「ついにききたよ、ついにきたよ、30年ぶりのバレンタインデーが!」
「京極さん、そんなに楽しみですか~」
「あったりめぇ~だよ、なんてったって30年ぶりだぜっ ハロウィンがあれだからバレンタインデーもさぞ華やかになったんだろうな」
「種類は増えたと思いますが、一番変わったのは友達同士でチョコをあげる友チョコとか、頑張ってる自分にご褒美チョコとか」
「へぇ~んなのがあるんだ、亮太~ゆい以外の女からチョコもらうんじゃねえぞ、他のチョコは俺に回せっ なんてったって一番チョコレート貰うのはこの俺様だからなっ ガハッガハガハッ」
またあの手この手で汚い手使って沢山のチョコレートゲットする気だな(^^; ゆいちゃんに頼んで俺が買ったチョコを婦警の皆さんに配って京極さんに渡して貰おうかな~。亮太くんて優しい~て、ゆいちゃん言うだろうな~デヘッ。
「おはようございます」
「おはよう(微笑)」
「ひゃ~あの微笑から甘い薔薇の香りがしたわ

」
「私には気品溢れる水仙の香りがしたわ~

」
「前の松浦警さんはちょっと近寄りがたかったけど最近の松浦さんはやわらかくなって素敵よね~」
「うん、素敵~」
「そんじゃそこらのなんちゃってイケメンとちがって松浦さんは・・・美しい」
「あ~それわかるっ」」
知らなかった・・・意外と松浦は女に人気あるんだな ←松浦さんに笑えと言ったことを軽く後悔してる京極さんです
*
「はい、こちら警察です」
「バレンタインデーのチョコレートに毒を入れた、食べれば大勢の人間が死ぬことになる。直ちにチョコレートの販売を中止しろ」
「もしもしもしもし!」
「逆探知!」
「高円寺駅にあるの公衆電話です!」
「最近はスマホのボイスチェンジャーアプリで簡単に声色を変えられるからな、厄介な世の中だ」
「バレンタインデーは明日ですよ、どうするんですか!」
「行くぞっ 亮太」
「どこへ? 調べようにも途方もない数のチョコレートが出回っているんですよ」
「その通りだ」
「松浦・・・」
「バレンタインデーのチョコレートとなればラッピングが強固だから簡単に毒を入れるのは難しいだろう。バレンタインデーで浮かれてる人間を混乱させたい。恐らく犯人の目的はそこだろう、犯人は時間をおかずに必ずまた電話を掛けてくる、それを待つんだ」
「ここでじっとしてられるか! 高円寺駅の公衆電話だな、行くぞっ 亮太!」
高円寺駅・・・
「なんかあの男、怪しくないか?」
「その根拠は?」
「刑事の感だ!」
「はいはい」
「ちょっと道を尋ねたいんだが」
「えっ・・・あの、あの・・・」」
「こらー逃げるなっ! やっぱりあいつが犯人か、ビンゴだな、行くぞっ亮太!」
「松浦さん、松浦さんの娘さんの大学の同級生という方が松浦さんに会いたいといらしているんですが」
「私に?」
「杏奈さんのお父さんですよね」
「ああ、私になんの用だろう」
「すみません、実は安奈さんとはそんなに親しい訳ではないんですが、杏奈さんのお父さんが警察の偉い人だという噂を小耳に挟みまして」
「で?」
「思い切って杏奈さんに相談したら、父は難しい顔してるけど。あっすみません、誠実でなによりも市民の安全を第一に考えてる人だから相談してみるといいよと言われました。ただ忙しい人だからなかなか会えないかも知れないって、どうか会えますようにって念じてきました」
「うん、娘の言うように私は忙しい。今大事な電話がかかってくるかも知れないから相談は後日ということでいいかな(^^;」
「私、電話が出来なくて困ってるんです」
「はっ?」
「警察にとんでもない電話を掛けてしまって撤回しようとしたらスマホが壊れててスマホのアプリが使えなくて、それだとボイスチェンジャーで声色変えれないからさっきの電話の主だと信じてもらえないかと思って、だから直接警察に来たんです」
「そのとんでもない電話とはバレンタインデーの?」
「申し訳ありませんでした!」
「若山、犯人から撤回の電話があったことを皆に知らせるように」
「はい、自首じゃなくて電話の撤回でいいんですね」
「スマホが壊れなきゃただのいたずら電話だったってことで済んだだろう」
