「第11回 shiseido art egg 吉田志穂展」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「第11回 shiseido art egg 吉田志穂展」
6/2~6/25



資生堂ギャラリーで開催中の「第11回 shiseido art egg 吉田志穂展」を見てきました。

新進アーティストの活動を公募の形で紹介する資生堂アートエッグも、今年で第11回を数えるに至りました。

今回の応募総数は全279件でした。うち専門家による審査により、3名のアーティストが入選しました。

各アーティストは、それぞれ約1ヶ月間、個展形式で作品を発表します。その第一弾です。写真の吉田志穂の展示がはじまりました。



地下の展示室に一歩踏み入れて驚きました。さも行く手を遮るかのように大きなスライドが広がっています。写し出されたのは風景、木々に覆われた山の姿でした。そしてその先には写真が床面に半ば散乱しています。一部はフレームにも入っていません。



壁際の写真も支持台から少しずれて設置されています。整然と並ぶ姿はどこにも見られません。否応なしに視点が、上下、時に左右に揺さぶられました。写真はホワイトキューブの中に偏在し、各々が緩やかに関係しているようにも見えます。確かに全体が「ギャラリーの中に溶け」(解説より)合っているようでした。



手法が独特です。と言うのも撮影前にネット上で画像検索。Googleマップを利用しているのかもしれません。まず地図や航空写真で撮影地を探し出します。次いで吉田が検索結果の場所へ自ら足を運びます。もちろんネット上で見た光景とは違う場合もあるのでしょう。そして現地で風景を撮影。結果生まれた「オリジナルのイメージとWEB上のイメージを取り混ぜ」(公式サイト)て展示しているわけです。



吉田は撮影に際してフィルムカメラを使用しています。また撮影、現像、プリントのプロセスに「実験」(解説より)的なアプローチを加えているそうです。それゆえでしょうか。いわゆるコラージュのようにも見えました。写真のイメージがオリジナルなのか、そうでないのかを、俄かに判断することは出来ません。

面白いのが「砂の下の鯨」と題した作品でした。砂とは海岸線の浜です。吉田自身が生まれ育ち、何度か撮影したという地点でもあります。では「砂の下の鯨」とは一体、何を意味するのでしょうか。



それは鯨の座礁でした。ある日、砂浜に打ち上げられた鯨は、骨格標本にするため地中に埋められます。地下3メートルほどの地点でした。その出来事を知った吉田は現地へ出向きます。ネット検索で得た航空写真の地点、すなわち鯨の埋められた場所には、砂紋が出来ていたそうです。「皮膚のように見えた」(解説より)とも語っています。そして光景をフィルムに収めました。



会場では展示台に砂を敷いて鯨の姿を写し出しています。確かに鯨が浮かび上がっているようにも見えなくありません。と同時に、細かな砂紋が散る姿は、モノクロームの効果もあってか、まるで宇宙で輝く銀河を捉えたかのようでもあります。煌めき、また美しい。様々なイメージが浮かび上がってきました。



空間を効果的に活かし、インスタレーションとしても魅せる展覧会です。会場を行き来しては見入りました。

[第11回 shiseido art egg 展示スケジュール]
吉田志穂展 6月2日(金)~6月25日(日)
沖潤子展 6月30日(金) ~7月23日(日)
菅亮平展 7月28日(金) ~8月20日(日)


6月25日まで開催されています。

「第11回 shiseido art egg 吉田志穂展」 資生堂ギャラリー@ShiseidoGallery
会期:6月2日(金)~6月25日(日)
休廊:月曜日。
料金:無料
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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