えっ!?来週の土曜日市内病院の院長会議があるんだ。
恵太郎さんとこ行く予定だったのにな~。
う~ん副院長でもいいんだけど・・やっぱり私が行こう。。。
「あっ恵太郎さん、来週の土曜日なんだけど院長会議があってそっちに行けなくなったの、
ホントごめんなさい」
「そうなんですか・・・残念です。コホッコホッ」
「恵太郎さん風邪?大丈夫?私やっぱり行こうかな」
「大したことないですから、それに最近新しい心理士が来たんです。彼女若くて働き者だから僕前よりも楽できるんですよ、だから心配しないでくださいね」
「そっそうなの、今夜は温かくして、ちゃんと食べてよく寝て早く風邪治してね」
「はいはい(笑)」
新しい心理士、若くて働き者。彼女ってことは女よね。若い女の子?
しかも美人・・・かどうかはわからないけど、そもそもあんな田舎に若い女の子が来るなんて、仕事に燃えてる子なのね。
あーどんな子だろ、気になる~気になる(もんもん)
*
「田中さん、最近どうですか?」
「ええおかげ様で最近調子良くて、昨日は孫も見舞いにきてくれたんですよ。
イケメンの男の子の話題で盛り上がって楽しかったです。共通の話題見つけてくれて有難うね、緒方先生じゃなくて院長」
「緒方先生でいいですよ~じゃあこれからも秘密の○ちゃんチェックしないとね(笑)」
「ええ」
「あっ院長、ちょっとこっち来て貰えますか?」
「なにか?」
「昨夜急患で運ばれた患者さんが退院するってきかないんですよ」
「担当は?」
「桜木先生なんですが、今朝から出張で出かけているんです。急性胃潰瘍で吐血して運ばれた患者さんで、3日間絶対安静なんです」
「それがどうして退院するって?」
「大事な商談があるそうです。ほらっ起業家としてやり手で、最近雑誌なんかにもよく出てるホテル・ドルベールのオーナーの鏑木和さんという方です」
「仕事第一の人って訳だ、私から話してみるわ」
*
「退院するのは患者の勝手じゃないんですか?」
「そうおっしゃられても困ります!」
「どうしたの?」
「あっ院長、いいところに」
えっ?・・・えーーーーー!なっなにこの人、恵太郎さんにそっくりじゃない。
雰囲気は全然違うけど、顔の造型はビックリするくらい似てる。。。
「鏑木さん、どうされました?」
「僕の担当の先生ですか?」
「院長の緒方です」
「へぇ~女性の院長とは珍しいですね、仕事の出来る女性は嫌いじゃないですよ。しかも美人だし」
・・・・・ホントっ似てるのは顔だけね。
「明日大事な商談があるんで退院させてもらいます。退院するのは患者の自由ですよね」
「大事な商談中に吐血してもよろしいんですか?」
「そうならないように薬出すなり注射するのが医者の仕事でしょ」
「薬と点滴の指示が出ています。それに加え3日間の絶対安静というのがカルテに書いてあります。それを守られないならそれは患者の責任になります。
それに鏑木さんは大変やり手の起業家とお聞きしてます。優秀な経営者の方には優秀な部下も沢山おられるんでしょうね。そういう方に大事な商談任せればいいじゃないですか」
「しかし」
「それともその商談が上手くいかなかったら鏑木さんのホテルは瞑れてしまうのかしら?」
「そんな訳ないでしょ!」
「だったら明日は他の方に任せてゆっくり休んでくださいね。優秀な部下が沢山おられても、トップの体調が思わしくないと皆さん不安になりますからね」
「・・・ええそうですね。。。院長の専門は?」
「精神科です」
「なるほどね」
*
「優秀な部下か・・・今度の院長会議、副院長が行ってもいいのよね。う~ん副院長に任せてみようかな」
*
「それにしても鏑木さんて岡村先生にソックリよね」
「岡村先生?」
「以前この病院にいた心理士で緒方院長と遠距離恋愛中なのよ」
「へぇ~あの鏑木さんとソックリならカッコいい人なんですね」
「顔はいいんだけど、ケチじゃなくてエコが口癖のちょっと変わった人だったわ」
