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Tea Time

ほっと一息Tea Timeのような・・・ひとときになればいいなと思います。

ホタルノヒカリ外伝・最終章 「プロポーズ」(前編)

2009-09-23 21:00:14 | ホタルノヒカリ1・外伝
2008年 夏・・・

「ただいま・・・」

「キャン!キャンキャン!」

「うぅぅ・・・」

「ぶちょお~おかえりなさ~い」

「なんでうちに犬がいるんだ!」

「可愛いでしょう~」

「どうしてその犬がうちにいるのか聞いているんだ」

「飼い主と離れてしまったのか迷子になっていたんです。1時間以上飼い主がくるの待っていたんですが、辺りが暗くなってきたので家に入ったんです。」

「あっそっ、とにかく早く飼い主を探しなさい」

「ご主人様が見つかるまで蛍お姉さんと過ごしましょうね、マリリン!犬嫌いのおじさんがいて窮屈かもしれないけど」

「マリリンて・・・犬だったらシロかポチだろ、大体この犬はどう見てもシロだ」

「猫ならにゃんこ、犬ならシロかポチって(芸が無さすぎ)昔、マリリンに逢いたいっていう映画があったんですよ、海を隔てて離れ離れになった恋人同士のマリリンとシロという犬がいて、病気で死にそうなマリリンに逢いにシロは怪我しているにも拘らず、海を泳いでマリリンに逢いに行くんです。青い海と白い雲に、懸命に泳ぐ白い犬・・・感動でした~で、もし犬を飼ったら絶対にマリリンという名前にしようと決めていたんです」

「君は海を泳ぐ白い犬の姿に感動したんだろ?だったらそこはやっぱりシロだろ。それに・・・雨宮、残念だったな、この犬は雄だ。ん?首輪に名前が・・・健太郎って書いてあるぞ」

「キャー君は健太郎っていうんだ~健太郎よろしくね!」

「おいっマリリンはもういいのか?」

「だって、この子雄だし~健太郎って名前だ~い好き。その理由はですね」

「どうでもいいし・・・」

「そんなこと言わないで聞いてくださいよ~」

「こらっ俺になつくな~!」


迷子の犬預かっていますという張り紙を出したもののなかなか飼い主は見つからず・・・
只今の同居人?ぶちょおと私と健太郎+ときどきにゃんこ。。。
「今年の夏もビールが美味い!」と縁側でぶちょおと飲むビールの味は格別でこんな日はずっとずっと続いていくんだと思っていた。



                       *


「火の始末はちゃんとして、戸締りは忘れずに、それから・・・」

「はいはい、子供じゃないんだから大丈夫ですよ、健太郎もいるしね」

「まあ猫の手よりはマシというか、番犬もどきにはなるだろう・・・う~ん、もひとつなんか言わなきゃならんことがあったんだが」

「ぶちょお~新幹線の時間に遅れますよ、気をつけて行ってらっしゃ~い」



                    *


「ただいま」

「ワンワン」

「おかえりなさ~い、二ツ木さんが美味しいお肉持ってきてくれて、すき焼きパーティやることになったんです」

「部長、お邪魔してます。出張ご苦労様です」

「高野、あっちの工事の進み具合どうだった?」

「ああ、順調だよ」

「仕事の話は明日にして、さっお肉も煮えてきたし食べましょう~」

「はーい、いっただきまーす。うん美味しい~」

「本当に美味しいお肉ね~あなたにしちゃ奮発したわね」

「うっ・・・気持ち悪い・・・」

「大丈夫~蛍?」

「うっ・・・」

「まさか・・・まさか・・・まさか」

「ん?」

「ちょっと・・・トイレ・・・」

「まさかって?・・・えっそれってできたってことか?」

「はっ!?・・・そんな筈は・・・」

「ちょっと高野部長!その言い方ってなんですか!高野部長がそういう人だとは露ほどにも思っていませんでしたよ!」

「まあまあ急に言われて驚いただけだって、なっ」

「あっ蛍、大丈夫?顔色悪いわよ」

「痛い痛い、お腹が痛い・・・(バタン)」

「キャー救急車~!」



                     *


「症状は軽いですがサルモネア菌中毒ですね、古くなった卵とか食べませんでしたか?」

「あっ・・・・・」




「大丈夫か?」

「ぶちょお・・・ずっとここにいたんですか?」


・・・なんか私よりやつれた顔してる・・・


「すまない雨宮、出張に行く前に冷蔵庫の中の卵は古いから食べるなって言おうと思っていたのに、あのときそれが思い出せなくて、そのせいでこんなことに、すまない、本当にすまない」

「大丈夫ですよ、大したことなかったし、気にしないでください」

「そんなわけにはいかない、命にかかわることだ」

「じゃあ今度お買い物に付き合って、私の欲しいもの一つ買ってくださいね」

「うん、わかった。夕方には退院していいそうだ。山田が迎えにくるって・・・俺が行ければいいんだが」

「だからそんなに気にしないでくださいって、早く会社行かないと遅れますよ」

「うん」



卵か~卵かけご飯じゃなくて、焼けばよかったな。
山田姐さんなんて妊娠したかと思ったって(笑)
でも・・・ぶちょおの子供・・・欲しいな。。。
えっ?・・・えーーーーーー!?

そうなんだ、ぶちょおとの生活が楽しくて今まで考えたことなかったけど、
私のぶちょおに対する気持ちってそうなんだ・・・そうだったんだ。。。



                      *

「雨宮、大したことなくてよかったな」

「ああ、それにしても大事なこと思い出せないなんて、俺も歳かな~参ったな」

「山田がいうように妊娠だとよかったのにな」

「二ツ木!」

「だってそれだとグダグダ悩まずに結婚までスパーと行けるじゃん」

「そんなことになったら、親御さんに申し訳がたたない」

「相変わらず頭固いよな~まっおまえらしいけど、でもいまどきバツイチとか、気ににしなくていいじゃん、歳の差だって13、14だっけ?たいした差じゃないって。それとも結婚なんて考えてないって?そんなことないよな~おまえの性格でダラダラと同居続ける訳ないよな。」

「ああ全ておまえのいうとおりだよ、特に今回のようなことがあるとなにやってんだろうと思うし、ただなんつーか何事もタイミングが難しいんだよ。大体雨宮はまだ若いだろ?俺と結婚まで考えていると思うか?」

「しーらないっ。自分で聞け」

「いやどっちかというとここで一言欲しいんだが・・・てかおまえは山田とはどうなんだ?結婚とか考えてないのか?」

「俺?俺なら毎日プロポーズしてるぜ~」

「あっそっ・・・」

「まっ頑張れよ~で、俺と合同結婚式やろうぜ(笑)」



                        *


「明日買い物いかないか?ほらなんか欲しいもの買ってくださいっていってただろ?」
「明日は学生時代の友達と会うんで」
「そうか、じゃまた今度な、あっそうそうさっきプリン作ったんだ、もう固まってるかな」
「えープリンて作るんですか~?」
「あのスーパーで売っている牛乳混ぜて冷やすだけじゃなくて、ちゃんとオーブンで焼いて作ったやつだぞ」
「へぇ~すご~い、それに美味しい~」
「健太郎も食うか?」
「ワンワン」
「ドックフードって栄養価が高いから、あんまりなんでも食べると肥満になってよくないというか、ドックフードだけ食べてれば大丈夫なんですって」
「じゃあ、おやつ食べた分いつもの倍散歩いこうか」
「ワンワン」


ぶちょおたら、すっかり健太郎になついてるな(健太郎がなつくんじゃないのかい)
でも健太郎がいてくれると助かる、なんかあれ以来ぶちょおは妙に優しいし、私は自分の気持ちに気づいたせいか、なんか意識しちゃってぶちょおと話すの緊張するし。全く緊張のないところから始ったのに。なんでだろ・・・。
今はぶちょおといると緊張するというかドキドキする~。
気がつくとぶちょおのことばかり考えているし、そう思い出した。恋って面倒というか疲れるものだったんだ。
なんでも話せて、まるでボケと突っ込みの漫才しているみたいに楽しかったのにな。




                       *

朝新聞を読む部長・・・

「なんだって!」
「どうしたんですか?」
「リーマンが破綻した」
「リーマン?」


アメリカ証券大手リーマンブラザーズが破綻したことから、一気に景気は後退した。
世の中不景気になると消費は冷え込み、クライアントが着工の中止を申し出てきたり、経費削減で少しでも安くあげようとどこも必死だ。
部長の眉間の皺も日増しに深くなる。

「多摩市のグリーンタウン計画、うちがとるぞ!」
「はい!」

みんな気合入りまくりで頑張った。
SWDの存続がかかっているといってもいくらい大きな仕事だった。それにグリーンタウン計画はぶちょの建築家としての夢が詰まった家造り、
街造りなんだよね。
う~ん夢が詰まったとまではいかないか、一企業の社員だし、このご時勢制約も多いし、でも夢への第一歩なんだよね。
ぶちょおは独立とか考えているのかな?もしそうなったら私も側で手伝いたいな。

・・・ふとそんな未来を妄想する蛍ちゃん。・・・

とにかく今は目の前にある仕事頑張らなきゃ!



「部長!どうでした!」

「うん・・・とったぞ!」

「ヤッター!」

「みんなが頑張ってくれたからこそだ、みんなありがとう。来週から又忙しくなるから今日は残業無しでゆっくりして鋭気を養うように」

「はーい!」

「今日は飲もうぜ!部長は?」

「うん、あんまり胃の調子がよくないから軽く一杯なら」

「軽く一杯の人から、二次会、三次会OKの人まで行くわよ~」


ぶちょおの眉間の皺がなくなった。
あっ目が合った!笑った!。私は二次会に行くふりして途中でお腹痛くなったとかいって帰ろうかな。
こないだ通販で買った湯豆腐セットが届いたんだよね、湯豆腐と熱燗で軽く一杯っていいかも~。



                       *


「高野様、こちらの指輪でよろしかったでしょうか、確認お願いします」

「はい、これで間違いないです」


サイズは間違いないな、しょっちゅう洗面所に指輪置き忘れているもんな。
まっ婚約指輪だったらもっと大事にするよな・・・あいつのことだからやや不安ではあるけど。
問題はいつプロポーズするかだ。。。
こういうのってタイミングが大事だよな、でも来月クリスマスだし。
女っていうのはイベントが好きだしな・・・俺も嫌いじゃないけど。
だけど膳は急げという言葉もあるし、今日は大安吉日だし。
入札も決まったことだし、気分よくプロポーズして久々にイチャイチャしたい・・
て、俺なに言ってんだ~!?(照)
大体雨宮は俺のことどう思っているんだろ? 結婚とか全然考えてなかったらどうしようか・・・
う~ん、もんもんもん・・・頑張れぶちょお 



「ただいま」

「遅かったですね」

「ちょっと寄るところがあったから」

「湯豆腐食べながら熱燗で一杯てどうですか?」



・・・蛍ちゃんの得意料理、夏は冷奴、冬は湯豆腐て・・・


「これ通販で買った湯豆腐セットです。こういうので食べると凄く美味しい気がしません?」

「うん、確かにいつもより美味いな」

「でしょう~」

「あのな、ちょっと話があるんだけど・・・」

「なんですか~改まっちゃって~あっ携帯鳴ってる・・・もしもし雨宮です。えーーー!真由美プロポーズされたの?」

「ゴホンゴホン←湯豆腐にむせるぶちょお」

「そういうつもりで付き合っていたんじゃないんでしょ?でも悪い気はしないって、でも結婚する気はないって、えっ彼から電話だから切るって・・・
もう~人騒がせなんだから、で、ぶちょお~話ってなんですか?」

「今度旅行っていうか、温泉でも行かないか?」

「えっ!?いついつですか?」

「いつがいいかな・・・」

「いいですね~温泉、嬉しいです!でもこれから忙しくなるしあんまり当てにしないで待ってますね(笑)」



プロポーズ→長野の家に挨拶に行く。。。
↑という考えがぶちょおの頭の中にあるのだが、肝心のプロポーズをすっ飛ばしてしまい凹むぶちょおなのであった


「大丈夫!大安吉日の今日という日が駄目でも、まだクリスマスがあるじゃないですか~」←特別出演・宗十郎さま。


ん?なんか聞こえた気がする・・・天の声か、それとも空耳か。。。



                      *

一ヶ月後・・・

「明後日のクリスマスだけど」

「そういえばもうクリスマスですね」

キタキター!バリバリに空けてますよ~。

「六本木の・・・」

「あっ携帯鳴ってる、お姉ちゃん?珍しいな・・・もしもしなに? えっ・・・嘘・・・お母さんが・・・うん、わかった・・・」

「お母さんがどうしたんだ?」

「お母さん、事故にあって酷い怪我で救急車で運ばれたって・・・どうしよう、どうしよう・・・」

「今ならまだ最終に間に合う、今タクシー呼ぶから早く用意しなさい」

「はい・・・」

腰が抜けそうだった・・・・手の震えが止まらなかった。
ぶちょおが私の旅行バックに身の回りのものを詰め込み用意してくれた。

「雨宮、気を確かに、きっと大丈夫だから・・・」

「はい・・・」


真っ青な顔で今にも倒れそうだった。
せめて長野の駅まで一緒に行ってやればよかった。
明日の会議とか考えないで・・・クソッなんで直ぐにそういうこと考えるんだ、俺って。。。
俺にとって一番大事なものはなんなんだ?・・・俺って駄目駄目だな、昔とちっとも変わってないじゃないか。。。


翌朝・・・

「ぶちょお」

「雨宮!お母さんの容態は?」

「命に別状は無いです。だけど怪我が酷くて痛々しくて見てるのが辛いです」

「雨宮・・・」

「お父さんが呼んでいるから電話、切りますね」

なにも言えなかった。どう言えばいいかわからなかった。
情けない・・・君より長く生きていて、いっぱしの大人のつもりだったが、なんの言葉もかけられなかった。。。


一週間後・・・

雨宮から電話・・・

「お母さんの具合はどうだ?」

「集中治療室からは出れたんですが、他の怪我は時間が経てば治るけれど、大腿部骨折があってリハビリが凄く重要になるそうです」

「そうか・・・」

「部長、今日付けで退職届けを部長宛に送りました。忙しいときに急に辞めることになって申し訳ないんですが、どうか受理してください、
よろしくお願いします」

「会社辞めるのか!?なにも辞めなくても、看護休暇とかいろいろあるんだぞ」

「いつ完治するかわからないし・・・お父さんは仕事があるし、お婆ちゃんは神経痛だし、弟は浪人生だし、お姉ちゃんとこはまだ子供が小さいし、何よりも私が母の側にいたいんです。今自分にとって一番大事なことはなんなのか考えたんです。それで今日退職届けを出しました」

今まで聞いたことのない雨宮の力強い声で、揺らぎのない決心だということがわかった。
心細そうに新幹線に乗った雨宮はもうそこにはいなかった。


「わかった、諸々の手続きは私がやっておくから君はお母さんの看護に専念しなさい」

「部長、ありがとうございます。それで家にある荷物なんですがしばらく置いてもらっていいですか?」

「荷物のことなんか気にするな、それよりもいるものがあったら連絡しなさい、直ぐに送るから」

「はい、ありがとうございます」

「そっちは東京より寒いだろうからうたた寝とかしちゃ駄目だぞ、風邪ひくからな」

「はい、気をつけます。部長も風邪には気をつけてくださいね」

「うん」

「じゃあ、お元気で」

「君も元気でな・・・」




いつもの 「ぶちょお」という声が「部長」に聞こえて切なかった。。。

もし一ヶ月前にプロポーズしていたらなにかが変わっていたただろうか?

