大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 10月31日 茶封筒(3)

2015-10-31 19:49:59 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 10月31日 茶封筒(3)



 それからも同じように引越して来る人はいたが、いずれもそう長くはおらず、あっという間にいなくなってしまった。
 ご近所さんの間でも噂になり、爺さんが聞いたところによると、家の者が留守にしているはずの時間帯に、誰かいるような気配がする。
 回覧板を回しに行くと音はすれども出てこない。
子供達が登下校時にその家をふと見ると、2階の窓から子供の人影が自分達を見ていたのだと言っている。
 風もないのに干してあった洗濯物が全て地面に落ちていたり、表札がいつの間にかになくなってしまうことも度々あったようだ。

「 一番最後にあの家に入った人が出て行ったとき、たまたま近所の人が居合わせて話しを聞いてみたんだと。
するとなんて言ったと思う?」

それで、爺さんの話の要点は、

“ 最初は家具の位置が違っていたり、閉めたと思ったドアが開いていたり、気のせいかな?と思えるようなことだった。
それが段々ひどくなり、何もないのに食器が落ちて割れる。
急にガスコンロに火がつく。
夜中に誰かが言い争っているような声がする。
 そしてついには、

「 出て行け、出て行け。」

とどこからともなく声が聞こえてきたり、いるはずのない人の気配がしたりと不気味なことが続き、ノイローゼになってしまった。”

とのことだった。

「 あの家の今の売値よ、600万だとよ。
安いだろ?
周りの1/4以下だ。
そこまで下げても誰もよってこない。
不動産屋も持て余してるんだよ。
 でもしょうがねぇよなぁ。
あの家はSさんの家なんだ。
周りに追い詰められてよ、家まで追い出されたんだ。
どこにも行くあてのない可哀想なホトケさんが、成仏できずにあそこには住んでるんだよ。」

茶封筒にはどんなことが書かれているのかまでは分からないそうだが、半年に一度送ってくるらしい。
 配達した翌日、再度ポストを覗いてみると、DMの類は何年も前から残っているのに、その封筒だけが無くなっていた。
ちなみに、今もまだその物件は空いている。









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日々の恐怖 10月30日 茶封筒(2)

2015-10-30 19:36:30 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 10月30日 茶封筒(2)



 もともとその家はバブル期にSさんという人が購入した家だった。
Sさんはどこかの中小企業の社長さんをしていたようだったが、不景気のあおりを受けて会社が傾き、ある日家族揃って失踪してしまった。
爺さんが言った。

「 督促状だの、特送が来てよぉ。
裁判所からのやつなんぞ持っていくと、奥さんが疲れたような、申し訳なさそうな顔をして、

“ またですか。”

って言うんだよ。
俺も長いことやってるけど、あの顔は忘れられねぇや。
こっちが悪いことをしてるような気分になる。」

 その後、家は売りに出され、1年後には買い手がついた。
その家で奇妙なことが起こりだしたのは、ちょうどその頃だった。
 爺さんが書留を持ってその家に行ったとき、呼び鈴を押すと階段を下りてくるくような音が聞こえた。
 すぐに扉が開くと思いしばらく待ってみるが、一向に開く気配が無い。
また呼び鈴を押すと確かに物音はするのだが、返事がない。
 シビレを切らした爺さんは不在通知をポストに投げ入れて帰ったところ、翌日再配達の依頼が来た。

「 昨日はお忙しかったようですね。
何度も呼んだんですが聞こえなかったみたいで。」

と嫌味たらしく言うと、

「 昨日は日中は出かけていた。
何度もご足労をかけて申し訳ない。」

と返ってきた。

「 あれ、昨日の昼間、誰かいたような物音がしたんですが?」

家の人は怪訝な顔をすると、

「 え?昨日は日中はずっと留守にしていましたよ?」
「 そうですか?
誰か2階から降りてくるような音と、あと中でばたばたと歩き回っているようでしたが。」
「 うち、主人と二人暮らしですし、ペットも飼っていませんの。」

気味が悪そうにそう告げると、パタンとドアを閉めてしまい、それからしばらくして表札が外された。









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日々の恐怖 10月29日 茶封筒(1)

2015-10-29 18:41:18 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 10月29日 茶封筒(1)



