極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

浜木綿にドクター・ノーは似合わない

2009年07月07日 | 時事書評



今朝も雨 ドクター・ノーがモレンドに浜木綿のキーたたき続ける


流域環境学流域ガバナンスの理論と実践』和田英太郎 監修



この手の読書は、宇井純著『公害原論』や星野芳郎著『瀬
戸内海汚染』以来だ。裏表紙の推薦文に琵琶湖博物館館長
の川那部浩哉が「経済の高度成長期であった1960年前後に
は、人と自然の関係の総体が劇的に変化した。琵琶湖のダ
ム化が計られ、見返りとして琵琶湖と周辺の総合開発がな
され長い期間にわたって比較的安定していた琵琶湖の生態
系と社会とその相互関係が、大きく変化したのもこの時期
である。例えば、かなり狭い範囲に閉じられていた農業濁
水問題の自然的・社会的関係も、異質な環境の結合した広
範囲に広がり、逆に異質な空間性が人々の意思疎通阻害の
要因
となってきた。本書はこれらを具体的に示した点だけ
においても、先ず高く評価できる。さらにこれを基に地球
スケールの
地球環境問題などにおいては、さらに多様なス
ケールと多様な利害関係者の視点から全体像をとらえる必
要性
のあることを示唆し、あるいは一部論じているもので
あり、この点も極めて興味深い」という長文を寄せている。

【星野 芳郎の著書】

1970 『日本の技術者』、勁草書房
1970 『高度技術社会への抵抗』、実業之日本社
1973 『科学技術の思想』(戦後日本思想大系9) 筑摩書房
1977 『星野芳郎著作集 1 技術論Ⅰ』 勁草書房 
1986 『先端技術の根本問題』 勁草書房 4000
1978 『もはや技術なし-アメリカの焦燥、西欧の憂うつ、日本
    の混乱』、光文社、カッパビジネス

【注釈】星野芳郎は良くても悪くても、偉大な思想家のひとりで
あった。「東海村臨界事故」「新幹線コンクリート崩落事故」「
JR西日本の脱線事故」の本質に利潤優先・安全無視の「市場主
義」の行き過ぎがあることを指摘していた(「市場主義は大事故
を起こす」)。



いまは、地球環境(エコ)の神学論争段階でないこと、そ
のことは、「人間の膨張し続ける欲望と自然環境との共生」
の模索と問題の解決に向けての方法論段階だ。その意味に
おいて本著書は、優れて現実的な方法論を提起していると
言う点で、極めて画期的な戦略論だともいえる。


【地球環境の中の流域ガバナンス・ネットワークとは】

 現代のグローバリゼーションのもとで進行する相互依
 存(interdependence)の中では、流域は決して閉じた空間
 単位ではないし、ひとつの流域が独立に存続していで
 きない。個々の流域の流域ガバナンスといっても、実
 際には、空間的重層性(地球一地域連関、地域一地域
 連関)の中に埋め込まれており、地球環境のマネジメン
 トと無関係ではいられない。その意味で、今後の流域
 ガバナンス論も、より大きな相互依存の中で、どう調
 整していくかを具体化する必要がある。その場合、地
 球環境システム科学で発展した方法論を役立てること
 ができる、和田によれば、たとえば、流域よりも大き
 なスケールでの地球環境変動によって流域環境がどの
 ような変動を受けるかは、近接するアジア流域群との
 運動性も含めて,衛星シミュレーンでリアルタイムに
 地球スケールで解析できる時代にきている。


          第5節 流域環境学の発展に向けて
      「第5部 第3章 琵琶湖から地球環境へ」



調査方法とその実践の基本は既に会得しているつもり。そ
こで、勢い最終章の「第3章 琵琶湖から地球環境へ」に
関心が集中した。流域管理の4つの基本課題が掲げられて
いる。

(1)持続可能性
(2)科学的不確実性
(3)地域固有性
(4)空間的重層性

尚、本著書の中でこれらの定義、それに纏わる事例開示或
いは各論、表出・機能の展開がなされているので省略する。

 一方で、流域というスケールは、依然として、人間や
 社会にとって最も基本となる水利用や水環境を見直す
 上での空間単位である。その意味で、流域の多様性・
 個別性を前提にして、各地の流域が抱える環境問題に
 対応できる流域管理の方法論を構築することは、地球
 環境を、流域というヒューマンスケールからボトムア
 ップ的に住む人の視点から地球環境を管理するための
 第一歩となる。本書で紹介したリナックス(Linux)方式
 (第2部第1章第5節)は、
このような水平方向の流域
 のネットワーク構築をイメージしている。

 流域ガバナンスの実現に間しても、世界のさまざまの
 流域において各地域の個別性に合わせて、いろいろア
 イディアが生み出され、持ち寄られる。その中で、リ
 ナックスのように、多様なバージョンの中で具体的な
 情報がカスタマイズされ、組み込まれる過程で、流域
 管理の知のコモンズが豊かになってそういう形で、各
 地の流域と水平的なガバナンスが自発的に進んでいく、
 このような発想は、地球温暖化対策においては、すで
 に国立環境研究所の森田恒幸らにより開されたアジア
 太平洋統合評価モデルAIM(Asia-Pacmc lntegrated Model)
 により提唱され、アジアにおけるAIM国際ワークショ
 ップを通じて、国レベルで着実に進展している。