俺は君の側にいれただろうか?君はもっと俺に甘えてくれただろうか・・・

縁側を開けると師走の風は冷たくて・・・だがそれよりももっと冷たい風が心の中を吹きぬけていた。




ぶちょお・・・ぶちょお・・・ぶちょおのこととても好きです。
でも今はぶちょおのことが考えられないんです。
私は高校を出てから東京の大学に行ってそこで就職して、ずっとお母さんとは離れて暮らしてた。
お母さんが元通りに歩けるように私頑張るんだ・・・そう決めたのになんで涙出るかな?
今日だけだから、うんもう泣くのは今日で終わりにしよう。
明日からは泣かない、今日で涙ともぶちょおともバイバイするんだ。。。



                                 (後編に続く)
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ホタルノヒカリ外伝・最終章 「プロポーズ」(後編)

2009-09-23 20:47:38 | ホタルノヒカリ1・外伝
「寂しいな~まさか蛍が会社辞めるなんて思いもしなかったわ、仕方がないことだけどね、
今自分にとってなにが一番大事かを考えて出した結論です・・・なんていわれたらなにも言えなかったわ」

「高野・・・雨宮にプロポーズする気だったたんだぜ」

「えーーー! そうだったんだ・・・どうなるんだろう?あの二人」

「俺は信じているよ、あの二人にはきっと赤い糸が繋がっているってな」

「うん・・・そうだね、私も信じる・・・あーあ、私の赤い糸の先には誰がいるのかな?」

「すぐそこにいるじゃん」

「えっ!?どこどこ?全然見えないんですけど~」

「ならいいや」

「どしたの?今日は食いついてこないわね」

「俺さ、高野が幸せじゃないと駄目なんだよな」

「好きよ、あなたのそういうとこ」


       
                           *



あれから3ヶ月が経とうとしていた。

毎朝新聞に目を通し、朝食を食べ、会社に行く。
健太郎の散歩は毎日の日課になっていた。
ときには会社の連中と飲みに行ったりもする。
極々平凡に日々の暮らしは流れていく。
君のいない家は広くて寂しくて仕方なかったけれど、そんな生活にもいつの間にか慣れていた。
こんなふうに俺は段々と君のことを忘れていくんだろうか。
いや・・・そのほうが楽だからそう思おうとしているんじゃないのか?

「ワンワン!」

「健太郎~ごめんごめん、餌まだだったな」

怪我している犬でさえ、恋人の元に何キロも海を泳いでいくっていうのにな。
長野なんて新幹線乗れば直ぐなのにな・・・

「健太郎!餌食べたら散歩に行こうか?今日はまだ時間早いから少し遠くまで行くか」

「ワンワン」


                                  *


「お母さん、明日退院だって!」
「やっと家に帰れるね」
「退院しても通院してリハビリ頑張らなきゃね」
「はいはい」
「ありがとう蛍、お母さんがこんなに早く退院できたのは蛍のおかげだよ、好きな仕事まで辞めちゃって悪かったね」
「ううん、仕事は又いつでもできるもん」
「あっちで好きな人とかはいなかったのかい?」
「ちょっといいな~と思う人はいたけど、それくらいだから。それにもし相思相愛の恋人でもいたら、長野に帰ってこなかったもの」
「それもそうだね」


もしかして私ってそんなにぶちょおのこと好きじゃなかったのかな?
んなことないか、今でも好きだもん。
ぶちょおのこと想ってる私は女の子だなと思う。ちょっと切ないけど少しだけ辛いけど・・・
でも嫌いじゃないよ、今の頑張ってる蛍さんも・・・会えない人のことをずっと思ってる健気な蛍さんも可愛くて結構好きだよ(微笑)
さてと買い物して帰って、晩ご飯つくんなきゃね。←レパートリーが増えたらしい。


「雨宮さん、少し休憩しましょう」
「もう少しだけ頑張ります」
「雨宮さんも、雨宮さんの娘さんも頑張り屋さんですね」
「ええ、娘の為にも一日も早く歩けるようになりたいんです」



                                    *


駅のプラットホーム・・・

今日は遅くなったな、健太郎待ってるかな、朝のうちに散歩しておけばよかったな。


「危ない!」

「えっ!?」

瞬間誰かに背中を押されたような気がした。気がつくと線路の上にいた・・・ヤバイ。

急いでプラットホームに手をかけて上がろうとすると、丸たんぼうのような太い腕に身体を抱えられ即座に引き上げられた。
と同時に電車が入ってきた。皆が一斉に拍手して俺を助けた青年を称えていた。
そして一人の男が警察に取り押さえられていた。
「大丈夫ですか?」駅員にそう言われてやっと我にかえった。

駅の事務室に通されいくつかの質問を受けた。
少し足をくじいたくらいで大した怪我がなかったこともあり、新聞に載っても会社の名前は出さないし、そう大きな記事になることはないだろうと言われてホッとした。
そして俺を助けてくれた青年は表彰されるだろうとのことだった。


あの青年には感謝してもしきれない。
もしあのまま運悪く死んでいたとしたら死んでも死に切れない。
もう化けて出るしかなかったな・・・


「この度は本当にありがとうございました、君がいなかったら私は電車にひかれて死んでいたかもしれません」
「そんなことないですよ」
「あのとき危ない!という声がしたから身構えることができて足から着陸したから命拾いできたんです」
「ああ、俺って動物的勘みたいなのがちょっとあるみたいで、ホント人助けができてよかったです」
「今度お礼に伺わせてください」
「そんな気使わないでください」
「そんな訳にはいきません、それでは私の気がすみません」
「はあ・・・」



なにかスポーツでもやっているんだろうか、いい身体していたな。
なにか食べ物がいいかもと思ってハムの詰め合わせと肉を買って彼のアパートにいった。

「高野です」
「すみません、こんな汚いアパートにわざわざきて頂いて」
「これよかったら食べてください」
「わ-ありがとうございます。こういうのすげぇ~嬉しいです」
「よかった(笑)」
「俺KIやってるんです。といってもまだ前座の試合しか出させてもらえませんが」
「どうりで、でもいくら強くたってああいう場所で咄嗟に行動するのはなかなか出来ることではないですよ」

「人は優しさと、ほんの少しの勇気があれば幸せになるんだよ」

「亡くなった母の口癖でした」
「いい言葉だ・・・」
「はいだから今俺は幸せなんです。こんなボロアパートに住んでいますけどね(笑)」
「いい人がいるのかな?」
「ええまあ、でもいろいろあってその言葉の意味を忘れかけていた頃に母と同じようなことを彼女に言われたんです。彼女と一緒に幸せになろうと思いました。そして俺の試合を見た人が元気になるようなそんな試合をしたいと思っています」
「今度試合見に行ってもいいかな?」
「はい!是非!」


なんとも清々しい若者だった。
人は優しさとほんの少しの勇気があれば幸せになるんだよ・・・
か・・・ほんの少しの勇気って難しいよな。

「こらっ健太郎!そっちじゃないだろ」

「健太郎!」

「ワンワン!」


「直ぐに健太郎のこと探しにきたかったんですが、母が病気で倒れてなかなか探しにこれなかったんです」

「健太郎はずっと待っていたんですね、あなたのことを。健太郎はとてもいい子というかいい犬でした。悪さもしないし犬が苦手の筈の私が健太郎といることで楽しく過ごすことができました。」

「そうでしたか」

「健太郎、元気でな。今まで有難う!おまえとの散歩はいい運動になったし楽しかったよ。もう迷子になるんじゃないよ」

「ワンワン!」

健太郎は何度も俺との別れを名残惜しそうに俺のほうを振り返りながら歩いていたが、角を曲がると尻尾を振って飼い主に寄り添って歩いていった。


俺も幸せになりたい・・・君と。。。 君と寄り添って歩いていきたい。。。



                                   *


「今こっちに来ている。君の都合のいい場所と時間をメールしてくれないか」

「ぶちょおが・・・きてる」



あっいた!遠目に見てもすぐにぶちょおってわかるんだよね。
あのシルエットを持つ人はなかなかいないもん。


「部長、お久しぶりです。お待たせしてすみませんでした」

「こっちは東京より桜の開花が遅いんだな、桜を見ていたら時間の経つのを忘れそうになったよ。久しぶり、少し痩せたかな?」

「ほんのちょっぴりですよ(微笑)部長もおかわりなく」


久しぶりに見た君は少し大人びて見えた。。。


「お母さんの具合はどう?」

「ようやく松葉杖で歩けるようになって先週退院したんです。今通院でリハビリして完治目指して頑張ってます」

「そうか頑張ったんだな、お母さんも君も・・・」

あんまり優しい顔でそう言うからつい涙が出そうになる。

「こっちへは仕事かなにかで?」

「いや、君に会いたくてきた」

「・・・・・・」


私は君が好きだ、他の女は誰も好きにならない
例え死んでも、、生きかえっても、生まれ変わったとしても私は君が好きだ。
雨宮蛍さん・・・僕と結婚してください。


「・・・・・・・・!?」

「あまみやっ!大丈夫か!ちゃんと息してるか!」

ハッ・・・ビックリしすぎて息するの忘れてた。

「驚かせてすまない、そもそもこんなときにプロポーズするなんてどうかと思うが、どうしても自分の気持ちを伝えたかった。
勿論いますぐにという訳ではない、何年でも待つつもりだ。
どんなに離れていても君と繋がっていたい。気持ちはいつも君の側に寄り添っていたいと思ってる。
だからこれを受け取って欲しい。返事はいそがなくていいから、ゆっくりでいいから考えて欲しい。」

「・・・・・・・」

「じゃあ、俺は7時の新幹線で帰るから・・・またな」

「あっはいっ気をつけて」


ぶちょのことが好きで結婚したいと思っていたのに・・・
なんだかいろんなことが頭の中をグルグルして・・・わからない。
今はわからない。。。


「ただいま・・・」

「すみませ~ん、宅急便です」

「はーい、ちょっと待ってくださいね」



あれ?ない・・・ない! なんで・・・なんで?
そうだ、バスの中でおばあさんとぶつかって、まさかそのときに落とした?
うそ・・・なんであんな大事なものを・・・
バス・・・バスの会社に電話しなきゃ。。。


「蛍、どうしたの?顔が真っ青だよ」

「大事なものをバスの中に置いてきたみたいなの」

「大変、早くバスの会社に電話しないと」

電話番号電話番号・・・見つからない、見つからないよ。
そうだ104、104にかけてみよう。やだ・・・指が震えて上手く押せないよ・・・


「こんにちは~永田ですけど蛍ちゃんいますか?」

「はい・・・」

「これ蛍ちゃんのでしょ?バスの中でバックから取り出して大事そうに眺めてたの、おばちゃん見てたのよ。
降りるときに何処かのおばあちゃんとぶつかって、怪我の心配したり荷物持ってあげたりしてたから、小さい紙袋だし落としたのきづかなかったんだね。次の停留所で降りたら息子の車が通って丁度よかったわ」

「永田のおばちゃん、ありがとうございます!ありがとうございます!」


ほっとしたら思わず涙が溢れ出た。。。



Jewelry Nao (紙袋に書いてある文字・フィクションなお店です)


「余程大事なものが入っていたんだね、蛍はそそっかしいから又落としたり無くしたりしないように、ちゃんとはめてもらいなさい。」

「えっ!?」

「ほらっ早く行きなさい。ややこしいことは後から考えればいいんだよ」

「でも・・・」

「明日地球が滅亡したらどうするの!」

「はっ!?」

「お母さんだって事故にあうなんて夢にも思わなかったもの、明日はなにがあるかわからないよ、だから後悔しないように今行くんだよ」

「うんありがとう、お母さん」



間に合うかな・・・間に合って~間に合って! あっ!


