goo blog サービス終了のお知らせ 

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆奇妙な恐怖小説群
☆ghanayama童話
☆写真絵画鑑賞
☆日々の出来事
☆不条理日記

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆分野を選択して、カテゴリーに入って下さい。

A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 7月31日 霊感

2013-07-31 18:20:20 | B,日々の恐怖




   日々の恐怖 7月31日 霊感




 これは12年近く前の話です。
記憶に、“誰もいないのに階段が鳴り響く体験”をした覚えがあったので母に聞いてみたところ、母からそのときの状況を説明され、ああ、そうだったのかと思った話です。
 ある日の夕方、父を除く家族がい間に集まっている状態で、急に階段を誰かが登っていくような音がしました。
普通に“トントントン”という音ではなく、“ドンドンドン”と踏み鳴らす感じです。
 始めは父親かと思いましたが、会社に行っており不在との事を母親が言っており、祖父と祖母、俺も居間にいました。
好奇心旺盛な当時6歳の俺は、音が鳴り止んだ直後に、一人で二階へ確認に行ってしまったそうです。
 記憶は定かではないですが電話の呼び鈴が鳴り響く音を背中に聞きながら、階段を上がっていった覚えがあります。
全ての部屋を見回りましたが、二階には誰もいませんでした。
 二階から降りてくると、電話を受けた母が、

「 祖母の友人が30分ほど前に亡くなったから、通夜に出かける。」

と俺に告げました。
 母と祖母は階段が鳴り響く前に、廊下を何かが通る気配を感じていたそうです。
元々母は実家の方で心霊体験のような事を何度も体験していたようで、慣れていたようです。
それで母と祖母は通った気配がこの世のものではないと分かっていたために、泥棒じゃないからいいだろうと言うことで、一人で二階に行く俺を止めなかったそうです。
祖母は、最後に友人が、お別れを言いに来たのだろう、と家族に告げていました。
 母親からこの話を聞いて、ふと疑問が浮かびました。
なぜ祖母にお別れを言いに来たのに、居間には来ず階段を上って二階へ行ったのかです。
母にこれを聞くと、

「 どうやら私と貴方が邪魔だったみたいだよ。」

母の言葉の意味が解らないでいると、

「 貴方は二階から降りてきたときに、連れて降りてきたの気付いてないでしょ?」

と、また意味不明なことを言います。

「 あれ(祖母の友人)はね、お別れを言いに来たんじゃなくて、一緒に連れて行こうとしてたんだよ。」

と言われて、やっと俺は理解しました。
 祖母は俺が連れてきた祖母の友人に、話しかけられていたそうです。

「 独りは寂しい、一緒に来てくれ。」

それを祖母は丁寧に断ったそうで、祖母の友人も諦めかけていたとき、馬鹿な俺はこんな事を口走ったそうです。

「 婆ちゃん連れて行くのなら、俺も一緒に連れて行けよ。」

この時は、何をとんでもないことを俺が言うのかと、母も祖母も驚いたそうです。
 うちの家系は、父や祖父には霊感がまったくなく、母と祖母だけにあったので男の俺にはないものだと思っていたそうです。
しかし、俺は二人のように感覚が強いわけではなく、その後すぐにその影響を受けて高熱を出したそうです。
 原因が分かっていたため、すぐに神社で御祓いしてもらい熱も下がりましたが、その一件以来、母は心霊現象などが起こると噂される所に俺が行こうとすると過剰に反応するようになりました。
その母の反応ぶりからして、俺自身は口走った記憶はありませんが、作り話ではないなぁ、と実感しています。
 そして、疑問である“何故、俺と母が邪魔だったか”というのを母に聞いてみると、霊感のある人間に祖母が助けを求めるのを嫌ったため階段で物音を立て、足腰の弱い祖母以外を二階に誘導するつもりだったようです。
厳密に考えると、俺が二階から連れてきたわけではなく、母が電話に出てしまい二階に来なかったので仕方なく降りてきたようです。
 子供の頃には霊が見えやすいなどという事が言われていますが、何もない方向に話しかけている子供を楽しそうだから放っておくというのも危ない気がします。
まあ、このケースは俺が単純に馬鹿なだけだったと言うことでした。






















