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Tea Time

ほっと一息Tea Timeのような・・・ひとときになればいいなと思います。

聡子先生の革命(前編)

2008-11-24 22:57:03 | 水野先生・1粒の涙 & 聡子先生の革命
えっ!?来週の土曜日市内病院の院長会議があるんだ。
恵太郎さんとこ行く予定だったのにな~。
う~ん副院長でもいいんだけど・・やっぱり私が行こう。。。



「あっ恵太郎さん、来週の土曜日なんだけど院長会議があってそっちに行けなくなったの、
ホントごめんなさい」
「そうなんですか・・・残念です。コホッコホッ」
「恵太郎さん風邪?大丈夫?私やっぱり行こうかな」
「大したことないですから、それに最近新しい心理士が来たんです。彼女若くて働き者だから僕前よりも楽できるんですよ、だから心配しないでくださいね」
「そっそうなの、今夜は温かくして、ちゃんと食べてよく寝て早く風邪治してね」
「はいはい(笑)」


新しい心理士、若くて働き者。彼女ってことは女よね。若い女の子?
しかも美人・・・かどうかはわからないけど、そもそもあんな田舎に若い女の子が来るなんて、仕事に燃えてる子なのね。
あーどんな子だろ、気になる~気になる(もんもん)



                   *


「田中さん、最近どうですか?」
「ええおかげ様で最近調子良くて、昨日は孫も見舞いにきてくれたんですよ。
イケメンの男の子の話題で盛り上がって楽しかったです。共通の話題見つけてくれて有難うね、緒方先生じゃなくて院長」
「緒方先生でいいですよ~じゃあこれからも秘密の○ちゃんチェックしないとね(笑)」
「ええ」


「あっ院長、ちょっとこっち来て貰えますか?」
「なにか?」
「昨夜急患で運ばれた患者さんが退院するってきかないんですよ」
「担当は?」
「桜木先生なんですが、今朝から出張で出かけているんです。急性胃潰瘍で吐血して運ばれた患者さんで、3日間絶対安静なんです」
「それがどうして退院するって?」
「大事な商談があるそうです。ほらっ起業家としてやり手で、最近雑誌なんかにもよく出てるホテル・ドルベールのオーナーの鏑木和さんという方です」
「仕事第一の人って訳だ、私から話してみるわ」



                      *



「退院するのは患者の勝手じゃないんですか?」

「そうおっしゃられても困ります!」

「どうしたの?」

「あっ院長、いいところに」



えっ?・・・えーーーーー!なっなにこの人、恵太郎さんにそっくりじゃない。
雰囲気は全然違うけど、顔の造型はビックリするくらい似てる。。。



「鏑木さん、どうされました?」

「僕の担当の先生ですか?」

「院長の緒方です」

「へぇ~女性の院長とは珍しいですね、仕事の出来る女性は嫌いじゃないですよ。しかも美人だし」


・・・・・ホントっ似てるのは顔だけね。


「明日大事な商談があるんで退院させてもらいます。退院するのは患者の自由ですよね」

「大事な商談中に吐血してもよろしいんですか?」

「そうならないように薬出すなり注射するのが医者の仕事でしょ」

「薬と点滴の指示が出ています。それに加え3日間の絶対安静というのがカルテに書いてあります。それを守られないならそれは患者の責任になります。
それに鏑木さんは大変やり手の起業家とお聞きしてます。優秀な経営者の方には優秀な部下も沢山おられるんでしょうね。そういう方に大事な商談任せればいいじゃないですか」

