日々の恐怖 11月20日 理学部棟
俺の後悔している話です。
大した話ではないんだが、大学時代に研究でうまくいかないことも多く、深夜ふらっと外にでた。
大学はK大学で、俺がいたのは理学部棟で、ちょうど棟の前に座れるような場所があるんだけれど、そこでジュース買ってのんびり研究のことやら、とりとめのない妄想をしていた。
そうしていると男が自然研の方の橋から一人やってきて、いきなり、
「 隣いいですか?」
って聞かれた。
別に俺自身は問題ないから、
「 いいですよ。」
と答えた。
ただ正直不気味に思った。
なぜなら他にも座れるところなんていくらでもあるし、結構夜も遅かったから。
その時に俺は、スマホポチポチしてて丁度相手の顔に光があたって、チラッと覗いたら多少暗くて、ライトが当たっていたからか、やけに肌が黄色で凄く細い感じで、近寄りにくい印象だった。
そう言うこともあって、隣に座ったからと言って、その男とはまったく会話をしなかった。
俺はそんなことよりも、次の先生への発表どうしようかと悩んでいたぐらいだった。
そして時間が経ち、大学を見回っている警備員が明かりを持ってやってきた。
このときふと隣を見ると、もう男はいなかった。
警備員は俺に声かけることなく、そのまま行ってしまった。
俺も寒かった時期だし、自分の研究室へ戻って研究を再開した。
翌日、自然研の方へ朝ごはんを買いに行くと警察が来ていて、話を聞くと理学部棟と自然研の間の橋の辺りで自殺者が出たらしい。
遺留品の手紙と携帯とたばこがあって、どうやら橋と俺が座っていた辺りにもあったようだ。
今でも、あの時話かけてでもいたら自殺防げたんかなぁと悩むことがある。
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