童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 7月30日 写真

2013-07-30 17:07:32 | B,日々の恐怖




    日々の恐怖 7月30日 写真




 小学校のとき担任だった女の教師は性格がとにかく悪かった。
自分の子供と俺たち生徒を比較して、私の子供は君達みたいな子には育てないだとか、とにかくコイツは自分の息子を溺愛し、俺たちと比較するのが好きだった。
 特に俺なんかは出来が悪くバカだったので、いつもいたぶられていた。
こんな問題も出来ないのか、とか、とにかくいろいろ言われて俺は頭に来ていた。
 当時、俺たちの小学校では、教室に教師の簡易机みたいなものがあった。
それで、この教師の机の中身のものを滅茶苦茶にしてやろうと考えた。
当然、誰も人がいないときを狙った。
 休み時間、その日は曇天にもかかわらず、殆どのヤツは運動場に出かけたり別のクラスに行ったりで、教室に残ってるヤツは珍しくいなかった。
ようやくやって来たチャンスに俺は小躍りした。
 教師の机の引出しを開けた俺は、綺麗に整理されたノート、カラーごとにきちんとまとめられたペンなどが目に入り、とにかくこれを滅茶苦茶に荒らそうと思ったが、ふと、一番下のノートに目が行った。
 どうせ俺たちの悪口が書いてあるのだろうと思った俺は、中を見るためノートをめくろうとしたときに、ノートから写真らしきものの角がはみ出しているのを見付けた。
それで角を摘んで引っ張り出すと、写真が裏向きに出て来た。

「 何かな・・・?」

家族の写真だろうと思った俺は、この写真もパクってやるかと写真をひっくり返した。
その写真に写っていたのは、担任と夫らしき人物、そして小学生ぐらいの子供だった。
 俺は、その写真を見て手が震えた。

「 何だ、これは・・・・。」

心臓の音が聞こえるようだった。
 その理由は、写真の子供の顔が火であぶられていたからだ。
写真の表面が軽くあぶられ、黒ずんだ顔の子供がいる。
焦った俺がノートを落とすと、ノートの間から数枚の写真が出てきた。
どれも子供の顔だけが火であぶられていた。
 はっと気配を感じて廊下側を見ると廊下側のガラスの向こう、すりガラスのせいで姿は見えなかったが立っている人影があった。
俺は担任と直感し、慌てて写真をノートに挟んで、それを引き出しに放り込み、窓から庭に飛び降りて逃げた。
その後、俺は猛ダッシュで運動場に行き友達と合流して遊んだ。
 怖いのは、今考えても、何故そんなことをするのか理由がわからない。
夫婦の仲が極端に悪いとかで、写真の中の夫の顔をあぶるならまだ分かる。
それが、なぜ子供なのか。
それも、あんなに自慢していた子供なのに。


















童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 7月29日 夜勤

2013-07-29 19:26:41 | B,日々の恐怖





    日々の恐怖 7月29日 夜勤




 俺は地方のとある僻地にてラブホのフロント勤務をしていたとき(←建前。本音は今だに働いている負け組な26歳)の体験談。

 深夜になると清掃パートの方達も帰り、ひとりで番をしなきゃならんのだが、客が退室した後は火の元や水の出しっぱなしを確認する為に部屋を見回るんだけど、その見回っている時に部屋中からラップ音みたいな音がパンパンと聞こえてきたので、これはチャンスと思いそんな非常事態に備えて前々からやってみたいと思っていた有線チャンネルの般若心経(J―17)。
 これで効果があるのか実証したく大音量でかけると、後は猛ダッシュで部屋からフロントに戻って来て暫し安堵していた矢先、客室から呼び出し電話がかかってきた。
何となく嫌な予感が脳裏を駆け巡りながら恐る恐るかかってきた部屋番を見ると、なんとそのお経をかけた部屋の隣部屋からだった。
 そうすると大体の予想はつくもので、呼び出し内容は隣からお経みたいな音が聞こえてきて不気味で落ち着かないとの内容だった。
とりあえずその場は適当に繕いながら電話を切り、少し調子に乗りすぎた自分に反省し、有線を切りに向かおうとしたその瞬間、全身に戦慄が走る。
 興奮していたのか今の今まで周りを見ていなかったのか、客からのクレームにより冷静になり、改めてパソコンの在室モニターに目をやると、なんとお経をかけたその隣の部屋、すなわちクレームがあったその部屋は空き室のままになっていた。
 もう訳がわからなくパニック寸前だったけど、無我夢中でなんとか有線を切りに行き、フロントでアダルトチャンネルをつけっぱなしにしながら仮眠をとって、今日起きた事を忘れることにした。

