「しかし」

「それともその商談が上手くいかなかったら鏑木さんのホテルは瞑れてしまうのかしら?」

「そんな訳ないでしょ!」

「だったら明日は他の方に任せてゆっくり休んでくださいね。優秀な部下が沢山おられても、トップの体調が思わしくないと皆さん不安になりますからね」

「・・・ええそうですね。。。院長の専門は?」

「精神科です」

「なるほどね」



                    *


「優秀な部下か・・・今度の院長会議、副院長が行ってもいいのよね。う~ん副院長に任せてみようかな」



                  *


「それにしても鏑木さんて岡村先生にソックリよね」
「岡村先生?」
「以前この病院にいた心理士で緒方院長と遠距離恋愛中なのよ」
「へぇ~あの鏑木さんとソックリならカッコいい人なんですね」
「顔はいいんだけど、ケチじゃなくてエコが口癖のちょっと変わった人だったわ」
「そうそう」
「やっぱ鏑木さんみたいな人がいわね」
「でもちょっとああいう人は我々一般人にはね、岡村さんと鏑木さんと足して2で割ったような人っていないかしら?(笑)


・・・ふーん、病院も退屈しないな。


                    
                      *


「院長、何飲んでいるんですか?」

「えっ?あっ鏑木さん」


ビックリした~声まで似てるんだもん。


「あらっ随分と顔色良くなりましたね」
「おかげ様で明日退院です」
「それはおめでとうございます」
「優等生な患者やってましたからね」
「そういえば気にしてらしたお仕事の方は?」
「上手くいきましたよ、商談を任せた部下も自信が持てたようだし、部下に仕事を任せられる分これからはもう少し余裕を持って仕事ができそうです」
「怪我の功名てやつね」
「そうですね(笑)まあでも院長のおかげです」
「私の?」
「正直あんまり部下を信用してなくて少しワンマン経営でした。成り上がりでここまできましたから(苦笑)今回病気になっていろいろと考えてみたり、見えないものが見えたり、病気になってよかったくらいですよ」
「そうですか、でも病気にはならないほうがいいから今後気をつけてくださいね」
「はい」


やだ、笑うと益々似てる。。。


「ところでそのポットはなんですか?」
「あっオーガニックコーヒーが入っているのよ。ペットボトル飲料買うより地球に優しいしね」
「それってケチじゃなくてエコの彼氏の影響ですか?」
「はいっ?!」


あのおしゃべり看護士トリオめぇ~。


「遠距離恋愛なんですって?心配じゃないですか、だって僕に似てるってことはかなりの二枚目ですよね、もてるでしょう?」

「(こいつ~)彼は仕事が忙しいし、それどころじゃないというか、若い子もいないし(あっ若い子きたんだ)・・・コホンあなたに関係ないと思うんですが」

「そうですね、失礼しました。院長って素直というか案外可愛いんですね、すぐに顔に出るんだ(笑)」


                     
                      *


なんか調子狂うのよね、この人といると・・・
いくらなんでも顔が似すぎているのよ!・・・で、鏑木さんと話していると益々恵太郎さんに会いたくなるし。
うん決めた!副院長にもいい経験になるし、恵太郎さんの風邪も心配だし、
予定通り北海道に行こう!



・・・空港・・・



「院長!奇遇ですね~こんなとこで又お会いするなんて」

「ええ(たく~なんでまた~)」

「あっ北海道の彼氏に会いに行くんでしょ?今日はなんかいつもと雰囲気が違って、一段と綺麗で可愛いですよ」

「そっそう?ありがとう、鏑木さんも素敵ですわ(ホント呆れるくらい女が振り返ってる)」

「僕も北海道に行く予定だったんですよ、ホテルの視察を兼ねて休暇を取ろうと思っていたんですが、大分休んでしまったので予定変更です」

「お忙しいですものね(よかった~)」

「で、視察しようと思っていたホテルの宿泊券とか、ディナー券とかいろいろあるんですが、よかったら使ってください。院長にはお世話になったし」

「患者さんからそういうものを頂くわけにはいきません」

「もう患者じゃないですよ、それにこれはプレゼントです。素敵な女性にはプレゼントしたくなるのは男として至極当然のことでしょ、緒方聡子さん(笑顔)」


さっ聡子さんて言った~恵太郎さんでさえ、未だに聡子先生なのに~フン!