「ぶちょお! ぶちょお! ぶちょお!」


「あ・ま・み・や・・・雨宮!」

「駅でなら大きな声出しても叱られないですよね」

「ちょっと恥かしかったけどな(微笑)」

「エヘッ」  


                                *


「こんばんは~あっ直樹、うちの人が駅で蛍を見たんだけど、スーツ着た男性とラブシーンやってて、しかも部長って呼んでいたんだって、蛍ちゃん不倫でもしてるんじゃないかって言うんだけど」

「シッ!その男が今きてるんだよ」

「えーーーーー!」



「お父さん、お母さん、事後報告になってしまいましたが、お二人に黙って蛍さんと同居してたことお詫び申し上げます。無論決していい加減な気持ちではなくいづれは結婚をと考えていました。
私高野誠一は蛍さんより大分年上で、一度結婚に失敗しているという不甲斐無い男ですが、誰よりも蛍さんを想っています。蛍さんと共に幸せな人生を歩きたいと思っています。
勿論今すぐに結婚という訳ではなく、婚約のお許しを頂けたらと思い本日挨拶に参りました」

「ど・・・どうぞ、この娘でよかったらのしつけて差し上げます」


「親父~なに言ってんだよ~もっとバシッと決めろよ!」

「そうよ、大体バツイチの男なんだからもっと毅然とした態度で・・・
あら~素敵~いい男~、こんばんは、蛍の姉の真紀子です」

「あんたたちいつからそこにいたの!」

「すみません、お父さんテンパッちゃって、こういうの弱いんですよ。真紀子のときもね(笑)」

「お母さん私のときの話はいいから」

「粗忽な娘ですが、私ども大切に大切に育ててきた娘です。よろしくお願いします」

「はい!ありがとうございます」

「お式はいつがいいかしら?」

「そんな・・・まだお母さんが完治なされてないのに、それはまだまだ先の話で」

「そんなにかかりませんよ、蛍の花嫁姿見れると思ったらリハビリにも気合が入るし、なによりも高野さんの気が変わらないうちに早く嫁にもらってもらわないと」

「そうそう俺も目出度く大学生になれたし、母さんのことは任せてよ」

「東京で結婚式するんならお洒落なガーデンパーティーで披露宴とかいいわね」

「俺は美味いもんが食えれば~」

「これっあんたたちが結婚するんじゃないんだから(笑)あらっ蛍ったらいつの間にかこんなとこでうたた寝して、高野さんがいるのにね」

「初めて蛍さんと会ったとき、新聞紙被って縁側で寝てましたよ(笑)」


・・・すげぇ~大物だ~この人、こんな姉ちゃんと結婚する気になるなんて・・・


・・・こんないい物件、絶対に逃がさないように蛍によーく言っておかなきゃ・・・


「まあこの子ったら、そういえば家でもよくところかまわず寝てたわね、でも家に帰ってからはうたた寝してるの見たことなかったわ、高野さんの前だと安心するんですね」



「高野さん、向こうで少し飲みませんか?手打ち蕎麦もご馳走しますよ」

「ええ、是非」


「お父さんの作った手打ち蕎麦はやっぱり美味いな~あっ以前蛍さんが実家から持って帰ってきたことがあって」

「ああ、そういえば正月に友達が風邪で寝込んでいるとか言って早く帰ったことありましたね。」

「すみませんでした」

「昔のホームドラマで、娘の恋人がある日家に訪ねてきて父親に娘さんをくださいと頭を下げたとき何処の馬の骨かわからない男に大事な娘をやれるかっ!ていうシーンがあったでしょ?あれを見て憧れていたというか、よーし俺もと思っていたのに、長女のときは緊張して噛みまくり失笑ものだったし、今回も高野さんのような立派な方に立派な挨拶されたらもう何もいえなくなってしまって、可笑しなこと言ったりで本当にだらしないですね」

「いえ、私はそんな立派な男じゃないですよ。10年前も必ず娘さんを幸せにしますからって頭を下げてそう出来なかった男ですからね」

「確かにそこは引っ掛かります」

「すみません」

「蛍は献身的に看護して母親を励まして本当によく頑張ってくれました。奇跡の回復力だって病院でも評判でした。正直あの子があんなにしっかりした強い子だとは思いませんでした。きっと東京で一人暮らししていろんな経験して高野さんと出合って、そういうものがあの子を育てたんでしょうね」

「蛍さんは私より余程強いです。一緒にいると楽で楽しくて、私が私らしくなるというか素直になれるんです。明るくて優しくて素敵な女性です・・・てお父さんを前にのろけすぎですかね(笑)」

「いやー明日からはその3倍、蛍にのろけ話聞かされそうです(笑)」

「皆さんもとても楽しくて賑やかでいいご家族ですね。それにこの家いいですね。暖かくてとても落ち着きます。やはり家は日本家屋だな」

「大工だった父が建てたんですがもうあちこち古くなってしまって、でも愛着があるんで修理しながら使っています」

「東京ではもうなかなかこういう家を建てるのは難しくなっていますが、木のぬくもりを忘れない建築家でありたいと思っています」

「わしも高野さんと語りたかった~という父の声が聞こえてきそうです。ささっもう一杯」

「はい、頂きます」



                                   *


2009年・秋・・・

「本当に沖縄でよかったのか?ハワイとか海外とか行かなくてよかったのか?父に合わせて一緒に沖縄に行かなくてもよかったのに、折角の新婚旅行なんだから」

「これからのことを考えると節約第一です! それに私沖縄行ったことなかったし、凡太郎ちゃん・・・じゃなくてお義父さん大好きなんです」

「確かに君の方が凡太郎・・・じゃなくて父と気が合いそうだ」

「それに沖縄ってなに食べても美味しいし、のんびりできるし、海は綺麗でとても楽しかったです」

「うん、俺も楽しかった(水着姿はイケテたし)」

「あの角を曲がれば私達の新居ですね」

「新居ってなにも変わっておらんが」

「それでいいんですよ、家は古くても(悪かったな)私達はほやほやの熱々の新婚さんですよね~だからやっぱり新居なんです。まあちょっと初々しさにかけるかもしれませんが」

「それは私が40近くのオッサンだからか?」

「そんなこと誰も言ってませんよ~親戚一同皆ぶちょおのこと素敵~若い~とても40前のオッサンには見えないって言っていました」

「ほらオッサンって言っているじゃないか!それにいい加減ぶちょおという呼び方はどうかと思うぞっ」


「着いた~やっぱり我が家が一番!雨宮蛍再びじゃなくて三度戻ってまいりました~!」


「コホン、そうじゃないだろ」


「あっ失礼しやした~。 高野蛍です!・・・不束者ですがよろしくお願いします・・・誠一さん 」


お帰り、君の場所に・・・僕の側へ。。。




       完



ラストの素敵なイメージイラストは、ちな画伯に書いて頂きました。
最終章に華を添えてくださったちなさん、心よりありがとうございます。

えー2007年9月にホタルノヒカリ・外伝を書き始めてから約2年が経ちました。
こんなに長い期間で書いてこれたのは、ぶちょお&蛍というとても魅力的で素敵な愛すべきキャラクターを直人さんと蛍ちゃんが演じて作り上げてくれたからです。
そしてホタヒカ外伝を読んでくださった沢山の方々、感想をくださった皆様の次も楽しみにしていますという言葉があったからです。
2年間のご愛読ありがとうございました!心から感謝です。
最終章というのはまとめようと思うから、ストーリー的に面白くないかなというジレンマがあったりしてなかなか書けませんでしたが、とりあえず今は書けたことに満足してます。
と同時に一抹の淋しさもあったりします(^^   が・・・ ぶちょおと蛍ちゃんは永遠に不滅です!

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怪談・ホタルノヒカリ

2008-08-14 08:57:34 | ホタルノヒカリ1・外伝
「私たち今日会ったばかりなのにいいの?恋人はいないのかしら?」
「こんなに魅力的な女性を前にして手を出さないなんて男じゃないよ(笑)」
「あらっ上手いこと言って(笑)」

ふぅ~見た目はいいんだが中身は空っぽな男が多いの~美味とは言い難い。
何処かにいい男はおらんのか、昔はもっといい男がいたもんじゃが。

「空気や水は汚れてるし、人間の質は落ちるし、幽霊や化け猫にとっても澄み難い世の中になったもんじゃ」
「みけもそう思うか、だがこう暑くては人間の生気でも食わねば干からびてしまう、贅沢は言ってられんの」


                *

「ではぶちょお、しばらく実家に帰らせて頂きます。お腹出して寝ちゃ駄目ですよ、寝冷えしまうからね、飲みすぎも駄目ですよ」
「その言葉そっくりそのまま君に返すよ・・・君は・・・」
「ちゃんとお墓参りして親孝行してきます。毎日のぶちょへのラブラブメールも欠かしませ~ん」
「(笑)じゃあ気をつけて」
「はーい、行ってきま~す」

それにしても毎日暑いな・・・本屋でも寄って涼んで帰るか。
・・・おかしい、急に寒気がしてきた・・・妙に息苦しい・・・

「どうされました?真っ青な顔してますよ」

「いえ、大丈夫です・・・」だが立っていられない程の眩暈が襲う。

「私の家、直ぐそこですから少し休んでいかれては・・・」


断ったつもりだったが気が付いたら女の家で眼が覚めた。

「お加減如何ですか?」
「すみません休ませて頂いて、おかげ様でもうすっかり大丈夫です」
「よかった、今お茶入れますからね」
「いえ、おかまいなく」
「美味しい葛饅頭があるんですよ、あらっ雨?」

激しい夕立が降ってきた・・・ポタポタポタ

「雨漏りですね、これはちょっと酷いな、工具箱ありますか?ちょっと見てきます」
「すみません、有難うございます」

「応急処置はしましたが、ちゃんとなおしたがいいですね」
「古い家なんであちこち傷んでいて、少しリフォームしたいなと思っているんですよ」
「あっそういうことなら僕は建築関係の仕事をしているんです。会社で個人の家のリフォームはしていないんですが、いい工務店紹介しますよ、そうだな明日明るいときに来て少し家を見せて貰っていいですか」
「そうして頂けると助かります。でもご迷惑では?」
「今お盆休みで暇なんですよ、それに建築に拘る者としては、こういう趣のある古い日本家屋っていいなというか、あっすみません古いなんて言って」
「いえ(微笑)この葛饅頭手作りなんですよ、お口に合うとよろしいのですが」
「うん、これは美味いや」
「良かった、沢山食べてくださいね」


                *

「珍しいんじゃないか、直ぐに食わないとは?」
「あれだけのいい男、直ぐに食うのは勿体無いではないか」
「ふ~ん」

どこか似ている・・・遠い遠い昔愛した男に・・・
だけどあの男は、あんなふうに柔らかくは笑わなかった。。。


               *

「やはり完全にリフォームするんではなくて、趣のある日本家屋の良さを残したいですね。あっすみません勝手なこと言って、北乃さんの希望が第一ですから」
「いえ、私もそう思っています」
「ところでこの長椅子は?」
「あっ以前書道教室をやっていたんですよ・・・ただ一昨年主人を亡くしまして、それでしばらく休むつもりがズルズルと、やりたい気持ちはあるんですが・・・」
「そうだったんですか・・・又やりましょうよ、あなたのような方が先生なら沢山の生徒さんが来ますよ、最近は字を書かなくなって、書けなくて人前で字を書くのが恥かしいという若者が多いんですよ、僕もそうですが(笑)若い人達にもうけるんじゃないかな、書道教室」
「そうでしょうか」
「ええ、それを頭に置いたリフォームを考えましょう」
「又この家も賑やかになるかしら?」
「なりますよ、簡単な設計図書いて明日持ってきますね」
「有難うございます。今日はお食事用意したんですよ、大したものじゃありませんが食べて言ってくださいね」

「なんかこういう家庭料理って久しぶりだな~うん美味い・・・どれもこれも全部美味い、北乃さんなら料理教室も開けそうですね」
「まあ、お上手なこと(笑)」


                 *

男は次の日、設計図を持ってきて眼を輝かせてその設計図の説明をした。
そして私の用意した料理を美味そうに食べて帰っていった。
明日は設計図を立体化したものを持ってくると言っていた。

「随分と身持ちが固いというか、お初を前にして稀有な男じゃの(笑)」
「ふん」
「惚れたのか?あの男に」
「まさか!ああいう男は珍しいというか、ちょっと面白くて遊んるだけじゃ」
「ならいいが、人間に惚れてもろくなことにならん」

惚れる訳ないだろ・・・
ただあの男といると妙に楽しい。そしてあの笑顔に癒される。
ただそれだけだ。
それにしても暑い・・・身体がだるくて眩暈がする。そろそろ潮時か。。。

            
                *

「じゃあ明日から会社が始まるんで、知り合いの工務店に話してみますね。」
「なにからなにまで有難うございます。そうそう今日は美味しい地酒があるんですよ」
「すみません、今日はちょっと早く帰りたいので」
「あらっ誰かと約束しているのかしら?」
「約束って訳じゃないんですが・・・」

・・・・・女か・・・・

「では今日はこれで」
「気を付けて・・・あっ・・・」

「北乃さん大丈夫ですか!?」

思ったより逞しい腕・・・

「大丈夫、少し立ちくらみがしただけ・・・でも帰らないで、もう少しここにいて」
「えっ?・・・」

そう、私から眼をそらさないで!私を見なさい・・・
そしてそのまま私を抱きなさい。。。

ルルル・・・

「(はっ)すみません携帯鳴っているんで」

・・・ぶちょお~只今帰りました!早くぶちょおの顔が見たいです・・・

「恋人?」
「ええ・・・まあ、あっ身体のほう大丈夫ですか?」
「はい・・・もう大丈夫です」


今夜はその女を抱くのか・・・そうはさせまい、させるものか。。。



                *

「ぶちょお~お帰りなさい!」
「皆さん元気だったか?」
「はい、すこぶる元気でした!ぶちょお少し顔色悪くないですか?」
「そうか?長野と比べると東京は暑いからな、少しからだがだるい気がする」
「えー大丈夫ですか?明日から仕事なのに」
「今日は早く休むよ、誰かきてるのか?」
「はい、帰りの新幹線で仲良くなって、ちょっとうちに来て涼んでいたんです」
「お邪魔してます」
「どうぞゆっくりしていってください」


