大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 7月31日 頭

2016-07-31 18:40:52 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月31日 頭




 学生時代、居酒屋でバイトしてたときのことだった。
一人でカウンターで飲んでたおじさんが席を立ち、私の方へ来てニコニコしながら話し掛けてきた。
 内容は支離滅裂で、

「 これからは中国の時代だ。
あとのことはよろしく頼むよ。」

みたいことを言ってた。
 私の両手を握りながら、とにかくニコニコ笑顔で上機嫌だった。
いつもなら、

“  手なんか触られたらウザイ!”

って思うけど、とても楽しそうに話してるので、

“ アハハ、酔ってるんだな、この人・・・。”

と、私も笑いながらうんうんと聞いてた。
 それを見かけた店長に仕事を言いつけられたので、その場を離れたけど、その人の席をチラッと見たら、ビールも料理もほとんど手をつけてなかった。
おじさんはその後、すぐに帰っていったらしい。

 次の日の早朝、店長のもとに警察から電話があった。
前日の夜中に、店の近くの交差点で初老の男性が倒れており、病院に運ばれたがすぐに息を引き取った。
 調べてみると、発見されたときよりもっと早い時間に、どこかで頭を打った形跡があった。
財布の中に店のレシートがあったので、

「 来店時に、なにかおかしな様子はなかったか?」

とのことだった。
 つまり、どこかで頭を強打→来店→店を出てすぐ倒れた、ということらしい。
だから言動がおかしくなってたのか。

「 あとのことは、よろしく。」

とか言ってたのも、何か意味があったのか。
 あんなにいい笑顔をしてたおじさんが、すでに死ぬことが決まってたなんて考えられない。
もしあのとき私が、おじさんが頭をケガしてることに気付いてたら、もしかしたら間に合ったかもしれないと、しばらく考え込んでしまった。












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日々の恐怖 7月30日 挨拶

2016-07-30 19:04:53 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月30日 挨拶




 別に捕まえているつもりはなくても、結果的にそうなっていることがある。
それで、ハッと気付くと、もう感じることはできなくなる。
そんな経験があった。
 犬の散歩コースで、ちょい高台にある家の前を通り掛かると、その家の犬がいつも

「 ワンワン!」

と吠える。
 犬の姿はドウダンの茂みに隠れて見えないが、ガサガサと揺れる枝先に向かって私の犬も、

「 ウオッ、ウォッ!」

と挨拶を返す
それが何年もの間の日課だった。
 ある日、自治会の集まりで、その高台の家の奥さんと話す機会があり、私は、

「 あ、お宅、犬いますよね?
何犬ですか?」

と聞いた。
 奥さんは、

「 シェルティですけど・・、でも、昨年死んじゃいましたけどね。」

と言った。
 その日以降、もう枝先が揺れることは無くなった。
高台は今日も静まり返っている。











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しづめばこ 7月29日 §30 探索 P444

2016-07-29 20:46:21 | C,しづめばこ



しづめばこ 7月29日 §30 探索 P444  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。



小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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日々の恐怖 7月28日 初雪の山(3)

2016-07-28 18:03:46 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月28日 初雪の山(3)




 怒鳴ると足跡は遠くへ逃げていった。

“ やっぱり、イノシシか・・・。”

 数十分後、また足跡が遠くから聞こえてきた。

“ ザクッ・・・ザクッ・・・ザクッザクッ・・ザクッザクッザクッ・・。”

 今度の足音は違った。
1人の足音じゃない。
仲間を連れてきた。
 さすがの彼も恐怖を感じた。

「 コラッ!!」

もう一度おもいっきり怒鳴った。
 足音は止まったが、少しするとまた進み始めた。

“ こっちに向かってきてる・・。”

もうここまで来ると、奴らが人間だと思わずにはいられなくなった。

“ 数人の人間がこっちに向かってきてる・・。”

