「ヴィジェ・ルブラン展 - 華麗なる宮廷を描いた女性画家たち」 三菱一号館美術館

三菱一号館美術館千代田区丸の内2-6-2
「マリー=アントワネットの画家 ヴィジェ・ルブラン展 - 華麗なる宮廷を描いた女性画家たち」
3/1-5/8



18世紀フランスの女性画家たちの画業を紹介します。三菱一号館美術館で開催中の「ヴィジェ・ルブラン展 - 華麗なる宮廷を描いた女性画家たち」へ行ってきました。

タイトルにルブランとあるので、彼女の回顧展かと勘違いしてしまうかもしれませんが、実際には同時代、つまりは18世紀のフランス革命前後に活躍した女性画家たちの制作を追う展覧会です。 ルブラン23点の他、コステルらの同時代の女性画家、約80点の絵画が出品されていました。

構成は以下の通りです。

1.17世紀の女性画家
2.貴婦人のたしなみ
3.異国の女性画家たち
4.女性の世紀
5.王立絵画彫刻アカデミーの女性画家
6.新しい時代


単に作品だけでなく、制作のエピソードや当時の社会背景までを紹介する構成となっていました。


ジャン=オノレ・フラゴナールとマルグリット・ジェラール「盗まれた接吻」 サンクトペテルブルクエルミタージュ美術館

主に宮廷で制作をしていた当時の女性画家たちは、ともかくもそこで艶やかな貴婦人らの肖像を数多く描きましたが、一部には意外にも男性の一般市民をモデルとした画家もいました。


マドレーヌ=フランソワーズ・バスポルト「花百譜」 フランス国立図書館

例えばフランソワーズ・デュパルクの「荷物袋を持つ男」などもその一つです。また元々、肖像画家から出発したものの、後にヴェルサイユでルイ15世のために鳥や花を描いたマドレーヌ=フランソワーズ・バスポルトも忘れられません。「花百譜」における繊細な水彩表現は、それこそ日本の熊田千佳慕を連想させはしないでしょうか。可憐でした。


マリー・レクジンスカ、フランス王妃「麻雀の勝負(ヴェルサイユ宮殿、中国風居室の彩色パネル)」 個人蔵

当時の宮廷生活を知る作品としてあげられるのは、ルイ15世の王妃、マリー・レクジンスカによるヴェルサイユ宮殿の装飾パネル画です。

絵を描くことが好きだった王妃は時に実際に絵筆を持ち、宮殿内の一室を中国趣味の絵画で埋め尽くしました。会場ではそれらの作品を宮殿内の配置に即した再現展示で紹介しています。まさにシノワズリーの極致でした

され女性画家というと、何かと生き方に関しても華麗なイメージを抱くかもしれませんが、必ずしもそうとは言えません。

そもそも展覧会の主人公、ルブランも革命によって亡命生活を余儀なくされますが、いわゆる体制側にいた多くの女性画家たちはアントワネット同様、ギロチンに処されることも少なくありませんでした。


アンヌ・ヴァレイエ=コステル「青い花瓶の花」ナンシー美術館

また画壇、つまりは王立アカデミーにおいても女性の地位は全くをもって高いものではありません。アカデミーは60名の会員を有していましたが、うち女性会員は4名に制限されていたそうです。うちその一人のコステルの作品もいくつか展示されていました。

ともかく麗しい肖像画ばかりが展示されているのでなかなか受け取りにくい面はありますが、そうした画家たちの歩んだ苦難の歴史を思うと、一見華やかな展覧会にも「影」があることが浮かび上ってくるのではないでしょうか。

ハイライトはやはりルブランです。彼女の名前を聞いて、昨年秋、損保ジャパン東郷青児美術館で開催された「ウフィツィ美術館自画像コレクション展」のチラシの肖像画を思い出された方も多いかもしれません。


ヴィジェ・ ルブラン「自画像」1791年 ナショナル・トラスト ブリストル・コレクション

実は今回の展覧会でもその時に出された「マリー・アントワネットの肖像を描くヴィジェ=ルブラン」(1790)と瓜二つの作品、「自画像」(1791)が登場しています。一見すると同じ作品かと思ってしまうほど似ていますが、実はモデルの女性が異なっていました。(損保出品作はアントワネット、今作は娘のジュリー。)

知られざる画家たちにスポットを当てた意欲的な展覧会でした。なお美術館は地震の影響により一時休館していましたが、3/25より再開しました。

5月8日まで開催されています。

*開館日時:月休。10:00~17:00。(夜間開館は中止)詳細は美術館ニュースへ。
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