極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

脳スキャナと倫理

2013年12月29日 | デジタル革命渦論

 

 

【脳科学と倫理】

脳機能についての理解が進む中で、研究の最前線として神経科学と並んで注目を集めているのが、生命倫理の
分野だ。米国の生命倫理に関する大統領評議会(Presidential Commission for the Study of Bioethical Issues)は
今月18日の会合で、脳科学の道徳的問題を話し合った。バラク・オバマ大統領は今年、BRAINイニシアチ
ブ(Brain Research through Advancing Innovative Neurotechnologies Initiative)と称し、予算1億ドルを投じて
脳活動のマッピング研究を行う国家プロジェクトの開始を発表。こうした神経科学研究によって人の精神
のはたらきを垣間見られるようになった場合に、
どのような道徳的ジレンマが起こりうるかを検討するの
が目的だ
。生命倫理および遺伝学の専門家であるスタンフォード大学のハンク・グリーリー(Hank Greely
にインタビューを行い、神経科学における大きな議論を5つ紹介した(ナショナルジオグラフィック、脳
科学と製麺倫理の、今後の5つの課題
2013.12.25)。

その5つの課題とは

1.予測:病気の発症も、犯罪も予測できる?
2.「心を読む」:麻痺患者との意思疎通や、嘘発見器に応用できる?
3.責任能力:脳疾患による判断能力の喪失が裁判で認められる?
4.治療:医療への応用はどこまで可能か?
5.能力向上:薬剤による能力向上は許される?

これに対し次のように回答している。

1.アルツハイマー病の発症可能性の予測には、多額の研究費が投じられている。実際に予測が可能にな
ったら、家族のあり方や医療制度に、非常に大きな影響が出るだろう。もう1つ、予測の対象として考え
られているのが犯罪だ。脳スキャンによって、犯罪に走る可能性の高い個人を特定できるようになったら、
どうなるだろうか。すべての刑事事件について脳スキャンを行うかどうかは、賛否両論となるだろう

そらく脳スキャンのデータは、刑事裁判においては証拠の1つとして扱われるにすぎない。もともと再犯
の可能性が高いと目されていた受刑者について、神経科学の立場からも同様の予測が得られた場合は、刑
期満了後に予防的収容や予防的治療を行うかどうかの判断には大きな影響がおよぶだろう。

2.神経科学で「心を読む」ことが可能になると最初に提唱した際は反論を覚悟していたが、同業者の多
くはこれに同意した。たとえば、マサチューセッツ工科大学(MIT)の学部生らを対象とした実験では、
被験者の思い浮かべているものが人の顔か、風景かを、85%の精度で言い当てているが、これは十分な数
字だ。実用化の意義があるのは、重度の麻痺があって会話ができない患者の意思を、脳スキャンによって
確認するなどの利用法。これを発言の真偽の確認に利用した場合は、法的、倫理的、社会的にさまざまな
問題が持ち上がるだろう。現在、神経科学による嘘発見を行っているのは、ノーライMRI(NoLieMRI)の1
社のみだが、同社はその方法も結果も公表しておらず、問題視されている。それでもポリグラフの代替と
なる嘘発見技術を模索している国防省からは、この分野に関心が寄せられている。「心を読む」技術が法
廷で利用されるとしたら、手始めは身体障害の認定に関してだろう。腰痛を訴えて社会保障を請求してい
る人の中には、実際には痛みのない人もいる。現状では確認の方法がないが、神経科学によって確かめら
れるとすれば意味がある。

3.神経科学者の中には、この分野の発達によって、将来的に司法制度はなくなると考えている者もいる。
ヒトには厳密な意味での「自由意志」など存在しないということが、神経科学によって明らかになると見
ているためだ。「脳に命令されたからやった」では、責任能力を問えない。もっとも、この見方を支持す
る司法関係者には会ったことがない。ただし1つだけ、バージニア州で起こった事例を紹介しよう。40歳
の男性が突然ポルノに興味を持つようになり、児童ポルノに関心が移って、ついに12歳の義理の娘に乱暴
した。男性は判決の直前に、頭痛があって文字が読めないと訴え、意識を失った。緊急手術によって、男
性の左前頭葉に鶏卵ほどの大きさの腫瘍が見つかった。この部位は、研究によって、判断や認識に関わる
とされている。腫瘍を切除したところ、男性の性衝動は失われた。ところが10カ月後、男性は保護観察官
に対し、再び衝動を覚えるようになったと告白した。X線検査によって腫瘍の再発が確認され、再び切除
手術が行われた。それから数年、この男性は逮捕されるような事件を起こしていない。脳の異常によって
判断能力を失うことがあると証明されれば、以前の裁判時に脳スキャンを勧めるべきであったとして弁護
士を訴える事案が、今後多発するだろう。