 彼は今までにないほどの恐怖に襲われた。
体育座りをして、目を瞑って祈り始めた。
 特に宗教には入っていなかったが、子供のころ祖父や祖母が念仏を唱えていたのをかすかに思い出しながら、保温カバーに顔も入れて外を見ないようにしながら、ひたすらめちゃくちゃな念仏を唱えた。
 足音はまだ聞こえてる。どんどん近くなってきてる。

“ ザクッザクッザクッ、ザクッ・・・。”

夜中その足音は続き、まるで彼のまわりをグルグル回ってるかのようだった。
彼は一睡もできず、半狂乱で念仏をとなえていた。
 朝が近くなり、徐々に明るくなってきたのが分かった。
足音は次第に遠くになってきていた。
彼は安堵した。
 日が昇ったのがわかった。
足音も完全に聞こえなくなり、彼はおそるおそる保温カバーから顔を出して、あたりを見回すと愕然とした。
 周りには何十もの足跡が残っていた。
しかも裸足の足跡だ。
彼は疲労困憊でその足跡を眺めていた。
 あまりの恐怖に何も考えられなかったが、荷造りを初めて下山を始めた。
30分も歩くとその足跡は途中で消えたが、少し歩くと登山道の標識がすぐに見え無事に下山した。
 その後、しばらくの間、彼は登山が出来なくなった。
だが、好きに勝るものは無い。
最近は低い山をポツポツと登っていると聞いた。
それは、見ればそこに山があるからだ。









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しづめばこ 7月27日 P443

2016-07-27 18:47:02 | C,しづめばこ



しづめばこ 7月27日 P443  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。



小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
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なお、次章“§30探索”は、 近日中にアップします。



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日々の恐怖 7月26日 初雪の山(2)

2016-07-26 18:18:08 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月26日 初雪の山(2)




 登っているときは1人だけの足跡だったが、今は数人ある。
少なくとも今は3人の足跡が見える。
しかもよく観察してみると、裸足の足跡のように見えた。
 それに気づくと背筋がゾクゾクして恐怖に襲われた。
自分を裸足のなにかが後をつけて来てた、しかも登山道ではない。
その時、彼は知り合いのベテラン登山家の言葉を思い出していた。

“ 初雪の日は登山してはいけないよ。
見てはいけないものが見えちまう。
普段は見えないものが、雪のおかげで見えることがあるんだ。
それは命取りになるから。“

 彼はパニックになりつつあった。
暗くなり始め、得体の知れない裸足の足跡、さらに迷ってる。
 彼は足早に足跡を頼りに下山を始めた。
いくら歩いても登山道には戻れなかった。
もう完全に日は落ち、足跡も見分けがつかなくなった。
遭難、頭にその言葉が浮かんだが、今日中の下山をあきらめ野宿すると決断した。
 野宿の準備をしていなかったので、装備の中で使えそうなのは、アルミ箔のような保温カバーと、マッチくらいしかなかった。
 彼は風がしのげる大きな岩の下で野宿をする事にした。
かなり冷えるが、雪の降った後で穏やかな夜だったので、凍死の心配はなさそうだったが、念のため眠らない事にした。
 落ち着いたところで、足跡の事がふと頭に浮かんできた。

“ あの足跡はだれのものだろうか?
シカやウサギ、イノシシだろう、きっと・・・。”

彼は自分の気をごまかすように、小動物の足跡だと解釈するようにしていた。
そして眠らないように頑張っていた彼は、ついうとうとして眠ってしまった。
 彼は物音で目が覚めた。
それは何かが雪の上を歩く音だった。

“ ザクッ・・・ザクッ・・・ザクッ・・・。”

その音は岩の後ろから聞こえていた。
 勝気な彼は小動物だと思い、追い払おうと大声を出した。

「 コラッ!!」












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日々の恐怖 7月25日 初雪の山(1)

2016-07-25 18:37:10 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月25日 初雪の山(1)