「ここのホテルのレストランなんか最近評判みたいですよ、僕の変わりに食事して感想なんか聞かせてくれると有り難いんですけどね。」

「えっ私が感想ですか?私の感想なんかでいいのかしら?」

「そりゃ今はアラフォーな女性が一番元気ですからね、とても参考になります」

「あぁ・・はい(アラフォーか~)」

「じゃあ又の偶然の出会いを期待して、ところで院長の夢ってなんですか?」

「夢?ですか・・・」

「突然失礼しました。活き活きと働く女性を見るとつい聞きたくなるのが僕の悪い癖なんですよ、では(微笑)」


夢・・・私の夢、結構敵叶ってきてるよね。でもまだまだ夢はあるような気がする。      (後編に続く)




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聡子先生の革命(後編)

2008-11-24 22:56:35 | 水野先生・1粒の涙 & 聡子先生の革命
北海道・・・日高


「こんにちは」

「こんにちは、田宮はるかといいます。私最近ここにきたばかりでお顔を存じ上げない方もいるのですが、どちら様でしょうか?」

「緒方聡子といいます。岡村先生はおられますか?」

「岡村先生のお知り合いの方ですね、今岡村先生呼んできますね」

「あっお仕事されているのなら」

「もうすぐこっちに来ることになっていたんですよ、少々お待ちください」



あの子が新しく来た心理士さん?思った以上に若くて可愛くて、おまけに胸もデカイ。。。
何もないところで、つまづく様もなんか天然で可愛い。。。



「聡子せんせい~はるか先生、可愛いでしょう~」

「みんなこんにちは~あんなに若くて可愛い心理士の先生が来てよかったわね」

「そんなこと言って内心穏やかじゃないんじゃないんですか~?」

「あら~どうして?(たく最近のガキは)」



「聡子せんせい~!」


二人してお揃いのジャージ着て、ん?首のタオルもペア?お似合いというか、二人絵になるというか、ここの風景に溶け込みすぎ。。。


「仕事のめどがついたので来ちゃいました」

「はい(笑顔)」


う~ん、やっぱ私の恵太郎さんの笑顔は世界一だわ~


「岡村先生、こちらの方は?」

「聡子先生は優秀な精神科医であり、院長でもあるんですよ」

「すごい方なんですね!」

「そして岡村先生の恋人で、今遠距離恋愛中なんですよ~」

「あらっ?そんなこと言われると照れるわ~」


よく言った!子供たち!


「そうなんですか!緒方先生みたいな綺麗な方が恋人だなんて岡村先生もやるじゃないですか~」

「いやっまっその(照)」


あらまあ素直でいい子だこと。


「恵太郎さん、急に来ちゃったけど今夜時間あるかしら?」

「今夜は・・・」

「岡村先生、折角緒方先生が来られたんだから、ゆっくりしてくださいね」

「えーじゃあ、そうさせてもらいます」

「緒方先生!」

「はい?」

「精神科医である緒方先生にいろいろお聞きしたいことがあるんですが、明日お時間よろしいですか?」

「ええ、私でよければ」


                   *


本当に仕事熱心で、明るくて可愛くて、いい感じの娘さんね。
こういう子がずっと側にいて、恵太郎さんが好きになったとしても仕方のないことよね。
そういうこともあるだろうと思って結婚の約束をしなかったのは私なんだし。
でも・・・もし本当にそんなことになったら。。。


「聡子先生?」
「あっなに?」
「何か考え事ですか?」
「ううん。昨日まで忙しかったからちょっとぼぉ~としてただけ」
「じゃあ今日はリフレッシュしましょうよ、久々のデートなんですから」
「そうデート!デートよね!楽しみましょうね!」


