あれから1年、NY在住の日本人をターゲットに出店したNY支店だったがようやく軌道に乗ってきた。ようやくという言い方はいささか謙遜かも知れない。思った以上に店は盛況で日本人だけではなく多くのニューヨーカー達も来店するようになっていた。
頑張った・・・というよりは余計なことを考えたくないから仕事ばかりしてた結果だけどな。勤勉すぎる日本人店長はスタッフには煙たかったろうが(苦笑)
「店長、お願いします」
「いらっしゃいませ」
「リンタロウ、夏に向けてイメチェンしたいの」
「どんなふうに?」
「そうね~あなたにまかせるわ」
「オッケー」
「あれスーパーモデルのナンシーでしょ、綺麗~」
「ここって特に宣伝とかしてないのに、口コミで評判が評判が呼んで~ですよね」
「そう、でも店長って全然ガツガツしてなくて凄い気さくで、スーパーモデルもNYで働くキャリアウーマンも留学生の女の子だって皆同じ大切なお客様なのよね、感心するわ」
*
「えっ?これってニューヨークヤンキースのチケット・・・」
「友達が急に行けなくなってしまって、申し訳ないことに隣の席は私なんですが」
「行く行く、行くよ、ありがとう~」
ヤッタッ!
「凄かったな~イチローのジャンピングキャッチ、そこからの三塁返球、もう神業だよ」
「立花さんは本当にイチロー選手が好きなんですね」
「うん、ニューヨークに来たら度々見れると思ったんだけど、こっち来てから余裕なくて実は今日初めてのヤンキース戦だったんだ」
「そうなんですか、喜んで頂けてよかったです」
「メアリさんは日本語上手いね」
「4世(日系)となると話せない人が殆どなんだけど、私は日本が大好きで、日本語学校に行ったり日本の大学に留学して日本語勉強たから話せるんです。あっメアリでいいです。さん付けされると変な感じで、ここはアメリカ式でお願いします」
「じゃあアメリカ式で、メアリ、今日は誘ってくれてありがとう」
「あの、先日私が取材したときに店内で転んでしまって、そのときにお借りしたハンカチお返ししようと思ったんですが、汚してしまったので、これ使ってください」
「そんな~いいのに、ハンカチくらい、イチロー選手見れただけで充分なのに、じゃあ今度お礼にご馳走させて、迷惑かな?」
「いっいえ、全然全然迷惑じゃないです!」
「よかった、じゃあまた連絡するから、そーだ、携帯のアドレス・・・」
*
「痛っ」
夢じゃないんだ、清水の舞台から飛び降りたつもりで・・・この使い方合ってるよね?
誘ってよかった~。うぅぅ嬉し過ぎる!
学生時代に日本語を一生懸命勉強した私。自分で自分を褒めてあげるわ。
今評判の立花さんの取材だったんだけど、立花さん素敵な人でドキドキしながらインタビューして、緊張してたのと、いつもよりちょっと高いヒールの靴はいていたから、なにもない所で思いっきり転んじゃって、お洒落で綺麗な人ばかりいる店内で凄く恥ずかしかった。そしたら立花さんが「ごめんなさい、昨日ワックスかけたばかりで、大丈夫?これ使って」ってハンカチ貸してくれたんだ。そのときの笑顔がとても素敵で
膝小僧から血が出てたけど勿体なくて使えなかった。毎日バックに入れて、ときどき眺めてるの・・・こんな痛い女でごめんなさい。
*
「立花さーん、お弁当作ってきたんですよ、一緒に食べませんか」
「うわぁー美味そうだな、手作りのおにぎりなんて何年ぶりだろう?」
握った瞬間、崩れるおにぎり・・・
「ごめんなさい・・・おにぎりはあんまり力入れて握っちゃいけないって書いてあったから、やわらかく握り過ぎたのかな」
「これってカリフォルニア米じゃないの?」
「ええ」
「それでだよ、日本のお米はもっと水分があるから、比べるとカリフォルニア米は水分が少なくてパサパサしてるからきっとおにぎりにはむいてないんだよ、でも味はいいよ、丁度いい塩加減だ」