 初雪の山は登ってはいけない。
そういう話を仲間内でよく聞いたが、滑りやすくなるからだろうと思いバカにしてた知り合いは、命の危険に晒された。
 彼は登山歴3年くらいの経験の少ないアマだったが、勝気な性格で人に頼ったりする事が嫌いだ。
なんでも1人でするタイプだった。
 そのときも一人で冬山を登っていたが、初雪が降り始めていた。
積もったのは数センチだったので、彼は当初の計画通り登り続けた。
雪のせいで登山道が分かりづらくなった彼は、慎重に登り始めたが不安になりだした。
 道を探しながら歩いていると、足跡があることに気づいた。
彼は喜んで胸をなでおろした。

“ この道で間違いないんだ。”

またいい調子で歩き始めた。
 だが、その足跡に気になる点があった、
靴の足跡ではない気がする。
少なくとも登山ブーツではない。
明らかに細すぎるし小さい。
そのまま足跡を頼りに登り始めた。
 周りの景色が少し違うなと、3年の経験で感づき始めた。
登山道というより獣道に近く、岩もごろごろして雑林も増えてきて、歩きづらくなってきた。
彼はその足跡の不気味さも気にかかっていたので、引き返すことにした。
 かなり辺りも暗くなってきて、彼は焦りはじめた。
急いで自分の足跡を頼りに下山していると、異変に気づいた。
あの細い足跡が増えている.










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日々の恐怖 7月24日 白い獣

2016-07-24 18:22:42 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月24日 白い獣




 外人のジョンから聞いた話です。
友人のジョンは信仰心の強い南部生まれで、ジョンの実家も当然熱心なキリスト教徒だった。
だから、週に一度の礼拝は家族みんなで行き、欠かしたことがない。
 でもジョンだけはこの礼拝が苦手だった。
何故かというと、上の方から見られてる感じがするからだ。
 教会の天井よりもっとずっと上、えらい高いとこから誰かがこっちをじいっと見てるのがわかる。
それもえらく威圧的で厳しくて、見張られてるように感じてやたら緊張したそうだ。
 やたら厳しい教師とか警官とかに、じっと見つめられてる居心地の悪さを10倍にしたくらいの視線が、終始上から降り注いできて、恐くて恐くてたまらない。
 両親に相談もして、カウンセラーなんかにも通ったけど効果無し、大きくなってもまだ感じる。
必然的に教会から足が遠のいて、逃げるように故郷を出て、無神論者みたく振る舞ってきた。
 そんなジョンが仕事の都合で日本にやってきた。
早めに打ち合わせも終わって、時間が空いたのでせっかくだからと近所を散策したら、緑に囲まれた公園らしい場所がある。
湿気の多い日本の夏に大汗をかきながら、一休みしようと目に付いた木陰のベンチに腰を下ろす。
 すると、ふっと涼しい風が吹いてきた。

“ ああ気持ちいいな・・・。”

と目を閉じた瞬間、感じたそうだ。

“ 横に、何かがいる・・・。”

なにかでっかくて、ゆったりと呼吸している動物みたいな気配を感じる。
 こちらを意識しているらしいけど視線を向けるでもなく、のんびりと寝そべっているようなリラックスした気配がする。
 ジョンが言うには、すごくでっかい犬を連想したらしい。
教会の上にいたものと、似てるけど異なるなにかだった。
あっちは同じ場所にいるとじっとり汗が出てくるほど緊張するのに、こっちのなにかはえらくのんびりしていて、まったく恐く感じない。
 自分を睨んでくるでもなく、ただ横にいて、

“ 暑いだろ。まあ休んで行けよ。”

とばかりに涼しい風がそっちから吹いてくる。
 アッという間に汗が引いて、目を開けると、そこには小さな建物があった。
建物の左右に石で出来たトーテムが建ってて、白い獣がこっちを向いていた。
 そう、それは御稲荷様の神社だった。
ジョンはもう青天の霹靂みたいな気持ちで、人生がひっくり返ったような衝撃を受けたそうだ。