                    
                      *



「へぇ~カジュアルなんだけど、シックな落ち着いた雰囲気のあるいいレストランね(メモメモ、あっそーだ)」


「あっそれ!僕も小学生の頃やりまたよ、スプーンとか電球にかざして光を友達の顔に当てたりするんですよね」

「えっ?そう・・・私もやったわ、なんかこのスプーン見てたら給食の頃思い出して」

「へぇ~随分お洒落なスプーン使ってたんですね」

「そうね(やって損した・・・つーか普通やらないよね?)」

「うん料理も美味しい」

「ホントこのソースなんか絶品よね(ふふ)」


「聡子先生?ナプキンならここにありますよ」

「あっありがとう」


そうよナプキン使えばいいのよね。それにそれが通用するのは20代までじゃないですか~て、これまた恵太郎さんに激似のMCも言ってたわね。


「あー美味しかった~あっ恵太郎さん、靴が・・・」


てスニーカーだし・・・でもこの角度からだと私の○胸も・・・


「あっ!」

「なに?」

「白髪見っけー!」


・・・・・・・・・・・・

「頭のてっぺんに1本だけですが・・・、普段なかなか聡子先生の頭のてっぺん見ることないから」


ええどうせ私は大きいですよ。。。


「聡子先生のつむじってなんか可愛いです」

「ありがと(そんなもん褒められても)」

「それに聡子先生なら総白髪になっても・・・」


総白髪って総入れ歯じゃあるまいし・・・


「きっと白髪の上品な綺麗なおばあちゃんになりますよ」

「そう?(どうせなら今を褒めて欲しい・・・)」

「すっかり遅くなっちゃったけど、まだバスあったかな?」

「あらっ?宿泊券も入ってたわ」

「えっ本当ですか?じゃあ泊まりましょうよ」

「そっそうね(よっしゃ!)」

「聡子先生と一緒にホテルに泊まるの初めてですね。なんだか新婚旅行みたいだな」

「えっ?そんな~新婚旅行だなんて照れるわ~(笑)」

「今日一番の笑顔ですね(笑)」


やだっはしゃぎ過ぎた・・・でもやっぱ自然が一番よね。


                     
                     *


「あら~モダンでいい感じのホテルね、インテリアも素敵だわ(メモメモ)」

「寒いと思ったら雪が降ってきましたよ、ほらっ」

「ほんとだ~夜空から降ってくる雪ってまるで星が落ちてくるみたいに綺麗ね」

「そうですね、でも雪って綺麗なだけじゃないですけどね」


そっか・・・そうよね。北海道の冬は大変なんだろうな。
恵太郎さんは寒い中朝早くから子供達の為に毎朝雪かきしているんだよね。


「聡子先生?・・・・・聡子さん?」


えっ?今もしかして聡子さんて言った?


「どうしたんですか?」

「雪ってそこで生活する人には大変なことが多いんだろうなって思うと、綺麗~て浮かれてる場合じゃないなと思って」

「綺麗なものを素直に綺麗と思うのは当然のことですよ。こんなふうに空から降ってくる雪は綺麗だし、朝起きて一面に広がる銀世界は眩しいくらいまっさらで白くて、
自然って凄いな~て思います。それを小型の除雪機で崩していくのが僕の仕事ですけど(笑)」

「えっスコップじゃないんですか?」

「スコップも使うけど、スコップだけじゃ昼までかかりますよ。あっ僕がスコップで雪かきする姿想像してたでしょ?」

「はい~(笑)」

「でもそんな雪よりも綺麗なのは今日の聡子さんです」

「えっ・・・・・・」

キター!

