パソコンと対峙しているオレの部屋に、退院あがりの妻が来てテレビをつけた。
それは、皇居正殿松の間から「歌会始」の御儀の生中継であった。
難聴のオレには、音だけが殊更大きく、言葉が全く分からない。歌を詠むのが、丁度法螺貝を吹くような大音に響くのである。
結局は皇室の方々、参加なされている臣民たちの、真剣な顔つきを垣間見ただけなのであった。果たして天皇は、日ごろお笑いになることがお有りになるのであろう歟。
「笑み」という御題には相応しからぬ顔、顔・顔が並んでいた。
「笑み」といふ歌会始鬱々と貴き人ら並びゐにけり TANI
若しも、どうしても、いにしえのしきたりに拘るのなら、服装だって神武天皇の御代の服装にすればよい。背広を着て何が国体なのであろう。
さらに歌そのもの自体が、高校生並の作品に近い。
武列天皇ですら、次のような、まともな歌を詠んでいるのである。
塩瀬の 波折を見れば 遊び来る 鮪が鰭手に 妻立てり見ゆ