大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 5月30日 コンビニ(1)

2024-05-30 17:21:48 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 5月30日 コンビニ(1)





 うちのコンビニに、週3回毎朝5時過ぎにやってくる初老のおばさんがいる。
週3回全て俺が入ってる日、決まって俺が店内で一人で作業してる時に来る。
雨の日でもズブ濡れになりながら来る。
 毎回水鉄砲、水風船、関連性の無い漫画やレディコミ、お菓子をカゴ一杯に詰めてレジにやってきては、

「 子供がね、いっぱいいるんよ、いっぱい。」
「 ○○言います私。」
「 機嫌のええ時はいいんやけどね。
また、かんしゃく起こすさけね。」

などと、聞いてもいないのに訳の分からない事を一人で喋っている。

” あぁ・・・、若年層の認知症かなぁ・・・。”

自分の子供が小さい時の事で時間が止まってるんだろう。
そんな事を考えて適当に接客していた。

「 ○○円になります。」

と言うと、ピタっと話しを止めてキチンと代金は支払うし、店にとって害は無い。
 なぜかそのおばさんが来店する前後には、他の客が来店しない。
おばさんが帰ると日が昇り始める。
不思議はあったが、所詮偶然だろうと思っていた。
 その事を相方に話すと、

「 今度その人が来たら呼び出しボタン押して下さいよ。」

と言うので、ある日、そのおばさんが来た時に、レジに付いている呼び出しボタンを押した。










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日々の恐怖 5月26日 女の幽霊

2024-05-26 10:42:37 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 5月26日 女の幽霊




 私のおばが大型ショッピングモールで清掃のパートをしてた時の話です。
当時オープンから一年ほど経ってはいたものの建物も設備もまだまだ綺麗で、田舎の割に繁盛していた。
 しかし、そこに勤める従業員の間で不穏な噂が流れ出した。
それは、二階のトイレに女の幽霊が出るというものだった。
話としてはありがちだが、記述の通り建物も新しく、元々はただの田畑で曰く付きの土地でもない。
おばが初めてその噂を耳にした時は、学校の怪談とか都市伝説くらいの感覚だったらしい。
 しかし、その噂が出るのと時を同じくして、従業員の怪我や病気が増えていった。
とはいえ何百人もの人が働いていれば多少の偶然はあるだろう。
だか不思議な事に、怪我や病気になった従業員の大半は二階フロアで働く人ばかりだった。
 そこのショッピングモールは防犯も兼ねて、お客と従業員が同じトイレを利用することになっている。
つまり件のトイレを普段から利用していると思われる人ばかりに何らかの影響が出ていたのだ。
 それは清掃パートも同じで、二階トイレ担当になった人は体調不良で次々と辞めていくようになった。
そのうち清掃パートの間でも、あそこのトイレだけは嫌だという声が続出し、
仕方なく一部のパートと本部社員が当番で担当するようになった。
 それからしばらくしたある日、清掃の新人パートとしてAさんという中年女性が入社してきた。
仕事を一通り覚え、他のパートさんたちと打ち解け始めた頃、例のトイレの噂が話題に挙がった。
 みんなが、

「 気持ち悪いわよね。」
「 当番の人には申し訳ないけれど、私は本当に勘弁してほしいわ。」

などとぺちゃくちゃお喋りしていると、急にAさんが、

「 じゃあ、私が今日(幽霊を)持って帰ってあげるわよ。」

と言い出した。
その場が一瞬静寂に包まれ、すぐにみんなの大きな笑い声が響いた。
 パートの一人が、

「 やだぁ、どーやって持って帰んのよ~?」

と聞くと、Aさんは自転車の荷台に乗せて帰ると言う。
面白い事言う人ねえという雰囲気のまま休憩が終わり、各自持ち場に戻って行った。
おばはその時その場にはおらず、休憩から戻ってきたパート仲間に笑い話としてその話を聞いたそうだ。
 そしてその日の終業後、おばは偶然自転車置き場から帰宅しようとするAさんに会った。