「蛍ちゃんの彼、いい男じゃの」
「でしょう~」
「だが・・・あの男、悪い霊が取り憑いてる」
「はっ?なんですか、それ?」
「私はこう見えて、昔は恐山で修行してイタコをやっておったんじゃ」
「えーーーーー!そっそれでぶちょおには何の霊が憑いているんですか?」
「女の霊だ」
「女?」
「昔男に酷い裏切られ方をした女が成仏出来ずにこの世を彷徨い、男を食いその生気をむさぼるという性質の悪い女の霊じゃ」
「どんだけ性格の悪い女なのよ!」
「幽霊なんてそんなもんだ」
「それでその女の霊に取り憑かれているというぶちょはどうなるんですか」
「今のところ何ともないようだが・・・」
「いまのところ?」
「その幽霊と契りを結んだ男は生気を吸われて、命までは落とさぬものの、半年は寝たきりになるとか不能になるとか聞いておる」
「そっそんな・・・・おばさん、元恐山のイタコなら何とかしてくださいよ!」
「今夜どうしても行く所があってな、明日の夜には戻るから、それまで彼氏のことしっかり見張っているように、そして何かのときにはこのお札を使いなさい」
「これ・・・効き目あるんですか?」
「あると思う・・・」
「なんか自身無さげですね」
「とにかく頑張れ蛍ちゃん、じゃ又」
「あっおばさ~ん」

そんな怖い話だけ聞かせて、どうすればいいのよ~。
ぶちょおはこの手の話信じないし、とにかく明日はぶちょおのこと見張ってなきゃ。


                  *

逢いたい・・・逢いたい・・・
愛しい人よ・・・私に逢いにきて・・・
そして私を抱いて・・・抱いておくれ。。。


「にゃあにゃあ・・・あれはぶちょお、こんな夜中に何処行くんだ?
なにか酷く嫌な予感がする。にゃんこ2号!蛍を起こしてきて、私は後をつけるから」
「わかった!」

「にゃあにゃあ(蛍起きて!)」
「ん・・・どうしたのにゃんこ2号」
「にゃにゃあ(こっちこっち)」
「なになに?玄関が開いてる、しかもぶちょおのスリッパがない・・・まさか?」
「にゃあにゃあ(こっちこっち)」



                  *


ここは・・・北乃さんの家?どうしてここに・・・


「嬉しい・・・私に会いにきてくれたのね」

「僕が君に?」

「待ってたわ・・・ずっとずっと待ってたわ、あなたを信じてずっと待っていた
それなのにあなたは・・・でもいいの、こうして私に会いにきてくれた・・・嬉しい」

「ごめん、なに言っているのかよくわからない」

「私を見て・・・私から眼を逸らさないで・・・そうそれでいい。
そしてそのまま私を抱きなさい、天国にいかせてあ・げ・る」

恋しい人、そのまま私の胸に顔を埋めなさい・・・

何故?何故手を止める・・・ならこっちからいくまでじゃ!


ぶちょおーーーーー!


「このお札が眼に入らぬか!幽霊退散!」

「なんだそれは?」

「へっ?(きっ効かないのか、このお札)」

「思ったより若い娘じゃの・・・大体一体ここに何しにきたんだ」

「ぶちょおを助けにきたのよ!」

「私達は愛し合っていただけじゃ、無粋な女よの」

「そんなのぶちょの意思じゃない、あなたが操ったんでしょ!」

「さあどうだか・・・男だったら恋人がいようと美しい女に惹かれるのは自然だろう」

「ぶちょおはそんな人じゃない、それに仮にそうだとしてもそんなの関係ない!
私はぶちょおが好き!ぶちょおのことが大好き!ただそれだけ・・・
それにあんたは人間じゃない!幽霊のあんたなんかにぶちょおは渡さない!
離れて!離れろ!あっちに行け!あっちに行け!えいっえいっ(そこら辺りにあるものを投げる蛍ちゃん)」

「ふっ・・・今頃お札が効いてきたようじゃな」

「えっ!?・・・あれっいない、いなくなった。ヤッターあのお札効いたんだわ、おばさん有難う!・・・」

「ぶちょお大丈夫ですか!そんなあらわな格好で(見たいぞ)幽霊にやられちゃったんですか!?ぶちょお~眼を覚ましてくださいよ~ぶちょお~(大泣)」


                  *


「お初、どうして?」

「遠い昔、私もあんなふうに純粋に誰かを愛したことがあったような気がする。
あまりにも昔過ぎてよく覚えていないがな・・・」

「とにかく誰でもいいから食ったほうがいい、そのままじゃ」

「塵になって消えるか・・・それもいいかもしれんな・・・私があの世とこの世の狭間を彷徨うようになってどれだけの年月が経っただろうか・・・もう充分だ」

「お初・・・・・」

「あの男と過ごした4日間は楽しかった。それにあの娘が流した真珠のような涙
最後にいいもの見せて貰ったよ(微笑)」



                   *


「ここは?」

「病院ですよ」

「何故病院に?」

「高野さん気分はどうですか?顔色いいですね、脈も正常だし、軽い貧血と過労ですから、もう帰ってもいいですよ。夏は栄養のあるもの食べてしっかり休んでくださいね」

「はい、ありがとうございます!」

「う~ん・・・俺は何処で倒れたんだ?」

「えっ?」

「実は君を駅まで送っていた後のことが全然思い出せないんだ」


・・・覚えてないんだ、ラッキー~あんなこと絶対に覚えてないほうがいいよね・・・


「ぶちょお、倒れるとき頭打ったからそれが原因じゃないですか?」

「そっか~でも何も覚えてないのはちと気持ち悪いんだが」

「私のいない4日間なんて、掃除洗濯して、本読むか音楽聞いたり、にゃんこ相手にビール飲んだり、どうせそんなとこでしょ、大したことじゃありませんよ」

「(確かにそうだ)でもな・・・」

「ぶちょお、会社は?」

「今何時だ?」

「7時です!」

「なら間に合うな、よしっ急ごう!」

「はい!」


                 *

「じゃあぶちょお、私先に行きますね」

「そういえば雨宮、随分眼が腫れてるぞ、どうしたんだ?」

「ぶちょおのことが心配で寝れなかったんですよ~」

「そっか、悪かったな、今夜は美味いウナギでも食いにいくか」

「ヤッター!勿論特上ですよね!」

「ああ(笑)」


                *

あーウナギ美味しかった~それに・・・不能になってなくて良かった

            
                              おひまい。。。



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ホタヒカプチ外伝・2週間後のお話です。

2008-05-28 21:16:47 | ホタルノヒカリ1・外伝
5月8日の「夢は夢で終わるのでしょうか?」に書いた話の続きです。

「ぶちょお~どうですか?」
(↑マックスファクターのCMのイメージで)

「へぇ~こいつは驚いた、孫にも衣装だな」

「私頑張ったのに~(めそっ)」
「あっいや・・・綺麗だよ」
「よかった(微笑)でもぶちょおがお洒落してくるとは思いませんでした」
「いつものビジネススーツとは違うけど、そんなに大したものじゃないよ」

女の人がみんなぶちょおのこと見てる・・・
ぶちょおって足長くてスタイルいいし、カッコいいよね。
ちょっと自慢だけど・・・でも他の女にみられるのはなんかやだ。。。
向こうにいる女の人綺麗だな、大人ぽくて色ぽくて。
私はぶちょおと釣り合っているかな?

男共がみんな雨宮のこと見てる。
ちゃんとしてれば美人だし、それに今日は格別に綺麗だ。
おまけに胸もデカイ・・・
てか皆胸ばかり見てるし・・・大体その服胸が開きすぎなんだよ!
いや無論悪くはない、いやどっちかというと好きだ。
ただ他の男の視線は気にいらん。
あっここのホテル確かブティックが入ってたな。

「羽織るもの持ってこなかったのか?」
「今日暑いですから」
「夜になると冷え込むぞ、それにもうレストランもクーラー入ってるだろうし」

「これなんかどうだ?」
「わぁー素敵!やっぱりぶちょおはセンスいいですね」
「よくお似合いですよ、そうだわ今日入ったワンピースもお客様にきっとお似合いですよ」

「雰囲気のいいレストランで食事も凄く美味しくて、洋服まで買ってもらって本当にありがとうございます~なんだか盆と正月が一度にきたって感じです」
「(笑)もう直ぐボーナスだからな」
「ぶちょおくらいになると沢山貰うんでしょうね」
「それなりにはな」

さて部屋とってあるんだけどな・・・どうやって切り出すか。。。

「ふ~なんか暑いですね、ちょっとワイン飲みすぎたかな」
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃないです・・・」
「えっ!?」

(最近は女性の方から誘うのです

「うわ~大きいベッド~ふっかふか~気持ちいい~グーグー

「おいっこらっ鳴るな!寝るなよ!この部屋高かったんだぞ!」

「ぶちょお・・・今日の為に高い部屋とってくれたんですか?(本日小悪魔な蛍ちゃん)」

「・・・ああ、そうだよ(ぶちょお降参です)」

「綺麗な夜景・・・」

ワインのせいか、白いうなじがほんのり赤く染まって妙に艶っぽい。
後ろからそっと抱きしめる。

「蛍・・・」

「ぶちょお・・・くすぐったいです~」

「くすぐったいていうのは感じているってことだよ・・・」

「やだっ・・・」

耳まで真っ赤にして(微笑)こういうところが純でたまらなく可愛い。

「ずる~い、私もさわっちゃおう~と」

「こらっよせっくすぐったいだろ(笑)」

「ぶちょお・・・最近ジムばかり行っていると思ったら、こんなに鍛えて誰に見せるんですか?」

「別に誰に見せるって訳じゃ・・・」

「だって男の人って鍛えると人に見せたくなるっていうでしょ?」

「ああそれは男の本能みたいなもんかもな、けど俺は違うぞ」

「私だけに見せてくださいね」 私達にも見せて~見せろ~脱げ~

「君も・・・」

という訳で二人でちゃぷちゃぷ(お風呂)らんらんらん


えーぶちょおは全然いいんですけどね、蛍=はるかちゃんなので
いわゆる濡れ場というのは書けませんです

もう一組ありますね、いい大人の男女なのにラブシーンが想像しにくいカップルが
さてさてこちらはどうなるのでしょうか?
8話の最高瞬間視聴率は冒頭のシーンだったりしてね。


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夢は夢で終わるのでしょうか?

2008-05-08 21:53:17 | ホタルノヒカリ1・外伝
ぶちょおと蛍に会いたくて会いたくて外伝を書くこと計6回。
今年の夏にはあの縁側がもう一度・・・
なんて淡い期待というか夢見ているんですけどね。
とりあえずまだ夏は始まってもいないのでもう少し夢みてます

でも○○の話はとても嬉しいです。
少しの出番でも参加することに意義があるですよ(言い方変だけど)
まずはそこから始まるのだと思います。

あの二人はどうしているのかな~。

「ねえぶちょお、あの臨床心理士の岡村さんてぶちょおに似てますね」
「何処がだ?」
「顔なんかそっくりですよ」
「顔だけだろ」
「ゴミの分別に煩いところとか、買い物には絶対にエコバック持参だし」
「いいことじゃないか(マイ箸だって持参したいところだ)」
「でもあそこまで極端だとひきますよね」
「まあな、でもドラマだし」
「このタイプは女性にはもてませんよね」
「だな」
「洋服のセンスも悪いし」
「臨床心理士というのは給料が安いんだろ、それにエコロジストということで洋服には金かけない設定なんだろ」
「ぶちょお、もしかして影響受けてません?最近経費削減とか煩いし」
「それは会社の方針だろ、それに無駄を無くすということは地球にも優しいし、
大体君は無駄が多すぎる!」

「さてとお風呂入ろう~と、ぶちょお無駄が嫌いなら一緒にお風呂に入りましょうか?」
「えっ!?・・・えーと・・・えーと」
「冗談ですよ~(笑)」

いつも電気消してくれだの煩いくせに、なんで今日に限って
う~む・・・惜しいことしたかも。。。


「でもテレビ見てるとぶちょおに似てる人よく見かけますね」
「それは俺が芸能人並にいい男だってことか?ハハハ」
「へいへい、そういうことにしときましょ」

「そういえば某化粧品のCMで君にちょっと似た女性も見かけるぞ」
「えーあの超綺麗で可愛い人ですか~」
「まあ君がダイエットに成功してエステに通って力の限り頑張ったら、
ああなるかもって感じだな」

「やります!やります!」
「君には無理だろ」
「そんなことないです~!」

「じゃあ成功したら夜景の綺麗なお洒落なレストランで食事なんてどうだ」
「らじゃー!」
「商談成立」
「上手くいかなかったら」
「そうだな、地球に優しいエコを推進する為にも一緒にお風呂に入ろうか(笑)」
「もう~ぶちょおったらドサクサに紛れてなに言うんですか

「コホン、とにかく2週間後を楽しみにしてるよ」

う~んう~ん・・・
夜景の綺麗なレストランとぶちょおとお風呂とどっちがいいか真剣に悩む蛍ちゃんなのでした。

どっちにしろダイエット頑張らないとね。

そしてぶちょおは夜景の綺麗なホテルのレストランと、お部屋を予約するのでした

えーどっちにしろぶちょおは蛍ちゃんと一緒にお風呂に入れるんですね
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ホタルノヒカリ外伝・もうすぐ春です。