「立花さんは優しいな、私が立花さんのお店で転んだときも、昨日ワックスかけたばかりでって言っていたけど、とてもそんな床には見えなかったです。私が恥ずかしい思いしないようになんでしょ」
「この年になるとそういう気遣いが自然に出来るようになるんだよ、客商売だし、もういい大人というか、いいおじさんだから(笑)」
「私はお客さんじゃないですっ」
「ごめん、面と向かって優しいですねって言われてちょっと照れちゃった(笑)」
立花さんて少年のように笑うんだね、 好き・・・あなたの笑顔が大好き。
「リンタロウ―次はサード守って~!」
「OK!」
「一人帰っちゃって人数足りないんだ、お姉さんも出て!滅多にライトまではボール飛んでこないから」
「えっ 私!?」
「うっそー!ボール飛んできたよ~」
「メアリ、こっち投げて! ナイスボール! よしっホーム!」
「アウト!」←本塁死守です。
「キャー やった!やった!やったー!」
「元気なお姉さんだね」
「うん(微笑)」
「今日はお姉さんも野球に混ぜてくれてありがとう、楽しかったよ」
「また来てね!」
「お姉さんはリンタローの彼女?」
「ちっちがうよっ」
「あっ赤くなった~」
「こらっ待て~大人をからかうんじゃないっ」
「今度は鬼ごっこか、子供と本気で遊んでる(笑)」
「お姉さん、可愛いじゃん、リンタロウ―早くものにしなよ」
最近のガキはなんてませてんだ(^^;
*
「それでその立花さんと付き合ってるの?」
「ときどき食事に行ったり、飲みにいったり、野球観戦とか、草野球とかバッティングセンター行ったり、立花さんて野球とお酒が大好きなの!」
「なんつー色気のないデートなんだ・・・で、他には?」
「それだけだけど」
「それだけ?」
「うん」
「いつから?」
「7月から」
「もう11月だよ、5ヶ月近くも経ってなにもないの? 好きとか、愛してるとか、キスとか」
「手を繋いだこともないよ」
「うっそー、日本の男ってそんなに奥ゆかしいの?」
「アメリカ人みたいに毎日愛してるっていう国民性じゃないと思うけど、私のこと女だと思ってないのかな?」
「思われてないなら、女見せなさいよ!」
「えっ!? はっ・・・はい」
「でもよかった~」
「えっ?」
「メアリ、5年前に痛い失恋してもう恋なんかしないって泣いて泣いて、このまま30代に突入するのかと心配してたら、また誰かを好きになることができてよかったね」
「うん、心配かけたね、ありがとうジェーン」
*
「あの・・・立花さん、明日はお店休みですよね、よかったらうちでコーヒーでもどうですか?」
清水どころかエンパイアステートビルの屋上から飛び降りた気分で(^^;
「明日店は休みなんだけど、NYコレクションの打ち合わせがあって」
「えっ!立花さん、NYコレクションのヘアメイクやるんですか!?」
「ちょっとだけだけどね」
「凄いな~、段々遠い人になっちゃいますね」
「そんなことないよ、ただの雇われ店長だよ。NYコレクションは個人的に頼まれたんだけどね」
「楽しみだな~絶対見にいきますね!」
*
「あー楽しかった、NYコレクションって初めていきました。立花さん、ちょっとどころかステージで紹介されてたじゃないですか~洋服よりヘアメイクばかり見ちゃいました」
「ファッションショーなのに?(笑)」
「あの・・・あの・・・」
「なに?」
「立花さんは好きな人がいるんですか?」
「いた・・・けどね、今はいないじゃなくて、ちょっと、ううん、とても気になっている子がいるんだ」
デジャブ・・・あのときと違うのは、いるよ じゃなくて いた と過去形になったこと。
