狸便乱亭ノート

抽刀断水水更流 挙杯消愁愁更愁
          (李白)

古本遊覧

2007-03-04 12:32:29 | 本・読書

ふるほん【古本】①古くなった書物。読み古した書物。⇔新本。②時代を経た書物。古書。―-や【古本屋】古本を売買する店。またその人。
こしょ【古書】①むかしの書物。古い文書。②古本。新本でない書籍。[―即売会]                           (広辞苑第5版)

知り合いの古書店が、表通りに向けて大きな「古本」という看板を出した頃の話である。

小生「〝古本〟と書くより、〝古書〟と出した方が格好良いのに…」

店主(店内の漫画本のコーナーを案内しながら)「taniさん。これ〝古書〟と言える?」店主の話では、売り上げの半分以上が、この漫画本のコーナーで占めているのだという。

店主「このコーナー馬鹿に出来ません。だから「古本」でいいんです。」店主は快活に笑った。
ここに積み重ねた、雑本、殆ど均一本(100円程度)を年度別に重ねてみた。ここで発行年度が最も古いのは、
校注平家物語 内海弘蔵(明治書院)定価金弐円弐拾銭と印刷してあるが「改正定価金弐円十銭と赤色のゴム印がその脇に押してある。学生さんらしい。学校名と名前が万年筆書きで記されているがインキ消しで消されている。松崎の認印が押してあって、かすかに専門学校の字が読み取れる。
次は「万葉集古義」第一巻  (全12巻)昭和20年12月5日初版発行目黒書店
昭和20年代の本は粗悪な紙である上、450ページもある厚い本がホッチキス止めの製本である。
奥付に著者名が記されていないがそれは序文から知ることが出来る。
この序文教育勅語のように濁音がなく記されている。

万葉集古義刻本序
万葉しふはわか国古書の一にしてこれをひもとけは当事の人情風儀をしりまた事物の呼称沿革等をもしるに足れり。しかれとも其詞つかひ文字の用ゐやうなと後世の人の弁へかたきこと甚多し。故に先達の学者これか注釈をつくりこれか論説をなして其書すてに数十部おのおのきはむる所ありて後進の益をなせり。近世土佐の学士鹿持雅澄万葉集古義を著はせり蒐輯ことにひろし其労おもふへし。この書注釈書中の上位におくへき書なり。わか明治聖上の為にこれを奏する人あり。上命してこれを土佐にめさしむ。しかるにこの書もと雅澄か生涯の力をつくし世を去るに至るまて校正してやますまた巻帙甚多きゆゑに正本に乏し。雅澄か門派高知県士族福岡孝廉か蔵本ひとり全本たるのみ。其他雅澄の嗣子飛鳥井雅慶の家に蔵する所といへともまほ完全ならす。これによりて福岡孝廉をして奉らしむるに至れり。孝廉ふかくこれをかしこみよろこひ雅慶其他の門人等とはかりて更に校正浄書してつきつきに宮内省に出せり。本編百巻は福岡孝廉か奉れる所付録廿余巻は飛島井雅慶の奉れる所なり。上すなはち宮内の官吏に勅してこれを刻本となさんとしたまふ。わか輩かねて文学懸りの命を奉するを以て其事にあつかれり。ことし明治12年の夏その第1巻刻なれりと告く。実に万葉集注釈書中において殊に光栄ある1本世に出現せりといふへし。心あらん人はみな天意のかたしけなきをおもひまた福岡飛鳥井の輩は師のため父の為かなしみよろこひこもこもなるおもひをなすなるへし。今其刻本となしたるはかの福岡以下門人数名か校正して進献する所の原本にしたかひて加除添削をなささるものなり。今かく其刻本となれることのよしを聊しるしおきてこれか序文となす。この序文をそふるも上命によれるなり。あなかしこや。
明治12年8月      元老院議官 福羽美静




         

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