自民党総裁選を秋に控える「ポスト安倍」候補は、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書書き換え問題の行方を注視している。

 連続3選に向けて優位に戦いを進めてきた安倍首相(党総裁)への世論の批判が高まっているからだ。今後の展開次第で総裁選に向けた各候補の動きが加速する可能性もある。

 「今回のことは一体何だったのかをきちんとさせることが、行政の長として第一の責任だ」

 石破茂・元幹事長は16日、TBS番組の収録で、書き換え問題を巡る首相の責任を問われ、こう述べた。

 憲法改正の進め方などで、首相との対決姿勢を強めてきた石破氏だが、今回の書き換え問題では、首相批判を控えるなど、自重した発言が目立つ。党内第6派閥の石破派(20人)は、総裁選で他派閥の協力を取りつけなければならず、「危機に乗じて、後ろから鉄砲を撃っているとみられるのは得策ではない」(石破派幹部)との計算が働いているためだ。

 一方で、石破氏は他派閥との連携を模索している。14日には石原派(12人)最高顧問の山崎拓・元副総裁を招き、派閥勉強会を開いた。石破氏は、自身と同じ憲法9条2項削除案を主張する山崎氏の著書を「感銘を受けた」と称賛し、首相の連続3選に否定的な山崎氏に秋波を送った。石破派では、党内第3派閥の額賀派(55人)領袖りょうしゅうが近く、額賀福志郎・元財務相から石破氏と近い竹下総務会長に交代することも、「追い風」とみて、連携の機会を探っている。

 また、岸田政調会長も、党内情勢の変化を慎重に見極めている。首相を支えて後継の座を狙う「禅譲」路線を基本戦略とする岸田氏は、「窮地のときこそ、首相を支え続けるべきだ」(岸田派幹部)として政権を支える方針だ。ただ、岸田派内には「首相は長くやり過ぎている。新たなリーダーとして名乗りをあげるべきだ」といった岸田氏の出馬待望論も根強く残っている。

 一方、安倍内閣の閣僚である野田総務相は際立った言動をとっていない。将来の首相候補の呼び声が高い河野外相は閣僚の立場に加え、麻生副総理兼財務相の派閥に属しており、難しい立場だ。

 これに対し、小泉進次郎筆頭副幹事長は書き換え問題で、「自民党は官僚だけに責任を押しつけるようなことはしない」と述べるなど、暗に首相や麻生氏の責任論に言及している。党内からは「小泉氏の言動が今後、総裁選を巡る党内情勢を左右する可能性もある」(若手)との見方も出ている。