そう、僕はメアリに惹かれていた。キラキラと眼を輝かせながらいつも楽しそうに笑うこの子に。。。
「えっ・・・・・・」
「コーヒーでも飲んでく?」
「はっ はい」
「どうぞ」
「ありがとうございます。立花さんの部屋ってお洒落ですね、センスいいな~」
「寝に帰るだけだけどね」
「お酒がいっぱい、ちゃんと食べてますか?私今度なんか作りましょうか、大したものは作れないんですが、おばあちゃん直伝の煮豚とか結構イケるんですよ」
二人だけの空間に落ち着かなくて饒舌になる。
「メアリ・・・」
「・・・ん・・・」
饒舌な私の唇を立花さんの唇がふさいだ。。。
優しいキス・・・一旦離して今度は深く熱いキス・・・
もう死んでもいい・・・いやまだ早い(^^; この先があるはずよ。やっぱないかな~。
ふと立花さんの右の手の綺麗な指が私のシャツのボタンにかかった。 キャッ
・・・メアリ、彼と会うときは絶対に勝負下着だからね!・・・
ありがとう~ジェーン、感謝するわ。
ブッブーブッブー
「電話、鳴ってるよ」
なんでマナーモードにしておかなかったんだ、私。。。
「えっ?印刷工程でトラブルが、わかりました。直ぐに行きます」
「ごめんなさい」
「いいよ、また連絡するから」
「はい」
どうして私っていつも間が悪いんだろう、昔からそうだ、肝心なときにトラブルが起きるんだ。
でもキスしてくれた。。。涙が溢れてくる。
キスされて泣くなんてハイティーンじゃあるまいし、だけど私はあの日からずっとこんなにも立花さんのことが好きだったんだ。
その日から忙しくて、おまけに風邪までひいてしばらく立花さんに会えなかった。
風邪ひいたっていうと心配して絶対にお見舞いにくるだろうから、ロサンゼルスに取材に行くと嘘をついた。
「久しぶり、なんか痩せたね、仕事大変だった?」
「少し、でも明日からクリスマス休暇だから」
「そう、クリスマスはどうするの?」
「イブは親戚一同祖母の家に集まって過ごすんです。これに参加しないと親戚から村八分にされます」
「村八部なんて言葉よく知ってるね(笑)」
「でも25日のクリスマスは空いてます」
「実は25日から日本に帰るんだ、ずっと帰ってないから顔見せろっておふくろが煩くて」
「帰ってきますよね?」
「勿論だよ、正月開けたら帰ってくるよ」
心も・・・心も私の元へ帰ってきてください。。。
日本・・・立花さんの好きだった人がいるところ。過去形なのに、どうしてこんなに不安になるの?
恋をするととても臆病になる。 涙もろくなる。。。
*
「メリークリスマス、おばあちゃん」
「メリークリスマス、メアリ、どうしたんだい?元気がないね」
「あのね、おばあちゃん・・・」
「追いかけるんだよ」
「えっ?」
「どうにもならなかったおばあちゃんの時代とは違うんだ、気持ちがあれば大丈夫」
「でも今からじゃエアーチケット取れないよ」
「一人くらいキャンセルする人いるだろ?」
「一人もいなかったら?」
「泣くほど好きなんだろ」
「うん」
「信じるものは救われるというじゃないか」
「メアリと立花さんの間に赤い糸が繋がっているのを信じなさい」
「うん」
サンタクロースを信じなくなったのは何時からだろうか。
都合がいいかも知れないけれど、今はサンタクロースを信じたい!
どうか私に日本行のエアーチケットを届けてください!
「メアリ、取れたよ!おばあちゃんの知り合いに声かけたんだけど、それだって運命の赤い糸だよ」
「ありがとう、おばあちゃん」
「さっ 急いで!」
「うん、じゃあ行くね」
「転ぶんじゃないよ、そうそうホテルはダブルベッドで予約したから無駄にするんじゃないよ~」
「もう~おばあちゃんたら~」
「勝って~くるぞと勇ましく~♪」 byおばあちゃん。
うん、これは勝負なのかも知れない。メアリ、行きまーす!