4.神経科学に多額の資金が投じられているのは、パーキンソン病などの疾患の治療への応用に期待が寄
せられているからでもある。しかし、たとえば麻薬中毒などの治療への応用については慎重にならざるを
得ない。また、脳スキャンの結果に基づいて、司法が治療を命じたり、親が子に治療を受けさせたりする
ことは、どの程度まで認められるだろうか。

5.この話題でまず思い浮かべるのは、大学生が勉強の効率を上げるため、みずからの意思でアデラル
リタリン(いずれも注意欠陥障害の治療薬として用いられる)を服用する事例だ。これらの薬剤には眠気
防止効果こそ認められているが、勉強の役に立つという裏づけはあまりない。だがもし効果が実証された
場合、薬剤の使用による能力向上は、使用しない学生に対して不公平ではないだろうか。薬剤の使用によ
って資格試験に受かったとして、その学生は十分な能力があると言えるだろうか。記憶は、神経科学研究
が影響を及ぼしうる分野である。すでに、アルツハイマー病や通常の加齢に伴う記憶力の喪失との関係で、
さまざまな研究が行われている。

以上がその回答だが、脳科学を結集した脳スキャナの利用による高度な医療、犯罪予防、学習能力開発が
もたらす利便性と倫理の変容に関するイメージ化はこれからといったところだが、その適用に当たっては
慎重を要すだろう。ところで、国立遺伝学研究所の武藤彩助教らのグループは、今年2月に、熱帯魚ゼブ
ラフィッシュの稚魚が、周囲を動き回るゾウリムシを目で追う時の脳活動の様子をリアルタイムで観察す
ることに成功している。それによると、神経活動の検出のために、神経細胞の電気活動に伴う細胞内カル
シウムイオン濃度の上昇を間接的に測定するカルシウムセンサー「GCaMP(ジーキャンプ)」を、緑色
蛍光タンパク質(GFP)を基にして作った。GCaMP にカルシウムが結合すると、蛍光強度が増加すると
いう(研究チームはカルシウムの検出感度を改善した「改良型GCaMP」を開発し、ゼブラフィッシュの視
覚中枢である「中脳視蓋(がい)」の神経活動を観察、下図クリック)。

尚、ヒトや魚などの視覚をもつ動物はすべて、視野全体に対応する神経細胞が脳の表面に並んだ共通構造
をもち、これは「視覚地図」と呼ばれる。目で見た外の世界は「視覚地図」へと投影されるが、この様子
を自然な条件下でリアルタイムに観察した例はこれまでなかった。

 

※ 特開2012-085542 特定部位のアミノ酸を置換した緑色蛍光蛋白質又はそのホモログを用いたカルシウ
  ムセンサー蛋白質
※ 2013.08.22、WIRED、脳スキャンで「見ている文字」の解読に成功
2013.08.23、サイエンス&テクノロジー、12年間植物状態の患者と脳スキャンを使って会話すること
  に成功(下図クリック)

 

 

 

日本でセスキ炭酸ソーダを取扱っている企業は美浜株式会社で、米国ワイオミング州グリーンリバーのト
ロナ鉱石より産出される天然ソーダの1つ。NaHCO3・Na2CO3・2H2Oという組成を持ち、炭酸水素ナトリ
ウムと炭酸ナトリウムの複塩。輸入元のFMC CorporationFMC社)は1883年の創業以来、農業・工業市場
をリードするケミカルカンパニーで、セスキ炭酸ソーダをはじめ様々な商品を展開しているという。 
 

 

雪除け作業をしたものの、融解前のタイヤで押し固められた雪は重くやっかい。そこにかけて、道路を走る車の排
気ガスの影響がひどく、作業終えて部屋に戻っても、咳込みが続くが、これは気管支炎というより、アレルギー症状
といった方がよいだろうが程なく治まるが、作業中はマスクは欠かせないと反省する。さて、大晦日・除夜が迫る。




         いつの間に夜の省線にはられたる軍のガリ版を青年が剥ぐ


         世をあげし思想の中にまもり来て今こそ戦争を憎む心よ


         漠然と恐怖の彼方にあるものを或いは素直に未来とも言ふ


                         
                             『埃吹く街』/近藤芳美

                              


彼女が、新年の料理は、何も特別なことはできないので、巻き寿司と数の子ねと言うので、それと、雑煮
と金亀(清
酒)があればそれで結構と応じる。三首目の「漠然と恐怖の彼方にあるものを或いは素直に未来
とも言ふ」が来る年により具現すると覚悟し、今宵は近藤芳美の歌から三首掲載する。



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