童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

しづめばこ 7月29日 P260

2013-07-29 19:26:19 | C,しづめばこ
しづめばこ 7月29日 P260 、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。(FC2小説)

小説“しづめばこ”



童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 7月28日 爬虫類

2013-07-28 18:44:52 | B,日々の恐怖




   日々の恐怖 7月28日 爬虫類




 私は無類の爬虫類好きです。
しかも大型が大好きなので、サルバトールモニター(2m弱のでかいトカゲ、部屋で放し飼い)と、ボアコントリクター(推定3mの大蛇、条例によりガラスケージ内)、ちっこいカエルを数匹飼っている。
トカゲはヘビを怖がって近寄らないし、見るとパニックになって暴れ回るので、ヘビのケージには覆いをしてある。

 金縛りはときたまあるが、この時は違ってた。
首がぐにゃりと曲がり、髪もボサボサで目玉は真っ白、しかも歯がない女性らしきヤツが枕元にいた。
 引き笑いのような声が耳をつんざき、息もできないほど苦しかった。
涙や涎は出てくるが、体は動かず意識も薄くなってきたその時、ガシャーン!とガラスの割れる音がした。
 どうやらトカゲがヘビのケージをぶち割ったもよう。
のっそりとケージから姿を表すヘビ。
鎌首を揺らし、明らかに獲物を狙う仕草。
対するトカゲも尻尾を振り回し、威嚇しながらヤツの方へ近寄ってくる。
 あれほど耳障りだった笑い声が消え、壁に溶けるようにヤツはいなくなった。
体も動くようになったが、気が抜けて安心・・・・、してる暇はなかった。
トカゲも我に返ったらしく、ヘビを見て大パニック。
ガラスの破片を散らかしながら暴れまくり。
ヘビはヘビでテレビ台の下に入って出てこない。
トカゲに引っかかれるわ、噛みつかれるわ、のし掛かられるわ、私が傷だらけ。

 しかし、犬猿の仲の二匹がタッグを組んでる様は感動した。
すごく感謝してる。
つーか、いろいろびっくりした。

 ちっこいカエル?
コオロギ食ってた。

 ちなみにこのトカゲ、空き巣を撃退した武勇伝あり。
お金や通帳、ブランドバックを漁った形跡はあるが、それ以上に血が滴ってた。
ワニに襲われた、と救急にかつぎ込まれた男を逮捕したと警察から電話が来た。
