「はいっ!」
「さて、どうして君はそんな電話を?」
「羨ましかったんです。私にはチョコレートあげる彼氏も友達もいないし、苦学生で奨学金だけじゃ足りなくてバイトして、バイトと勉強で忙しくて疲れてて、ついイラっとして」
「ストレス発散になった?」
「後悔ばかりでよりストレスが溜まりました」
「ボイスチェンジャーが使えなくても、公にしてない誰も知らない話だから電話すれば信じたよ。逆探知はするが、むしろ悪戯電話だったということでホッとしたと思う。だが警察に来れば顔が割れる。事情聴取しない訳にはいかない。君はバカがつくくらい正直者だ(苦笑)」
「そうですね、私ってバカですね、私ってどんな罪になるんでしょう?」
「威力業務妨害罪、 威力を用いて他人の業務を妨害する罪。 刑法第234条が禁じ、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる。」
「どうしよう、私50万なんて持ってない・・・」
「心から反省しているか?」
「もちろんです」
「噂通り私は警察の偉い人だ。君はストーカーにあっているような気がして友人の父親である刑事に相談に来たということにしよう(^^;」
「ありがとうございます!」
「私もバレンタインデーなんて嫌いだ」
「えっ?」
「小学生の時の担任の女の先生がチョコレートもらわなかった子は前に出なさいって言って、それで前に出た生徒に先生がチョコレートくれたんだ、凄く恥ずかしくて嫌な思い出だ」
「それって今だったら炎上しますよ、その学校も先生も叩かれます」
「そうだな(笑)」
いやーん、なんて素敵な笑顔
「でももてなかったなんて信じられません」
「小学生だとスポーツの出来る子や走るの早い子がもてて、私は走るのが遅かったから(^^;」
「そうだったんですか、今の立派な(素敵な)お姿からは想像できません」
*
「ただいま・・・」
「お帰りなさい」
「杏奈か、キッチンにいるからお母さんかと思ったよ」
「チョコレート作ってるの」
「彼氏にあげるのか?(ドキドキ)」
「そんな人いないわよ、私のお父さんが警察の偉い人だって噂が流れて、それでなんか男の子に避けられている気がするもん」
「それは悪かったな」
「いいわよ、そんな男はこっちから願い下げよ」
「うん、そうか」
駄目だな~刑事の癖に娘の嘘見抜けないんだ、娘だからかな? 彼氏いるよ。お父さんとは真逆の弱弱しい、でも凄く優しくて一緒にいると楽しくて、笑うと可愛くて、ん? 笑うと可愛いのだけお父さんと一緒か(笑)
2月14日・・・
「京極巡査部長お手柄でしたね」
「おう、俺は30年眠ってたから10年前の未解決の強盗殺人事件の犯人のことなんて知らなかったんだが、いわゆる俺の刑事の感がビビビツてきたってわけよ」
「犯人逃げるのに疲れてもう捕まってもいいかなって思っていたそうです。途中で走るの止めちゃって、ラッキーでしたね、京極さん」
「ラッキーじゃなくて刑事の感だっ」
「はい、そうでしたっ」
「いやー思わぬ荷物が増えちゃって、今日はバレンタインデーだったとは知らずに困ってたら交通課で紙袋くれてよ、チョコレートって結構重いもんだな、ガハハ」
「松浦さ~ん、交通課で紙袋譲ってもらいましたよ、これ全部松浦さんのチョコレートですからね、ちゃんと持って帰ってくださいね」
「ありがとう、若山。手間かけて悪かったな」
俺のよりデカい紙袋が二つも・・・負けた、松浦に負けた
「京極さん、なにショック受けているんですか。チョコレートの数がなんだっていうんですか。10年逃げてた強盗殺人犯を逮捕したんですよ、京極さんの株グーンとうなぎのぼりですよ」
「おう、やっぱデカは犯人逮捕してこそだよなっ」
「お父さん、すごーい」
「おお~ゆい」
「私も早くお父さんみたいな刑事になりたいな」
「そっかそっか、頑張れ~」
京極さんの扱いには手慣れた亮太くんです
「人生初だな、こんなにチョコレートもらったのは。うん悪い気はしないな(微笑)」←松浦さん。
*
数日後・・・
