老後の練習

しのび寄るコドクな老後。オヂサンのひとり遊び。

『お買い物』/前田司郎

2009-02-18 00:39:09 | 演劇
またまた福岡に来ている。もうめったに来ないと思っていたのに、電話一本で呼びつけられるカナシサ。でも夜中の12時ちょうどにUNIQLOCK見てたら、ダンスのスペシャルバージョンが30秒も流れた。小さな発見。
で、コレは先週の土曜日に放送されたNHKのドラマ。以下はジブンの記憶のためのメモのつもりなのでツマラなくてもあしからず。
去年2つ芝居を見た五反田団の前田司郎サンが書いたドラマで、あの芝居のような日常の中のチョー現実的な感覚があるかなーと思って見ていたら、じわじわじわじわと引き込まれてかなりおもしろかった。

話はジツにシンプルで後期高齢期にとっくに入ったと思われる夫婦が住んでいる福島県あたりののどかなところから東京の渋谷に買い物に出てくるというだけのもの。その夫婦を久米明サンと渡辺ミサコさんが演じている。で、久米サンのほうは毎日朝から晩までテレビの前に座ったきりで風呂にも入らないような生活をしていて7割がたボケている。渡辺さんのほうはまだそこまでイッてなくて、オンナのほうが長生きする現実をそのままあらわしている。
で、ある日久米サンのところに何十年前かに高級中古カメラを買った銀座の店から渋谷のデパートで開かれる中古カメラフェアみたいなのの案内が届いて、久米サンはひそかにそれに行こうと決意する。で、しばらく歩いてもいなかったので3カ月計画で少しずつ神社の階段の上り下りをしてジブンのカラダを歩けるようにする。いざケッコウの日は紋付き袴でいくか、みたいなギャグを一発飛ばして、東武特急スペーシアで池袋まで行って渋谷にたどりつく。まあ渋谷なんて行こうと思えばすぐだ。
さっそくスタバみたいなところに入ってわけのわからない飲み物を飲んで何十年か前を思い出しながら東急デパートの会場に入っていく。久米サンはそこで、昔なら家が一軒買えたくらいの値段がした外国の高級カメラが8万円で売られているのを発見して何時間も迷った挙句、ホテル代もつぎこんでついに買ってしまう。
で、そのあとは今風の生活をしている孫のアパートに泊めてもらって、渡辺さんのほうは孫となぜかラザニアを作って、昔銀座で食べたまずいラザニアのことを思い出す。食べ終わると久米サンのほうは犬のぬいぐるみを股の間に挟んで寝る。何かを股に挟んでいないと怖い夢を見て眠れないので。この辺にチョー現実感がある。

で、翌朝はもうすぐ壊されてなくなると勝手に思い込んでいる東京駅に行って、昔、二人で立っていた同じ場所にもう一度立って写真に撮られる。それだけのはなし。
全体に死のイメージがある。記憶の近いところにあるのは死んだ知り合いのことだけで、昔のことを思い出すたびにとんでもなく長い時間が過ぎ去ったことを二人で確かめあう。先にやっぱり久米サンのほうが死んで残された渡辺さんと孫が久米サンの撮った写真を見て久米サンのことを思い出す。
時間がたつと必ず死ぬのに何で人間はわざわざ渋谷まで買い物に行ったりするんだろうか、という、前田さんのいつものテーマのようなものがここでもまた新しい形で表現されている。

2009.2.14 NHK総合テレビ