童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 7月27日 野球部

2013-07-27 18:54:40 | B,日々の恐怖





     日々の恐怖 7月27日 野球部





 私の高校時代の話です。
当時は、まだ昭和でした。
 野球部の部室に遊びに行ったとき、なぜかマネキンの頭部が無造作にゴロンとありました。

「 何で野球部に、これがある訳・・?」

と部員(クラスメイト)に聞いたら、平然と、

「 帰って来るんだ。」

と言ってました。
不審に思って詳しく聞くと、どこに捨てても翌朝には部室にあるそうです。
 そして、

「 こいつ、話せるんだぜ!」

と、意味不明なことも付け加えました。

「 はぁ・・・??」

私はその言葉に固まりました。
 部員はマネキンのまだらになってる髪をつかみ上げ、

「 挨拶しろ!」

とマネキンに言っています。
 はじめは私を担いでるのかと思いましたが、彼はマジでした。
もちろん、マネキンは話す訳がありません。
 部員は、

「 恥かかせやがって!」

と床に叩き付けました。
 あまりの部員のマジぶりに、

「 いつもなら話すのか?」

と聞いたところ、

「 ああ、片言だが少し話すんだ。」

と、マネキンが話さなかったため、少々ご立腹の様子です。

「 本当なんだぜ!」

と訴えかけて来る彼に、私は否定出来ませんでした。

「 まぁ・・、部員外の俺がいたからかもな・・・。」

と適当に合わせました。
 私が、

「 このマネキン何で髪がまばらなんだ、どうせだったらお前と同じく丸坊主にしたら?」

と言ったら、部員が、

「 そいつ、バリカンで丸坊主にしたんだぜ。
まばらなのは伸びて来たんだ。
まったく、みっともねぇ・・・。」

マネキンを蹴りながら平然と言う始末でした。
 野球部に遊びに行ったのは、これが最初で最後でした。
永久欠番のマネキンに聞きたい。

「 なぜ君は野球部に帰って来るんだ?」

















童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

しづめばこ 7月26日 P259

2013-07-26 18:19:38 | C,しづめばこ
しづめばこ 7月26日 P259 、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。(FC2小説)

小説“しづめばこ”



童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 7月26日 電話

2013-07-26 18:19:14 | B,日々の恐怖





   日々の恐怖 7月26日 電話





 今から十数年前のことです。
土曜日の昼下がり、電話がかかって来た。

「 適当に押していたら繋ったんです。」

相手は50代位の男性の声だった。
 イタ電かと思って切ろうとしたら、時間があったら話だけでも聞いて欲しいという。
暇だったし、丁寧な感じの相手だったんで聞いてあげた。
仕事の愚痴から始まって、妻にないがしろにされていること、子供に馬鹿にされていること、その他諸々と小一時間語った。
 相槌打ったり励ましたりしていたら、最後に、

「 ありがとうございました、思いとどまることが出来ました・・・。」

ガチャリ、ツーツーツー・・・・。















童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

しづめばこ 7月25日 P258

2013-07-25 17:59:05 | C,しづめばこ
しづめばこ 7月25日 P258 、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。(FC2小説)

小説“しづめばこ”



童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 7月25日 坂道

2013-07-25 17:57:18 | B,日々の恐怖





      日々の恐怖 7月25日 坂道





 私の父がまだ子供だった時分の話ですので、今から60年以上昔のことになります。
当時、長崎県S市に住んでいた父は、家族に頼まれて回覧板をお隣に出しに行きました。
季節は夏、暑い昼下がりで、家の中から外に出るとぼうっと頭がかすんだほどだったそうです。
 通りに出ると、ふいに背後から声をかけられました。

「 おい、○○。」

名前を呼ばれた父が振り向くと、少し離れたところに同級生のA君が立っていました。
父はそのA君とはそれほど親しくもなく、ほとんど話をしたこともなかったので、何の用かと不審に思いながらも、

「 なんだAか、どうしたんだ?」

と訊ねると、

「 ちょっと俺と一緒に来てくれないか?」

と答えるのです。

「 今、回覧板を隣に出しに行くところだから、ちょっと待っててよ。」
「 そんなのあとでいいから、早く来いよ。」
「 そうはいかないよ、すぐに済むから。」

などどと言いながら、父はA君の姿を見やりました。
 父の家の前の通りは長い坂道になっていて、A君は坂道の上手側に立っていました。
そのため、何となくA君を見上げるような姿勢になってしまったそうですが、そのA君を見ると、ランニングシャツを着て白い半ズボンに高下駄という格好だったそうです。
 A君はしきりに父を誘いましたが、そのわりには父のそばに来ようとせず、少し離れたところに立っているばかりでした。
 それで、父は、

「 じゃ、急いでお隣に出してくるから!」

と返事をして、ソッコーでお隣の玄関先に回覧板を回し、また通りに戻ってきたところ、 さっきまでいたはずのA君がどこにも見えません。
その通りは長い坂道になっていますので、あきらめて行ってしまったとしても、その姿は見えるはずなのです。
 首をひねりながら家に戻ると、父の両親が話をしていました。

「 かわいそうに。それじゃ、まだいっぺんも意識が戻らないんだね。」
「 ○○病院に入院したらしいけど、多分もう助からないだろうねえ。」

何の話かと聞くと、A君が2日ほど前に車にはねられて頭を打ち、ずっと入院中らしいことを知らされました。
 つい今しがた知り合いの人から電話があったとのことで、今のように連絡網もない時代、夏休み中で学校もなかったために、父もようやくこの日初めて知るところになりました。
結局、それから3日ほどしてA君は亡くなったそうです。

