文化功労者の県立大・鈴木学長
【岩手】2021年度の文化功労者に県立大の鈴木厚人学長(75)が今秋、選ばれた。素粒子物理学の分野で、ニュートリノに質量があることを証明した功績が認められた。鈴木学長は「ニュートリノ研究は新たな段階に入っている。その礎を築いたことが評価され、うれしい」と語った。
新潟県出身。新潟大理学部を卒業し、東北大大学院で博士課程を修了した。東京大理学部助手として、故小柴昌俊・東京大特別栄誉教授(02年ノーベル物理学賞)のもと、岐阜県にある観測装置「カミオカンデ」「スーパーカミオカンデ」で装置の開発や改良を担った。
その後、東北大理学部教授となり、カミオカンデ跡地で観測装置「カムランド」建設に尽力した。カムランドで、質量がゼロと考えられていたニュートリノに質量があることを裏付けた。スーパーカミオカンデでの発見と合わせ、3種類中2種類のニュートリノ質量の発見となり、素粒子物理学の発展に貢献したと評価された。
高エネルギー加速器研究機構(茨城県)の機構長を経て、15年に県立大学長に就任。大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致をめざす中心的な役割を担っている。ILCはヒッグス粒子の性質を調べることによって、素粒子の起源や宇宙誕生の謎に迫ろうとするものだ。
学長として新入生に話していることがある。
「私は失敗したことがない。ただ、うまくいかないやり方を1万通り見つけただけだ」
発明王エジソンの言葉だ。学生にこう説いている。「失敗というのは、うまくいかないことを見つけて、成功に近づく道を発見したということ。『失敗という言葉はない。それは発見なんだ』という心構えで頑張ってほしい」
キャンパスは滝沢市にあり、天気の良い日は岩手山を望める。岩手に来て7年。カメラが趣味になった。「岩手山にかかる雲や雪の感じが毎日違うんだよね。それを写真に刻んでおくのは楽しい」(大西英正)