 郵便配達の仕事をしていた頃、ある日誰もいない空き家に一通の茶封筒が来てた。
大体引越してくるときには、不動産屋や水道、電気関係のハガキが来るから、前の住人のものだと思って、配達に使う原簿を確認して住んでいた人がいないかどうか調べてみた。
 もともと住宅街の一角にある家だし、住人の出入りが激しいところではないので、それまで細かく見てなかったんだけど、いざ調べてみると、そのうちだけで4家族ぐらいが入転居を繰り返してる。
 期間も2番目以降はどれも3ヶ月とか半年とかで引っ越している。
目当ての名前はすぐに見つかり、最初に住んでいた家族の世帯主だと分かった。
 原簿を持って、班長に、

「 転居につき還付をしたいので押印をお願いします。」

と頼んだところ、脇からベテランの爺さんがヒョイと顔を出してきて、

「 ありゃ、こりゃあダメだよ、○○ちゃん。
ここ今は誰も住んでないけど、この名前で来たらとりあえず配達してくれないけ?」
「 えー?あそこポストにガムテープ貼ってありますよね?」
「 ああ、裏から回って取り出し口から押し込んでくればいいよ。
そういう決まりなんだ。」

それで、

「 そうなんですか?」

と班長に話を振ってみると、

「 いや、俺は知らないなぁ。
返さないとまずいんじゃないの?」

それで爺さんが、

「 △△君は異動してきたばかりだからなぁ。
前にこれ返したらさ、送り主が偉い剣幕で乗り込んできたんだよぉ。
すごかったぞぉ。
そこの机蹴っ飛ばして、

“ なんてことをしてくれたんだぁ!?”

って叫んでさぁ。」
「 どんだけっすか・・・?」
「 いや、本当だって。
その人がいうのには、

“ その家にはその人が住んでる。それを決まった時期に送ってあげないと大変なことになるんだ!”

って、もうすごいこと、すごいこと。
まぁあんな家だし、そういうもんなのかもしれねぇけどな。」

 それで、その家のことを詳しく聞かせてくれといったところ、話が長くなるので仕事が終わってから酒でも飲みながら話そうということになった。
 後処理を終えて、職場の先輩のご両親がやっている小料理屋に移動すると、ビールを一杯ひっかけてから、顔を真っ赤にしながらゆっくりと話してくれた。








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日々の恐怖 10月28日 オレンジ色の子供用自転車

2015-10-28 18:23:16 | B,日々の恐怖


  日々の恐怖 10月28日 オレンジ色の子供用自転車


 オレはチャリで通勤していたことがある。
今は原付に乗っているが、チャリからそれに変えたのは妙な理由があったからだ。
 オレの勤め先は駅のすぐ側にある。
便がいいので、いつも駅の自転車置き場にチャリを止めていた。
 有人の自転車置き場ではあったけど、隅っこには放置自転車が何年もホコリを被ってるようなところだった。
 ある時、オレが帰ろうとすると、隣にホコリを被った自転車が止まってた。
サドルの横に、油性ペンでAnriと書かれたオレンジの子供用自転車。
Anriのiの点をハートで書いてあって、いかにも子供のって感じだった。
 オレは、

“ あれ、おかしいな?
ホコリ被ってるってことは放置自転車だよな。
何で隣にあるんだろう?”

と思いつつ、家路についた。
 次の日も同じようにその自転車置き場に止めた。
そしたらまた、帰りにはそのオレンジのチャリがある。
それが何回となく続いた。
 もう嫌になってきて、その次の日から一番入り口に近いところに置くようにした。
誰かのイタズラだったら、事務所から見えるところに置くのが得策だと思ったからだ。
 そしたら帰りにはまた隣にそれが来ている。
しかも、今度は100均で売っているようなチェーンロックで、そのチャリと俺のチャリとを繋いでとめられている。
鍵もないし、あったとしても開きそうにないような錆びたやつだった。
 管理してるおっちゃんに聞いても、妙な人はいなかったし、おっちゃんが動かしたわけでもないらしい。
おっちゃんも首をかしげつつ、チェーンロックを切るためにペンチを探しに行ってくれた。
 戻ってくるまでに用を足したくなって、オレは自転車置き場のトイレを借りた。
オレは、

