「ここから4―障害・表現・共生を考える5日間」 国立新美術館

国立新美術館
「ここから4―障害・表現・共生を考える5日間」
2019/12/4~12/8



国立新美術館で開催中の「ここから4―障害・表現・共生を考える5日間」の報道内覧会に参加してきました。

2016年に「アート・デザイン・障害を考える3日間」と題してスタートした「ここから」展は、以来、障害と表現や文化のあり方を模索すべく回を重ね、今年で第4回を数えるに至りました。

今回は「障害・表現・共生を考える5日間」とタイトルを変え、障害の有無を問わず、約20組の作家が、アート、デザイン、マンガ、アニメーションなどの作品を出展していました。


山城大督「佐藤初女|2014年9月30日」 2014年

冒頭の山城大督による映像、「佐藤初女|2014年9月30日」からして興味を引かれました。福祉活動家の佐藤初女のドキュメンタリーで、佐藤が悩みを抱えた人を受け入れるべく、青森県岩木山の麓にて開設した施設、「森のイスキア」での様子をフィルムに収めていました。佐藤は同地へ人を招き、食事を提供し、対話して悩みに向き合いながら、いわゆる癒しの場を提供してきました。2016年に94歳にて亡くなられたそうです。


「ヌイ・プロジェクト」 展示風景 所属:しょうぶ学園

鹿児島のしょうぶ学園の「ヌイ・プロジェクト」のシャツも鮮やかでした。いずれも既成のシャツを土台に、参加者が針一本で自由に糸目を築き上げていて、一つとして同じものはないオリジナルな衣服を表現していました。


MATHRAX(久世祥三+坂本茉里子)「いしのこえ Voice of the stone」 2016年

久世祥三+坂本茉里子のMATHRAXによるハンズオン型の「いしのこえ Voice of the stone」も目ならぬ耳を引く作品でした。テーブルの上には海岸から拾われた石が置かれ、指で直に触れると音が奏でられるように作られていました。あたかも石の声を聞きつつ、世界や自然との繋がりを感じられるような作品と言えるかもしれません。


鵜飼結一朗「妖怪」(部分) 2019年

鵜飼結一朗の「妖怪」に強く魅せられました。横長のボール紙へマーカーペンや色鉛筆にて、まるで平安や鎌倉の武士や貴族などを極めて密に描いていて、動物や妖怪、それにアニメのキャラクターが折り重なるなど、古来から現代がない混ぜになった絵巻のようでした。


鵜飼結一朗「妖怪」(部分) 2019年

ともかく無数の人や動物、妖怪、はたまたロボットが映像のごとく流れるように展開していて、一大スペクタクルを目の当たりにしたかのようでした。筆の力自体はもとより、相当に迫力のある作品ではないでしょうか。


いがらしみきお+渡邊淳司+東京藝術大学芸術情報センター「ふれる・感じる・4コママンガ『ぼのぼの』」 2019年

いがらしみきお+渡邊淳司+東京藝術大学芸術情報センターの「ふれる・感じる・4コママンガ『ぼのぼの』」は、マンガを触れて読めるようにした半立体の作品で、点字だけでなく、実際にセリフやキャラクターが浮き上がっているなど、手作り感のある仕様も温かみを覚えました。


BEAMS×KOBO-SYU 展示風景

埼玉のKOBO-SYUとセレクトショップBEAMSのコラボグッズも魅惑的でした。KOBO-SYUに属するアーティストの作品から、シャツや革小物、ショートパンツやドレスなどの製品を手掛けていて、佐々木華枝と佐々木省伍のデザインを用いたシャツが展示されていました。


佐々木省伍「あじさい」 2002年 他

また佐々木華枝と佐々木省伍の原画も合わせて紹介されていて、シャツと見比べることも可能でした。可愛らしいキャラクターを思わせるデザインや、植物のモチーフを色彩豊かに抽象化させたようなパターンなど、シャツに限らず、多様なファッションへと展開することが出来るかもしれません。


押見修造「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」 2011-2012年

この他、言葉にうまく発せない病気に悩む少女を主人公とした、漫画家の押見修造による「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」の原画やパネル展示も目を引きました。


「ここから4―障害・表現・共生を考える5日間」 会場風景

チラシ表紙に「ごちゃまぜランド」とありましたが、障害を問わず、多様に創造しようとする表現者のチャレンジングなまでの取り組みを知ることが出来ました。


「サマイクルのイムーコンルカタ」

なお会場では関連企画として「アイヌ文化にふれる」も行われていました。ここでは2020年に北海道の白老町にオープンする国立アイヌ民族博物館を中心とした「ウポポイ」が紹介されるとともに、アイヌの神話や言葉遊びをアニメ化した映像などが公開されていました。一番奥のスペースだけにあまり目立っていませんでしたが、アニメが思いの外に面白く感じました。あわせて見逃しなきようにご注意下さい。


会期が僅か5日間と短いのが難点ですが、今週末、ブダペスト展やカルティエ展へお出かけの際に観覧するのも良いのではないでしょうか。また金曜、土曜は夜8時まで夜間開館します。



入場は無料です。12月8日まで開催されています。

「ここから4―障害・表現・共生を考える5日間」@kokokara_bunka) 国立新美術館@NACT_PR
会期:2019年12月4日(水)~12月8日(日)
休館:火曜日。
時間:10:00~18:00
 *12月6日(金)、7日(土)は20時まで。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:無料。
住所:港区六本木7-22-2
交通:東京メトロ千代田線乃木坂駅出口6より直結。都営大江戸線六本木駅7出口から徒歩4分。東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口から徒歩5分。

注)写真は報道鑑賞会の際に主催者の許可を得て撮影しました。
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