「お帰りなさいまし、アンジェロ様」
「キャー、やだ~、( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \」
「また来てるのか・・・」
「ええ、かれこれ一刻(2時間)になります」
「一刻も一体何を話しているんだ」
「なんでしょね(笑)貴族等の身分の高い女性は寡黙であることが美徳とされてきましたが、マリアナ様はイザベラ様にすっかり感化されたようで」
「そうなのか、最近お喋りで仕事で疲れているときなど、ちとうっとおしいのだ」
「話すのが面倒なときは・・・うん、そうか、なるほど、それで、わかった と大体この5つの言葉を使って返事すれば会話は繋がります」
「なるほど、ヨハンはいろんなことを知っているな」
「お役に立てるならなによりです」
「マリアナはアンジェロのどこがよかったの?やっぱり顔?まあ顔がいいのは認めるけど、相当酷い男じゃない。あらっごめんなさい、今やあなたの夫なのに」
「いいのよ、イザベラにとっては相当酷い男であることに違いないもの。5年前まだ兄フレデリックが生きていて船も沈まずに裕福だった頃持参金目当てに沢山の男性が私に求婚にきたの、誰もが花束や贈り物を持って詩人のように美しい言葉を私に投げかけるのよ、そんな中アンジェロは、君の顔は毎日見ても見飽きないって」
「それって褒め言葉じゃないわよ」
「そうね、でも私はそれを聞いてなんて不器用で嘘の付けない純粋な人なんだろうって思って(微笑)」
そんなお目出度い思考回路が出来るなんてマリアナって育ちがいいというか、生粋のお嬢様なのね。
「そうだったの」
「イザベラこそどうして公爵と?公爵は立派な人物で素晴らしい方だけど・・・」
「おじいちゃんよね(笑)でも公爵といると楽しいの、いろんなことを知っているしとても会話が弾むの(お喋り大好きなイザベラです)」
「わかる、私も公爵と話してると楽しいもの」
「アンジェロはつまんないでしょ」
「ええ、まあ・・・」
悪気はないんだろうけど思っていることを直ぐに口に出すのよね、イザベラに修道女は向いてないってしみじみ思うわ(^^;
「あらっイザベラのその髪留め素敵ね」
「いいでしょ、この髪留め公爵が買ってくれたのよ。マリアナも買ってもらいなさいよ」
「あの人は贅沢はしないというか、無駄なものは一切買わない人だから」
「ふーん、なんかつまんない。私もかつては修道女を目指した女、こういうものに興味はなかったんだけど貰うと嬉しいものよ」
「なにもいらない。私5年も待ったのよ、一緒にいられるだけで幸せだもの。でも一つだけ欲しいものがあるの」
*
私が何をしても何を言っても陰であざ笑われている気がする。実際そうだろう、賢者と呼ばれたこの私が下心を持ち醜態をさらした。誰もそのことを忘れはしまい。こんな生き恥をさらすくらいならいっそ死刑になったほうがよかったのではないかと今ならそう思う。いや公爵はマリアナが大のお気に入りだ。そのマリアナは私を愛している。その私を処刑にする気はなかったのだ。大体神父の成りして事の成り行きを見ていたとは、あの狸親父め。いや私はまだまだだな、公爵には到底叶わない。くっそーイライラする。
「ガチャン」
なんだ、今の音は?