“ ああ、やれやれ・・・。”

と思いながら出てきて、おっちゃんがチェーンロックを切ってくれていたので、自分の自転車に乗って家に帰った。
 次の日、放置自転車の中を探すと、オレンジの自転車があった。
タイヤもホコリ被ってたし、誰かが使っている感じもしなかった。
気味が悪いし、ちょうどボーナスも出たしで、専用の駐車場が使える原付を買って、それっきり自転車置き場には行っていない。








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日々の恐怖 10月27日 A4の紙

2015-10-27 18:11:23 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 10月27日 A4の紙



質問

 2年前の夏かな。
真夜中電車も無く、友達と2人で私の家まで歩こうということになり、あべの筋を歩いていたのです。
 車の販売店辺りに差し掛かった時、私は変な物を見つけました。
A4くらいの紙です。
歩道の上に貼ってあるのです。

「 何これ?」

 私は最初、電信柱によくある不動産情報の紙が落ちているのだろうと思い、走り寄りました。
それは、落ちたのではなく、わざわざ路上に貼ってある、ということに気づきました。
そして書かれている内容は、不動産情報なんかではありませんでした。
 黒いマジックで書かれている内容に、私はどう反応していいか分からず、友達に、

「 これおかしいよ。」

と目で訴えました。
 近寄ってきた友達は一読して、イタズラだって言っていましたが、時間も時間だし、とにかく不気味で足早にそこから立ち去りました。
 普段なら絶対面白がってネタにしたりする私達なんですが、何故かそんな気にもなれず、こんなに時間が経っているのにもかかわらず、あの紙の事は今まで一度も話題に上がりません。
 長々とすいません。
紙にはこう書かれていました。

おねがいしますわたしのみぎあしをひろったひとかえしてくださいたいせつなものなのでたいへんこまっておりますこちらにれんらくしてください
以下電話番号

 筆跡や文面から、何だか年配の女性の印象を受けたのですが、内容が意味不明だし、義足のことなんかな?とも思いましたが、確かめるすべも無く、ただただ不気味な思い出としていつまでも頭に残っています。
大阪在住の方、何かご存じありませんか?




返信

 あべの筋につながる(正確には13号線)歩道橋から、飛び降り自殺があったのは有名です。
そこが、おっしゃる歩道橋かどうかはわかりませんが。
 自殺をして車に轢かれ、体がバラバラになりあちこちに飛び散ったので、それを回収するために通行止めをしていたのを覚えています。
その時に何処かは忘れましたが、体の一部分が見つからないと見に行った人から聞きました。
今、思い出しましたので書き込みいたします。










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しづめばこ 10月26日 P404

2015-10-26 19:04:30 | B,日々の恐怖


しづめばこ 10月26日 P404  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


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日々の恐怖 10月25日 店長の話

2015-10-25 19:13:51 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 10月25日 店長の話



 前にバイトしていたカラオケ店での話です。
郊外にあるせいか平日の深夜ともなると客足がほとんどなく、その日は2時ごろに最後の一組も帰って、店内には俺一人。
 閉めの作業もほとんど終わってボーっとしてたら突然ルームからのコール音が。
壁に部屋番号が書かれたパネルが備え付けてあって、発信した番号が点滅するからどこからか一目でわかるようになってるんだけど、点滅してるのは部屋番号の存在しない一番右下。
怖くて立ち尽くしてると30秒ぐらいで切れた。
 ビクビクしながら、とにかく残ってる厨房の掃除を急いでしてたら、今度は無人のはずの受付から男の野太い声がして俺半泣き状態。
 後日、店長に冗談っぽく話したら他にも不可思議な体験をしてる人がいるらしく、中には11番ルームに入れないって言う人もいた。
確かにその部屋だけ床が浸水したみたいに捲り上がってて、モップ掛け難いとは思ってたけど。
 他にも誰もいないはずの部屋から壁を引っ掻くような音がしたり、夜になると自動ドアが勝手に開閉したり、挙句にはお客さんにも心霊カラオケ呼ばわりされたり。
 それで、新人バイトの女の子と社員が夜勤シフトで入った時のこと。
一階奥にある普段は鍵がかかってる物置部屋から誰かが走り回るような音がして、新人の子は泣いて仕事にならなくなった。
 その子は次の日には辞めちゃって、店長も流石にヤバいと思ってかお祓いを頼んだ。
そしたら足音がしたっていう物置部屋には、お札がいっぱい貼られて開かずの間になってしまった。
お祓い以降不可解な現象も収まって落ち着いたけど。
 そして俺が辞める前、最後に店長とシフトが被った日だった。
思い出話をしてたらこの店の心霊現象の話になった。

