「第9回 shiseido art egg 川内理香子展」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「第9回 shiseido art egg 川内理香子展」
1/9-2/1



資生堂ギャラリーで開催中の「第9回 shiseido art egg 川内理香子展」を見て来ました。

毎年年始恒例、若い世代の作家を個展の形式で紹介する企画展シリーズ、資生堂アートエッグ。

今年も公募により3名の作家が入選しました。1月から3月まで各一ヶ月ずつ作品を発表します。

トップバッターは川内理香子。1990年生まれの若いペインターです。現在、多摩美術大学美術学部の絵画学科に在籍する学生でもあります。

テーマは「食」ということでしょうか。食べ物をモチーフとしたドローイングやペインティングが並びます。いずれも2014年に制作された作品でした。



さて最小限の線と面、そして淡い色彩によって表されたのはいずれも食べ物です。確かに果物であり、パンケーキであり、また寿司であったりしますが、目を凝らすと単なる食べ物だけ描かれているわけではないことに気がつきました。



というのも例えばパンケーキ、何枚も重ねられていますが、良く見ると中央から人の頭が突き出しています。またほかにも食べ物だと思っていたものが手のひらや脚の形をしていました。つまり人物のパーツが食べ物のイメージと重なり合っているのです。その様子はグロテスクですらあります。また食べ物が体内に取り込まれて融合した姿、それ自体が有機的と言えるかもしれません。

それにしてもラフなスケッチです。線は断片的でかつ面も余白を利用しています。即興的です。食べ物の形態、また変容は一瞬の視点で捉えられています。



「The rise and fall of the tide」が目を引きました。連作です。人が生きるために食べ続けるというプロセス、つまりは食べてはお腹をすかせ、また食べるということを、潮の満ち引きに準えて制作しています。



モチーフはハンバーガーやフランスパン、それにチーズケーキなどです。特段に豪華というわけでもなく、日常の食卓で目にするような食べ物が連なります。そしてそれは全体の姿であったり、時に切れ端のみが描かれたりしています。また皿やフォークを添えた作品もありました。興味深いのは必ずしも美味しそうではないということです。まるで手で捏ねて作った粘土細工のようなものもあります。

ドローイングは「腸の形のようにつなげてみせた」そうです。身体的な何かを志向しているのでしょう。やはり食べ物と身体の関わりが重要になっているのかもしれません。

インスタレーション的な展示も目立つアートエッグ展の中、あえて軽妙なドローイングのみで勝負した川内のアプローチ。率直なところ天井高のあるホワイトキューブではパンチに欠ける面はあるやもしれません。

しかしながら一点一点、手元に引き寄せるように見入ると、思いの外に味わいがあることに気がつきます。何やら不気味ではありますが、そこにシュールな面白さがありました。



【第9回 shiseido art egg 展示スケジュール】
川内理香子展 1月9日(金)~2月1日(日)
飯嶋桃代展 2月6日(金)~3月1日(日)
狩野哲郎展 3月6日(金)~3月29日(日)

2月1日まで開催されています。

「第9回 shiseido art egg 川内理香子展」 資生堂ギャラリー
会期:1月9日(金)~2月1日(日)
休館:毎週月曜日
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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