「これは・・・結婚祝いに公爵から賜った壺ではないか、こんな大事なものを誰が割った!」
「私でございます、お許しください、何年かかっても弁償し」
「おまえごときに弁償できるわけがないだろ、もうよい、何をしておる、さっさとこの家から出ていけ!」
「ああ、かわいそうに」
「なにかあったんですか?」
「ドンキが壺を割っちまってね、追い出されたのさ。ドンキには身重の妻と5人の子供と病気の母親がいるんだよ、これからどうやって家族を養っていけばいいのさ、誰よりも長く真面目にこの屋敷で働いてきたのにさ」
「アンジェロ様!」
「ドンキのことを許してはもらえませんか?ドンキには身重の妻と5人の子供と病気の母が」
「私の知ったことではない、割れた壺は元には戻らん、折れた桜の枝も元にはもどらん」
「桜の枝?」
「当時の公爵から賜った桜の木の枝を幼き私はうっかりと折ってしまった。正直に話せば叱らないからと父に言われ、正直に話したら気を失うほど酷くぶたれ地下牢に閉じ込められた。失敗はなにがあっても許さぬと」
「かわいそうなアンジェロ様・・・」
「ヨハン、何故おまえが泣く?」
「アンジェロ様は想像することはないのですか?もし自分がそんな目に合ったらと、私なら地下牢が怖くておしっこもらします」
「私も少し粗相したかもな」
「アンジェロ様が粗相を(ぷっ)すみません、笑ったりして」
「つまり相手の身になって考えろということか、そんなふうに考えたことなどない。私の父は厳格で自分にも他人にも厳しく、その一方で女にはだらしなく母以外の女を孕ませ、その子は死産で、母は心労が重なり早死にした。私はどこか父に似ているのかもしれんな」
「違います!アンジェロ様は優しい方です。屈強そうな若者の中で一番小さく非力そうでみすぼらしい私を憐れんで雇ってくださいました」
「おまえは足には自信があると言っていたな」
「はい!」
「ならば早く行って伝えよ、明日からもここで働けと」
「はいっ!行ってきます!」
「あら、ここにあった壺は?」
「家来の者が割ってしまってな」
「なら私が割ったことにいたしましょう、公爵は私に甘いから怒ったりしないわ」
「そうか・・・」
「辞めなくてもよいと?」
「そうだよ(笑顔)アンジェロ様は話せばわかる方だ」
「詳しくは知らないがあの厳格なアンジェロ様が女絡みで問題を起こしたとかで宮中での立場が悪くなっているらしい」
マリアナ様とイザベラ様の話で大体の察しはついているが。
「ドンキ泣いて喜んでたな。よかった、さて帰るか」
「泥棒~!誰かそいつを捕まえてくれ!」
「向こうを走ってるあいつか、こらっ待てー!」
「エスカラス様、この者が盗人を捕らえました。盗まれたものも傷一つ付けずに取り返してくれたようです」
あの人情に厚いと名高いエスカラス卿、公爵に次ぐ№2
「名はなんという」
「ヨハンと言います」
「我が家に伝わる家宝が盗まれたとあってはご先祖さまに申し訳が立たずに死んでお詫びするしかないと思っておった。感謝する。どんな褒美でも取らせようぞ」
「私はアンジェロ卿の屋敷で働いております」
「ほほう」
「褒美など要りませぬ、ただエスカラス卿にはアンジェロ様を引き立てて頂きたいと」
「なんと」
「先の失態でアンジェロ様の評判がよくないのはわかっています。ただウィーンきっての学識を持つと言われるアンジェロ様を隅に追いやるのはこの国にとっても損失だと思うのです」
「おまえの言うことには一理あるが、一度信用を無くした人間がその信用を取り戻すのは難しいものだ。それに私もアンジェロの賢者なることは認めるが性格に問題があるのは確かだ」
「アンジェロ様はお優しい方です。先の大雨で田畑を流され生活に困窮したものは下男の募集をしていたアンジェロ様の屋敷に大勢集まりました。屈強そうな若者の中で私はいささか背が低く、兄弟に食べ物を分け与える為になにも食べていなかった私は痩せこけていました。そんな私が哀れに見えたのでしょう。下男として雇うなら身体が大きく強そうな者を雇うべきところ、アンジェロ様は私を雇ってくださいました。冷たい方だと人は言いますが私はアンジェロ様は心根の優しい方だと思います」
「よいなアンジェロはおまえのような家来をもって、なにか粗相をして首になったら私のところに来なさい」
「それは・・・」
「正直なところもよい。さっきの言い分、頭の片隅にでも入れておくとしよう」
「はっ!ありがとうございます!」
あのとき・・・
「名はなんと言う」
「ヨハンと言います」
「特技は?」
「足の速さには自信があります」
「いい眼をしているな、では明日から働いてもらおう」
「あっ ありがとうございます! せっ 精一杯務めさせて頂きまじゅる・・・頂きます」