「 あの日、マジ怖くて本気で辞めようと思いましたよ。」
「 でも辞めないでいてくれて良かった。
あのとき辞められてたら、代わりなんて俺ぐらいだもん。」
「 夜勤もやって、次の日も昼のシフトとか地獄ですもんね。」

その後も雑談を続けてたら、店長が少し真面目な顔になった。

「 あ、俺君には話しとくわ。
他の人には言わないでよ。
前にここでお店やってた店長、店の目の前で死んでるんだよね。」
「 やめてくださいよ。
新しく入ってきたバイトには、絶対そういうこと言ったらだめですからね。」

いつも冗談ばっかり言う人だったから軽く受け流したけど、本当のところどうだったんだろう。









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日々の恐怖 10月24日 インドの料理人

2015-10-24 18:12:20 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 10月24日 インドの料理人



 インドの料理人Aさんが子供の頃に体験したという話です。
店長による通訳越しなので、細部は聞き間違えている部分もあるかもしれないけれど、そこはご容赦を願います。

 Aさんが10歳くらいの頃、夕暮れ時に友達4~5人と河原で遊んでいたときのことです。
いい加減遊び疲れてきて、そろそろ帰ろうかって話になりかけてたとき、河の上流から歩いてくる人がいるのに気付いたそうだ。
子供の目から見ても上質な服を着てて、優しそうに微笑んでいる品の良さそうなおじさんだったらしい。
 その人は手に大きな器を持って近づいてきて、

「 みんなお腹が空いているだろう? 
これを召し上がれ。」

そう言って、茶色くて潰れた楕円形みたいな、ふわふわしたもの(Aさん曰く、日本の饅頭みたいな感じ)を一人一人に手渡してくれた。
それはほかほかと温かくて、とても美味しそうな匂いがしたという。
全員にそれを配ると、その人はにこにこしながら、また上流に向かって歩いていってしまった。
 現代の日本なら小学生だって怪しむところだろうが、インドはそのあたりまだまだのどかな文化だそうで、近所の人が子供たちに食べ物を配ったりするのはよくあることなんだとか。
 けれど友達の一人が、去っていく男性の後姿をじっと見つめながら、小声だけど真剣な口調で、

「 おまえら、それ絶対に食うなよ。」

と言ってきた。
 腹が空いてたAさん達は、

「 なんでだよ、美味しそうじゃん、食べようぜ。」

と喚いたのだが、

「 あれは××××だ(ヒンディー語でランク4の悪霊を指す言葉)。
すぐに寺院に持っていって納めてこないとやばい。」

そう言ってみんなを引き連れて、街にある寺院に向かった。
 Aさん達も××××のことは知っていたけれど、さすがに半信半疑だったらしい。
けれど寺院の敷地に入った途端、持っていた饅頭らしきものが煮え滾るように熱くなり、みんな慌てて地面に放り投げたという。
 全員ビビリまくっているところに、寺院から何人もの僧侶が飛び出してきて、

「 大丈夫か?誰も口にしてないな?」

と聞かれ、そのまま寺院の中に連れて行かれてお祓いのようなことをされ、家の人を呼んでもらってそれぞれ帰されたそうだ。
 後日、Aさんがその友人に、

「 どうしてあれが××××だとわかったんだ?」

と聞いたところ、

「 だってあいつ、河の向こう岸から歩いて渡ってきたんだぜ。 
どう考えても普通じゃないだろ。」

 全員、男性が河の上流から歩いてくるように見えていた(その友人も上流のほうを向いていたはずだった)のに、実際には俺達全員河の向こう岸を見つめていたんだと、その友人は言った。
 Aさんは、