 父が見たA君は、父をどこに連れていこうとしていたのでしょうか?
さほど仲がよくなかったというのに、なぜ父に声をかけたのでしょうか?
そんなことを考えると、なんとなく薄気味の悪さを感じます。

 その後の話です。
A君の家族は、そのころ父の家から15分ほど離れたところに住んでいたそうですが、A君の葬儀のあとほどなくして、あたらしく中古住宅を買って引っ越していきました。
 それまでは長屋みたいな狭い家に住んでいたそうですが、あたらしい家は広くりっぱなものだったそうです。
父のお父さん(私の祖父)が一度、菓子折持参で挨拶に行ったところ、S駅のそばの高台の一等地にあり見晴らしもよくとてもいい家だったらしいです。
 ところが、その家に越してから、何故かA君一家は次々と葬式を出すことになりました。
A君はすでに亡くなってしまっているわけですが、A君の3歳違いの弟は、遊んでいる最中、家のへいの上から落ちて頭を打って亡くなりました。
A君のお母さんは精神的な病にかかり、台所のガス台で自分の頭部を燃やして自害しました。
A君のお兄さんは(何の病気か不明ですが)重い病気にかかり、闘病の末に亡くなりました。
 ただひとり、A君のお父さんだけは何事もありませんでしたが、父の近所の人たちは、

「 あの家に越したから、こんなことになったんだ。」
「 あの家にいる限りは、多分おやじさんも死ぬだろう。」

などと噂していました。
その後、A君のお父さんはとうとう家を捨ててしまい、以来行方知れずだそうです。
 何年か経ってから、父が祖父と一緒に見に行ってみると、草ぼうぼうに荒れ果てた廃屋が、一軒ぽつんと残っているだけだったといいます。
 父はもう70歳を超えていますが、

「 今でも夏が来るたび、あのときのA君の声や履いていた高下駄を、何故か思い出してしまうんだよなぁ。」

と言って静かに笑います。
生真面目で冗談ひとつ言わないような父ですが、この話はよほど印象的だったのか、よく繰り返し私に話して聞かせてくれました。














童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 7月24日 遊園地

2013-07-24 18:18:45 | B,日々の恐怖




    日々の恐怖 7月24日 遊園地




 有名な遊園地の話。
売り物は絶叫マシーンだが、その絶叫マシーンが危ない。
 その日、友人たちは6人で遊園地に遊びに行った。
目的は世界最速を誇る絶叫マシーン。
6人のうちの一人Mはコースター物が大の苦手で絶対乗らないと言い張ったが、周囲は面白がって無理矢理そのアトラクションの列に並んだ。
 30~40分待ったあと、ようやく自分たちの番が来た彼等は前から順番に席についた。
絶叫マシーンが大嫌いなMが座ったのは前から3列目。
発進する前からMは顔面蒼白になっていた。
 その様子を見た友人たちは、悪ふざけのつもりでコースターが動いている間のMをケータイのカメラで撮影する事にした。
 コースターがお客で満席になると、安全バーが乗客の体を固定する。
異変はその時から始まった。
Mの安全バーが中途半端な位置で止まってしまったのだ。
 係員が乗客の安全バーが全て固定されているかチェックしに来たが、なぜかMのことだけは見落としたらしい。
Mの隣りに座っていた友人の証言では、安全バーとMの間は確実に20センチ以上の隙間があいていたと言うのに。
 Mはパニック状態になって係員を呼んだが、ちょうどその時、派手な音楽と共にコースターが動き出した。
普通のコースターは発進時ゆっくりと坂を登っていくが、このコースターは発進直後に時速100㎞以上になるという優れモノ。
Mも、その隣りに座った友人も、振り落とされまいと安全バーにしがみついた。
 絶叫マシーンはあっという間にコースを走り抜け、やがてホームに戻ってきた。
Mを笑っていた友人たちも、あまりのスピードに腰がガクガクしてしまい、やっと席から立ち上がった。
 自分たちがこれほどなら、Mは腰が抜けて立てないだろうと思っていた予想を裏切って、Mは誰よりも早く絶叫マシーンから降りていた。
そして、友人たちが全員降りるのも待たないで、さっさとアトラクションから離れてしまった。
 友人たちはMの後を追って行き、その中の一人が、