緊張のあまり噛むわ、声が裏返るわ、すっとんきょうな声でまじゅるって・・・恥ずかしかった。けどそれが面白かったのか可笑しそうに声を出して笑った。周りの者は皆驚いていた。
「まじゅるか・・・アハハ」
なんて美しい少年のような笑顔、このときはまだアンジェロ様のことをよく知らなかったけれど、いや知っていたとしてもやはり俺はこの瞬間・・・
アンジェロ様、あなたに恋をしました。
「隣国で行われる国王の子息の結婚式だが、私はちと腰を痛めてしまっての、名代を立てようと思うのだが誰がいいかの」
「公爵ほどの威厳を持つ者はこの国にはおらず大変難しい質問ではありますが、結婚式という華やかさを考えた場合、見目の良いアンジェロがふさわしいかと」
「うん、なるほどアンジェロか。ではアンジェロで」
「よろしいのですか?」
「ん?」
「あれほどの失態を犯したものを名代とするはさすが公爵はお心が広くあらせます」
「そなたが推薦したのだろが」
「ええ、下心が疼いたとはいえ、アンジェロほどの学識と英知の持ち主は他にはおりませぬ、重要な役に付けぬのはいささか勿体ないのではと思っておりました」
「アンジェロの実力は認めておる。だが私の親友の妹をないがしろにしたことがどうにも許せなくてな、結婚はしたもののまだまだ安心できん。マリアナが真に幸せになったならアンジェロを取り立ててよいと思っておる」
「そうであられましたか」
*
「ヨハン、どうだろう?おかしくはないか?」
「アンジェロ様が一番立派で美しくあられます。本日の主役の新郎が霞むほどに」
「世辞を言うでない(笑)」
「ねえ、あちらにいる殿方は見かけない顔だけど誰かしら?」
「ウィーン公爵の名代でいらした貴族のアンジェロ卿だそうよ」
「まあなんと見目麗しいお方」
「眼福ですわ」
「人の幸せを祝う結婚式に出るなんておっくうだったけど、あの方に会えるなら来てよかったわ」
「本当よね」
「もうお帰りになるのですか」
「はい、女王様。女王様にはご健勝であられますこと心より願っております」
「アンジェロ殿も道中気をつけてくださいね、あなたに会えたこの日を私は忘れないことでしょう」
「はっ光栄の極みでございます」
ご婦人方にモテモテのアンジェロ様です
「アンジェロ様どうしました?お顔の色がすぐれないようですが」
「うん、水に当たったかな、ちと腹の具合が」
「ならこれを飲んでください、祖母の代から我が家に伝わる胃腸薬です。少し苦いですが良く効きますよ、旅に出るとお腹を壊すことが多いからと母が持たせてくれたんです」
「そうか、じゃあもらおうかな」
「はい!」
「ゴクゴク・・・・・ウッ」
バタン(倒れる音)
「アンジェロ様? アンジェロ様!どうしました! 息をしてない・・・まさか、そんなことが。そんなそんな、アンジェロ様ーーー!俺のせいだ、俺が胃腸薬を飲ませたばかりに・・・いや何故胃腸薬で死ぬんだ!わからない、わからない・・・だけどアンジェロ様を一人で黄泉の国へは行かせはしません、私がお伴いたしまじゅる・・・アンジェロ様、もうあの時のようには笑ってはくださらぬのか、アンジェロ様ー!」
「もしやそこのお人?」
「なんですか? あなたは・・・さっきすれ違いざまにぶつかりそうになって荷物をばらまいた」
「そのときにこの小瓶が入れ替わったのです」
「えっ?それは私の」
「ええ、私のものとよく似てました」
「あの小瓶には毒でも入っていたんですか!この人殺し!女だとて容赦はせん、覚悟しろ!」
「違います、そのお方は死んではおりませぬ。仮死状態になっているだけで24時間経てば息を吹き返します」
「はぁ?何故そのような」
「私の名前はジュリエット、そしてこの私がお慕いする方はロミオ様、私はキャピレット家の一人娘、ロミオ様はモンタギュー家の一人息子、両家は昔から仲が悪くときには死人が出るほど敵対しているのです。そんな双方の親が私たちの愛を認めてくださることは到底有りえないこと。途方に暮れていましたところあるお方が、この薬を飲めば24時間仮死状態になります。霊廟に葬られた後でロミオと落ち合い二人で駆け落ちしなさいと助言くださったのです」
「事情はわかった。アンジェロ様は死んではいないのだな・・・神よ、ありがとうございます」
「もう薬はありません、このままだと計画はつぶれ私とロミオは永遠に会うこと叶わないでしょう」
「それは残念だったな、でもいいではないか」
「はっ?」
「あなたは大層美しいが女性というよりまだ少女のようだ(ジュリエットの年齢はこのとき13歳だそうです)。これからまだいろんな人に出会えるし、そのロミオ様よりいい男だっているだろう、その年で結婚を急ぐことはないだろう」
そういえばこの男、よく見ると綺麗な顔をしている。世の中にはまだまだ沢山のいい男がいるのかしら?