2008-03-08 19:25:02 | ホタルノヒカリ1・外伝
「先月行われた健康診断の結果が届きました~」

全く問題なしと、この歳で問題あったら大問題だけどね。
あれっ?ぶちょお・・・少し顔が曇ったような気が。。。


「ぶちょお、健康診断の結果どうでした?」
「いたって健康だ」
「なら良かったです~私もいたって健康でした」
「まあ君の歳で問題あったら大問題だけどな」



・・・胸部に陰影有り、精密検査を要す・・・

まさか・・・肺癌なのか?
健康診断で見つかったおきには手遅れだと聞く。。。
まさか・・・まさか・・・とにかく病院にいかなくては。


「高野さん、一つ聞いてよろしいでしょうか?」
「はい・・・なんでしょうか?」
「高野さんは針を飲まれたことがありますか?」
「はっ!?針ですか!(好きでそんなもん飲む奴がいるのか)それはないですが・・・何故?」
「ちょっとこのレントゲン見てください、胸にかけて斜めに映っているものが長さといい細さというどう見ても針に見えるんですよ」
「・・・・・あー思い出しました!何年か前にレントゲン撮ったときにもあったんですよ」
「場所は変わっていませんか?」
「ええ同じ所です」
「痛くないですか?」
「痛くも痒くもないです。当時も原因がわからなくて問題ないなら様子みましょうと言われたんですが一体なんなんでしょうね」
「う~ん、まさかこれで手術して胸開く訳にもいかないですからね、やはり特に問題なければこのまま様子みましょう、チクチクするとか痛むようでしたら又きてくださいね」
「はい・・・」


よかった~肺癌じゃなかったんだ。それにしても去年は何も言われなかったのに去年は映っていなかったのか?見過ごしたのか?益々わからん。


「高野君?もしかして高野君じゃないのか?」
「高橋先生?」
「あーやっぱり高野君だ」


「そうか~その歳でもう大きな会社の部長さんか、君は優秀な生徒だったからな」
「いえ、それに先生もいい先生でしたよ」
「そうだったかな?」
「細かいことに拘らない大らかで、よく生徒のことを見ている先生でした」
「ん?ああ、あのときのことかな、誰もが受験で大変な中、卒業文集や卒業制作を殆ど高野君一人でやろうとして、皆もそれに甘えてしまって」
「そしたら先生が高野はスーパーマンじゃないって言ってくれたんですよね。僕自身ははしんどい顔してたつもりはなかったんですがね(笑)それに元々人に頼むより自分でやったほうが早く終わると思って引き受けたのに結果きつくなっちゃって、僕って自信過剰の可愛くない生徒だったんですよね」
「ははは、そんなことはないよ、それに今は沢山の部下を抱えて立派にやっているんだろう」
「立派かどうかはわかりませんが、あの頃とは随分大人になりましたから(笑)」
「病院へはどうして?」
「会社の健康診断の結果でちょっときたんです」
「どこか悪いのか?」
「いえ、なんの問題もなかったです」
「そうか、それはよかった」
「先生は?」
「妻が入院しているんだ」
「奥さんがですか、それは心配ですね・・・お大事に」


               *



「今日はシャリビアンステーキだぞ~」
「わーいお肉だお肉だ、すごーい、豪勢ですね」
「これは肉よりソースが決めてなんだぞ~」
「ぶちょお・・・病院どうでした?」
「えっ?」
「大丈夫だったからステーキなんですよね?」
「・・・!?」
「こないだ会社で健康診断の結果見て曇った顔したから、心配してたんですよ」
「おどろいた・・・」
「エヘッちょっと感心しました?」
「うん、女の勘ってすごいな」
「で、どこが悪かったんですか」
「実は・・・・・」


「えー嘘みたいな話ですね、でもそれってやっぱ針なんでしょうかね」
「どうだろ」
「じゃあいつか、ぶちょおが死んだら解剖して調べてもらいますね、そうすればスッキリするでしょう」
「それは君がスッキリするだけだ」
「お祖父ちゃんが言ってましたよ、死んだ人の魂は1週間は大切な人の側にいるって」
「ふーん」
「まあそんなことは何十年も先の話ですけどね、ところでぶちょお、それってここらへんですか」
「こら~くすぐったいだろう~」
「じゃあここかな?」
「痛っ」
「えっ?ごめんなさ~い」
「嘘だよ(笑)」
「ひっどーい!」
「一時はよもや肺癌かと酷く凹んだくらいだからな、今日はハイテンションというか凄くいい気分なんだ
「私もです~
こうしてな夜が更けていくのでした。


      
                 *


「忙しそうだな」
「急に急ぎの仕事が入ってな」
「明日のホワイトデーの予定は?」
「えっ?あっそっかーすっかり忘れてた」

・・・頼みがある。千円くらいのものを20個ほど買っておいて欲しい。・・・

「なんだ~その味気無いメールは」

好き   くらいいれとけよ。

「こらっ勝手にメールするなよ!」



ふーん、ぶちょおたら20個ももらったんだ、相変わらずもてますこと。
ん?   好き
まあこのハートマークに免じて買っておいてあげましょう。
ふふ明日はちょっとだけ期待しちゃおかな。



「部長、お電話です」

「部長明日のK商事との打ち合わせを急遽今日にして頂けないかと」

「部長、Mの現場で問題が起こったそうです」

「部長、昨日の決算書を急いで手直しして欲しいそうです」


忙しい・・・なぜこんなにも一度に何でも重なるんだ。
朝から晩まで走り回る部長なのでした。


もうこんな時間か、あそこならまだ開いているかな。
よかった~ここのジュエリーショップまだ開いていた。

「いらっしゃいませ」
「えーと、これください」
「プレゼントですね」
「はい」

ギリギリセーフだったな、昨日買い物頼んだし期待してるだろうからな。

「あれは・・・先生?」

「先生!」
「高野君」
「こんな時間にどうしたんですか?」
「こんな時間だともうデパートとか閉まっちゃったんだろうね」
「そうですね」

「さっき看護士さんたちが今日はホワイトデーだって話をしていたんだ、それで慌てて出てきたんだけどね、日頃プレゼントなんかしないから気が付かなくて駄目だな甲斐性がなくて」
「今時の若い男ならともかく、殆どの男はそうですよ」

「実は明日妻が手術でね・・・頭だから開いてみるまで良性か悪性かわからなくてね。辛いもんだね・・・なにもできないのは、せめて手術を前に不安そうな妻を元気づけられたらと思ったんだけどね、いやすまない突然こんな話をして、私も不安なもんでつい話したくなってしまったというか・・・」

「いえ・・・先生、もし失礼でなかったらこれを奥さんに」
「えっ?だってそれは君が奥さんに」
「妻とは去年離婚しました(苦笑)」
「それにしたって恋人に買ったものだろう?」
「いいんです彼女なら全然気にしませんから、シンプルなデザインのものですし、きっと奥さんに良く似合いますよ」
「・・・ありがとう、君の恋人ならとても素敵な女性なんだろうね」
「どうだろ(笑)不器用でおっちょこちょいで部屋の整理整頓もまともに出来ないくらい困ったもんですが・・・
彼女はあったかい子なんです」

「いい子なんだね大事にせんとな・・・私は仕事が忙しいのを理由に家のことは妻にまかせっきりだった。6年前に野球部の顧問になってからは特にね、一昨年念願の甲子園にも行けたし、これから少しは奥さん孝行しようかと思ったらこんなことに」

「奥さんきっと大丈夫ですよ・・・すみません無責任なことを」
「いやありがとう、そんなふうに誰かに言って欲しかったんだ。少し気が晴れた気がする。そろそろ病院に戻らないと、高野君本当にありがとう」
「いえ・・・奥さんのご無事を祈ってます」
「うん」


切ないな・・・

もし大切な人が・・・なんて考えると怖くなる。

すっかり遅くなってしまった・・・コンビニのじゃしょぼすぎるか。。。

あっそうだ。



「すみません、まだケーキありますか?」

「いらっしゃいませお客様、ようこそアンティークへ・・・おっおっおっ!」


「おっ小野さん~小野さんにソックリな人が~」

「えっ!?」


・・・私の好きな人ってパティシエさんにそっくりなんですよ・・・


「あの~」

「失礼しました。申し訳ございませんが本日のケーキは全て売り切れま・・」

「今新作のロールケーキの生地が焼きあがったところなんです、それでよろしかったら」

「・・・(おっ俺!?)あっはい、ありがとうございます」

そういえば俺に似てるパティシエがいるとか言ってたな・・・

「お客様もデコレーション一緒にやりませんか?、先月は雨宮蛍さんと一緒にチョコレートを作ったんですよ(笑)」


「小野の顔が二つ・・・世にも奇妙な物語だ」
「世の中には3人似た人がいるっていいますよ」
「あれは似過ぎだろう!」


「本当に高野さんは起用ですね、蛍さんが言っていました。私の好きな人は家事全般何でも出来て料理も得意で、そういう人に手作りのチョコ作るのはプレッシャーだって、でもとても一生懸命作っていましたよ」
「はい美味しかったです。」
「それにしても僕達って似すぎですね」
「ちょっと気持ち悪いくらいにね」
「親に双子の片割れがいないか聞きたくなりますね(笑)」

「本当にありがとうございました」

「今度は是非蛍さんと二人で来てくださいね」
「はい」

「でもさっ顔は先生そっくりだけど中身はオヤジに近い気がするな、頭が切れて出来る男って感じだし、態度でかくて俺様な感じとか、人の上に立つ人間のオーラとか」

「こらっエイジおまえ褒めてんのか、けなしてるのかどっちだ!」

「オーナー、神田君はオーナーのこと褒めてるんですよ(笑)」



                 *


「ほっぺたがおっこちそうになるくらい美味しいです~アンティークのケーキはさすがに全然違いますね」
「俺がデコレーションしたんだぞ(本当は俺がじゃなくて俺もだけど)」
「さすがぶちょおセンスがいいですね、ところでパティシエさんてぶちょおにそっくりだったでしょ」
「ああ気持ち悪いくらいに似てたな」
「素敵ですよね、優しくて品があっていい匂いがして、柔らかい物腰とか、又会いたいな~」
「顔は一緒じゃないか」
「まあそうですけど(笑)」

「それにしても今日はいろいろあって疲れた」
「今日ぶちょお忙しそうでしたよね、それなのにケーキありがとうございます」

「雨宮・・・」

ふと蛍を抱きしめるぶちょお。。。

「ぶちょお?」

「早く春がくるといいな」

「もうすぐ春ですよ」

「うん・・・このままここで寝ていいか」

「はい、ぶちょの部屋から枕とってきますね」


あれっもう寝てる・・・なんかあったのかな。
私を抱きしめたときどこか不安げで切ない顔だった。

ふと部長の髪を撫でる蛍・・・

ぶちょお・・・私はずっとここにいますよ。。。



                 *


ピンポーン、ピンポーン

「はーい」・・・誰だろ?ジャージだけどまっいっか。

「高橋と言いますが、高野誠一さんはいらっしゃいますか?」
「ぶちょ・・・高野さんは今会社の方に行っているんですが」
「そうですか、私は高野君が高校3年生のときに担任をしていた高橋と言います」
「えっ?ぶちょおの!・・・すみません、私は雨宮蛍と言います。高野さんとは同じ会社で私の上司なんです。」
「蛍さんとおっしゃるんですね、思った以上に可愛らしいお嬢さんだ」
「えっ!?」


「そうですか、そんなことがあったんですか」
「もっと早く報告しようと思ったんですが、妻も是非一緒にと言うので外出許可が出るのを待っていたんですよ」
「奥様、お身体は大丈夫ですか」
「ええおかげさまで、これ本当は蛍さんが付ける筈だったネックレスです。ごめんなさいね私が貰ってしまって」
「そんなの全然気にしないでください。私先生と奥様のお話聞いて胸がいっぱいになりました。それに部長のこと益々好きになっちゃいました」

「あらまあ(笑)本当に素直で可愛らしいお嬢さんね」
「とっとんでもないです」

「私こういうもの主人から貰ったの初めてで手術の不安もどっかいっちゃうくらいに凄く嬉しかったんですよ。看護士さん達にも素敵なネックレスですねとか、ご主人センスがいいですねと言われて喜んでいたんだけど、後で理由を聞いてなるほどねと思ったわ(笑)でも教え子である高野さんの気持ちはとても嬉しかったし、改めて主人はいい先生だったんだな~てね。それで是非私からもお礼が言いたくて主人と一緒にお邪魔したんですよ。」
「本当に部長がいればよかったんですが」
「いえ、今日は蛍さんとお話できてとても楽しかったです」
「ありがとうございます。今度は是非部長のいるときにお二人で遊びにいらしてくださいね」
「はい、是非」

        
                 *

「ただいま」

「ぶちょお~お帰りなさい!」


テーブルの上に置かれた手土産の和菓子の箱・・・


台所にはお客様用の湯飲み茶碗が二つ・・・


「ぶちょお!春です!春がきました!」


そして君は満開の桜のような笑顔で僕に春の訪れを告げた。

                                end


ちなみに胸部のレントゲン写真の針のようなものは実話です。
私の体験談です!(爆)嘘のような話でしょう~
本当ですよ~だって想像でこんなことは書けませんもの。

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バレンタインデイキッス♪

2008-02-11 14:50:08 | ホタルノヒカリ1・外伝
アンティークとホタルノヒカリのコラボで書いてみました。


「シャララララララ~シャララララ~キッ~ス♪」
「親父何歌ってんだよ」
「あれっ知らない?国○さゆりちゃんのバレンタインキッス」
「あ~もしかしてこのバレンタインの時期になるとよく流れる歌?」
「知らないのか?おにゃんこ娘」
「オーナー神田君といくつ違うと思っているんですか(笑)
「どうせ俺は親父だよ、でさ~ケーキ屋としてはバレンタインに何か特別なことするのか?」
「いつもより多くの種類のチョコレートケーキやチョコレート菓子を作ろうと思っていますが、最近はデパートにいいチョコレートが沢山入ってますし、
そんなには出ないと思いますよ」
「ふ~ん、そうなんだ」
「何でも最近は男性にというより、自分が食べるご褒美チョコとして高級チョコレートが売れるそうです」
「ふ~ん、世の中変わるもんだな、じゃあ昔ほど男はチョコレート貰えないのかな?」
「いえ義理チョコにかける平均単価が上がったそうですから、そんなことはない
でしょう」
「小野っていろいろと詳しいんだな~」
「仕事柄ですよ」


                  *

「えっ、手作りのチョコレート教室?」
「話の流れでそうなっちまって、なっ場所は用意してあるから、ちょこちょこって頼むよ」
「若、新しくて出来た店の綺麗なお姉ちゃんに頼まれたんでしょう?」
「影何をいう!そうではない」

「僕は嫌ですよ!(相変わらず人前が苦手な小野さんです)」

「場所なんだけど、町内の公民館使わせて貰おうと思って、そうしたら町内の皆さんにも喜んでもらえて、
店もひいきにしてもらえるんじゃないかなって」
「じゃあ、オーナーがやってください」
「へっ?俺が?」
「僕が基本のチョコレートを作りますから、それを湯銭で溶かしてそれに生クリームや、ナッツや洋酒や、ドライフルーツ等を使ってアレンジすれば
それなりのものが作れますよ。僕がレシピを作りますからオーナーでも充分に出来ますよ、神田君も手伝ってあげて」
「はい!先生がそういうなら」
「なるほど!それなら俺にも出来そうだ、あー神田君私のことはオーナーと呼ぶんだよ」


                  *

「で今度うちの町内でケーキ屋さんのパティシエ直々のチョコレート教室があるんだけど、皆も行きませんか?」
「行く行く~」
「美味しそうなの作れそうですね、蛍さんも行きましょ」
「えっ私?」
「やっぱ本命には手作りよね!」
「はい、私も行きま~す」

私ってこの歳になるまで手作りチョコって一度も作ったことないんだよね、よーし頑張ろう!