「 聞いたわよぉ。
あのお化け持って帰るんですって?」

とおばが話しかけると、Aさんは真面目な顔で、

「 そうよ。」

と言い、自転車に跨がったまま荷台をくいっと指差した。
その真面目な顔に少し戸惑いを覚えたおば(冗談だと思っていた)は、

「 そ、そぅ…気を付けてね。」

と苦笑いで手を振った。
Aさんは笑顔に戻り、

「 じゃあ、また明日ね。」

と元気に自転車をこぎだした。
 翌日、朝礼でAさんが昨日の帰宅途中に大型トラックに跳ねられ亡くなった、
と知らされたおば含むパート仲間は一斉に仕事を辞めた。












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日々の恐怖 5月21日 じーちゃん

2024-05-21 09:55:30 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 5月21日 じーちゃん




 前にじーちゃんが亡くなった時の話です。
俺ん家とじーちゃん家は隣り町で、ジジババっ子の俺は小さい時は毎週末のように遊びに行って、
サザエさん見てみんなで飯食って帰るのが日曜の楽しみだったんだけど、
社会人になってからは仕事が忙しいのと住んでるトコも離れちゃって、
ここ4、5年は盆暮れ正月くらいしか顔を出さなくなってた。
それでもジジババは満面の笑みで迎えてくれたりして、もっと短い間隔で来れたらなぁとか思ってた。
 んである日の朝、会社行く支度してたら突然ばーちゃんから電話があって、
『朝起きたらじーちゃん突然冷たくなって全然動かない』って震えた声で言われて、
会社に連絡すんのも忘れて飛んでった。
 じーちゃん家についたら、俺の両親とばーちゃんと親戚の人が先に来てて、
じーちゃんの寝てる布団の周りに座って泣いてた。
最初はいつもと変わらないじーちゃんの顔で布団に寝てる姿を見て、ぜんぜん実感がわかなかったけど、
そばによってじーちゃんの額をさわったらヒヤッとして、

” あぁ、ほんとに死んじゃったんだ。”

と思ったら、ボロボロ涙が出てきてめっちゃ泣いた。
 それから滞りなく葬儀の準備が進んで、自宅から葬儀場に移動する前日の夜、じーちゃん家側のイトコ家族がやってきた。
俺と歳の近いイトコの兄ちゃんと奥さん、2歳になる娘さんの3人で。
 線香あげて飯食って、歳の近いイトコの兄ちゃんとはよく遊んだりしてたんで、
思い出話なんかして、また2人してちょっと泣いてってしてたら夜も遅くなったので、
イトコの兄ちゃんは子供寝かせなきゃだから一旦帰るってなった。
 俺は手伝いなんかもあるから、じーちゃん家に寝泊まりしてたんで、

「 また明日、斎場で。
明日は泣くなや。」

なんて言って、玄関先まで送ってったんだけど、そのとき2歳の娘さん(Aちゃん)が突然玄関出て2歩くらいの所で、いきなり、

「 じーじ!じーじ!」

と言い出した。
名残惜しいのかなと思って、俺が、

「 じーじ、さよならなんだよ。」

ってAちゃんに言ったら、またAちゃんが、

「 こりゃいいや!こりゃいいや!」

って、人差し指を立てながら、

「 じーじ!こりゃいいやー!」

って言いながら笑った。
俺はうんうんと言いながら、Aちゃんに、

「 じーじ、まだその辺にいるのかなぁ?」

なんて冗談を言ってみた。
ちなみに”こりゃいいや”ってのはじーちゃんの口癖で、子供とか見てて嬉しくなるととすぐ言うので、
やっぱ子供に印象に残りやすいんだなって思った。
俺はAちゃんのおかげで少しほっこりして、そのままイトコ家族は帰っていった。
 次の日はお通夜、俺と俺の父親と数人の親族は斎場で寝ずの番の役になった。
寝ずの番てのは俺の地元だけなのか、全国共通か分からんが、
朝まで棺桶の前のロウソクの火を絶やさないようにしないといけないので、
時折様子を見る役、ゴッツイロウソクなので朝まで余裕で火は消えないけど、風習として残っている。
寝ずの番と言っても交代で寝る。
 その寝ずの番の中にはイトコの兄ちゃんもいて、控室みたいな別室で、
最初は数人で酒を飲みながら談笑したり泣いたりしてたんだけど、
2~3時間くらいしたら親父含む親族は皆寝てしまった。
 起きてるのが俺とイトコの兄ちゃんだけになって、兄ちゃんが突然、