「 嫌がっていたわりには、全然大丈夫そうじゃん!」

と言うと、Mは震えるような声で怒鳴り返した。

「 ヘンな女が、俺の安全バーを外そうとしたんだっ!!」

 みんなは顔を見合わせ同時に笑ったが、Mの隣りで撮影していた友人が自分のケータイを見ながら弁護した、Mの言っていることは本当だと。
 コースターが動いている間中、Mに向けられていたケータイのカメラには、Mの足元からニュッと伸びているニ本の白い腕が映っていた。
ブレていて鮮明でもないが、やけに長いその腕は確かにMの安全バーを握り締め外そうとしているように見えた。
 あまりに気持ち悪かったので映像はその場で消去されたが、以来、誰もMに絶叫マシーンを無理強いしない。
あの遊園地に行くときは気をつけろ、それが、仲間内で密かな噂になっている。
















童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 7月23日 幻覚

2013-07-23 18:09:38 | B,日々の恐怖




   日々の恐怖 7月23日 幻覚




 自宅にいると目の端々に人影みたいなものや、佇んでる人っぽいものを見る様になった。
夜に寝るために電気消して真っ暗にすると、白い壁に手の平に乗るくらいの猿が何匹も壁登っている。
 昼間や暗闇でも、目閉じると5センチ前に女の目があって、シャンプー中にビビッて独り声出して驚く。
しかも霊感なんぞ否定派だから、思い違いと思いたい。
しかし、こんな状態が続いていた。

 それで、精神疾患かと思い医者に掛かった。
すると、実は知らず知らずアルコール依存症に陥っていて、すべては酒が切れたときに見る禁断症状の幻覚だと言われた。
 俺って酒強ぇなぁ、ってくらいで自覚症状全然無かった。
妻も見抜けてなかった。
お互い怖くなった。
 マジで言うが、霊だ霊だ言ってる人達ってのは、何らかの脳の機能で幻覚見てるのかも知れない。
だからこそ、あそこまでマジになれると思った。
事実、あの頃、俺も幽霊っているんだと少し思い始めていた。















童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 7月22日 呼声

2013-07-22 18:56:03 | B,日々の恐怖




      日々の恐怖 7月22日 呼声




 結婚を期に一人暮らしのワンルーム(3階建ての1階部屋)から同じ町内に引っ越しました。
2年くらい経ったある日、夫と散歩中に、

「 前に私が住んでた部屋どうなってるかな?
どんな人が住んでるのかな?」

と、ふと思い立って15分ほど二人で歩いて行ってみると、路地に面した窓にはカーテンも無く、一瞬“空家なのかぁ・・・”と思い帰ることにしかけたのですが・・・。
 不審に思った夫が窓を覗き込み、

「 ホームレスが住み付いてるよ~、すごい散らかってる。
あそこ、じいさんが寝てる・・・・。」

と衝撃的な発言。
 私は自分の思い出がいっぱいある部屋なので、そんな様子を見たくなくて覗かなかったんだけど、いくらなんでも不動産屋にちゃんと管理されてるだろうし、勝手に入って住める訳無いよ~、と言おうとしたら、

夫「 なんか、おかしいな、あれ・・・。
えっと・・・。」

夫が玄関にまわってとドアに手を掛ける。

“ カチャ・・・。”

カギは掛かってなかった。

私「 勝手に開けちゃだめだよ~、帰ろうよ~。」(小心者のため半泣)
夫「 すいませ~ん、だいじょうぶですかァ~?」
爺「 ・・・。」

その後、警察へ通報しました。

 結局、老人の孤独死だったわけですが、亡くなった後そう日は経っていなかったようです。(夫談)
私は怖くて見なかったです。
 引越後はじめてふと思い立って見に行った以前の部屋で、そんな現場に遭遇したのって偶然なんでしょうかね。
これを友人に話したら、