「まずはチョコレートを湯銭で溶かしてください」

「うちの天才パティシエが作った美味しいチョコレートですからね、そこに皆さんのたっぷりの愛情が加われば
世界で一つだけの愛情いっぱいのチョコレートが出来ますよ」

「蛍さん火が強すぎます、もう少し弱くしたほうが」
「あっはいっ・・・キャッ」

「どうしました?」
「すみません、お鍋ひっくり返してしまって」
「大丈夫ですよ、チョコレートは沢山ありますから気にしないでくださいね」

そう言いながら手際よくコンロを掃除するオーナー。

私ってチョコレート一つまともに作れないんだ・・・

「楽しかったですね」
「美味しそうなチョコレートは作れたし」
「お店の人もカッコよかったね」
「若い子はジャニーズみたいな顔してたし、お店のオーナーも渋くていい男だったわ(笑)」
「蛍さんは?」
「あっ私も楽しかったです~」


はぁー皆の作ったチョコレート上手く出来てて美味しそうだったな。
いや元々不器用なんだけど、もう最初にお鍋ひっくり返しちゃって、それで気持ちに余裕が無くなっちゃったし。
お店の人に迷惑かけだだけか。。。


              
                  *

アンティーク・・・ここだわ。

「いらっしゃいませお客様、ようこそアンティークへ・・・と言いたいところなんですが、
生憎お客様にお売りするケーキが無くなってしまって申し訳ないです」

「いえいいんです。。。私・・・」

「あっお客様はお昼のチョコレート教室にいらしていた・・・」

「そうなんです、あのときお鍋ひっくり返してしまって迷惑かけてしまって、そのお詫びにきたんです」
「そんなお気使いなさらなくてもいいんですよ」
「これ豚饅です。こんなお洒落なお店に豚饅なんてどうかと思ったんですが」
「これは美味そうだ、大好きですよ」
「良かった~温かいうちに食べてください」
「サンキュ~」
「頂きます」


「私って本当にドジで不器用で皆みたいな美味しそうなチョコレート作れないばかりか、お店の皆さんに迷惑かけただけで」

「私は羨ましいですよ」
「えっ?」
「こんな遅い時間にお店を訪ねてくれる優しいお嬢さんで、かつこんなに可愛くて、そんなあなたからチョコレートを貰える男性がですよ」
「俺も彼氏に立候補したいくらいだよ(笑)」
「私じゃ歳が離れすぎですけどね(笑)」


「もう一度作りましょう~チョコレート、まだ材料余ってるし」
「えっ!?」
「うちのパティシエもそう言っていることだし、どうですかお嬢さん」
「本当にいいんですか?」
「先生がああ言っているんだから気にするなって」


あービックリした~!
このパティシエさん、ぶちょおにクリソツだし!
でもぶちょおより若くて(小野さんは歳をとらないのです)
優しくて柔らかそうで甘くていい匂いがして~
顔は同じなのになんでこんなに雰囲気違うんだろ?(笑)


「時間はたっぷりありますから焦らなくていいですよ、そうゆっくり溶かしてくださいね」
「はい」
「チョコレートは誰にあげるの?」
「大好きな人にです・・・ちょっと(どころじゃないけど)パティシエさんに似ているんですよ」
「へぇ~」
「料理とか家事全般なんでも出来る人なんで、手作りチョコあげるのって少しプレッシャーなんです。私は家事全般超苦手なんで」
「そういう君が作ったものなら何だって美味しいんじゃないのかな」
「そんなに甘くはないです!まずいものはまずいってハッキリ言う人なんですよ~」
「そうなんだ~(笑)」
「直ぐに怒るし口煩いし、パティシエさんと顔は似てても多分性格は全然違いますね、もうしょっちゅう喧嘩してます」
「でも楽しそうだね」
「はい、その人といると凄く楽で楽しいんですよ、時々凄く優しいし」
「その気持ちを込めて作ろう、大丈夫僕の作った特製チョコレートがベースだから間違いなく美味しくできるよ」
「はい!ありがとうございます」


「先生楽しそうでしたね」
「珍しいですね、女性と楽しそうなのって」
「ああ、あの子はなんか女が前面に出てないっていうのかな、だから話しやすかったんですよ」
「なるほど~」
「でも本当に可愛くていい子でしたね」


素敵なパティシエさんだったな~私はあの手の顔に弱いのね~。
でもあのパティシエさんの前だとジャージでゴロゴロなんて出来ないわ。
そんな恥かしいこと~あの品のいいパティシエさんの前では絶対に無理だわ。
(俺の前だと恥かしくないのbyぶちょお)


           ・・・2月14日・・・

やっぱ手作りチョコだろな・・・
う~んう~ん手作りか・・・
まあ手作りといっても市販のチョコを湯銭で溶かして固めるくらいだろうから、心配することないだろ。
ちょっと甘味が足りないとか言って間違えて砂糖の変わりに塩を入れるとか・・・ないよな。流石にそこまでアホではないだろ。


「ぶちょお~これ私が作ったんですよ~食べてくださいね!」
「うん、ありがとう美味そうだな」

ドキドキ・・・

「こっこれは・・・」

「これは?」

「恐ろしく感動的に美味いのだが」

「ヤッター!」

「本当に君が作ったのか?」

「ひどーい!疑うんですか!」

「あっすまない・・・あまりに美味くて」

「それは蛍ちゃんの愛情がたっぷり詰まっているからですよ」

「そっか、ありがとな」

「愛情も沢山詰まっているんだけど、本当はそれだけじゃないんですよ」

「えっ?」



「そっか~そんなことがあったのか、いい人達だな」

「はい、私も食べていいですか」

「うん」

「うわー滅茶美味しいですね!さすが天才パティシエの作ったチョコレートですね」

「それに君の愛情がたっぷり入っているんだろ

「えへっ!今日のキスは甘くて美味しいです~

「どれどれ確かに甘いな(笑)」



                *


「オーナーこのチョコレート、オーナーの為に作りました。食べてくださいね」
「えっなんで?俺チョコ嫌いだし」
「甘い物苦手な男性でも食べれるチョコと思って作ったんですよ」
「そういうことなら一つくらいは・・・」
「美味しいですか?」
「ああ、これなら俺でも何とか食べれるかな」
「ありがとうございます

「うわーなっなんだよ、いきなり」
「だから僕の気持ちですって・・・僕ずっと前からオーナーのこと」

「いっ言わないでくれ~それ以上言うな~」



「オヤジー!いつまで寝てんだよ!休憩交代の時間だろ」

「よかった~夢だったのか~」


バレンタインか、昔はそわそわウキウキしたもんだな。
今は・・・まっ俺も歳をとったってことか。

「美味いっす!やっぱ先生の作ったチョコレートケーキは最高ですね」
「本当に頬っぺたが落ちそうなくらい美味しいです~」
「チョコレートって最近は感謝の意を込めて同性にも送ったりするそうです」
「ふ~ん」
「オーナーにはこれ、どうぞ」
「えっ?このワインて高くはないけど人気が高いのに本数少なくて中々手に入らないものじゃなかったのか」
「知り合いがワインのコレクターで分けて貰ったんですよ、オーナー一度飲んでみたいって言っていたでしょ」
「そっかありがとな(あんな夢みて悪かったな)、じゃ俺軽くつまみ作るわ」

アンティークの男達は美味しいワインと美味しいケーキで盛り上がるのでした。

「野郎ばかりのバレンタインデイか・・・悪くないね~」      end


バレンタインデイキッスということでオーナーと小野さんのキスシーンを入れてみました。夢ですけどね
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ホタルノヒカリ外伝・お正月

2008-01-03 17:43:06 | ホタルノヒカリ1・外伝
「そろそろ出かけないと遅れるぞ」
「はい、でも私のいない一人っきりのお正月って寂しくないですか?」
「別に寂しくないもん、綺麗に掃除された部屋で取って置きのワインを空けて読書をしたり好きな音楽を聴いたりして優雅に過ごすさ」
「じじくさっ」
「そういう君は一体どういう正月を過ごすというんだ、大体君のことだからどうせゴロゴロと」
「あっもうこんな時間行かなくっちゃ」
「元気な顔をご両親に見せて親孝行してきなさい」
「はい、ぶちょおも良いお年を」
「君もな」


                *

あー実家はいいな~上げ膳据え膳でゴロゴロできて・・・
て、東京にいても殆どそうだけどヘヘッ

「あの~蛍さんちょっとよろしいでしょうか?」
「えっ私ですか?」
「ホタルノヒカリ外伝の読者?を代表してインタビューをさせてもらってよろしいでしょうか?」
「はいはい」
「お二人はさぞや素敵なクリスマスを迎えられたことと思いますが」
「そりゃあ~もう、あのね!」
「ストップ!女性の間でも非常に好感度の高い蛍さんですが、全国のぶちょおファンから石つぶてが飛んでくるといけませんから詳しい話は割愛ということで」
「へぇ~やっぱぶちょおってもてるんですね」
「で、その後なんですがお二人は毎日ラブラブな生活を送っておられるのでしょうか」
「そうでもないんですよ」
「といいますと」
「あの夜盛り上がりすぎちゃって、朝になってお互いの顔見たらなんだか恥かしくなっちゃって、眼も合わせられないというか、テレビ見ててラブシーンがあるとなんとなく気まずくなったりするんです」

はぁ~相変わらずというか、らしいとゆーか。。。

「ぶちょおは淡白なんでしようかね」

「そんなことないと思います。
  だって~凄く激しかったし (あのクールな顔でそうなんですかい)
     あんなの初めてっていうか~ (いわゆるテクがですかい^^)
        私って愛されてるなって・・・

 あれっインタビュアーさん、どこ行きました?まっいっか」


あーあ、ぶちょおの声が聞きたいな・・・


あーしんど、年末の疲れが出たかな、正月に風邪ひくなんて最悪だ。


ルルル・・・アホ宮


「ぶちょお~あけましておめでとうございます!」

「おめでとう、ご家族の皆さんは元気だったか」

「はい皆すこぶる元気です。ぶちょおは?」

「すこぶる元気で優雅な正月を過ごしているよ、ちゃんと親孝行するんだぞ」

「はい」


ぶちょお鼻声だったな、風邪ひいたのかな。しんどそうだったな。
それぐらい声聞けばわかりますよ。蛍さんをなめんなよ!


熱まで出てきたか・・・
それにしてもこの家ってこんなに広かったかな?
広くて寒いや・・・寝よ。


「ただいま~」

やっぱり~こんな時間に寝てるなんて。もう熱まであるじゃないですか!
頼ってくれればいいのに、水くさいんだから。


「ん?どうしたんだ、こんなに早く帰ってきて!」
「ぶちょおこそ、元気に優雅に正月過ごしているって嘘じゃないですか!
私看病しに帰ってきたんです」
「別に頼んでないもん」
「たく可愛くないな~私の前でカッコつけなくていいじゃないですか、
私声聞いただけで風邪ひいたってわかるんですよ。凄いでしょ(笑)」
「うんホント凄いな・・・ありがとう」

「お腹空きません?なんか作りましょうか?」
「いや・・・別にお腹空いてないから(腹までこわしたくないし)」

ごそごそ・・・
「これはお父さん手打ちの信州蕎麦、これはお婆ちゃん自慢の鴨の燻製、お母さんはだし汁と刻みネギまで用意してくれました。会社でお世話になっている人が風邪ひいてるから看病しに帰るっていったら、しっかり看病してきなさいって言っていろいろ持たせてくれたんです。他にもまだあるんですよ~」
「いい家族だな」
「普通の家ですよ」


君がいるだけでこんなにもこの家は温かい。。。

会社でお世話になっている人か・・・

温かい鴨蕎麦を食べながら俺は若干罪悪感を感じていた。



               *


「新年早々忙しいですね~」
「仕事が忙しいっていいことよ、今年も頑張っていきましょう!」
「はーい!」


「部長、お電話です」


「あっはい、わかりました」



「部長は?」
「例のところ」
「ああ」
「例のところって?」
「お嬢様が道楽でやっているジュエリーショップのリノベーションだよ」
「なんでそんな仕事をわざわざ部長が」

「あの五大物産のお嬢様だぜ、うちの大お得意様だし、専務の姪御さんとかで、うちに仕事を依頼してきたんだけど、部長のことがえらく気にいってしまったらしい。ハーバード大を出た才色兼備の凄い美人だそうだ」
「ひょっとしてひょっとすると部長、凄い玉の輿かも」
「バーカ、部長はそんな男じゃなか」



                  *


「ではこれで進めさせて頂きます」

「高野さんには何度も足を運んで頂いて申し訳なかったわ、今度お食事でもご馳走させてくださいね」

「いえ仕事として当然のことをしたまでです。では失礼します」


クールな男・・・私の誘いを断るなんて・・・

燃えてきたわー!絶対に高野さんをものにするわ!