後編に続く
頑張った・・・というよりは余計なことを考えたくないから仕事ばかりしてた結果だけどな。勤勉すぎる日本人店長はスタッフには煙たかったろうが(苦笑)
「店長、お願いします」
「いらっしゃいませ」
「リンタロウ、夏に向けてイメチェンしたいの」
「どんなふうに?」
「そうね~あなたにまかせるわ」
「オッケー」
「あれスーパーモデルのナンシーでしょ、綺麗~」
「ここって特に宣伝とかしてないのに、口コミで評判が評判が呼んで~ですよね」
「そう、でも店長って全然ガツガツしてなくて凄い気さくで、スーパーモデルもNYで働くキャリアウーマンも留学生の女の子だって皆同じ大切なお客様なのよね、感心するわ」
*
「えっ?これってニューヨークヤンキースのチケット・・・」
「友達が急に行けなくなってしまって、申し訳ないことに隣の席は私なんですが」
「行く行く、行くよ、ありがとう~」
ヤッタッ!
「凄かったな~イチローのジャンピングキャッチ、そこからの三塁返球、もう神業だよ」
「立花さんは本当にイチロー選手が好きなんですね」
「うん、ニューヨークに来たら度々見れると思ったんだけど、こっち来てから余裕なくて実は今日初めてのヤンキース戦だったんだ」
「そうなんですか、喜んで頂けてよかったです」
「メアリさんは日本語上手いね」
「4世(日系)となると話せない人が殆どなんだけど、私は日本が大好きで、日本語学校に行ったり日本の大学に留学して日本語勉強たから話せるんです。あっメアリでいいです。さん付けされると変な感じで、ここはアメリカ式でお願いします」
「じゃあアメリカ式で、メアリ、今日は誘ってくれてありがとう」
「あの、先日私が取材したときに店内で転んでしまって、そのときにお借りしたハンカチお返ししようと思ったんですが、汚してしまったので、これ使ってください」
「そんな~いいのに、ハンカチくらい、イチロー選手見れただけで充分なのに、じゃあ今度お礼にご馳走させて、迷惑かな?」
「いっいえ、全然全然迷惑じゃないです!」
「よかった、じゃあまた連絡するから、そーだ、携帯のアドレス・・・」
*
「痛っ」
夢じゃないんだ、清水の舞台から飛び降りたつもりで・・・この使い方合ってるよね?
誘ってよかった~。うぅぅ嬉し過ぎる!
学生時代に日本語を一生懸命勉強した私。自分で自分を褒めてあげるわ。
今評判の立花さんの取材だったんだけど、立花さん素敵な人でドキドキしながらインタビューして、緊張してたのと、いつもよりちょっと高いヒールの靴はいていたから、なにもない所で思いっきり転んじゃって、お洒落で綺麗な人ばかりいる店内で凄く恥ずかしかった。そしたら立花さんが「ごめんなさい、昨日ワックスかけたばかりで、大丈夫?これ使って」ってハンカチ貸してくれたんだ。そのときの笑顔がとても素敵で
膝小僧から血が出てたけど勿体なくて使えなかった。毎日バックに入れて、ときどき眺めてるの・・・こんな痛い女でごめんなさい。
*
「立花さーん、お弁当作ってきたんですよ、一緒に食べませんか」
「うわぁー美味そうだな、手作りのおにぎりなんて何年ぶりだろう?」
握った瞬間、崩れるおにぎり・・・
「ごめんなさい・・・おにぎりはあんまり力入れて握っちゃいけないって書いてあったから、やわらかく握り過ぎたのかな」
「これってカリフォルニア米じゃないの?」
「ええ」
「それでだよ、日本のお米はもっと水分があるから、比べるとカリフォルニア米は水分が少なくてパサパサしてるからきっとおにぎりにはむいてないんだよ、でも味はいいよ、丁度いい塩加減だ」
「立花さんは優しいな、私が立花さんのお店で転んだときも、昨日ワックスかけたばかりでって言っていたけど、とてもそんな床には見えなかったです。私が恥ずかしい思いしないようになんでしょ」