「 それ以来、日が落ち始めたら急いで家に帰るようにしてるんだ。」

と言って、笑いながら厨房に戻って行った。









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しづめばこ 10月23日 P403

2015-10-23 18:47:51 | C,しづめばこ


しづめばこ 10月23日 P403  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


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日々の恐怖 10月22日 パニック状態での決断

2015-10-22 18:46:25 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 10月22日 パニック状態での決断



 昔の職場の同僚Mさんから聞いた話です。
Mさんは関西に住んでいて、毎年お盆は中国地方にある田舎に車で帰っていた。
 その年は生憎翌日も仕事があったので、日帰りすることにした。
墓参り等を済ませて実家を出た頃には夜になっていた。
 帰りは高速を使うつもりだったが、既に帰省ラッシュが始まっていたので、夜とは言え混んでるかも知れない。
それで手元にあった抜け道マップを見ると、ちょうど良い道があったのでその道を行くことにした。
後から考えると、これが大失敗だった。
 抜け道は山の中の一本道で街灯もあまり無く、対抗車も先行車・後続車も全く無いため、本当に一人ぼっちで走っていた。
 暫く走って、道の遥か先に何だかよく分からない白いものが現れた。
その白いものは段々増えていき、やがて白い集団になった。
白い集団は道を塞ぐ様なかたちで、ふらふらゆらゆらと動いていた。
 それらは一見白い服を着た人間のように思えたが、何か違う感じもした。
Mさんはここで初めて、

“ もしかしてあれ、幽霊かも・・・。”

と思った。
 Mさんがビビっている間も、車はゆっくり進んで行く。
だが、近づいても、その白いものが人間なのか幽霊なのか判断は難しかった。
 もう、白い集団は完全に道を占拠してしまっている。
Mさんに残された選択肢は、

・幽霊だと判断して突っ切る。
・人間だと判断して止める。

の二つだった。
パニック状態のMさんは迷った。

 そして、Mさんは迷った末、結局、止まることにした。
止めた途端、白い集団は車をワッと取り囲み、窓を叩いたり車を揺らしたりした。

「 ひえぇぇぇ~!」

と車内でガクブルしてたところ、新たに白い人影が現れた。
 その人影をよ~く見ると、白衣を着た医者と看護婦だった。
実は、白い集団は道の脇を下りた所にある、○○病院の患者達だった。
 医者から、

“ 時々患者を外に出して散歩させるんだけど、昼間は様々な理由で避けたい。
この道は、夜になると車は通らなくなるので、散歩させるにはちょうど良い。
今まで散歩中に誰か人や車に遭った事は無かった。
あなたが初めてです。”

等と説明されたそうな。
 Mさんは笑いながら、

「 タネを明かされるとなぁんだとなるけど、なにも警戒してない状態で、深夜にあんな集団に出くわしたら、普通はパニックになるわな。」

と話してくれた。
 そのMさんが真面目な顔で最後に言ったのが、この言葉だった。

「 でも、後から思い返してみて、一番怖かったのはあのときの判断だな。
あのとき幽霊だと決めつけてアクセル踏んでいたら、間違いなく何人か轢いていた。
あのとき止まって良かった、本当に良かったと思うよ。」










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日々の恐怖 10月21日 車に乗ると出るもの

2015-10-21 19:33:17 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 10月21日 車に乗ると出るもの



 結構面倒見が良くて、色々と世話になっている職場のNさんと言う人がいます。
ある日、忘年会に行くのに、Nさんは酒が飲めないからと送迎役をやっていた。
 でも、Nさんと同期の人は何故かNさんの車に乗ろうとしない。
Nさんに聞いてみると、

「 俺の車に誰か乗せると、何か出るらしいんだよね~。」

と訳のわからない答えだった。
 Nさんも笑いながら言ってたので、冗談の類だと思って俺は一人でNさんの車に乗り込んだ。
 しばらく走って横断歩道に差し掛かったとき、Nさんが車を止めた。 
聞くと子供が渡っていると言う。
でも、俺の目には何も見えない。 
冗談かと思った。
 やがて車が走り出した。 

「 ほら、お辞儀してるよ、可愛いね。」

の声に咄嗟にサイドミラーで後ろを見ると、ランドセル背負った子供が頭を下げている。 

「 えっ?!」

驚いて振り返っても誰もいない。 

「 い、今の幽霊じゃないですか?」

と聞くと

「 え? あれ、幽霊だったの?」

と聞き返してくる。 
 あまりに無邪気に聞き返してくるから、

“ ひょっとして、見間違えたかも・・・・?”

