「民俗写真の巨匠 芳賀日出男」 FUJIFILM SQUARE

FUJIFILM SQUARE 写真歴史博物館
「民俗写真の巨匠 芳賀日出男 伝えるべきもの、守るべきもの」 
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1921年に中国大連に生まれた芳賀日出男は、大学卒業後、日本の年中行事を撮り続け、「民俗写真」の地位を確立するに至りました。

現在、キャリアは約60年を超え、約40万点にも及ぶ民俗写真を撮影しました。特に目立つのは、芳賀の原点とも言われる祭礼や儀礼の写真で、例えば「訪れ神」では、お面を被った人物を先頭に、西表島の海辺で行われた儀礼を写し出しました。


左:「壬生の花田植」 広島県山県郡千代田町(現、北広島市) 1981年

また稲作に伴う儀礼もテーマの1つで、「壬生の花田植」では、中国地方に伝わる、太鼓を叩き、笛を鳴らしては、田植唄を歌いながら大勢で田植をする民俗行事を捉えていました。これは中世に遡る田の神を祀る儀式で、当時の農村においては、田植えに従事する者の慰安や、農村における娯楽の要素を持ち得る一大行事でもあったそうです。


右上:「雪中田植」 秋田県平鹿郡山内村(現、横手市) 1964年

また秋田県の「雪中田植」も興味深いのではないでしょうか。これは農家が仕事始めのため、水田に見立てた雪の上に、稲わらなどによって作った稲を植え、倒れ方などを見る儀式で、主に小正月に、稲作の豊凶を占うために行われました。現在では途絶えてしまった地域も少なくありません。



さらに各地域に根ざした民俗文化を、芳賀は人に焦点を当てながら、有り体に写し出していました。こうした一連の写真を撮る切っ掛けのなったのは、大学時代に折口信夫の講義で耳にした、「神は季節の移り目に遠くから訪れ、村人の前に姿を表す。」という言葉だったそうです。それを写真に捉えようと、日本中へ繰り出し、年中行事などを撮影しました。

1959年には、稲作行事を撮った「田の神」を出版し、1970年の大阪万博に至っては、「お祭り広場」のプロデューサーにも任命されました。その幅広い活動は写真の分野に留まりません。

「写真民俗学 東西の神々/KADOKAWA」

最近でも、昨年、「写真民俗学 東西の神々」を出版し、95歳を超えた今もなお、民俗写真を世に送り出しています。


「訪ね神」 沖縄県八重山郡竹富町 1988年

会場はミッドタウン内、フジフィルムスクエアの写真歴史博物館です。壁面一面のみのミニ個展で、私も殆ど偶然に通りがかったに過ぎませんでしたが、モノクロームの写真には臨場感もあり、思いがけないほどに惹かれました。


「供える」 静岡県伊東市 1995年

芳賀展のみ撮影も可能でした。入場も無料です。


3月31日まで開催されています。

「民俗写真の巨匠 芳賀日出男 伝えるべきもの、守るべきもの」 FUJIFILM SQUARE 写真歴史博物館(@FujifilmJP_SQ
会期:1月4日(木)~3月31日(土)
休廊:無休。
時間:11:00~19:00
料金:無料。
住所:港区赤坂9-7-3 ミッドタウン・ウェスト1F
交通:都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結。東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結。東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩5分。
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