えっなになに?男を落とすテクでも成功した?
なんだかよくわからないけど・・・し  


「恵太郎さんの、自然に恵まれた所で自給自足の生活をしながら心に傷を負った子供達の再生への手助けをしたいという夢は叶ったのよね」

「そうですね、でも仕事に対する夢って底がないんですよ。もっともっとなにかできるんじゃないかって思ってます。聡子さんもそうじゃないですか?」

「そうね、そうかもしれない」

「でも人生に対する夢は一つです・・・たった一つ・・・」

「・・・・・?」

「こんなふうに聡子さんとずっと一緒にいることです(笑顔)」



なんか言わなきゃ、私もなんか言わなきゃと思うのに・・・
涙が溢れて鼻水まで出てきて、言葉にならない。
子供みたいに泣きじゃくる私に恵太郎さんは少し笑いながら優しくティッシュを差し出す。

いつ以来だろう?こんなふうに泣いたのは?
思えば私は子供の頃だってこんなふうに泣いたことはなかった。
私は恵太郎さんの側でならこんなふうに泣けるんだ。。。



「恵太郎さん・・・」


「なんですか?」


「恵太郎さん、私と結婚してください!」               end



特別出演・・・鏑木和 & 綾瀬はるかちゃん。



実はこの話まとまらなくてお蔵入りしそうだったんですが、ある番組が(笑)きっかけになりました。
それと恵太郎さんに幸せになって(ドラマよりもっと)欲しいなと思って書きました。

超ラブリーだった恵太郎さんと、超カッコいい大人の男だった鏑木さんを年内に小説に書けてよかったです~。
このお話の主役は聡子さんですけどね



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「一粒の涙」愛の妄想?劇場・水野先生のお話です。

2007-03-10 13:28:18 | 水野先生・1粒の涙 & 聡子先生の革命
「優衣ちゃん何してるの?」
「先生~今チューリップ書いていたの」
「へぇ~上手だね」
「でもここ少しはみ出して色塗っちゃったの」
「全然めだたないよ」
「だめ、ゆいは完璧主義なんだから」
「随分難しい言葉知ってるんだね(笑)」
「優衣、風が出てきたからもう中に入りましょう」
「やだー書き直すんだから」
「優衣ちゃん、又明日書こうね」
「はーい」
「まあ、ママの言うことは聞かないくせに」
「だって水野先生だいすきだもん~」

女手一つで優衣ちゃんを育てていると聞いた。病名を告知したときも毅然とした態度で受け止めていた。
その優しい笑顔の裏ではどれだけの涙を流しただろうか・・・
あなたは誰にすがって泣くのですか?

「先生~お誕生日おめでとう!」
「えっ?」
「看護士さんに聞いて先生の絵を描いたの、はい!」
「ありがとう~随分ハンサムに描いてくれて嬉しいな」
「本当は絵の具で描きたかったんだけど、ときどき手がしびれて上手く描けないからクレヨンで描いたの」
「手がしびれるの?」
「あっ又検査?やだなー言わなきゃよかった」
「優衣!大事なことなんだからちゃんと言わなきゃ駄目でしょ!」
「はーい」

症状が進むのは思った以上に早く、加速的に悪くなっていった。

「せんせい・・・ママ・が・・・ラ・ン・・・ド・・セ・ル・・・かっ・・て・・・く・れ・たの」
「そっかー優衣ちゃんも春には小学生か」

「先生、優衣は小学校に行けますか?」
言葉に詰まった。
「個人差があるんですが、優衣ちゃんの場合は症状が進むのが思った以上に早くて・・・」
「そうですか・・・」
彼女の眼から涙が溢れ出た・・・初めて見る涙だった。

医者としてあまりにも無力な自分と、男として何も出来ない自分に苛立った。
男として・・・と考えるのはどうかしている。だけどそれは偽りの無い自分の感情だった。
細い肩が震えていた。そんなあなたを僕は抱きしめたかった。
「先生、水野先生!17号室お願いします」
「はい・・・」
近くにいるのに、あなたはあまりにも遠い人だった。

そして優衣ちゃんは春を待たずに逝った。。。
体力もあまり無く抵抗力の落ちているときにひいた風邪が命とりになった。

「申し訳ありませんでした。こんなに早く死ぬ筈じゃなかった、もっと生きられたのに・・・僕の力不足です」
「先生、頭を上げてください。優衣は毎日毎日楽しそうに絵を描いていました。
3日前もいつもと同じように絵を描き大好物のシュークリームを美味しそうに食べていました。
何も出来なくなって死んでいくのは不憫です。意識が無くなる寸前まで笑っていた優衣の最期は幸せだったと思います。ありがとうございました」