厄介な仕事が終わってやれやれだ、明日は久々に鍋でもするか。
コタツに鍋に熱燗・・・美味いんだよな~。
鍋を作るのは俺だが・・・
燗するのも俺だし・・・まっいっか(笑)


・・・次の日・・・

「あっ高野君、今日食事でもどうかな?一度会社の今後の展望について君とじっくり話がしたいと思ってたんだよ」

「はっ・・はい、喜んで(鍋が~熱燗が~)」


フランス料理?

「叔父様、高野さん」

「いやー彼女もここで友達と食事することになっていたそうだが、急に友達の都合が悪くなったとかで一緒にどうかと私のほうから誘ったんだ」

「嬉しいです、高野さんとお食事できるなんて」

「はあ・・・」

「ところで私も急なんだが、女房からメールが入ってなんか急用らしいから帰らなきゃならなくなった。申し訳ないが二人で食事を楽しんでくれたまえ、もっとも私がいないほうが楽しいかもしれんがな、ハハハ」

「まあ叔父様たら(笑)」



最悪の一日になった。。。


ルルル・・・


「今山田姐さんちで鍋パーティしてるんですよ。ぶちょおも一緒にどうですか?」
「食べてきたから遠慮しとく」
「フランス料理美味しかったですか~」
「(何で知ってんだよ)いや大したことなかった」
「それにしてもこんな時間に家にいるなんて随分お早いお帰りなんですね」
「・・・?」
「雨宮、ちょっと飲み過ぎだぞ!」
「二ツ木ー!おまえもそこにいるのか!?」
「ちゃんと送ってくから~」
「大体あれだって接待みたいなもんだろ」
「わかってるって、わかってるけど噂に沢山の尾ひれがついてな」
「はあ!?」

たく・・・どんな噂にどんな尾ひれがついてるんだよ!


           *


高野さんに一緒に暮らしている女性がいるという噂は本当かしら?
あった、ここが高野さんの家ね。
あらっあの女の子誰かしら?
いやね、若い女の子がスッピンでジャージなんか着て、
嘘!あの子、高野さんの家に入ってくわ!


「ちょっとあなた!」

「はい、なんでしょう?(てゆーか誰?)」

「あなたもしかして高野さんと同居しているという女性」

「はい・・・一応」

「嘘でしょう!あなたみたいな子が高野さんの恋人だとでもいうの!化粧もしないでスッピンで変な頭してよれよれのジャージ着て、信じられないわ」

「す・・・すみません」


「いかにも彼女は俺の恋人だ」

「高野さん・・・」

「ぶちょお・・・」


「大体君はなんだ!人の家に入るのに何の挨拶も無しに、名乗りもせずに、そんな非常識な人間が初めて会った良く知らない人間を見かけだけで判断するとは呆れるね。才色兼備のお嬢様がどうした!ハーバード大がどうした!もう一度幼稚園から入り直して挨拶の仕方から教わってくるんだな」


「しっ・・・失礼しました!」



「キャーぶちょお~カッコいい~いよっ男前!だ~い好き~

「こら~にゃんこが見てるだろ」

「にゃあにゃあ(照れるなよぶちょお)」

「でも五大物産のお嬢さんにあんなこと言って大丈夫ですか?」

「これは仕事とは関係ないプライベートなことだ、だから問題ない・・・(と思う)」

「ならいいけど、そういえばぶちょおジャージ着て何処行ってたんですか?」

「にゃんこの散歩だ」

「にゃあ」



とは言ったもののちょっと言いすぎたかな~


「あっ高野君、今五大物産の社長がみえてるんだが、君に話があるそうだ」


「しゃっ社長がですか・・・」




「高野です・・・先日は・・・」


「君が高野君か、なるほど娘の好きそうな男前だな」

「はあ・・・」

「いや失礼、先日は娘のことを怒鳴りつけてくれたようで娘はえらく感動してたよ、もう小さい頃から蝶よ花よと育ててきたから、ただの一度も誰かに怒られたことがなくて我侭な娘に育ってしまった、君にもいろいろと失礼なことがあったんじゃないかと思う」

「いえ、明るく聡明なお嬢さんで」

「ではそう言っておくよ(笑)、ところでジャージというのは最近の流行なのか?最近娘がいつも家の中ではジャージに化粧もしないで、頭はちょんまげみたいにくくっているんだが」

「さあ・・・どうなんでしょう」



                  *


「ギャハハギャハハ、あのお嬢様がジャージにちょんまげって、あー可笑しい」

「こらっ笑いすぎ」

「根っからのお嬢様なんですね~それに思ったよりいい人というか、可愛い人ですね」

「だな」

「ふ~ん」

「君がそう言ったんだろ!」

「ぶちょおそっち行っていいですか、たまにはぶちょおの横顔が見たいなって」

「いいよ(笑)」

「二人でコタツ一緒に入るとちょっと狭いな」


身体が密着してちょっとドキドキ・・・


・・・・・・・ドキドキ


  ***気を利かせてコタツからそっと出ていくにゃんこ***


「雨宮・・・」

「はい?」

「君・・・また太ったな」

「はあ~!何なんですか~いきなり!

「そういうぶちょおこそ少し顔が丸くなったんじゃないですか!」

「そんなことないもん・・・」

「最近ジョキング始めたのはダイエットの為じゃないんですか!」

「あれは体力増進とにゃんこの散歩の為だ」

「犬じゃあるまいし、にゃんこは猫ですよ!」

「とにかくこのコタツがいかんのだ、コタツは人間を怠惰させる、よし!コタツを片付けよう」

「駄目~絶対に駄目!コタツ片付けるんならこの家出て行きます!」

「じゃあ出てけば」


 ***にゃあ(なんて大人げない会話してるんだ、この二人は)***


「そんなこと言うんだ~ べーだっ!大体私太ったといってもせいぜいお餅一個分くらいですよーだ」

「一個分て(笑)二個分じゃないのか~(笑)」

「そんなに疑うんなら確かめてみればいいじゃないですか!」

「ふ~ん・・・確かめてもいいんだ」

「いいですよ~」

「そっまだ日中明るいけどね」

「ん?・・・キャッ駄目!駄目です~こんなに明るいと電気消しても意味ないじゃないですか~」

「確かめてもいいって言ったのは君だよ・・・」

 もう~
                                   end

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ホタルノヒカリ外伝・・・深まる秋・深まる想い(後編)

2007-10-07 14:34:31 | ホタルノヒカリ1・外伝
前編より続きます。


「ただいま・・・ん?」


具合が悪いので先に寝ます・・・ホタル


次の日の朝・・・


具合はどうだ?スープを作っておいたから食欲があるようだったら温めて食べなさい。私は忙ぎの仕事があるから先に会社にいくけど、君はしんどかったら無理しないで会社は休みなさい。


ぶちょお・・・ぶちょは優しすぎます。。。
私なんか嫉妬と不信感で心の中真っ黒になってます。


               *

「高野、今日時間あるか?ちょっと話したいことがあるんだが」
「ゴホンゴホン」
「風邪か?」
「のようだな、明日大事な入札があるから今日は早く休みたいんだ、悪いな」
「いや、また今度でいいよ、風早く治せよ」
「ああ」

               *

「ただいま(ゴホン)」
「おかえりなさい、あの・・・ぶちょお」
「なに?(ゴホンゴホンゴホン)」
「風邪ですか?」
「みたいだな、君はもういいのか?」
「私は大丈夫です」
「何か話があるんじゃ(ゴホンゴホン)」
「いえ明日でいいです」
「じゃあ先に休むから」
「はい」


ぶちょおのこと信じよう・・・
だけどこのうっとしいメールのことは明日相談しなきゃね。


                *


「部長、入札おめでとうございます」
「ああ、君もご苦労だった」
「い皆が頑張ってますから、あっそういえば蛍のストーカーメールどうなりました?」
「ストーカーメール?」
「まさか知らないんですか?蛍悩んでましたよ!なんで部長がそれを知らないんですか!?」


クソッ繋がらない・・・


                  *


あーうっとしいメール!ぶちょお早く帰ってこないかな?

ピンポーンピンポーン

あっぶちょお・・・でも部長なら呼び鈴なんか鳴らさない筈・・・


ピピピ・・・

出ておいで、出てこないなら僕がそっちに行くよ。
鍵をかけないなんて無用心だね。
僕の誘いを断った女性は君が初めてだよ。
悪い女だ、悪い子にはおしおきしないとね。
さあ早く出ておいで。


いやーーー!(蛍ちゃんピンチ)



                *

「雨宮!雨宮!・・・雨宮の携帯が何故玄関に?」

「にゃあにゃあ(部長大変だ)」

「どうしたにゃんこ?」

「にゃあにゃあ(こっちだこっちだ)」


にゃんこの示す方に走る部長!
そしてその先には・・・足元のおぼつかない蛍が男に抱きかかえられるように車に乗せられようとしていた。


あめみやー!あめみやーー!   走りながら叫ぶ部長


ホタルーーー!


ぶちょお?  はっ 「エイッ!」 蛍ちゃん改心の必殺股間蹴り


「いってー!」


「貴様ーーー逃がすかーーー小手!(側にあった棒切れで)」


「いってーーーーーー!」 (原作の部長は剣道の大会で優勝したという設定でした)



「どうしました!何かありましたか!」

「あっ派出所の鮫島さん、実はかくかくしかじか(略)で」

「ご苦労様でした。直ぐにこの男を署に連行します。お二人も一緒にお願いします」



「大丈夫か?雨宮」
「はい・・・」
「まだ足元がふらつくだろう、私の背中におぶさりなさい」
「はい」

「たくクロロホルムを嗅がせるなんざ、きっと他にも余罪があるに決まってる」
「K大学病院でインターンしてるって」
「医者としても、人としても最低だな。警察でいろいろ聞かれるかも知れないが
私が傍にいるから」


私が傍にいるから・・・

その声があんまり優しくて、安心したのもあって涙が溢れた。


「雨宮・・・涙はともかく私のスーツに鼻水はつけないでくれ」
「はい・・・ぶちょお重くないですか?」
「ああ、君が無事で嬉しくて重さがわからないくらいだよ」
「ぶちょお~~~うぇ~ん」
「だから鼻水をつけるなって」


                * 

「さすがに疲れたな」

「はい」

「だがどうして私に早く相談しなかった」

「だって・・・」

「だってじゃない!君は大体が呑気過ぎる!あっ・・・大きな声だしてすまない。元はといえば私が君に合コンに行けといったからこういうことになったんだ。もう少しで取り返しのつかない事になったかも知れない。怖い思いをさせて本当に申し訳ないことをしたと思っている。それに昨日君は私を気遣って話はないと言ったし、一昨日は君の具合が悪かったし」

「そうじゃないんです!」

「ん?」

「具合が悪かったんじゃなくて私聞いちゃったんです。会社で部長が岩城さんのマンションに出入りしてるって目撃情報を・・・でも私ぶちょおのこと信じようって決めたんです」


「彼女とはなんでもない」

(彼女だってぇ~!)

「昔のちょっとした知り合いで」

(どんな知り合いだよ)

「仕事の話もあって少し飲んだつもりが疲れていたのか、タクシーの中で爆睡して、そのまま彼女のマンションで朝まで寝てしまった」

(ホントに寝ただけかよ)

「朝食を作ってくれたのでそれを食べて直ぐに帰った」

(どうせ私は作れませんよ)

「先日変更箇所があるから会社にくると電話があったんだが、風邪をひいて具合が悪そうだったので、会社の帰りに資料を持って彼女の・・・岩城さんのマンションに行った」

(お優しいことで、あっぶちょおの風邪って岩城さんのがうつったんだ)

「それで待っている間、食事を作った。それだけだ」


「うぅぅぅ・・・・うわ~ん」

「えっ?おいっどうした!だから何もないって、それにさっき信じるって」

「だってだって、なんで彼女って言うんですか!昔の知り合いってなんですか!何もなくても他の女の人の部屋で寝るのは嫌、私以外の人にご飯作るのも嫌・・・ごめんなさい。私大人のできた女じゃないから、ガキで子供だから・・・」

「可愛い・・・」

「えっ・・・」 (ふわっと蛍を抱きしめる部長)

「そんな君がたまらなく可愛い、世界で一番、いや宇宙で一番可愛い
・・・このままここで君を押し倒したいくらいだよ」

「えー!?そんないきなりぶちょお~私にも心の準備ってもんが(今日勝負ぱんつじゃないし)」

「うん・・・」

「ぶちょお・・・ちょっと重いです。ん?ぶちょお~どうしました!」


                 *

「ぶちょお、お加減如何ですか?あっ熱下がったみたいですね、卵のお粥作ったんですよ~食べてくださいね」

「へぇ~」

こっこれは・・・ベタベタのご飯の上に卵がスクランブルエッグ状態になっている。どう見てもまずそうな・・・だが一口ぐらいは。。。
ウッなんなんだ!?いきなり血圧が15は上がりそうなくらいのしょっぱさは。


「りんごも剥きますね!青いりんごを~抱きしめ~ても~♪」


何故こんなに機嫌がいい・・・あっちょっと調子に乗せるようなこと言い過ぎたか。


「昨日は嬉しかったな~ぶちょおって私のことそんな風に思っていたんだ、まっ可愛いのは本当のことだけど」

「あっそっ」

「でも、その後はちょっと予想外でした」

「その後って?」

「はっ?」

「なんだ?」

「はあぁ~まさか自分の言ったこと覚えてないんですか!」

「えーと熱のせいかな」

「思い出してくださいよ!思い出してくれないなら、このお粥にゃんこにあげちゃいますよ」


なんて気の毒なにゃんこ・・・


「それは残念だな~」

「あー嬉しそうな顔した!食べたくないんだ私の作ったお粥!もう~思い出してくれないんならこれ全部食べてもらいますからね!」

「こんなしょっぱいもの全部食べろなんて、君は私を早死にさせる気か!
大体にゃんこも君の作ったお粥に恐れをなして、いつのまにかいなくなったぞ」

「というより昨日から見かけませんね」

「にゃんこは君の恩人なんだ、あのときにゃんこが君の居場所を教えてくれたんだ」

「そうだったんですか~」

「ああ、だからにゃんこを探してちゃんとお礼を言いなさい」

「にゃんこ~にゃんこ~」

「どこ行った~」


「ぶちょお、私いまふと浮かんだことわざがあるんですが」

「なんだ?」

「こういうのをケムに巻くっていうんですよね!」

「君も案外アホじゃなかったんだな」

「ぶちょお~誤魔化さないでくださいよ!」

「あっにゃんこいた!」

「えっ!?どこどこ?・・・ん?」

(ちゅう~)