「 なぁ、昨日はちょっとビックリしたな。」

と言ってきた。

「 は・・?」

と思って、

「 何が?」

って聞き返したら、兄ちゃん、

「 そうか、気づいてなかったか。
いや、昨日Aが”こりゃいいや”って言ったろ。」
「 うん」。
「 ウチのAは物心がついてから後、じいちゃと会ってないんだよ。
それに”こりゃいいや”なんて普段日常で使わないだろ?
それに家でも一回も言ったことないんだよ。
だから、びっくりした。」

俺はやっぱり、

「 は・・?」

ってなって、そんで、やっぱりじーちゃんは昨日あの時玄関にいたんだ、
いま考えるとAちゃんが指差してたのもじーちゃんだったんだ、
と気づいて、こんな体験をしたことが無い俺はちょっと、

” ゾクッ!”

とした。
 でも、よくよく考えたら、Aちゃんをあやしてたじーちゃんはきっと笑顔だったんだろう。
そうゆうじーちゃんだったからなぁ、と思ったら、幸せに逝ってくれたんだなと思って、先ほどのゾッとした気持ちは吹き飛んで、またちょっと泣けた。











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日々の恐怖 5月18日 心が弱ったとき思い出す、ある人の”じーちゃんの話”

2024-05-18 10:38:35 | B,日々の恐怖





日々の恐怖 5月18日 心が弱ったとき思い出す、ある人の”じーちゃんの話”





 うちのじーちゃんは、とある伝説の持ち主である。
じーちゃんは何の病気か知らんが、俺がちっさいころに死んだ。
そのとき、ハートビートセンサーっていうのか?
心拍が止まった時に、

” ピーーーーーー!”

てなる奴あるじゃん?
アレが、

” ピーーーーーー!”

って鳴って、脈とって医者が、

「 ご臨終です。」

って言ったのよ。
その瞬間、じーちゃんが

” がばっ!!!!”

って上半身はね起きて、ニッカリ笑って、

「 根性の勝ちや!」

って言った。
一同、心臓が飛び出るくらいに驚いた。
看護婦さんが、点滴のつり下げる台に引っかかってこけてたのを覚えてる。
 おかげでじーちゃんの死に顔はニッカリ笑顔だった。
そのまま上半身だけ起こした姿で、もっかい死んだ。
 遺書にこうあった。


” 
昔、軍に居た頃に、先に死んだ同僚が泣き言を言った時に、

「 根性と気合で人は死をも乗り越える!」

って言って励ましてた事を今でも気にしていて、ならば自分が試してみれば良いと。
実践するから残った者はよく見ておいてくれ。
もしそれが出来れば、意思は何よりも強いと言う事だ。
私に出来て他の者に出来ぬ道理は無い。
私が出来たのなら、それに習って何者にも負けぬ意思で生きてくれ。
もし出来なければ、この遺書は燃やせ。
恥を残して死ぬのはやんぬるかな。
                      ”


 馬鹿なじーちゃんだ、アホすぎる。
おかげで葬式までその話題で持ち切り。
まぁ、俺はそれを見習って、この前ホノルルマラソンを完走できた。
ダイヤモンドは砕けない、を実践したボケジジイだったようで。
 俺も死ぬ時は心臓止まってから、

「 我が生涯に一片の悔いなし!」

って叫ぶか。

 担当医が自分から進んで葬式に来る位インパクトのある死にっぷりだったし。
その話題のせいで、泣いてる葬式じゃなかったのを今でも覚えてる。
つーか医学的にはありえんのかね?
心臓停止の状態のまま覚醒してしゃべるっていうのは。
ちょっとその辺はわからないんだけど。

「根性論は時代遅れ」

って言ってるクールな社会の連中に一言。

「根性で出来ない事は多いけど意外にできる事もある」

ま、炎天下で水を飲まないとか別だろうけど。












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日々の恐怖 5月11日 コースターの顔 

2024-05-11 15:01:18 | B,日々の恐怖





 日々の恐怖 5月11日 コースターの顔 





 あるとき、会社の飲み会である同僚の隣になったことがありました。
飲み会は盛り上がり、かなり時間が経ち、寝始める人や帰る人もいる中、お酒が強い私と同僚はほとんど飲み比べのようになっていました。
 しばらくして、ふと同僚がグラスを載せる紙の丸いコースターに、人の顔を描いていることに気がつきました。

” ずいぶん子どもっぽいことをするなァ・・・。”

