極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

色素が世界を変える

2013年12月07日 | WE商品開発

 

 

 

【フレキシブル色素増感太陽電池の突破力】 

植物は太陽と空気中の二酸化炭素でグルコースを形成し酸素を排出する。正確に言うと水が介在す
るが、問
題は光合成の明反応で光エネルギーを吸収する役割をもつ化学物質の葉緑素。クロロフィ
ル (Chlorophyll:C55H70O6N4Mg)
と呼ばれるもの。さらに、厳密に言うと、このクロロフィルのうち、酸素発
生型の光合成をおこなう植物およびシアノバクテリアが持つものはクロロフィル、酸素非発生型の光合成を
行う光合成細菌が持つものはバクテリオクロロフィルと呼ばれるが、葉緑素は太陽光の中から赤か
ら近赤外の光エネルギーを効率よく吸収する為の色素であり、その上光エネルギーの収集効率を上
げるためにわずかに極大吸収を換えた複数の色素が配置され、中心の色素分子に光エネルギーが集
中するようになっているという優れた天然の太陽電池ということになる。このメカニズム着目した
のが色素増感型太陽電池で、最近は、色素系量子ドット太陽電池?と言うような呼ばれ方をしてい
るようだが。



ところで、昨夜も、フレキシブルリチウムイオン二次電池の開発でブログに取り上げ積水化学工業
が産業技術総合研究所とで共同開発した世界で初めて常温プロセスでフィルム型の色素増感太陽電
池を作製したと発表していた(昨夜、取り上げるべきだったが)。それによると、セラミック材料
の常温高速コーティングプロセス方法を用い、従来の高温焼成を不要にし、製造負荷の低減のほか、
耐熱性の低いフィルムや粘着テープのような材料への成膜が期待できる。エネルギー変換効率は有
機フィルム状の色素増感太陽電池としては世界最高水準の8%だったという。今後、両者では薄膜
の微細構造を制御して発電効率の向上を図るとともに、生産コストの低減などに取り組み、産総研
のコーティングプロセス法と、積水化学の微粒子や膜構造、フィルム界面の制御技術などを駆使し
て作製した。従来の熱エネルギーの代わりに高速衝突エネルギーで微粒子を結合することにより、
常温でフィルム化ができた意義は大きいと考える。



色素増感太陽電池は、二酸化チタンなどの酸化物半導体層に色素を吸着し光電変換層として利用す
る有機太陽電池の一種。一般的には、二酸化チタンを含むペーストを基板に塗布したものを500℃
程度の高温で焼成し、色素増感太陽電池の半導体層として使用しているが、この温度は市販の有機
フィルムの耐熱性を越えるため、フィルム太陽電池の実現の課題となっていた。
これに対しAD法
は、原料粒子に高い衝突エネルギーを与えて基板に衝突させ、その物理エネルギーをもって粒子間
の結合を促進させ成膜する方法であり(下図)、加熱プロセス無しで形成されたにもかかわらず、
高い強度を持つ膜を形成することができる。実際、この操作の試験に立ち会ったことがあるが、噴
霧後の異臭と粉塵に驚いた。これ以前に、二流体ノズルの開発での回収方法を水を使い実験した経
験を思い出していた。話は逸れた。今後、積水化学と産総研は、薄膜の微細構造の制御によるさら
なる発電効率の向上に関し、研究を加速させるとともに、生産性の向上・コスト低減を目指した開
発を進め併せて、色素増感太陽電池の製品化に向け、積水化学は用途展開に関し事業パートナーを
募り窓や壁を始めとした内外装建材、簡易設置性を活かした壁面設置などの用途開拓を進め、2015
年の市場参入を目指すという。



このエアロゾルデポジション法(AD法)とは、たとえば、サブミクロン粒径のα-アルミナ微粒子
を基材に吹き付け、焼結することなく常温で金属基板上に固化させ、バルク焼結体と等しい電気機
械特性を持つ1μm以上のセラミックス厚膜を形成する。この様なα-アルミナ微粒子の常温固化
によりセラミックス厚膜の形成は、α-アルミナ微粒子が基材に吹き付けられた衝突時の温度上昇
による表面熔融ではなく、粒子の破砕現象による微結晶粒子の変形と新生面形成による表面活性化
が支配的である事を明らかにできる。表面の硬さや耐薬品性などの表面機能を主に用いる窯業製品
において、従来必要とされてた1000℃以上の焼結工程を不要とし省エネルギー効果が期待できる工
法というが下図はその関連国際特許の概説図である。
 


JPW O2005/031036 A12005.4.7

また、下図はモジュールの構造の新規考案である。一の基板2に透明導電膜3が成膜され、透明導
電膜3の表面に半導体層4が形成された第1電極5と、他の基板6に透明導電膜3に対向するよう
に対向導電膜7が成膜された第2電極8とを備え、これら第1電極5と第2電極8との間に形成し
た空間Sに電解液11が封止された電気モジュール1Aにおいて、第1電極5と第2電極8との間
には、複数の孔9が形成された樹脂シート10が介装され、樹脂シート10によって、第1電極5
と第2電極8とが接着するとともに、電解液11が封止することを特徴とすることで、簡便に製造
することができ、部品点数を抑えることのできる電気モジュールの概説図。


JP 2013-214373 A 2013.10.17

【符号の説明】

1A 色素増感太陽電池(電気モジュール) 2 一の基板 3 透明導電膜 4 半導体層 5 第1
電極 6 他の基板 6a 一方の板面 7 対向導電膜 8 第2電極 9 孔 10 樹脂シート S
内部空間

