶ団地を真正面から描いています。おそらく晴れの日なのでしょう。たくさんの洗濯物が干してあります。生活の気配も立ち上がってきました。
無機的なものの中の暮らし。建物の汚れなど、細部の筆も細かい。やや厚塗りです。スペインのリアリズム絵画を連想させる面もありました。
いわゆる「新進作家の登竜門」(パネルより)として位置付けられる「FACE展」ですが、作品の出展にあたり、年齢の制限が一切ないのも特徴です。入選者も20代から80代までと幅広い。また会場内には作品の解説があるわけでもありません。なんら先入観もなく作品の前に立ち、お気に入りの一枚を探して歩くのも面白いのではないでしょうか。
小川直樹「彷徨」 2015年 油彩・キャンバス 審査員特別賞
そのお気に入りといえばオーディエンス賞です。会期中、終日で投票受付中。一人一票で「あなたの選ぶこの一点」を挙げることが出来ます。投票用紙は受付でいただけます。
秋山淳「降り積もるもの」 2015年 日本画・麻紙 審査員特別賞
色々迷いましたが、私は審査員特別賞を受賞した秋山淳の「降り積もるもの」に入れました。集計結果は会期終了後に同館WEBサイト上で発表されるそうです。そちらにも期待しましょう。
「FACE展2016」会場風景
3月27日まで開催されています。
「FACE展2016 損保ジャパン日本興亜美術賞展」 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
会期:2月20日(土)~3月27日(日)
休館:月曜日。但し3月21日は開館、翌22日も開館
時間:10:00~18:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般600(500)円、大学・高校生400(300)円、中学生以下無料。
*( )は20名以上の団体料金。
住所:新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン日本興亜本社ビル42階
交通:JR線新宿駅西口、東京メトロ丸ノ内線新宿駅・西新宿駅、都営大江戸線新宿西口駅より徒歩5分。
コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )
« 「原田直次郎... | 「没後100年 ... » |
こんばんは。フロアでコンサートもあったのですね。オーディエンスは小川直樹さんに決まったそうです。私の入れた秋山さんは9位でした。
http://www.sjnk-museum.org/wp/wp-content/uploads/2016/04/face2016_adaward.pdf
>フェイス展と言う名前からか人物の顔、若い女性の顔の表現が印象的
確かに顔を描いた作品が印象深かったですよね。
女性のモチーフ、ないし女性の作家の方に力作も目立ちました。
最後のゴッホも何度もみながら、ついつい足が止まってしまいます。
こんばんは。コメントありがとうございます。
2018年展は見そびれてしまいました。
>会場に親子連れの姿も見られて展望台ロビーからのパノラマ風景に驚喜しています。バベルの塔に登った様な気分の新宿高層街の遠望は此の施設の一番の人気かも知れません…。
そうですよね。確かに東京でも景色の良い美術館ですよね。
晴れている日は房総の方まで眺められます。