と思った私は、

「 それ何してるの?」

と同僚に訊ねました。
すると同僚は、

「 ああ・・・・。」

と返事をして、

「 酔っていると思って聞いて。」

と言いました。

「 はなから、そのつもりだよ。」

と私が答えると、同僚はこんなことを話し始めました。

「 実はさ、俺むかしから、しょっちゅうのっぺらぼうを見るんだよ。」

 同僚の地元は温泉街で、家にあるお風呂に入るよりも近所の温泉に行くことの方が多いような土地だったそうです。
同僚は毎日夕方になると近所の同級生たちと温泉に行っていたのですが、温泉は朝の5時から開いており、たまに朝風呂に行くこともありました。
 そんな彼が小学生のとき、朝風呂に行くと一人のおじいさんが身体を洗っていました。
同僚が、

「 おはようございます。」

と背中に声をかけると、おじいさんは、

「 あ~い、おはよう。」

と答えました。
その声としゃべり方で同僚は、

” 近所のあのおじさんだ。”

と分かったそうで、自分もお風呂に入って身体を洗うことにしました。
 しばらくして、同僚が湯船に浸かろうとしたときでした。
おじいさんが、ふと、

「 きれいになったか?」

と聞いてきたそうです。
声につられておじいさんを見ると、おじいさんは眼も鼻も口もなかったそうです。
怖くなった同僚は慌ててお風呂を出て、一目散に家に逃げ帰ったとのことでした。
 この話を聞いて私が、

「 狐にでも化かされたんじゃないの?」

と言うと、同僚は、

「 それなら良かったんだけど・・・・・。」

と歯切れの悪い言い方をしました。
 気になって話を聞いてみると、実はそのおじいさんはその日の夕方警察に捕まったのだとか。
なんでも前の日の夜、奥さんと口論になって殺してしまったそうで、同僚と一緒にお風呂に入っている時には、すでに奥さんを殺した後だったとのことです。

「 ニュースにもなったからビックリしてさ。
それから俺なんか分かんないけど、丸い形を見ると怖くなるっていうか、どうしても顔を描いちゃうんだよね。」

そんなことを言いながらコースターに顔を描いている同僚に、

「 へえ~、不思議なこともあるね・・・。」

と言っていたのですが、途中であることが気になっていました。
それは同僚が最初に言った台詞です。

「 実はさ、俺むかしから、しょっちゅうのっぺらぼうを見るんだよ。」

殺人を犯した人が、同僚にはのっぺらぼうに見えるのだとしたら、彼は今まで、どれくらいののっぺらぼうを見てきたのでしょうか。












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日々の恐怖 5月2日 再会(5)

2024-05-02 08:31:28 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 5月2日 再会(5)




 激しく混乱しているのは明らかだった。
話をしている最中も奇妙な仕草を取った。
奴はバシバシ自分の頭を叩きながら、ごくごくお茶を飲んだりした。
 突然額の上の部分を押さえて、

「 また声が聞こえてきた。」

などとうめいた。
 俺に耳を当てて聞いてくれと言うのでその通りにしたが、何も聞こえなかった。
だがその間、奴は聞き取れないほどの早口で、時代がかった言葉を唱えたりした。
支離滅裂な話に数時間付き合わされたせいで、こちらもひどく消耗してしまった。

「 俺はお前のことを覚えていない。」

奴にそう言われて、かなり安堵したのは確かだ。
こちらの手におえる話ではない。
係わり合いになるのも嫌だと感じ始めていた。

「 お前もすぐに俺のことを見失うさ。」

一瞬奴の表情が変わった。
はっきりと悪意を感じた。

「 こいつは俺のもんだ。」

背すじがぞっとした。
俺は見知らぬ誰かに睨まれていた。
 奴は甲高い笑い声を上げながら自転車にまたがった。
俺は奴を引きとめ、奴の正体を確かめようとした。
その時だった。

「 おいっ!」

背後から声を掛けられた。
振り向くと、何も無かった。
そこには暗く深い海が広がっているだけだった。
 自転車の音が後ろで遠ざかっていく。
振り返るも、奴の姿は暗闇に消えた後だった。
 半年後、高校の友人から、ある話を聞いた。
体育教師が轢き逃げに遭い、亡くなったらしい。
その妻はA子。
まだ、犯人は見つかっていない。







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