「 冷たく厳しく睨んでくるヤツばっかりだと思ってたら、優しくのんびり寄り添ってくれるものに出会った。
まるでお高く止まって無くて、よそ者の僕を昔から知ってる友人みたいに歓迎してくれたんだ。
そんなの好きにならずにいられないよ。」

 そう言うジョンは、それからほどなく再来日して、今は日本に住んでいる。
大きな休みが取れると、各地の神社仏閣を廻る。
まだ一度として、この国では厳しいものに会ったことが無いと言う話だった。













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日々の恐怖 7月23日 浮遊物(3)

2016-07-23 16:14:50 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月23日 浮遊物(3)




 今度はKさんと私の二人だけで戻る。
マネージャーと他のスタッフが嫌がったからだ。
その取り残されたスタッフの名前を呼びながら、また地下最奥へ向かった。
 ところが今度は、先ほど感じた空気の変化を感じない。
普通の感じだ。
電灯も懐中電灯の光も、先ほどとは違い明るく感じる。
 最奥まで行く手前で、ゆっくりとそのホールスタッフが帰ってきた。
そして、

「 前にいつも新海を打っていた奥さんですよ。」

と私達に言う。

「 何で分かるの?」

と聞くと、

「 姿、見えるんです。」

もう今は消えていないと言う。
 聞くと、我々が白いモヤと見えたものは、彼には奥さんの姿まで見えたと言うことです。
その話を聞いたマネージャーが、

「 最近あの奥さん来ていないからな・・・。
亡くなったのかもな。」

 ほとんど毎日来ていた常連さんだという。
そう言えばここ2~3週間見ない。
 それから1ヶ月くらい経ったころ、早番で開店前入場者の整理をしていると、その奥さんの姿があった。

“ あらっ・・・・?
あなた、死んでたハズ・・・??”

とびっくりしていると、マネージャーが駆けつけてきた。
 久しぶりですお待ちしていました、みたいな事をマネージャーが言うと、意外な答えが返ってきた。
 その奥さんはこの2ヶ月、重病になって入院していたと言う。
一時期は危篤で、死の一歩手前まで行ったらしい。
そんな時、パチンコ好き(と言うより海好き)を知っていた奥さんの家族が、枕元で海物語の通常変動、走って当たり、さらに確変昇格、サム等の音楽を流し続けた。
 奥さんは夢か幻か、死の床で魚群を見たようだ。
そうしたらもう一度パチンコがしたくなって、

“ 死ぬものか!”

と踏ん張った。
 そしてその時に、うちの店に入ろうとするが入れない、そんな夢を何度も見た。
そしていつも店に入れなくて、車を止めていた地下駐車場で悔しい思いをしたんだと言う話だった。
 それで、その夢の時期が梅雨の時期と一致していた。
マネージャーは、

「 どんだけパチンコ好きなんだよ?!」

と何度も言っていました。












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日々の恐怖 7月22日 浮遊物(2)

2016-07-22 20:40:15 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月22日 浮遊物(2)




 例の場所、立体駐車場地下で、風船かなにかに見える浮遊物が見えたらしい。
勤務時間過ぎているが確認に行ってくれないかと頼まれた。
 電灯はすべて落ちていて真っ暗。
その中をKさんと二人で、マグライトをそれぞれ持って確認に向かった。
事務所との連絡用にインカムも持って。
 まずはエレベーターで屋上に向かい、そこから下に降りていく事にした。

屋上・・・特に異常なし。
インカムで伝える。

3階・・・異常なし。
真っ暗闇に4本の光の筋が通る。
怖い。

2階・・・異常なし。
インカムで伝えると、地下で何か動くものが見えるとの返事があった。
今、マネージャーが、非常灯だけでなく通常灯をつける準備をしているとのことだった。