「ご無沙汰してます。10年という歳月がかかってしまいましたが漸く犯人を逮捕することが出来たことを改めて報告に参りました。遅くなって申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げる松浦さんです。
「いえ松浦さんにはずっとお気遣い頂いて、主人の命日の前後にいつもお花が添えられていたのは松浦さんがお参りにいらしてくださったんですよね」
「今年も犯人を逮捕することが出来なくて申し訳ありませんと謝罪に来ていました(苦笑)」
「いえ、そういう松浦さんの思いが犯人逮捕に結びついたんだと思います」
「娘さんはお元気ですか?」
「ええもう大学生になりました。あっ帰ってきたみたいです。真理子、覚えてる~松浦さんのこと?」
「えっ・・・」
「君は・・・」
「お母さん、なんか焦げ臭い」
「あっお鍋火にかけてるんだった、大変~」
「母はそそっかしくて(苦笑)」
「そっか、そういうことか」
「・・・・・・・」
「君はバレンタインデーに縁がないからではなくバレンタインデーが嫌いだった。何故なら2月14日は君のお父さんが殺された日だから。そして10年経っても犯人を逮捕できないふがいない警察を憎み困らせてやろうと思った」
「はい、その通りです」
「君のしたことは間違っている。だが結果として君のついた嘘によって犯人を逮捕できたんだ」
「えっ?」
「逆探知で高円寺駅の公衆電話と出て、一目散にそこに駆け付けた血気盛んな刑事(見た目は50代で中身は20代の)は怪しい男を見つけ職務質問しようとしたところ逃げたので追いかけた。捕まった男はもう逃げるのに疲れたと自首した。君の嘘・・・いや犯人を逮捕して欲しいという強い思いが犯人逮捕に結びついたんだと思う」
「指切りげんまん・・・」
「えっ?」
「10年も前のことだから忘れてたいたけれど思い出しました・・・」
回想・・・・・・
おじちゃんが必ず犯人を捕まえるから、指切りしよう。
うん
指切りげんまん、嘘ついたら針千本のーます。
指切った! おじちゃん、早く犯人捕まえてね。
「私も思い出した・・・君があのとき指切りした少女だったんだね、嘘をついたのは私もだな。もっと早く捕まえられると思ってた」
犯人はすぐそこにいたのに、「ひき逃げだ!」の声に振り返ると子供が血を流して倒れていた。子供の命を優先するしかなかった。
「ありがとう・・・おじちゃん」
「私が犯人を逮捕したわけではない」
「ううん、きっと犯人は松浦さん・・・警察から逃げるのに疲れて自首したんだよ。警察はなにもしてないわけじゃなかったんだね」
「うん」
「バレンタインデーにチョコレートあげる彼氏も友達もいないんじゃお父さん心配するね」
「そうだな(微笑)」
「来年は手作りチョコをお父さんのお墓に供える。それに彼氏はともかく、友達作らなきゃ。今までずっと下向いて生きてきたから」
「その伊達メガネ外してごらん」
「えっ?」
「空はもっと青く見えるし、メガネしないほうが可愛いよ・・・きっと(照)」
「ありがとうございます(笑) あっ私苦学生って言いましたが嘘です。父は生命保険に入っていたから贅沢しなければ母子ちゃんと生活できてますんで」
「そっか、よかった」
「では失礼します。お母さん~鍋焦がさなかった~?」
携帯が鳴る・・・
「松浦さん! お休みのところすみません」
「どうした!」
「M銀行品川支店で銀行強盗が行員を人質にして立てこもっていると」
「わかった、すぐそっちに向かう」
回想・・・・・・・
「お父さん、今日はいい天気だね」
「ずっと雨だったから久しぶりの青空だな」
「気持ちいいねー」
「お父さん、今日は非番だからキャッチボールしよう!」
「やったー!」
久しぶりの青天の下それぞれが思い思いに楽しんでいる。
「お父さんは守りたいんだ、この景色を。みんなが安心して笑って暮らせるこの町を。いつも忙しくてあんまり聡と遊んでやれなくてごめんな」
「ううん、大きくなったら僕もお父さんみたいな警察官になる!」 end
甘いお話ではないですが、楽しんで頂けたなら嬉しいです。

嘘の戦争の公式の「6話のみどころ」はネタバレらしいです。ネタバレNGな方は気をつけてくださいね。私も読んでないです。