ドイツでは有機薄膜太陽電池の量産化が提案されているので、これらを含め(1)カラフルで(2)
フレキシブルで(3)環境負荷の低い(5)ローコストでいて(6)変換効率の高い太陽電池の開
発に繋がっていくものと確信している。

 

 

【ルビースイートの突破力】

色素はエネルギー変換機能だけではないことはいうまでもない。作物、つまり食品機能にも大切で
ある。この程、農業・食品産業技術総合研究機構が、日本で栽培されるリンゴ品種の果肉は一般に、
アントシアニンを含まず、赤い色をしていなかったが、果肉にアントシアニンを含み甘味が多く生
食用に適するリンゴ品種「ルビースイート」の育成に成功したと発表した。一般に、付加価値を高
める
方法として天然色素を添加する方法が採られている。例えば、黄色はクチナシ黄色素はカルチ
ノイドで、自
己酸化力を利用し抗酸化、癌抑制に期待される。トウガラシ色素はオレンジ色でカロ
テノイドは、
植物中で作られる黄、オレンジ、赤色の色素で、天然には 600種類のカロテノイドが
知られ、強力な
抗酸化力を持ち、活性酸素を除去する力に優れ、眼病や生活習慣病などをはじめと
する疾病の予防
に効果的な栄養素とされている(フードファディズムに寄与するので引用表現は注
意がいる)。育種法には様々な選択肢があるが遺伝子組み換え法以外のハイブリッド法で特定機能
性色素を多く含む農産品の開発は有用かもしれない(どこまで可能かはやってみなければわからな
い)。"非植物工場理論"?の領域に興味を持たなかったが、これは案外面白いかもしれない。

このように考えてみると色素は、”オールバイオマスシステム”または、”オールソーラーシステ
ム”と言うだけでなく、一般的な食生活上の栄養価や医療補助機能性以外にも意匠性や嗜好性の喚
起(まぁ~綺麗!まぁ~美味しそう!)などには大切な要素なんだと改めて考えさせられた。





【ドライブ・マイ・カー】 


  そのようにして二人は友だちになった。気の合う酒飲み
仲間というところだ。二人は連絡を
 取り合って顔を合わ
せ、都内のあちこちのバーで酒を飲み、あてもなく話をした。食事を共に
 したことは一度もない。行き先は常に酒場
だった。軽いつまみ以外のものを高槻が口にすると
 ころ
を、家福は目にしたことがない。ひょっとしてこの男は食事というものをほとんどとらな
 いのかもしれないと思った
ほどだった。そしてたまにビールを飲むのを別にすれば、ウィスキ
  ー以外の酒を注文したこともない。シングル・モルトが彼の好みだった。
語り合う話の内容
 は様々だったが、途中からいつも決ま
って家福の死んだ妻の話になった。家福がまだ若い頃の
 彼
女のエピソードを話すと、高槻は真剣な顔つきでそれに耳を傾けた。まるで他人の記憶の蒐
 集管理をしている人のよ
うに。気がつくと、家福自身もそんな会話を楽しんでいた。



  その夜は青山の小さなバーで二人は飲んでいた。根津美術館の裏手の路地の奥にある目立た
 ない店だった。四十歳前後の無口な男がいつもバーテンダーとして働き、隅の飾り棚の上では
 灰色のやせた猫が丸くなって眠っていた。この店に居着いている近所の野良猫のようだった。
 古いジャズのレコードがターンテーブルの上で回っていた。二人はその店の雰囲気が気に入っ
 て、前にも何度か訪れていた。
  二人が待ち合わせるとき、なぜか雨が降っていることが多かったが、その日もやはり細かい
 雨が降っていた。
 「本当に素敵な女性でした」と高槻はテーブルの上に置いた両手を見ながら言った。中年期を
 迎えた男にしては美しい手だ。目だった皺もなく、爪の手入れも怠りない。「ああいう人と一
 緒になれて、生活を共にできて、家福さんはきっと幸福だったんでしょうね」
 「そうだね」と家福は言った。「あなたの言うとおりだ。たぶん幸福だったのだと思う。でも
 幸福であるぶん、それだけ気持ちがつらくなることもあった」
 「たとえばどんなことですか?」
  家福はオン・ザ・ロックのグラスを持ち上げ、大きな氷をぐるりと回した。「彼女をいつか
 失ってしまうかもしれない。そのことを想像すると、それだけで胸が痛んだ」
 「僕にもその気持ちはよくわかります」と高槻は言った。
 「どんな風に?」
 「つまり・・・・・・・・」と高槻は言って、正しい言葉を探した。

 

                             村上春樹 『ドライブ・マイ・カー』
                              文藝春秋 2013年12月号掲載中

 


 "第1回 止まらない「客室」の膨張"(『スペースシップアースの未来』)は興味深く観させて
もらった。2億年前のテチス海がなければ中東の石油はなかったこと、シェールガス革命のアキ
ス腱のこと、パッチワーク時代の原子力政策のこと、石油から天然ガス、そして、再生可能エ
ネルギーへの転換予測するダ
ッチシェル社の戦略の最終ゴールはなんと、日本語の"もったいな
"が資源だと言う。当の日本とい
うと、政府自民党や経産省の動きは"再稼働先に有りき"という
アナクロ模様だが、「お金か命か」と問われれれば、躊躇なく
"命"を選択するだろう。次回放送
も楽しみだ。

 

 

コメント
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