たまには自分のクルマも登場させようと思う。僕は日産エクストレイルに乗っており、現在オドメーターは66,000kmというところ。
それまでは日産ティーダに乗っていたが、家族で頻繁にキャンプに行くようになって、よりモノが積めるクルマが必要になり買い替えた。
僕は本来小さなクルマが好きで、ティーダに4人家族とそのキャンプ道具を満載し、ボディをうんと沈ませて300km先の目的地を目指すのがたまらなく楽しかったのだが、キャンプ道具というのは際限なく増殖していくもので、THULEのルーフボックスをもってしてもティーダでは積載能力が足りなくなったこと、またT32型エクストレイルのフロントマスクを憎からず思っていたこともあり、2014年にほぼ衝動買いに近い形で購入に至ったのだった。
僕は生来の貧乏性で、新しいクルマを最初から豪快に使うことができない。身銭を切って買ったにもかかわらず、「運転させていただきます」という気分で過剰なほど丁寧に乗る期間が1-2年ほど続いただろうか。どうやら当初の遠慮もなくなり、ようやく自分のものになった感覚が得られたのは30,000kmを超えたあたりからであった。
それにしてもこのフロントマスクは、日産はよくやったと思う。日産のファミリーグリル「Vモーション」の初期のもので、グリル中央の意匠だけでSUVの骨太感を十分に表現している。これがなければ、吊り目のヘッドライトをハニカムグリルで結んだだけの平凡な造形になってしまうが、バンパーにめり込むように配された彫りの深いVアクセサリー、ヘッドライト内の目力強いランプ配置、そして左右に水平なフード前端の見切り線とがあいまって、多くの共感を得られるハンサムな造形が完成した。
このフロントマスクは世界中で成功裡に受け入れられたが、同時にプロのデザイナーからも高く評価された。デザイン上の付加要素を最小限にとどめながら、日産車の独自性と、美しさまでもを両立させたことが、きわめて知的な仕事だというのだ。たとえばトヨタのデザインはアルファードのようにとにかく「付け足す」ことで形を成立させる傾向が強いが、日産はアリアに見られるように「削ぎ落とす」もしくは「最小限の付加」を強く意識していると感じられる。おそらく日産デザインの目指すところは「格好いい」にとどまらない「美しさ」にあるのだろう。僕はその志の高さ、目線の高さにとても共感するが、最大公約数のカスタマーから支持を得られるのは残念ながらやはりトヨタのデザインポリシーではないかと思う。アルファードの販売台数を示すだけでそれは証明できる。カスタマーの審美眼はプロのそれほど鋭くないし、鋭さを期待すべきでもない。それは僕にとってとても残念なことだが、一方でアルファードの意匠の下品さを最もよく知るのは、実は当のトヨタ自身なのである。