「この年になるとそういう気遣いが自然に出来るようになるんだよ、客商売だし、もういい大人というか、いいおじさんだから(笑)」
「私はお客さんじゃないですっ」
「ごめん、面と向かって優しいですねって言われてちょっと照れちゃった(笑)」
立花さんて少年のように笑うんだね、 好き・・・あなたの笑顔が大好き。
「リンタロウ―次はサード守って~!」
「OK!」
「一人帰っちゃって人数足りないんだ、お姉さんも出て!滅多にライトまではボール飛んでこないから」
「えっ 私!?」
「うっそー!ボール飛んできたよ~」
「メアリ、こっち投げて! ナイスボール! よしっホーム!」
「アウト!」←本塁死守です。
「キャー やった!やった!やったー!」
「元気なお姉さんだね」
「うん(微笑)」
「今日はお姉さんも野球に混ぜてくれてありがとう、楽しかったよ」
「また来てね!」
「お姉さんはリンタローの彼女?」
「ちっちがうよっ」
「あっ赤くなった~」
「こらっ待て~大人をからかうんじゃないっ」
「今度は鬼ごっこか、子供と本気で遊んでる(笑)」
「お姉さん、可愛いじゃん、リンタロウ―早くものにしなよ」
最近のガキはなんてませてんだ(^^;
*
「それでその立花さんと付き合ってるの?」
「ときどき食事に行ったり、飲みにいったり、野球観戦とか、草野球とかバッティングセンター行ったり、立花さんて野球とお酒が大好きなの!」
「なんつー色気のないデートなんだ・・・で、他には?」
「それだけだけど」
「それだけ?」
「うん」
「いつから?」
「7月から」
「もう11月だよ、5ヶ月近くも経ってなにもないの? 好きとか、愛してるとか、キスとか」
「手を繋いだこともないよ」
「うっそー、日本の男ってそんなに奥ゆかしいの?」
「アメリカ人みたいに毎日愛してるっていう国民性じゃないと思うけど、私のこと女だと思ってないのかな?」
「思われてないなら、女見せなさいよ!」
「えっ!? はっ・・・はい」
「でもよかった~」
「えっ?」
「メアリ、5年前に痛い失恋してもう恋なんかしないって泣いて泣いて、このまま30代に突入するのかと心配してたら、また誰かを好きになることができてよかったね」
「うん、心配かけたね、ありがとうジェーン」
*
「あの・・・立花さん、明日はお店休みですよね、よかったらうちでコーヒーでもどうですか?」
清水どころかエンパイアステートビルの屋上から飛び降りた気分で(^^;
「明日店は休みなんだけど、NYコレクションの打ち合わせがあって」
「えっ!立花さん、NYコレクションのヘアメイクやるんですか!?」
「ちょっとだけだけどね」
「凄いな~、段々遠い人になっちゃいますね」
「そんなことないよ、ただの雇われ店長だよ。NYコレクションは個人的に頼まれたんだけどね」
「楽しみだな~絶対見にいきますね!」
*
「あー楽しかった、NYコレクションって初めていきました。立花さん、ちょっとどころかステージで紹介されてたじゃないですか~洋服よりヘアメイクばかり見ちゃいました」
「ファッションショーなのに?(笑)」
「あの・・・あの・・・」
「なに?」
「立花さんは好きな人がいるんですか?」
「いた・・・けどね、今はいないじゃなくて、ちょっと、ううん、とても気になっている子がいるんだ」
デジャブ・・・あのときと違うのは、いるよ じゃなくて いた と過去形になったこと。
そう、僕はメアリに惹かれていた。キラキラと眼を輝かせながらいつも楽しそうに笑うこの子に。。。
「えっ・・・・・・」
「コーヒーでも飲んでく?」
「はっ はい」
「どうぞ」