「 おじいさんが、“見つけてくれ~”って呼んだんだよ。」

って言われました。











童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 7月21日 トラック

2013-07-21 18:31:23 | B,日々の恐怖





     日々の恐怖 7月21日 トラック





 親父から聞いた話です。
昔親父が山の現場でバイトしてた時のことです。
 その現場では、妻子をおいて季節労働に来てる男性がいて、その人は皆から頼られるリーダーとして現場を仕切っていました。
ある日、現場に入ったばかりの若造二人が、猛吹雪の中調子コイて飲みに行ってしまいました。
 案の定、いつまで経っても帰ってこない。
一件しかない麓の飲み屋に電話したところ、とっくに店を出たと言う。
作業開始時刻になるまでに戻らなければ、警察に連絡するよう残った人間に伝えて、リーダーは収まらない吹雪の中、若造どもを探しに出掛けました。
 視界ゼロ、息が出来ない程の吹雪の中、必死で運転し若造どもの姿を探すリーダー。
しかし、深い雪に車が埋まり、身動きが取れなくなってしまいました。
外に出て必死で脱出を試みるものの、車は全く動かず。
 どうしようかと途方にくれていたリーダーの車の前に、突然大型のトラックがやって来ました。
古い作業着にスキー帽子をかぶった体格のいい男性が出てくると一言も喋らずに、あっと言う間に車を引っ張り、轍から救出できました。
トラックはそのまま、リーダー達の現場がある頂上へと走り去りました。
 そこへ行方不明だった若造どもが現れました。
やはり彼らも大型トラックの男性に、脱輪していたところを助けられたとか。
これは、何としてもお礼を言わなくてはと、揃って男性が向かった筈の現場に戻りましたが、男性とトラックはどこにもいませんでした。

“ 一本道なのに何故?”
“ 麓に戻ったのならすれ違う筈?”

と訝るリーダーの元に嫁から電話が掛かってきました。

「 死んだお父さんが貴方の事を心配している夢を見た。
ニュースで、そちらがひどい悪天候だと見て不安になった。」

それを聞いて、端と思い出すリーダー。
義理の父は大型トラックのドライバーで、いつもクタクタの作業着に嫁が高校の時に編んでプレゼントしたスキー帽、無口な人だったと。
 工期が終り、久々に家に帰ったリーダーは、義父が大好きだった煙草とワンカップを持って墓参りに行ったそうです。
奥さんは、お礼にと、新しいスキー帽を編んでお墓に供えたんだと言うことです。
















童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日々の恐怖 7月20日 枕灯

2013-07-20 18:35:06 | B,日々の恐怖




    日々の恐怖 7月20日 枕灯




 昔、某市民病院で設備管理してたときの話です。
深夜、仮眠中に電話が鳴り、枕灯(ベッドの枕元にある蛍光灯)が切れたので交換して欲しいとの連絡があった。
消灯時間過ぎてるのに、こんな夜中に交換することもないだろうと思ったが、至急交換して欲しいとのことなので、眠い目を擦って部屋に向かった。
 部屋に着くとなぜか明かりがついていたので不思議に思ったが、とりあえず部屋に入ると、医師やら看護婦が数人ベッドを囲んでいて、俺を見たとたん慌ててベッドに寝ていた患者に頭までシーツを被せた。
で、シーツを被せる瞬間、なんか血みたいのがベットリ患者に付いてるのが見えた。
 まぁ、嫌な予感はしたけど、俺は無言で枕灯の交換にうつった。
しかし、なぜか枕灯の蛍光灯が外れない。
しかも、俺の目の数十センチ先には、シーツを被ってるとはいえ患者の顔。

“ ぜってぇ生きてねぇよ!この患者!”

と思いつつ汗ダラダラで作業するが、なぜか蛍光灯が外れない。
 結局5分ぐらい頑張ったが外せなかったので、「交換は明日にしてくれ」と医者に頼んで俺が部屋を出ようとすると、患者の家族が走りこんできて、「お母さん!」ってベットの患者に泣きついた。
部屋の明かりあるんだから、枕灯なんか別に今交換することないだろ!とマジで思った。















童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。

-------大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ-------