日々の恐怖 11月6日 壁ドン
大学生から、たまたま聞いた話です。
「 俺の隣の住人はいつもうるさくて、その度に俺は壁をドンドンと叩き返してる。
だから寝不足で辛い。」
って話を友人にすると、
「 今度、どんなものか見に行くわ。」
ってことで、今日友人が泊まって行くことになった。
ところが俺が言ったことと違って静かだと思ったのか、友人は、
「 ぜんぜん音しないじゃん。」
と言って来た。
俺は、
「 いや、だから隣は性格の捻じ曲がったヤツで、電気消して俺が眠りにつくと、それを見計らったように音を出してくるんだ。」
と説明した。
「 なら、とっとと寝ようよ。」
ってことで俺達は電気を消して寝た。
音を待っていたが、待ち疲れた俺達はそのまま眠ってしまった。
それから2時間くらい経ったとき、不意に眠りを遮るように、けたたましい音が、
“ ドンドンドンドンドン!”
と、壁の向こうからしてきた。
「 ホラ、来ただろ?」
俺はうるさいと、ドンドン叩き返したが、友人は身動きひとつしない。
“ 寝てるのかよ・・・・、ま、い~か・・・・・。”
次の日、俺は、
「 昨日もうるさくて叩き返したよ。」
って話すと、友人は俺の話を無視して、
「 お前、相当寝相悪いだろ?」
って言ってきた。
「 そんなに悪かった?」
友人は神妙な面持ちで、
「 昨日は怖くて言えなかったんだけどさ~。」
と切り出してきた。
「 え? 何?」
「 隣から音なんてしなかったよ・・・。」
「 え? まじ?」
「 しかも、お前が叩いてたのは、壁じゃなくてそれだよ。」
って指をさしたのは、引越し前から置いてあった古びたタンスだった。
タンスには所々に真新しいキズや磨り減った跡があった。
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