「アントニン・レーモンド展」 銀座教文館ビル ウェンライトホール

教文館ビル9階ウェンライトホール
「アントニン・レーモンド展」 
1/22~3/10



教文館ビル9階ウェンライトホールで開催中の「アントニン・レーモンド展」を見てきました。

東京は銀座4丁目。中央通りに面したランドマークとして知られる教文館ビル。設計はアントニン・レーモンド(1888~1976)です。1888年にチェコで生まれ、1919年にフランク・ロイド・ライトとともに来日。その後は戦中を除いて40年以上も日本で過ごし、数多くのモダニズム建築を設計しました。


アントニン・レーモンド

レーモンドの残した建築は全部で400件。ここ教文館ビルしかり、意外と残っています。例えば東京女子大学礼拝堂です。同大は郊外への移転に際し、キャンバスの全体設計をレーモンドに依頼。1921年に計画が練り上がり、1930年から順次、建設がはじまりました。

礼拝堂が出来たのは1938年です。鉄筋コンクリートの尖塔が聳え立ちます。壁面のブロックには多数の色ガラスをはめ込んで装飾。荘厳な景色を作り上げました。様式的にはライトやチェコ・キュビズムの影響を受けているそうです。

教会建築が目立ちます。カトリック聖パウロ軽井沢教会はどうでしょうか。こちらも現存。建設は1935年、構造は木造です。東欧の教会の面影を見せながらも、木材の扱い方は日本の大工の仕事を参照しました。ゆえにどこか和洋折衷的な趣きを醸し出しています。

さらに戦後の立教学院聖パウロ礼拝堂(1963年)や神言神学院(1966年)などもレーモンド建築。日本人建築家に影響を与えます。戦前から戦後の長いスパンで活動したレーモンドは、教会建築においてもスタイルをかなり変化させますが、存在感のある塔や穏やかな光を志向した窓には、その個性を見ることが出来るかもしれません。

教文館ビルが建てられたのは1933年です。地階にはカフェ、1階にレストラン、また2階に教文館の書店、そして上階にレーモンドの事務所を含むオフィスを入れた複合ビルとして完成しました。二つの建物がエントランス部分を共有して一体化するように建てられています。


教文館1階エントランスのレリーフ

外壁こそ変更されましたが、内部のエントランスや階段は当時のまま。しかも近年の耐震診断においても基準に適合したそうです。築80年以上でも現役です。相当頑丈な造りであるに違いありません。

銀座界隈ではヤマハ銀座店(1951年)や松坂屋銀座店(1964年)もレーモンドが手がけています。ただしともに最近になって建て替えのために取り壊されてしまいました。松坂屋でレーモンドが担当したのは既存の建物の改装です。中が透けて見えるガラス張りの階段室をはじめ、陶器を取り付けた格子パターンの外壁などは記憶に新しいところかもしれません。


高崎哲学堂・外観

私にとってとりわけ印象深い建物がありました。それが1951年の「自邸・事務所」です。戦後に再来日し、1973年に離日するまでレーモンドが住んでいた住居。木造の平屋建てです。北側の事務所と南側の自邸が平行に並び、その間は渡り廊下で結ばれています。


高崎哲学堂・内観

自邸はかつて港区の麻布にありましたが、没後に解体。居間部分のみ移転した新事務所内に保存されました。一方で1952年、彼と親交のあった実業家の井上房一郎がレーモンド邸の写しを群馬に建築します。同じく自邸として建てた高崎哲学堂です。現在は市の財団に付属する建物として一般に公開されています。


高崎哲学堂・内観

その高崎の井上邸を以前、一度だけ観覧したことがあります。ちょうど市美術館が改修のため休館していたため、邸内で彫刻の展覧会が行われていました。鬱蒼と生い茂る緑の中で佇む平屋の長い建物。屋内には燦々と光が差し込んでいました。トラスを駆使した小屋組も特徴的です。とても居心地良い空間であったことを覚えています。


高崎哲学堂・外観

なお展示はレーモンド建築を写真や図面で紹介する内容です。模型こそ少なめですが、現存、非現存を問わず、パネルを多用しては一つ一つを丹念に追いかけています。丁寧な作りの展覧会です。

立面図や透視図などの図面が至極美しいのには感心しました。さらにレーモンドが描いた絵画もあわせて紹介。画家としても活動していたそうです。作品はキュビズム的と言って良いのでしょうか。1974年には吉井画廊で個展を開催したほか、春陽会などにも出展していました。



小冊子「日本建築の父 アントニン・レーモンドを知っていますか」が良く出来ていました。建物の写真と図面、ほか年表に参考文献リストを記載。約50ページ、展示にほぼ準じています。しかも300円です。迷わずに購入しました。


銀座教文館ビル

3月10日まで開催されています。これはおすすめします。

「アントニン・レーモンド展」 教文館ビル9階ウェンライトホール
会期:1月22日(金)~3月10日(木)
時間:11:00~19:00
 *毎週金曜日は20時まで。
 *入館は閉館の30分前まで。
 *1/22、1/29、2/12はイベント開催のため17時閉館。
休館:会期中無休
料金:大人・大学生・専門学生500円。高校生以下無料。
住所:中央区銀座4-5-1
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線銀座駅A9出口より徒歩1分。東京メトロ丸ノ内線銀座駅C8出口より徒歩2分。
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