と、そのまま口を噤んだ。 
そうこうしているうちに忘年会の会場に着いた。 

 忘年会が終わって再びNさんの車に乗せてもらった。 

「 家まで送るよ。」

とのお言葉に甘えての帰り道、青白い光が目の前を横切った。 
大きさはピンポン玉くらい。
人が歩くくらいのスピードの光の玉を目撃したNさんが、ひとこと言った。 

「 こんな都会なのにホタルがいるよ、珍しいねえ・・・。」
「 あのNさん、今、12月ですよ。」 

本当なら怖い体験のはずなのに、Nさんのおかげでそれほどでもない。 
 最近では、窓が閉まっているはずの走行中の車から身を乗り出す子供が見えたりもしたが、そんな時にもNさんは、

「 最近の子供はすごいね~。」

と笑っている。 
 あまりに日常茶飯事なので、

“ Nさんは感覚がマヒしてるんだ。”

と思った。
今は、Nさんの車にだけは乗らないようにしている。









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日々の恐怖 10月20日 台風の日

2015-10-20 18:08:14 | B,日々の恐怖


  日々の恐怖 10月20日 台風の日


 以前スーパーで働いてたときの話です。
その日は台風が近づいてて、午前中は雨になる前に買い物をしておこうと客がいつもより多かった。
 夕方過ぎて雨が本降りになると、ほぼ客は来なくなった。
それでも台風の中、来る客はいるわけで、入り口のカゴを整理してたら親子連れの客が来た。
30代くらいの女性と6才くらいの幼い女の子だった。
俺は挨拶をして、またカゴを整理していた。
 店内に戻ると、あの親子連れが野菜コーナーの付近を歩いているが、何かおかしい。
普通は商品を見るため、下を向いてたりするが親子は、ぼーっとしたように前を見ながらただ歩いている。
 何か探してる風でもなくカゴも持ってない。
もしや万引きでもするつもりか、と思ったが何かそれも違う気がする。
 親子は鮮魚コーナーも肉のコーナーも通りすぎ、従業員用のバックスペースにスッと入ってしまった。
俺は慌てて中に入って注意しようとしたが、親子の姿がない。
 見渡しても、奥を見てもいない
確かに入ったように見えたが、見間違えたのか。
 帰り支度をしてるときに先輩に冗談っぽくそのことを話してみた。

「 疲れてて勘違いしたんだろ。」

という返事が来ると思ったら、

「 俺も見たことあるよ。
何故か台風の時に限って、若い親子連れが裏に入る姿を目撃する人が多いんだよね。
それもかなり大きめの台風の時にだけ。
 注意しようとしたら、いなくなってたとか消えたとか。
俺も前にパートのおばちゃんに聞いただけだから、本当かどうか知らないけど、15年くらい前に近くの道路で母親と幼い子供が、交通事故に巻き込まれて亡くなったことがあったんだってさ。
 その日も今日みたいな台風で、視界不良で起こった事故とかで、丁度このスーパーに向かう途中だったらしい。
その事故が起こったのが、搬入口から数メートル先の十字路だって聞いたよ。」

もしかしたら、俺や先輩たちが見たのはその親子なのか。
今現在、スーパーは建て直されて造りも変わってるから、今も出るのかは分からない。










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日々の恐怖 10月19日 悪意

2015-10-19 19:17:02 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 10月19日 悪意



 去年の秋の話なんだけど、田舎に住んでるから、近所の山にキノコとりに行った。
山の入り口に車を止めて、だいたい徒歩で3時間くらいのコースなんだけど、ナラタケとかブナハリタケとかがけっこう採れる場所。
 それで、歩き出して1時間くらいしたとき、40歳くらいのオバチャン三人組とすれ違った。
話し方からして、どこか関西方面の人達らしかった。
 すれ違うとき、オバチャン達がぶら下げてた袋の中がチラッと見えた。
そこに入ってたのが、多分ネズミシメジとツキヨタケ。
しかも大量。
 知らない人のために一応説明すると、両方とも毒キノコ。
ツキヨタケのほうは死人が出るくらい強力。
 俺は、