          第5節 流域環境学の発展に向けて
      「第5部 第3章 琵琶湖から地球環境へ」


クリエイティブ・コモンズのロゴ




【琵琶湖流域と地球環境の未来】

 最後に、地球環境変動やグローバリゼーションの中で、
 琵琶湖流域あるいは琵琶湖-淀川水系の持続可能な社
 会はどのように構築していけばよいだろうか?まず琵
 琶湖生態系の維持・再生に限ってみても、ドライバー
 となるさまざまな人間活動が生起する琵琶湖-淀川水
 系まで視野に入れた社会-生態システムと捉えて、そ
 の長期的な変化を考察する必要がある。つまり、多様
 な問題意識を持ったさまざまな人が生活する社会-生
 態システムに組み込まれた生態系として琵琶湖生態系
 を捉えることである。その上で、ガバナンスを前提と
 した地域の持続可能な社会構築の枠組みの中に琵琶湖
 の生態系を位置づけて、保全・再生を推進する体制が
 必要となる。一方、地球温暖化が進行すると、琵琶湖
 の湖底の低酸素化か急激に進行し、琵琶湖生態系は大
 きなダメージを受けることが懸念されている(第2部
 第2章第4節)。そのためには,琵琶湖のモニタリン
 グに基づいたレジームシフトの対策を立てるとともに
 地球スケールでの環境変動を視野に入れた琵琶湖流域
 や琵琶湖一淀川水系の予測や施策が必要となる。


そして、「持続可能な滋賀社会」、滋賀県の水環境保全施
策の効果を定量的に予測する目的で、琵琶湖流域の水・物
質循環を把握するための「琵琶湖流域水物質循環モデル」
の開発が進み、「持続可能な滋賀ビジョン」の策定が進ん
でおりこれとマッチングした滋賀社会像の構築が課題だと
結んでいる。

Linuxのマスコット「Tux」

【リナックス方式-流域の個性と多様性に応じた
                  カスタマイズと知のコモンズの形成】

ところで、再三本著書に登場する「リナックス方式」に触
れておく必要がある。

 Richard Matthew Stallman 
 Linus Benedict Torvalds 

 「はたして、琵琶湖とは異なる流域でも有効なのか」
 との疑問を持たれることだろう。しかし私たちは、こ
 の本で提示している階層性に注目した「階層化された
 流域管理」という考え方には、琵琶湖流域から発想さ
 れたものでありながらも、他の流域への展開・応用の
 可能性、すなわち「一般性」を志向するベクトルが含
 まれていると考えている。このような、流域管理にお
 ける「個別性」と「一般性」という問題に関して、私
 たしに大きなヒントを与えてくれたものがあった。そ
 れはリナックス(Linux)である(中略)私たちのプロ
 ジェクトの成果は、ある意味、このトーバルズ氏が卒
 業研究の一環として開発した段階でのリナックスと似
 たような水準にあるのかもしれない。しかしリナック
 ス同様、私たちが琵琶湖流域から生み出した「階層化
 された流域管理」という考え方は、地球上の多様で複
 雑な流域管理の実践のなかで今後も鍛えなおされ、カ
 スタマイズされることで意味のあるものに成長してい
 くことができるのではないかと考えている。「階層化
 された流域管理」という考え方をもとにそれぞれの流
 域の多様な関係者自身が、「階層間の流域診断方法の
 連関」と「階層間のコミュニケーションの豊富化]を
 促進し、自分たちの流域を共同管理していくための「
 ガバナンス」の確立に寄与しながら、参加・参画と協
 働による流域管理を構築していく基盤を形成していく
 ことが期待されるのである。


 今後は、各流域でのカスタマイズの経験をもとに、そ
 れぞれの流域で「階層化された流域管理」を構築する
 さいに発見された様々な知見や方法をデータベースと
 して蓄積していくことが必要になってくるだろう。そ
 して、そのような各地でのカスタマイズの過程で生み
 出された知見や方法に関するデータベースは、インタ
 ーネット等を駆使してひろがる地球規模のコミュニケ
 ーションのなかで、リナックスと同様に相互に刺激を
 与えあいつつ鍛え上げられていく必要もあるだろう。


             第5節 リナックス方式
                 第2部 第1章 
        「階層化された流域管理とはなにか」

 

                                                  

ハマユウ(浜木綿、学名: Crinum asiaticum)はヒガンバナ
科の多年草。(クロンキスト体系ではユリ科)。花の様子
が木綿(ゆふ)を垂らしたようであることが和名の由来で
ある。ゆふはコウゾなどの樹皮を細く裂いて作った繊維か
ら作った布で、古代から神事などに用いられてきたもので
ある。別名のハマオモトは、肉厚で長い葉がオモト(万年
青)に似ることから。水はけが良く日あたりの良い場所を
好み、主に温暖な海浜で見られる(海浜植物)。道ばたや
公園、庭に植えられることもある。日本に自生するのは亜
C. a. var. japonicum (Baker)。宮崎県の県花となっている。



月日が流れるのは速いもので、退職から8ヶ月過ぎようと
している。回りの景気回復基調も悪いし、この梅雨空では
気分も鬱ぎがちになるのは致し方ない。それに合わせマイ
ケル・ジャクソンの送葬シーンが流れている。そんなシー
ン詠う。砂浜で白い花咲く「ハマユウ」。花言葉は「汚れ
がない」。

コメント
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