その間に1階に下りた。
異常なし。

 1階の換金所前に、ホールスタッフ数人とマネージャーがいた。
一緒に行くと言う。
通常灯が点いてもなお薄暗い中を進む。
 地下に降りると空気が一変した。
雨の音が小さくなり静かにはなったが、何故か冷たく感じた。
皆の息が荒くなる。
光が薄暗く、懐中電灯の光も弱々しくなったような気がする。
 余談だが、プレステ用ゲーム『トワイライトシンドローム』を初めてした時、この時の空気が変わった雰囲気をよく再現していたことにびっくりした。
あのゲームを作った人の中には、実際に怪奇現象の経験者がいると思う。
 駐車場地下最奥に向かい、壁に懐中電灯を向けた。
いた。
車が止められない物置スペースになっている場所に、何か白いもの。
光に反射する水蒸気のようなもの。
 スーッと動いて壁の中に消えた。
全員見た。

「 わーっ!」

と大声を上げて逃げ出す。
換金所まで戻り、そこで皆息をつく。
 1人足りない。
ホールスタッフの学生バイトだ。











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日々の恐怖 7月21日 浮遊物(1)

2016-07-21 19:06:58 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月21日 浮遊物(1)



 
 今から数年前、大学生のころパチンコ屋でアルバイトをしていた。
と言ってもホールではなく、駐車場の警備員だった。
 時給はホールよりも安いが、シフトの自由と体力的に楽だったので、結構気に入って働いていた。
店の営業時間は朝10時から夜の11時。
駐車場警備員は全部で5人。私のほかはみな社会人だった。
 そのうち3人はシルバー人材センターからの派遣、もう一人は自衛隊上がりで警備会社から直接雇用のKさんだった。
そのKさんと私は比較的年齢が近く、一緒の勤務上がりの時には飯に行ったりしてそこそこ仲が良かった。
2年間のアルバイトで怖い話が二つある。
 週に4回ほどのアルバイトを始めて半年くらい経ったころ、遅番の勤務に入ると、同シフトのKさんが手招きをして言った。
最近立体駐車場の地下の一番奥で、少し不思議なことが頻発してると言う。
 Kさんではなくシルバー派遣の人が見たらしいのだが、閉店後、駐車場一番奥で女性を見かけたらしい。
懐中電灯を持ち近づいて行くと消えた、それも梅雨を迎えた最近になって見かけるようになったとのことだった。
 Kさんは、

「 世の中には不思議なことがあるからな~。」

とつぶやいていた。
 夕方に近づくにつれて雨が降り出した。
その日はたまたま翌日が新装入れ替えで、夜10時で閉店だった。
10時を少し回って最後の換金客も出たころ、ホールスタッフが私達の方に近づいてきた。
防犯カメラに変なものが映っていると言う。











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日々の恐怖 7月20日 記憶喪失

2016-07-20 19:26:33 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月20日 記憶喪失




 俺の体験談を話します。
俺は中2の時にチャリで事故って、記憶喪失になったことがあります。
 まぁだいたいこういうケースでは数日で記憶は戻るらしく、俺もそうでした。
よくマンガなどに出てくるような一生戻らないであろう記憶喪失ってのは、なかなか無いらしいです。
 このときのことをよく覚えています。
気が付くと、病院のベッドの上。上体も起こしていました。
目覚めるのではなくて、ぼうっとしてた時にはっと気づく感じです。
 それで、もう速攻でナゾ、ナゾ、ナゾ。
なんっっにもわからない。
 最初に出た言葉は、

「 ハァ!?」

でした。
 自分が誰か?
目の前のオバサンは誰か?
そんで、もんんんのすごい恐怖が襲ってくるんです。
 ナニが怖いって、母親の顔がわからないとかそれよりも、自分が誰だかわからない。
しかしこの恐怖も台風みたいにすぐ去り、次は面白くて仕方がなくなってきたんです。