「そうそう」
「やっぱ鏑木さんみたいな人がいわね」
「でもちょっとああいう人は我々一般人にはね、岡村さんと鏑木さんと足して2で割ったような人っていないかしら?(笑)
・・・ふーん、病院も退屈しないな。
*
「院長、何飲んでいるんですか?」
「えっ?あっ鏑木さん」
ビックリした~声まで似てるんだもん。
「あらっ随分と顔色良くなりましたね」
「おかげ様で明日退院です」
「それはおめでとうございます」
「優等生な患者やってましたからね」
「そういえば気にしてらしたお仕事の方は?」
「上手くいきましたよ、商談を任せた部下も自信が持てたようだし、部下に仕事を任せられる分これからはもう少し余裕を持って仕事ができそうです」
「怪我の功名てやつね」
「そうですね(笑)まあでも院長のおかげです」
「私の?」
「正直あんまり部下を信用してなくて少しワンマン経営でした。成り上がりでここまできましたから(苦笑)今回病気になっていろいろと考えてみたり、見えないものが見えたり、病気になってよかったくらいですよ」
「そうですか、でも病気にはならないほうがいいから今後気をつけてくださいね」
「はい」
やだ、笑うと益々似てる。。。
「ところでそのポットはなんですか?」
「あっオーガニックコーヒーが入っているのよ。ペットボトル飲料買うより地球に優しいしね」
「それってケチじゃなくてエコの彼氏の影響ですか?」
「はいっ?!」
あのおしゃべり看護士トリオめぇ~。
「遠距離恋愛なんですって?心配じゃないですか、だって僕に似てるってことはかなりの二枚目ですよね、もてるでしょう?」
「(こいつ~)彼は仕事が忙しいし、それどころじゃないというか、若い子もいないし(あっ若い子きたんだ)・・・コホンあなたに関係ないと思うんですが」
「そうですね、失礼しました。院長って素直というか案外可愛いんですね、すぐに顔に出るんだ(笑)」
*
なんか調子狂うのよね、この人といると・・・
いくらなんでも顔が似すぎているのよ!・・・で、鏑木さんと話していると益々恵太郎さんに会いたくなるし。
うん決めた!副院長にもいい経験になるし、恵太郎さんの風邪も心配だし、
予定通り北海道に行こう!
・・・空港・・・
「院長!奇遇ですね~こんなとこで又お会いするなんて」
「ええ(たく~なんでまた~)」
「あっ北海道の彼氏に会いに行くんでしょ?今日はなんかいつもと雰囲気が違って、一段と綺麗で可愛いですよ」
「そっそう?ありがとう、鏑木さんも素敵ですわ(ホント呆れるくらい女が振り返ってる)」
「僕も北海道に行く予定だったんですよ、ホテルの視察を兼ねて休暇を取ろうと思っていたんですが、大分休んでしまったので予定変更です」
「お忙しいですものね(よかった~)」
「で、視察しようと思っていたホテルの宿泊券とか、ディナー券とかいろいろあるんですが、よかったら使ってください。院長にはお世話になったし」
「患者さんからそういうものを頂くわけにはいきません」
「もう患者じゃないですよ、それにこれはプレゼントです。素敵な女性にはプレゼントしたくなるのは男として至極当然のことでしょ、緒方聡子さん(笑顔)」
さっ聡子さんて言った~恵太郎さんでさえ、未だに聡子先生なのに~フン!
「ここのホテルのレストランなんか最近評判みたいですよ、僕の変わりに食事して感想なんか聞かせてくれると有り難いんですけどね。」
「えっ私が感想ですか?私の感想なんかでいいのかしら?」
「そりゃ今はアラフォーな女性が一番元気ですからね、とても参考になります」
「あぁ・・はい(アラフォーか~)」
「じゃあ又の偶然の出会いを期待して、ところで院長の夢ってなんですか?」
「夢?ですか・・・」
「突然失礼しました。活き活きと働く女性を見るとつい聞きたくなるのが僕の悪い癖なんですよ、では(微笑)」
夢・・・私の夢、結構敵叶ってきてるよね。でもまだまだ夢はあるような気がする。 (後編に続く)