「いいえ、私はロミオ様と婚姻の誓いを立てました。私の純潔の誓いは守らなければいけません」
「あっそっ、なら勝手にすればいい」
「そうはいきません、私はどうしても今仮死にならなければいけないのです」
「だから薬がないって」
「そのお方に私の身代わりをして頂けないでしょうか、殿方にしては身体は細く美しい顔立ち、私のドレスを着れば女に見えるでしょう」
「なに言ってんだよ、そんなことできるわけねぇだろ!」
「あなたは誰かを愛したことがないのですか?世界中を敵に回してもこの人が好き、愛する人の為ならこの命だって惜しくはない・・・わかりませぬか、この気持ち」
「わかりました・・・協力しましょう」
「ではこちらのドレスに着替えさせてくださいね、このヘアピースも使うといいわ」
ああ、夢にまで見たアンジェロ様のまっ裸・・・細マッチョなんですね
お美しい。はっ見惚れている場合ではない。いやもうちょっと、ドレスなど着せずにこのままでもいいではないか(こら)
「やはり髭は剃ったほうがよろしいのでは」
「そうですね、失礼します、アンジェロ様」
「まあこれなら誰も疑いませんわ、恩にきます。私たちは下男と下女のふりをして霊廟までついていきましょう」
「当たり前です、途中でなにかあったら私が命に変えてアンジェロ様を守りますゆえ」
「上手くいったわ・・・だけどみんなあんなに哀しんで、お父様、お母さま、親不孝な私をお許しください、いえもう娘はいないものと」
「だからあんんたは死んだことになってるって、けどよ、今ならまだ引き返せるんじゃないのか」
「・・・・・・・ロミオはどうしたのかしら?」
「ジュリエットー!何故・・・何故こんな姿に。君が死んだなんてまだ信じられない、僕を映し出す大きな瞳はもう二度と開くことはないのか、黒真珠のような瞳を覆う長い睫毛、ん?死ぬと睫毛は長くなるのか? 形のよい薔薇の蕾のような唇。死してなお美しいジュリエット・・・いや死んでからのほうがより美しく見えるのは何故だろう?そうか、これから僕たちは結婚式をするのですね、花嫁になった君は今までで一番美しい・・・」
「ちょっちょっロミオったらなに言ってるのよ、死してなお美しいとか」
「くくくっ」
「ちょっとそこ笑うとこじゃないでしょう」
「ロミオ殿の言うことは正しい(笑)」
「あなた、さっき私のこと大層美しいと言ったじゃないの」
「ええ言いましたよ、ただアンジェロ様は別格なのです」
「ジュリエット、僕も直ぐにあなたの傍に参ります」
「ダメーーー!」
ヨハンの投げた小石が見事にロミオの腕に当たりました。
「ジュリエット? わぁー幽霊だ~幽霊怖いよ~誰か助けて~」
「ロミオ様!幽霊じゃありません! ほらっちゃんと足があります」
「じゃあ、君が本物のジュリエットなのか? これは一体どういうことなんだ」
「かくかくしかじかで、さあ早く逃げましょう、私たち二人だけで遠くへ行くのよ」
「無理」
「どうして?」
「腰がぬけてしまって動けない」
「さっきの幽霊といい君のロミオ様はなんとも情けない男だな(笑)いや恋は盲目というからな」
ちょっと冷めてきたかも(^^;
「ジュリエット?ジュリエット!生きておったのか!」
「おー私の可愛いジュリエット」
そーとアンジェロを移動させるヨハン君。
「お父様、お母さま、ごめんなさい」
