都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「竹内栖鳳と京都画壇」 講談社野間記念館
講談社野間記念館(文京区関口2-11-30)
「竹内栖鳳と京都画壇」
5/24-7/21
竹内栖鳳から上村松園、松篁、徳岡神泉、それに堂本印象までの京都画壇を概観します。講談社野間記念館で開催中の「竹内栖鳳と京都画壇」へ行ってきました。
展示冒頭、栖鳳の二点、「兎」と「犬」の小品からして、彼の稀な画力を伺い知れることが出来るというものです。艶やかな迷いのない線が動物を象り、そこへたらし込みも巧みな絵具が仄かに配されています。また絵具の透明感という点においては「古城」も絶品です。これは千代田城、つまりは現在の皇居の石垣を描いた作品ですが、豊かな枝振りを見せる大きな松はもちろんのこと、濠に溜まった水における繊細なタッチの美しさはもはや言葉になりません。栖鳳はこの風景を好み、例えば以前、泉屋博古館で見た「禁城松翠」のような似た構図の作品も手がけていますが、そちらがうっすらと黄金色を帯びた秋の夕景としたら、こちらは鮮やかな光の差し込む今の時候、まさに夏の真昼を描いたものではないでしょうか。見事でした。
今回の展示のハイライトを挙げるとしたら、計9種、つまりは伊藤小坡、上村松園、松篁、そして山口華楊、福田平八郎、堂本印象、徳岡神泉、榊原紫峰、西村五雲による「十二ヶ月図」の響宴にあります。一年の情景を、十二枚の色紙に描くというこの一連の作品は、ある程度の型が定まっているだけ、各々の絵師の特徴が現れやすいとも言えるのではないでしょうか。もちろん一番惹かれるのは、お馴染みの松園の「十二ヶ月図」です。「一月、手まり」における、金地へ毬を包み込んだ白い布が透き通る様子はもちろん、「二月、観梅」のひょいと梅を見やる女性の所作、または「七月、盆踊」での扇子を大きく振り上げた躍動感など、静物、もしくは女性のどちらを描いても対象を的確に捉える松園の魅力が存分に楽しむことが出来ました。また松園では「塩汲ノ図」も印象に残ります。これと色違いの作品を大丸の水野美術館コレクション展で見ましたが、やはりこの虚ろな女性の表情はどこか鬼気迫っています。特異です。
同記念館へは初めて行きました。江戸川橋からの思わぬ坂道に難儀しましたが、庭の芝生も眩しい清潔感のある空間にて気分良く日本画に浸ることが出来ます。また特典のスタンプカードもなかなか太っ腹です。そう頻繁に展示替えをしているわけでもなさそうですが、二度通えばその次が無料というのは、あまり他では聞いたことがありません。
タイトルに栖鳳とある割には彼の作品がやや少ないようにも思えましたが、上記、各絵師による「十二ヶ月」など、見所の多い展覧会であるのは事実です。三連休の最終日、21日の月曜日まで開催されています。
「竹内栖鳳と京都画壇」
5/24-7/21
竹内栖鳳から上村松園、松篁、徳岡神泉、それに堂本印象までの京都画壇を概観します。講談社野間記念館で開催中の「竹内栖鳳と京都画壇」へ行ってきました。
展示冒頭、栖鳳の二点、「兎」と「犬」の小品からして、彼の稀な画力を伺い知れることが出来るというものです。艶やかな迷いのない線が動物を象り、そこへたらし込みも巧みな絵具が仄かに配されています。また絵具の透明感という点においては「古城」も絶品です。これは千代田城、つまりは現在の皇居の石垣を描いた作品ですが、豊かな枝振りを見せる大きな松はもちろんのこと、濠に溜まった水における繊細なタッチの美しさはもはや言葉になりません。栖鳳はこの風景を好み、例えば以前、泉屋博古館で見た「禁城松翠」のような似た構図の作品も手がけていますが、そちらがうっすらと黄金色を帯びた秋の夕景としたら、こちらは鮮やかな光の差し込む今の時候、まさに夏の真昼を描いたものではないでしょうか。見事でした。
今回の展示のハイライトを挙げるとしたら、計9種、つまりは伊藤小坡、上村松園、松篁、そして山口華楊、福田平八郎、堂本印象、徳岡神泉、榊原紫峰、西村五雲による「十二ヶ月図」の響宴にあります。一年の情景を、十二枚の色紙に描くというこの一連の作品は、ある程度の型が定まっているだけ、各々の絵師の特徴が現れやすいとも言えるのではないでしょうか。もちろん一番惹かれるのは、お馴染みの松園の「十二ヶ月図」です。「一月、手まり」における、金地へ毬を包み込んだ白い布が透き通る様子はもちろん、「二月、観梅」のひょいと梅を見やる女性の所作、または「七月、盆踊」での扇子を大きく振り上げた躍動感など、静物、もしくは女性のどちらを描いても対象を的確に捉える松園の魅力が存分に楽しむことが出来ました。また松園では「塩汲ノ図」も印象に残ります。これと色違いの作品を大丸の水野美術館コレクション展で見ましたが、やはりこの虚ろな女性の表情はどこか鬼気迫っています。特異です。
同記念館へは初めて行きました。江戸川橋からの思わぬ坂道に難儀しましたが、庭の芝生も眩しい清潔感のある空間にて気分良く日本画に浸ることが出来ます。また特典のスタンプカードもなかなか太っ腹です。そう頻繁に展示替えをしているわけでもなさそうですが、二度通えばその次が無料というのは、あまり他では聞いたことがありません。
タイトルに栖鳳とある割には彼の作品がやや少ないようにも思えましたが、上記、各絵師による「十二ヶ月」など、見所の多い展覧会であるのは事実です。三連休の最終日、21日の月曜日まで開催されています。
コメント ( 12 ) | Trackback ( 0 )
« 「The show mu... | 「日本画満開... » |
本当に、こじんまりとした空間の割に、内容の濃い展覧会でした。
夏は日本画に限ると思わせるような内容で、清々しい気持ちになりますね。
それから改装して、展示室も広くなりミュージアムショップもできて新装開店ですか。
はろるどさんの眼にはこの美術館どう映りましたか?