大切なものを一つも救えないで何故僕は医者をやっているんだろうか。。。
それでも僕は医者であり続けるしかないんだと。。。

優衣ちゃんの49日に僕は墓参りに行った。
「先生?お久しぶりです。墓参りにいらしてくださったんですね。優衣も喜びます・・・あっ・・・」
「如月さん!どうしたんですか!大丈夫ですか?」
彼女は俺の腕の中に倒れこんだ。透けそうな程に白く細い腕だった。

「ここは?」
「お墓の前で倒れたんですよ。あの病院に行くのは嫌かなと思って僕の部屋に運びました。」
「そうだったんですか、ありがとうございます」
「今点滴外しますね。脱水症状が出ていました・・・栄養失調です。ちゃんと食べないと身体壊しますよ」
「わかってはいるんですよ、こんなことじゃいけない、ちゃんとしなきゃ優衣に笑われるって・・・でも波があるんです。前向きに頑張れるときと、そうでないときがあって・・・ふと全てが虚しくなって何も感じなくなって、自分が生きているのか死んでいるのかさえわからなくなる。もしかして自分は死んじゃったのかな?なら食べなくていいや・・・て思っちゃうんです」

「どうしてですか?あなたの手は暖かく、あなたの唇は赤く色づき息をしている。あなたはちゃんと生きているんですよ!」

そして僕はその唇に口づけた・・・。
閉ざされた思いが溢れ出す・・・そのまま僕は強く彼女を抱きしめた。

「せんせい・・・」

彼女は躊躇することなく僕を受け入れた。
医者でも患者の母親でも誰でも無く・・・
ただの男と女として僕たちは互いを求め幾度も熱く絡み合った。

「熱い・・・こんなに熱いなんて、私は生きているのね」

「ああ君はちゃんと生きている。生きているからこそ僕は君をこんなに感じているんだ・・・」

「でも、もうこんな時間・・・そろそろ帰らなきゃ」

「帰らないで欲しい・・・」

そんな僕の言葉を遮るように君は言った。


「叔母が田舎でお店やっていてね、誘われているの。だからこの町を出て田舎に帰ろうと思うの。なんか吹っ切れた気がする・・・
先生のおかげかな?ありがとう。。。私優衣のこと忘れないように優衣に笑われないように前向きに生きていくわ」

「元気で・・・身体には気をつけて・・・」

僕には引き止める術も無くそういうしかなかった。

「せんせい・・・私・・・先生のことが好きでした」

君の頬を伝う一筋の涙・・・それは誰の為でも無く僕の為だけに流した一粒の涙だった。。。

                                    end


えー少し切ないラストになりましたが、1年後に二人は再会してホテルのスィートルームに行くというのも全然有りだと思います(笑)
なんの障害も無いんだし、お互いに一度もさようならとは言ってないんですね。
そして3年後、優衣ちゃんの三回忌を終えて結婚するのです。
そして二人の間にはとても可愛い女の子の赤ちゃんが・・・だといいですね。

昨夜某直友さんちで水野先生で盛り上がっていたら急に書きたくなってしまったのでした

追記・・・スィートルームの二人はラブラブかというとそうではないんですよ、女性のほうに踏み込めない部分があるんです。
自分の過去を振り返ると水野先生の真っ直ぐな眼が眩しすぎて見れなくなるんです。
それで女はさっさと部屋を出ていき、先生は「君よ戻ってこい」と・・・あらこの感じはゆりかごと同じですね。
なんだかんだとありながら一緒になるには3年の月日が必要みたいです。
どっちかというと水野先生のほうが一途そうです。
女を待てなくなった水野先生は時々看護士と浮気する・・・なんて絶対に超有り得ないわ~

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