「アート&テクノロジーの過去と未来」 ICC 12/25

NTTインターコミュニケーションセンター(新宿区西新宿)
「アート&テクノロジーの過去と未来」
10/21~12/25

初台のICCにて開催されていた、「アート&テクノロジーの過去と未来」展へ行ってきました。会期終了日の駆け込みです。

日本の戦後60年間の、「テクノロジー」を使った実験的なアートを概観し、さらに未来へとつなげるこの展覧会。ビデオ・アートやライト、サウンド・アートなど、ともかく多種多様なメディア・アートを、適度な作品数で見せてくれます。

会場に入った途端、「ジリリリ~!」とけたたましく鳴り響くベルの音が耳へ飛び込んできますが、これは田中敦子の、ズバリ「ベル」(1955/2005年)という作品です。作品のスイッチを入れると、エントランスから展示室へ至る階段に置かれたたくさんのベルが、時間差で鳴り渡ると言う仕掛け。見所はベルそのものよりも、ベルを時間差で鳴らさせる仕掛けの機械(スイッチ部分)の方かもしれません。ともかく来場者の方の殆どが、このベルを鳴らします。常に「ジリジリ…、ジリリリ…。」少し煩く感じてしまうほどです。

さて、この展覧会にて真っ先に興味の惹かれた作品は、佐藤慶次郎の「岐阜ススキ群'99」(1999年)でした。高さ2メートルほどの細い長い金属の棒。それがまるで林のようにたくさん並んで、常に振動し続けています。そして、それぞれの棒にくっ付いているのは、小さな金属製のボールです。それが、棒の振動に合わせてひたすら上下に動く。このボールの単純な上下動が、湧き上がる生命の息吹とも言えるような、とても不思議な美的な印象を与えてくれます。また、振動によって、付随する物体を動かすという仕組みは、「オテダマ」(1974年)も同様です。ちょうど、「岐阜ススキ群」のミニチュア版と言っても良いでしょう。20センチ前後の金属の小さな無数の棒を、それこそお手玉のように上下し続ける小さな小さな玉。ポンポンと気持ち良さそうに跳ねています。振動と磁気を利用した佐藤の作品。この躍動感のある動きは魅力です。

三上晴子+市川創太の大規模なインスタレーション、「グラヴィセルズ-重力と抵抗」(2004年)もかなり楽しめます。まさに、「重力の視覚化」と呼んでも良い作品でしょうか。展示室の丸一室分、全て使われた広い空間において、鑑賞者一人一人の重みが、ダイレクトに、目に見える形で映像化されます。前方のスクリーンに映るのは、重量の曲線グラフです。ドンと床を跳ねてみると、その分、大きく反応してくれるスクリーン状のグラフ。それが青や白の無機質な映像によって、美しく表現されます。自らの重さを、バーチャルな形で見せる試み。悪くありません。

最後に、この展覧会で最も興味深かった作品は、岩井俊雄の「時間層2」(1985年)でした。小さな箱庭のような装置の中にいるのは、10センチほどの、ペラペラの人形の模型です。この人形たち、皆高速にて回転する円盤に載せられて、上からはモニターならぬストロボが、目まぐるしく色を変えながら照射されます。また、音楽に合わせながら表情を変えて行く人形は、数えきれないほど多く、まさに群衆のようにうごめいています。それに、ストロボによって巧みに変化させられる人形の影は、まるで影絵のようです。そして、それが非常に優れた形で映像的な効果をもたらす。装置そのものは、おそらくそう凝ったものではないと思いますが、人形と回転盤、それにストロボ照射にて、これほど立体的な映像を見せてくれるとは驚きでした。

「アート&テクノロジーの過去と未来」というタイトルではありますが、どちらかと言えば、初めにも書いたように、戦後日本の技術的、または実験的アートの概観、つまりベクトルが過去へと向いた展覧会だったと思います。小難しい説明云々以前に、ともかくまずは見て触って楽しめる作品が目立ちます。コンパクトにまとめられた、肩肘の張らない好企画でした。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (DADA.)
2005-12-28 00:19:26
こんばんは、久々にニアミスったみたいですね(笑)。



この展示、面白かったですよね!

佐藤慶次郎の金属の半球に触れて音を出す楽器、これを何とかものにしようと必死になりましたがなかなか難しかったです。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2005-12-28 23:45:19
DADA.さん、こんばんは。



ニアミスでしたか!

それならご一緒すれば良かったですね。

(五目並べでも如何でしょう…。)



佐藤慶次郎の作品は特に魅力的に見えました。

金属の半球。私も何回もやりました。

中には器用に「音楽」を創る方もいらっしゃって…。

面白かったです。
 
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