「アーウィン・ブルーメンフェルド展」 東京都写真美術館

東京都写真美術館
「アーウィン・ブルーメンフェルド 美の秘密」
3/5-5/6



東京都写真美術館で開催中の「アーウィン・ブルーメンフェルド」展へ行ってきました。

世界を代表するファッション詩、「ヴォーグ」や「ハーパース・バザー」などで活動した写真家、アーウィン・ブルーメンフェルド。(1897-1969)ファッションも写真にも疎い私にとっては未知の存在。失礼ながらも事前にさほど関心もわかず、展示に行くのも遅れていました。

しかしながらこれぞ展覧会巡りの醍醐味。また一人、忘れられない写真家に出会ったような気がします。


「アメリカ版『ヴォーグ』1949年11月1日号のヴァリエーション」1953年

さて改めて簡単におさらいを。一体、ブルーメンフェルドとは何者なのか。

生まれはドイツのベルリン。ユダヤ人です。10歳でカメラを始め、第一次世界大戦ではドイツ軍に徴兵。戦後に亡命し、アムステルダムでマン・レイらと一緒にタダイストとして活動。パリへ移るも敵国人として収容所に抑留。そしてアメリカはニューヨークへ。1949年にはアメリカに帰化します。

シュールレアリスムやコラージュの技法を取り込んで、ファッション誌を言わばアートとして認知させるとともに、「最も高い撮影料をとる写真家」とまで呼ばれるまでに活躍。商業的にも成功を収めました。

と言うわけで、展示では1940年代の「ヴォーグ」や「コスモポリタン」などのファッション誌の表紙を飾った作品がずらり。単に美しきモデルを捉えたにとどまらない、時に実験的、また前衛的とも呼べる写真が並んでいます。

さてブルーメンフェルドの魅力、私の拙い言葉ではうまく伝わらないかもしれませんが、ともかく鮮やかな色に、何よりも巧みな構図のセンスを挙げることが出来るのではないでしょうか。


「ダナ・パルファムの広告」1950年頃 東京都写真美術館

例えばこの「ダナ・パルファムの広告」、一目見ても上手いと唸らされるもの。他にも多重露光を用いたり、モデルを模様ガラスや水面に落とし込むなどして、華やかで美しくありながらも、非常に洗練。コンセプチャルな作品を展開しています。


「無題(濡れた絹をまとうヌード」1937年 東京都写真美術館

またヌードを多く撮影していますが、それらは官能というよりも、ギリシャやローマの彫刻のような造形的美感に秀でているのもポイント。それこそ優れたトルソー。人の肉体とはかくも美しいのかと驚かされるような作品ばかりです。

そして時にモデルをエッフェル塔の上に立たせて撮影するなどの試みも。ヒトラーに骸骨をコラージュした強いメッセージ性を持つ作品もいくつか。ファシストに対しては明確なノーを突きつけています。またオフィーリアやヴァニタスを思わせるようなものも。ファッションの枠を超えて広がる一表現者としての才能をこれでもかというほど見せつけられます。


「アメリカ版『ヴォーグ』1950年1月号表紙『無垢の目』」 東京都写真美術館

ラストはブルーメンフェルド自身が「私のベスト写真」として選んだプリントが。また自叙伝や家族写真などもあり、彼の制作の背景にある時代や精神なども浮かび上がります。

遺族による1930年代のヴィンテージも含む、全200点もの作品で辿るブルーメンフェルドの世界。誤解を恐れずにいえば、これこそ実にクール。国内初の大規模な回顧展です。何気なく出向いた展示でしたが、まさかこれほど惹かれるとは思いませんでした。

「Erwin Blumenfeld: Studio Blumenfeld/Steidl Publishing」

5月6日までの開催です。これはおすすめします。

「アーウィン・ブルーメンフェルド 美の秘密」 東京都写真美術館
会期:3月5日 (火) ~5月6日 (月・祝)
休館:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日休館。)*4月30日(火)は臨時開館。
時間:10:00~18:00 *毎週木・金曜日は20時まで。(入館は閉館の30分前まで。)
料金:一般800円(340円)、学生700円(560円)、中高生・65歳以上600円(480円)
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *第3水曜日は65歳以上無料。
住所:目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
交通:JR線恵比寿駅東口改札より徒歩8分。東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩10分。
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