「ありがとうございます。立花さんの部屋ってお洒落ですね、センスいいな~」
「寝に帰るだけだけどね」
「お酒がいっぱい、ちゃんと食べてますか?私今度なんか作りましょうか、大したものは作れないんですが、おばあちゃん直伝の煮豚とか結構イケるんですよ」
二人だけの空間に落ち着かなくて饒舌になる。
「メアリ・・・」
「・・・ん・・・」
饒舌な私の唇を立花さんの唇がふさいだ。。。
優しいキス・・・一旦離して今度は深く熱いキス・・・
もう死んでもいい・・・いやまだ早い(^^; この先があるはずよ。やっぱないかな~。
ふと立花さんの右の手の綺麗な指が私のシャツのボタンにかかった。 キャッ
・・・メアリ、彼と会うときは絶対に勝負下着だからね!・・・
ありがとう~ジェーン、感謝するわ。
ブッブーブッブー
「電話、鳴ってるよ」
なんでマナーモードにしておかなかったんだ、私。。。
「えっ?印刷工程でトラブルが、わかりました。直ぐに行きます」
「ごめんなさい」
「いいよ、また連絡するから」
「はい」
どうして私っていつも間が悪いんだろう、昔からそうだ、肝心なときにトラブルが起きるんだ。
でもキスしてくれた。。。涙が溢れてくる。
キスされて泣くなんてハイティーンじゃあるまいし、だけど私はあの日からずっとこんなにも立花さんのことが好きだったんだ。
その日から忙しくて、おまけに風邪までひいてしばらく立花さんに会えなかった。
風邪ひいたっていうと心配して絶対にお見舞いにくるだろうから、ロサンゼルスに取材に行くと嘘をついた。
「久しぶり、なんか痩せたね、仕事大変だった?」
「少し、でも明日からクリスマス休暇だから」
「そう、クリスマスはどうするの?」
「イブは親戚一同祖母の家に集まって過ごすんです。これに参加しないと親戚から村八分にされます」
「村八部なんて言葉よく知ってるね(笑)」
「でも25日のクリスマスは空いてます」
「実は25日から日本に帰るんだ、ずっと帰ってないから顔見せろっておふくろが煩くて」
「帰ってきますよね?」
「勿論だよ、正月開けたら帰ってくるよ」
心も・・・心も私の元へ帰ってきてください。。。
日本・・・立花さんの好きだった人がいるところ。過去形なのに、どうしてこんなに不安になるの?
恋をするととても臆病になる。 涙もろくなる。。。
*
「メリークリスマス、おばあちゃん」
「メリークリスマス、メアリ、どうしたんだい?元気がないね」
「あのね、おばあちゃん・・・」
「追いかけるんだよ」
「えっ?」
「どうにもならなかったおばあちゃんの時代とは違うんだ、気持ちがあれば大丈夫」
「でも今からじゃエアーチケット取れないよ」
「一人くらいキャンセルする人いるだろ?」
「一人もいなかったら?」
「泣くほど好きなんだろ」
「うん」
「信じるものは救われるというじゃないか」
「メアリと立花さんの間に赤い糸が繋がっているのを信じなさい」
「うん」
サンタクロースを信じなくなったのは何時からだろうか。
都合がいいかも知れないけれど、今はサンタクロースを信じたい!
どうか私に日本行のエアーチケットを届けてください!
「メアリ、取れたよ!おばあちゃんの知り合いに声かけたんだけど、それだって運命の赤い糸だよ」
「ありがとう、おばあちゃん」
「さっ 急いで!」
「うん、じゃあ行くね」
「転ぶんじゃないよ、そうそうホテルはダブルベッドで予約したから無駄にするんじゃないよ~」
「もう~おばあちゃんたら~」
「勝って~くるぞと勇ましく~♪」 byおばあちゃん。
うん、これは勝負なのかも知れない。メアリ、行きまーす!
後編に続く
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