「これで勘弁してっ!」                 おしまい




特別出演・・・金髪のポリスマンこと鮫島さん。
もう金髪じゃないかな~それに巡査部長くらいにはなってるかな

これでミュージシャン直人に移行しますが、まだネタはあるので・・・
というかぶちょおと蛍がとても可愛いので又書きたいと思います。
こたつもまだ出してないしね~。














コメント (6)
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ホタルノヒカリ外伝・・・深まる秋・深まる想い(前編)

2007-10-05 23:39:30 | ホタルノヒカリ1・外伝
「夕食を作るから君も手伝いなさい」
「え~今からですか~ぶちょお最近忙しそうだったからお疲れでしょう?こんなときはちゃちゃっと簡単にカップ麺でも食べましょうよ、ちゃんとぶちょおの分もありますよ~」
「そんなもんいらないもん、大体こんなときこそ野菜を中心としたバランスの良い食事をとらなきゃならんのだ」
「私は別にいいですから、ぶちょお~自分の分だけ作って食べてください」
「アホ宮・・・私はずっと前から君のいい加減な食生活について非常に気になっていた、今はまだ若いからいい、だがそんな食生活を続けていたらどうなる?歳を重ねる度にたちまち高血圧、高脂症、血液はドロドロ、30代で成人病の一歩手前、髪はバサバサ、肌はぼろぼろ、腹はたちまち三段腹(ギクッ)それでいいのか?」
「はい、手伝います。手伝わせて頂きます」
「今夜は鍋だ、簡単だから時間はかからんよ」
「わーい、お鍋だ~♪」

「ぶちょお、それはなんですか?」
「いわしのつみれだ、時間のあるときに多めに作って冷凍しておけば直ぐに使えるだろ」
「ほほ~主婦の鏡ですね・・・えっ!?鍋に油揚げまで入れるんですか~?」
「だって・・・好きなんだもん」
「へいへい」
「ほら口ばかり動かさないで、白菜切って」
「ラッシャー!」
「こらっ白菜は茎の部分と葉の部分を切り分けるんだ、茎と葉では火の通りが全然違うから全然違うだろ」
「はーい・・・いてっ~ぶちょお血が~~~」
「大丈夫か~?たくじゃがいもの皮をむいているならともかく何故白菜で指を切るんだ」
「すみませ~ん」
「後は私がやるから待っていなさい」
「は~い」


「う~ん美味い!ぶちょお~最高に美味しいです~」
「当たり前だ・・・それにしても君は料理の才能は皆無だな」
「へへ」
「だが、君は好きな男が出来たら料理の一つぐらいとか思わないのか?前はそう言っていたじゃないか」
「だって~私の好きな男の人は家事全般なんでも出来て、料理も凄く上手なんですよ~へへっ」

いいのか・・・・これでいいのか・・・う~む。
それにしても幸せそうな顔して美味そうにパクパクと食べるな~。
可愛いかも。。。

「ほらっご飯粒ついているぞ」
「えっどこですか?」
「そっち」
「ここですか?」
「そこじゃなくて・・・」

こ・こ(ちゅっ)   えへっ

ピピピ・・・携帯の音

ちぇ~!いいとこだったのに~!

「あっ陽子!久しぶり~ごめんごめん、メール貰ったのにずっと連絡取らなくて、うん元気だよ~えー!合コン?いいよ~今更合コンなんてめんどくさいもん。えっ!高学歴のイケメンが揃ってるって(それなら間に合ってますって)それに明日でしょう、急に言われても」


「行きなさい」と書いた紙を持っているぶちょお。


「うん、うん、わかった、じゃあね」


「ぶちょお~なんでですか~なんで合コンに行けなんていうんですか!」
「君は若いのにあまりにも行動範囲が狭すぎる、毎日会社と家の往復で、寄るのはコンビニとTSUTYAぐらいで休日は家でゴロゴロ」
「それが好きなんだからいじゃないですか~」
「だが少しぐらいは行動範囲を広げてもいんじゃないのか?いろんな人と会うのは見識を深める上でもいいことだし、昔の友達も大事にしたほうがいい」
「大学時代の友達には久々に会いたいけど、でも合コンて私が他の男の子と会ってもいいんですか?」
「別にいいもん、君を束縛する気はないもん、大体手嶋や私クラスのイケメンはそういるもんじゃないからな~(ハハハ)それに君は意外と面食いだからな」

なんつー俺様オヤジ・・・でも当たっているだけに言い返せない。。。


                *

「じゃあぶちょお、今日会社の帰りに合コンに行ってきます、遅くなりますからね!」
「ああ、いいよ」
「朝帰りしても知りませんからね!」
「そんなことになったら赤飯でも炊いて祝ってやるさ!」
「ぶーーーだ!」
「べぇーーーだ!」


                *


「まるで本屋で立ち読みをするように、いろんな年代の人が気軽に入って保健のパンフレットを手に取って見て頂けるような、入りやすい明るくPOPな、従来の固いイメージではない、保健会社の代理店というコンセプトで進めていきたいと思います」
「よろしくお願いします」
「予算については部長を交えてと思うのですが、少し会議が押していまして・・・あっ部長」

「インテリア事業部の高野です、遅れて申し訳ありません」
「フラワーハートの岩城です」


                 *

「こんにちは、こちらの皆さんはまだお若いから保健に興味はないかも知れないけれど、よろしかったらこちらに眼を通してくださいね」

「はぁ・・」
「ちょっとなに見惚れてるのにょ!」

「あなたもどうぞ」
「あっはい」


「最近めきめき業績を伸ばしているフラワーハートの女社長、業界でも切れ者と評判で、加えてあの美貌にあのスタイル」
「俺らには高根の花過ぎて、でも見てるだけでいいですね~」
「そう見てるだけでね、まあああいう女性と並んで見劣りしないのはうちでは部長くらいだな」
「ああ確かにな」

「やーねー男共、鼻の下伸ばしちゃって」
「ホントホント」

「俺は優華しか眼に入らんけ」
「もう~要さんたら~」

ぶちょおはどうなんだろう・・・ああいう大人の女性


                 *


なんだこれ?保健のパンフか

・・・1年前のあの店で待っています・・・

               
                 *



「覚えていたのね、このお店」
「記憶力いいほうでね」
「私も覚えているわよ、あなたのほくろの数まで全部ね」
「そりゃ大した記憶力だ」
「ポーカーフェイスね、会社で私の顔見ても表情一つ変えなかったし」
「それは君もだろ」
「仕事しているときは私男になるの、今は女だけど」
「今日は何か話でも?」
「そうね、まずは今ここで私と会っている言い訳が成り立つように仕事の話から」

                  
                 *


「どうだった?」
「みんなそこそこカッコよくて、話も面白くて優しいんだけど、個性がないというかつまんないというか」
「厳しいな~陽子は」
「佳奈はタイプの子いたんじゃ?面白い子一人いたよね」
「そうなの、メルアド交換しちゃった」
「上手くいくといいわね」

「あっ見て見て!あのカップル大人の男と女って感じで素敵~見惚れちゃうね、
じゃあ私ここで、陽子も蛍も又今度遊ぼうね!」
「うんバイバイ」
「バイバイ」


・・・あれはぶちょおと岩城さん、なんで一緒にいるの?仕事の話?・・・


「陽子どうしたの?気分でも悪いの?」
「さっきのカップル見たらなんか思い出しちゃった。私最近まで会社の上司と不倫してたの」
「えーーー!」
「さっきの人みたいにカッコいい人じゃなかったけど、優しくて大人で凄く好きだった。でも妻が妊娠したというお決まりのパターンでジ・エンドよ」
「知らなかった・・・」
「話したの蛍が初めてよ」
「今日陽子んち泊まってもいい?ぱぁーと飲もうよ」
「うん飲もう飲もう・・・ありがとう蛍」

           
                  *


ここは何処だ?・・・どこかのリビングのソファの上?
なっなんで、なにがどうしてこうなった!?
一度ならず二度までもなんて節操のない。。。
大体あのときと今では状況が違う。。。
つーか何も覚えてないんだが・・・


「あー面白かった、高野さんの百面相」
「君・・・」
「タクシーに乗ったら爆睡しちゃったの、お疲れだったのかしら?それで家もわからないし、タクシーの運転手さんに頼んで部屋まで運ぶの手伝ってもらったの」
「すまなかった」
「ホントこんないい女前にして朝までグウグウ寝ているんだもの(笑)朝食作ったの、食べていって」
「いや直ぐに帰る」
「えー一人じゃ食べられないもの、捨てるの勿体無いわ」


陽子の家に泊まって遊んできます・・・アホ宮

ほっよかった。


「凄いね、これ全部君が作ったんだ」
「私良妻賢母の妻から、やり手の女社長まで何だって出来るわよ、可愛くないでしょ?」
「可愛い人だと思うよ、ただそれを人に見せるのが苦手なんじゃないのか」
「えっ・・・」


                   *


「たっだいまー」
「お帰り、随分機嫌がいいな」
「沢山遊んで、いっぱい買い物しちゃった、やっぱ友情っていいですね」


いいな~奥さんと別れたんなら不倫じゃないもん、直属の上司だって思いっきり恋愛すればいいじゃん!私みたいに背伸びしないで素直にね!


「これっペアのマグカツプ可愛いでしょう~買ってきちゃった」
「で、合コンはどうだった、いい男いたか?」
「ぶちょみたいないい男はいませんでした」
「そっか~そうだろう~♪」

あっ喜んでる喜んでる、可愛いじゃん

「クンクンさっきからいい匂いするんだけど」
「半日かけて煮込んだビーフシチューだ、美味いぞ!」
「ヤッホー!丁度朝倉屋でバケット買ってきたんですよ」
「じゃあ今日はワインでも開けるか」

「で、王様ゲームとかするのか?」
「しました、それで王様になった人が私のメルアド教えてくれって」
「教えたのか」
「はい・・・そういうゲームだし、なんでも地方の大きな病院の跡取り息子とかで今K大学病院でインターン中だそうです。なんかそれを鼻にかけているというかなんというか、メルアドもあんまり教えたくはなかったんだけど」
「合コンに行くよう勧めて悪かったな」
「でも久々に友達に会えて良かったです。あっ山田姐さんにこういうときの上手なメールの対処方法を教えて貰おうっと」
「いろんな面で山田は頼りになるな」

「ぶちょお~お代わり!」
「おい三杯目だぞ~」
「だって超美味いんだもん!」
「それにそれ結構高いんだぞ、ビールみたいな飲み方すんなよ」
「いいんじゃないですか~美味しいものは一気にいきましょうよ」


楽しいな雨宮とご飯食べるのは、つい何でも作ってやりたくなる。
こんなに甘やかしていいのか?・・・まっいっか。



                   *


「はいSWビルド、インテリア事業部です」
「あっ高野さん、コホンコホン」
「何か?」
「変更したい箇所があるので・・・コホッコホッ失礼しました。今からそちらに窺ってもよろしいでしょうか・・・ゴホンゴホン」
「大丈夫ですか?酷く咳き込んでおられますが、今仕事が終わったんで帰りにそちらの会社に窺います」
「でも・・・」

「すみません自宅にまで来て頂いて、今日はずっと仕事していたもので」
「資料全部持ってきたので、ゆっくり選んでください。その間なんか簡単なものでも作ります」
「そういう訳には」
「こないだの朝食のお礼です」

「美味しい・・・高野さんて何でも出来るのね、でもあんまり優しいと誤解しちゃいますよ」

「意地っ張りで負けず嫌いで決して人に弱みは見せたくない、本当は結構弱いのにね。君と僕はどこか似ている」
「だからほっておけなかった?そういえば初めてなのに私達相性もよかったわね」
「・・・・・」
「ごめんなさい、男の人の困った顔見るの好きなの(笑)今好きな人がいるんでしょ?」

「彼女の前では素直になれる、ありのままの自分でいられるんだ」

「いいな~私もそういう人と出会いたいな、大体いつも好きになるのは高野さんタイプっていうのがよくないのかも(笑)お店のデッサン素敵ですね、いい店になりそうだわ」
「ええ」


                *


「蛍、こないだのメールどうだった?」
「それが最近メールが異様に多くて」
「どれっ・・・これってストーカーメールよ!ちょっとこのメールは危ないわよ」
「はぁ~そんなんですか」
「ホント蛍はのん気なんだから、いい、こういうメールは消去しないで証拠としてとっておくのよ、それと直ぐに部長に相談しなさい」
「はい」

                 *


あっ財布忘れていた・・・・・会社に戻る蛍

「えっ何だって!」
「俺の先輩が岩城さんと同じマンションで3つ隣の部屋で、それで夜遅くに岩城さんの部屋から出てくるのを見たんじゃ、それに先輩がいうには、その男なら先週の朝も部屋から出るのを見たって・・・一応二ッ木さんには知らせておいたほうがいいかなって、わしも部長がそういう不誠実な男とは思いたくないが」
「当たり前だ!高野は絶対にそんな男じゃない、何か理由があるんだ、俺確かめるから誰にもこのこと言うなよ!」
「いわんいわん」

・・・うそ・・・うそ・・・うそ・・・

                           後編に続く。





                   





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