狸便乱亭ノート

抽刀断水水更流 挙杯消愁愁更愁
          (李白)

摘録消費税

2008-07-06 13:15:39 | 怒ブログ
消費税制度が出来たころ、ボクはまだパリパリ現役の運送店経営者だった。
 経営者といっても、営業・運行・整備・労務・経理・運転手までこなす名刺肩書き会社代表取締役だったのである。しかしこれはボク一人だけに限ったことではない。殆どが零細な規模の業種である故、運送店に限っては、そんな事業者は今でもいっぱいある。
 それは条件さえ整えれば、資本が少なくても誰でも創められる商売だからである。といっても、以前書いたことがあった気がするが、ボクがこの免許(当時は免許事業だった)を取得する頃は、少なくとも県議→代議士の手づるを必要とし、大勢の荷主を探して、その推薦状が必要だったし、一方同業者の反対聴聞を封じる根回しなど難関を越えなければならなかった。今ではとても考えられないような、ばかばかしい歴史がある…。(とんだ回想を挿入してしまった)
 平成元年この消費税制度ができた当時、ボクはこんなことを町の文芸誌に投稿した。
    消費税
 10月から11月(1988年?)にかけては、まことに様々な行事の日々が続いた。手帳に記されただけでも、運行管理者講習会、整備管理者講習会、特別安全協議会、公共事業労働者賃金実態調査説明会、運送事業指導者講習会、社会保険説明会、年末調整説明会、職業別決算指導説明会、各種年末反省懇親会等など。さらに雲助稼業と蔑まれても、ボクにだってある程度の個人的付合いもある。日曜日毎のキリスト友の会礼拝会(年末にはクリスマスがある)、毎月末の俳句会、郷土文学研究会、ワープロ講習会、突発する慶弔付合い、その他がこれに加わる。
後者は、私的用件、趣味・教養のものであるから、欠席しても罰則は伴わないが、前者では仲々そうはいかない。
 特に運送事業関連講習会は、出席しないとギョウセイカンサの対象となるから念の為申し添える、などという脅し文句が付いているものが多いからである。
 だから、二つの行事が重なり合ったときなどは、何の役にも立たない代役に日当を支払って依頼し、出席の員数合わせにした事業者さえも散見した。

 その日の講習会(たぶん指導者講習会だったと思う)は、経営の代表者または、これに準ずる者との通達であった。
 当然免許事業の代表取締役であるボクが出席した。
 運送事業といえば、丸通も佐川急便も大和運輸も、一般区域貨物事業免許に限っていえば同列であると思うが、この日はボクのように、運転手を兼ねる社長さん経営の極めて零細な運送店ばかりの講習であった。服装をみても、ノーネクタイ、ジャンパースタイル、作業用会社のユニフォーム姿がほとんどだったし、パンチパーマや丸坊主の経営者のいた。
 300ページにも及ぶ分厚いテキスト本を、わずか数時間で纏めてしまう優秀な講師陣(運輸省中級役人)もさることながら、居眠りしながら、完璧に講習内容を理解しきって質問ひとつ出ない優等生揃いの聴講生は、さすが運送店経営者達であった。
 なるほど、改めてこの時気が付いたことは、この運送業を生業とする町民市民には、意外と議員様やPTA会長の肩書のある者が多いという事実あった。わが町でも、町議会の総元締めの議長はこのところ2代続けて運送業出身者である。

 さてさて、年が明けたらこの優秀者揃いの運送店経営陣にも、消費税という思わぬ災難がふりかかってきた。
 間接税というものは、計算や記帳の手間が省けて、利用者負担の最も公平な税金だとばかり思っていたら、とんでもなく難しい複雑極まりない計算を伴う税金であることだけが分かってきた。
 それあらぬか、消費税の説明会が、管轄税務署が町公民館、トラック協会がM市協会本部、得意先の大手建設会社が県庁所在地にある高級ホテルで開催され、その他に、法人会、商工会でも説明会の通知が続けざまに送ってよこした。

 この珍税は、連日新聞や、テレビ、ラジオでも取り上げている通り、不可解千万な間接税である。税理事務所からも、生命保険約款のような細かい字の、複数計算方法の利点、欠点、留意点、の書状が送られてきた。
 この儘では、毎日毎日何らかの講習会、説明会で明け暮れてしまい兼ねない。
ボクからはじめ、大雑把で、細かい計算などできない運送店主たちに、来月から実施という消費税に対応できる事業所が何社あるのか、すべて暗中模索であり、ただただこの説明会、講習会の開催攻勢に、ギブアップしているのが実情であろう。

(未完)

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1 コメント

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ご無沙汰でした (aqgel)
2008-07-06 21:22:46
毎日こう暑くなってきてはお互いに容易ではないと思っていましたが、お元気なようで安心をした次第です。
お互いに昔鍛えた体、しかしもう無理は避けてマイペースでゆっくり行きましょう。
〝心頭を滅却すれば火も又涼し〟なんていう時代もありましたな。遠い昔になりましたな。
自愛専一で行きましょう。失礼
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