一昔前のここは美術館という雰囲気そのものがなかった。
皆さんの感想を聞いて評価が高いようなら僕も行ってみようかなー。
>こじんまりとした空間の割に、内容の濃い展覧会
仰る通りですね。
野間コレクションの日本画はノーチェックだったので、
これからはしっかり追っかけていきたいです。
それにしても500円+スタンプカードは良心的ですよね。
日本画を心地良くのんびりと楽しめる、東京では稀な美術館だと思います。
>はろるどさんの眼にはこの美術館どう映りましたか?
昔のことは分からないので何とも申せませんが、
私が先日出向いた限りではとても良い美術館だと思いました。
受付のご対応も親切でしたね。ミュージアムショップ、それにお庭の景色も雰囲気があります。
もちろん狭いので展示の量こそ望めませんが、
失礼かもしれませんが今の山種などよりははるかに心地良く日本画を見る事が出来る場所だと思いました。okiさんのご講評を是非お聞きしたいところです。
はろるどさんも野間を楽しまれましたか。
わたしは野間がとても好きなんです。
開館以来常に通っていて、友の会が発足したら入ろうと思っていたくらいです。
野間コレクションは本当に質が高くて、近代日本画を楽しめるいい美術館です。
それとわたしは戦前の挿絵全般のファンなので、そちらもとても楽しんでます。
江戸川橋からはしんどい坂道ですが、途中にセキグチパンがありますので、お勧めします。
それとわたしは野間と永青文庫とを同じコースにすることが多いです。
あと実は早稲田からのルートもあります。
どっちみち坂ですが。
>わたしは野間がとても好きなんです。
やはり遊行さんも!開館以来とはご常連ですね。私は初めてでしたが、まさかあれほどの良作が揃っているとは知りませんでした。それに挿絵なども所蔵しておりましたか。今回は小品の十二ヶ月図が揃っていて壮観でしたが、その辺もまた見られると嬉しいなと思います。
>途中にセキグチパンがあります
大通りの方に面しているのですね。実は今回は裏手の細い道路の方から坂をあがってしまったので気が付きませんでしたが、次回は是非試してみたいと思います。(セキグチパンで検索したら遊行さんのブログがヒットしました!ポテトグラタンパン、食べてみます!)
>野間と永青文庫とを同じコース
memeさんもそう記事に書かれていらっしゃいました。
今回は下調べが甘かったので、次回は野間、永青、そしてセキグチパンのコースで歩いてみたいと思います。
山種の様な感じと思って行っても大丈夫でしょうか?
それにしても、あの永青文庫の先にある階段を登ったのですか?!
気持ちよい場所ですが…下るに限りますね(泣)
野間や永青文庫には、目白駅からのバスを使っています。
永青の白隠もナカナカでした。
>山種の様な感じと思って行っても大丈夫
展示スペースは山種と同等程度かもしれませんが、
美術館の雰囲気という点では断然野間の方が上です。
山種はオフィスビルの一階ロビーのような場所で無機質ですが、
野間はお庭もあって趣があります。是非!
>永青文庫の先にある階段を登った
階段は使わなかったのですが、駅からの坂道をあがりました。
今度はバスにします。
あそこまで行きながら、永青をチェックしてしなかったことが今更ながらに悔やまれます。
ここはセットで見るべきでしたね。白隠も気になるので是非行ってみたいです。
手法を摂取して熱心なのには感心させられます。絵画世界で世界水準を意識したとも見られます。
こんばんは。今年も同じ企画があったのですね。確かに挿画類が充実していましたよね。
野間記念館、割と京都画壇の展示が多いのも嬉しいです。
また久々に行こうと思います。