「おまえは生きている、それだけでいいのだ。ロミオとの結婚も許すから」
「もう何処にも行かないで私たちの傍にいるのですよ」
「はい、お母さま、ですがロミオとの結婚はやめることにしました」
「なんと!」
「私はまだ幼く世の中のことをわかってはいません、もっといろんな経験を積みたいと思っております(男はロミオだけじゃないし)」
「そうか」
「ですがキュピレット家とモンタギュー家がいつまでも敵対しているのは不幸なことです。そろそろ仲直りしてはどうでしょうか」
「うん、そうだな、そうしよう」
「ということで、ごきげんようロミオ様」
「うん、またな」
そうだ、さっきの美しい女性といい世の中にはジュリエット以外にも沢山の女がいるのだ、早々と17歳で結婚を決めることはないよな。しかも出会ってまだ3日だったし、まるで三日麻疹みたいなもんだったな、俺たちの幼い恋は。
これが誰も知らない本当の 喜劇・ロミオとジュリエット
シェイクスピア様~
「ヨハン、私は随分長く寝ていた気がするのだが」
「お疲れだったのでしょう」
「髭はどうしたんだろう?」
「あっ薬の副作用ってやつですかね」
「身体の調子はよくなったから髭くらい仕方ないな」
「そうですよ。髭はまたはえてきますからね」
「ここら辺は賑わっているな」
「ここでマリアナ様にお土産を買いましょう」
「うん・・・なにがいいんだろう?」
「アンジェロ様、そんな変な置物を喜ぶ女子はどこにもいませんよ」
「そうか(^^;」
「この髪留めなんていかがでしょう、こちらの首飾りも素敵です。色の白いマリアナ様に似合いそうだ」
「二つも買うのか?」
「アンジェロ様は女心がわかっておりませぬ」
「ヨハンは女心がよくわかりそうだな、女子の好みそうな顔をしておるし、求愛されたことも多いのでは」
「まあ、それなりには。でももう女はいいです(笑)」
その年で女はもういいなんて一体どれだけの女と
「アンジェロ様、私の知り合いが公爵家で働いているのですが、アンジェロはまだまだ信用がならんがマリアナを真に幸せにしたなら全てを水に流そうと話しているのを立ち聞きしたそうです」
「本当なのか、それは?」
「ええ、本当です。マリアナ様はお子を望んでおいでです」
「そういうのは授かりものだから」
「数打ちゃ当たるです!」
「うんわかった、頑張る」
「それにしても今度の旅は楽しかったな、ヨハンと一緒だったからだな。私には友がおらぬゆえ私の友になってはくれぬか」
「勿体ないお言葉、ありがとうございます。下男であることに変わりはないですが時にはアンジェロ様の友でいたいと思います」
「うん、よろしくな、我が友ヨハン」
「まあなんて素敵な髪留めに首飾り、ありがとうアンジェロ(選んだのはヨハンだろうけど)」
「喜んでくれて私も嬉しいよ」
今頃アンジェロ様はマリアナ様と・・・私がけしかけたとはいえ、アンジェロ様はどんな顔でマリアナ様を抱くのか?どんな風に・・・それを思うと胸が張り裂けそうだ。あんなにお優しいマリアナ様に私は嫉妬している。ドロドロとした醜い塊がマグマのように私の身体に張り付いてこの身体を焼けつくすようだ、熱い・・・熱くてたまらない。
「ヨハン、もう水は冷たいんだから水浴びしてると風邪ひくわよ」
水浴びばかりしていた俺は丈夫な身体になり風邪一つひかずに冬を過ごした。 後編に続く。