「石居麻耶展」 ごらくギャラリー 5/20

ごらくギャラリー(中央区銀座8-6-9)
「石居麻耶展 -彼方より来たるもの」
5/15-27

「ex-chamber museum」を見て行ってきました。「何気ない日常の瞬間を切り取った光景」(ポストカードより)を描くという、石居麻耶の個展です。無駄なキャッチセールスはいりません。一目見れば、そのクオリティーの高さに驚かされるような作品ばかりです。



ふと見上げた空やどこか懐かしい小屋、それに海辺。確かにどれも何気ない場所が描かれていましたが、そこで最も表現されているのは建物や木などの事物ではなく、その場全てを包み込む光や風の気配です。温もりのある陽の光と、心地良い風。もちろん壁や小径などの描写も優れているわけですが、本来なら見えない、しかしながらその場の雰囲気を決定付ける自然の恵みが絵に取り込まれています。春麗らかな公園を散歩している時の穏やかな気分。大空を飛ぶ鳥を見上げながら、優しい風に包まれている自分がいた。絵が場の入口となって、光の中へと誘ってくれます。まさに絵に引き込まれるとはこのことを言うのでしょう。眩いオーラすら漂っていました。

また彼女は、決して雰囲気だけで魅せる画家ではありません。画像では殆ど確認出来ませんが、実際に絵の前に立つと、木製パネルの温もりを最大限に生かしながら、アクリル絵具と色鉛筆にて器用に建物などを描いていることが分かります。そしてその最も優れた点は木製パネルの使い方です。それぞれの対象の質感に合わせて、非常に細かい彫りが施されている。そこに絵の奥行きと、さらなる深みが加わります。そしてその職人的な取り組みが、画肌の豊かな質感と色彩の温もりを合一させ、完成度の高い作品を生み出していくのです。またそれらは全て軽いタッチにてまとめられている。絵に殆ど重厚感がないのも大きな特徴でした。

どれも見ていて心地良くなるような作品ばかりでしたが、建物を描いた作品の、特に屋根などの表現にさらなる立体感が加わってくれば、より素晴らしくなってくるのではないかとも思いました。画廊の3フロア全てを使った大規模な個展。作品が売れているのも頷ける、非常に魅せる展覧会でした。27日までの開催です。
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