“ おいおい、ヤベーだろうが、バカだな、コイツら・・。”

って内心思いながら、オバチャン達を小走りで追いかけて、

「 そのキノコ、どうするんですか?」

って聞いた。
 突然声をかけられて、かなり怪訝な顔してたけど、オバチャンAが、

「 どうするって、もってかえるよ。」

案の定だったんで、俺が毒キノコだってこと説明すると、オバチャンBが、

「 あー、やっぱり!
さっきのオッサンのいうてたとおりやわ。
うちらは、騙せへんで。
あんた、このキノコほしいんやろ?」

って言い出した。
 そのままオバチャンの話を聞いていると、どうやらオバチャン達は、今日、山で会った年配の男性に、美味しくて珍しいキノコ、って教わってネズミシメジとツキヨタケを採ったらしく、しかも、その時に、

「 珍しいキノコだから、毒キノコだ、っていって騙そうとする人がいるからね。」

って聞かされたらしい。

“ 何だよ、それ?
そのジジイ、何考えてんだよ?”

 キノコは間違いなく毒キノコで、しかも、少し知ってりゃ、見間違うことなんてあり得ないキノコだった。
 取り敢えず、オバチャン達を説得しようとしたんだけど、完全に疑われちゃって無理だった。
 最後には、

「 図鑑見てください!」

とは言った。
 あんときは、

“ 山にも危ないヤツはいるんだな。”

って思った。









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しづめばこ 10月18日 P402

2015-10-18 18:14:33 | C,しづめばこ


しづめばこ 10月18日 P402  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。
小説“しづめばこ”




大峰正楓の小説書庫です。
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日々の恐怖 10月17日 辞めた理由(4)

2015-10-17 18:37:23 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 10月17日 辞めた理由(4)



 その頃からかな。
体重が妙に減り始めて、元々結構細身だったんだけどズボンもベルトもどんどんゆるくなっていって。
 まあ、高い給料に調子に乗って外食したり、いろいろ買い込んで食べたり、むしろ太りそうな生活をしていたのにね。
 更に言うと、仕事から帰ってきて部屋に入った時、すっごい違和感を感じるようになった。
 週2、3回くらいかな、

「 あれ、俺のへやこんな雰囲気だっけ?」
「 物の配置とかはまったく、間違いなく俺の部屋なんだけど。」
「 あれ~?」

って言う、なんとも気持ち悪い感じ。
 退社する2ヶ月くらい前から、実家からやったら電話が来るようになった。

「 ちょっと、家に戻ってきてくれない?」
「 長男なんだし。」
「 なんかもう不安でさぁ。」

なんてことを毎回毎回言ってくるんだ、これが。
ほんと急に言い出すようになった。
これは、会社が何か手をまわしていたのかな?
 元々痩せてたのに更に激痩せしてきてた俺も体調が不安になってきてて、上司になんとなく退社するかも、みたいに匂わせてみた。

「 そうかぁ、そうだな・・・。」

みたいな反応で引き止められる風もなかった。
 結局、退社願いを出して、妙にすんなり通って、まあ規則で退社1ヶ月前に提出だったから、そこから1ヶ月、ほんとに気持ち悪かった。
 物陰とか、何かの隙間とかから、ふいに視線みたいなのを感じる気がして、

“ え?何かいた?”

みたいな毎日だった。
 先輩からは、

「 何最近キョロキョロしてんの?」

みたいに突っ込まれた。
危ないヤツと思われてたんだろうな。
 それで退社日を迎えて、送別会なんてやってもらって、荷物はほぼ全部実家に送ってあったから、呼び出していた弟の車に乗って即実家戻りした。
 そのとき、会社の前を車が通過して、弟が、

「 何か、今のところ気持ち悪かったな。」

って言葉が、俺にとって一番気持ち悪かった。
俺がいた会社が、そこだとは弟は知らないんだが。
とりあえずは、以上。
 その後、実家に戻ってからは、瞬時に元気になった。
それで、次は住んでいる県の同業の会社に就職した。
給料は安くなったけど、今の会社では普通に元気でやっている。
しかし、もう前の会社の、あの一帯には近づきたくないでござる。








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