「 おしまいだ、俺はおしまい。」

と叫びながら、ゲラゲラゲラゲラ笑いました。
名前を忘れちまうだなんて、もうおかしくておかしくて。
 目の前で母親がおろおろしながら泣いているのを、まるで水族館の中で分厚いガラス越しに魚を眺めているような感覚で見ていました。
そして、

“ この人なに泣いちゃってるの?
ばっか~。”

とおかしくてまた笑いました。
 しかし妹が反対側でビャーーッと泣き始めたのに気が付いた俺は、なぜかどうしようもなく悲しい気持ちになって、

「 ごめんなさぁあああい!」

と、涙と鼻水をそれこそマンガのようにボタボタジャアジャアと垂れ流しながら号泣しました。
 そんなカンジで超カオスな俺の病室に、聞きつけた医者と看護婦がドヤドヤっと入ってきて、俺を取り押さえて目に光を当て、医者がこう言ったんです。

「 君の名前は○○だ、○○××という名前だ!」

それを聞いた俺はウソみたいに眠気に襲われて、そのまま眠ってしまいました。
そして、次の日の昼に目覚めた時にはすっかり記憶が戻っていました。
 怖いのは、俺はその時の自分の心情から行動、部屋の内装に至るまで、目で見たものと感じたもの全部を詳しく覚えていることです。
 あの時家族が着ていた服の模様も、部屋にかけてある風景画の構図から色、母親の顔の筋肉のひきつり具合、掛け布団の右端の赤い糸くず、床のよごれなど、とにかくあの時の俺が見た範囲での部屋なら完璧に再現できるほどに覚えていました。
 俺が喚いていたのが実質3分ぐらいだったから、きっとその3分で全部覚えたんだ。
あと、なんであんなに激しく笑ったり泣いたりしたのか、理由はわからないけど、

“ あんなの全然普通のこと。”

と認識しているのもなんか怖いです。














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しづめばこ 7月19日 P442

2016-07-19 19:41:53 | C,しづめばこ



しづめばこ 7月19日 P442  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。



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日々の恐怖 7月18日 千円札(3)

2016-07-18 19:51:09 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月18日 千円札(3)




 古戦場から出てきた鎧兜や、廃屋から掘り出した鏡みたいにはいかないか。
確かにそうだよなあ。

「 まあ、誰でもいいから呪いたい、って話なら別だけど・・・。」

今のご時世、そんなヤツ普通にいそうでヤだなあ。

「 あー、まあ、その紙幣に呪いがかけられてるって話自体、飛ばしすぎじゃ無ぇの?
どっかのアホなホステスか何かが、酔っ払ったあげくにアホな事をしただけ、って可能性が一番高いって言うか、多分そうだろ。」

でも、では何故あの紙幣はウチの店に何度も何度もやって来るのか。

「 紙幣ナンバー、憶えてるのか?」
「 は?」
「 同じ紙幣なのかな、それは?」

思いもよらなかった事を言う。
 確かにナンバーは控えていない。
て言うか誰も控えないだろ、いちいち。

「 郵便局だって、一回位はそんな汚れた紙幣をお客さんに間違って出しちゃうかもしれない。
でも、それが二度三度続いて、しかもそれが回りまわって同じ店にやってくるってのは、確率的にちょっとおかしいだろ。」
「 うーむ。」
「 それよりは、お前の町のどこかで誰かが、そういうキスマーク紙幣を量産して流通にばら撒いている。
その内の何枚かが、お前の店に何枚か流れてきた。
そう考える方が、確率的にはおかしくないんじゃね?」
「 うーむ。」

 確かに、確率的にはそちらの方がおかしくないだろう。
でも、お話としてはどうだろう?
女が一人、自分の部屋で口紅を塗っては千円札に鮮やかなキスマークを付ける。
財布の中に入っている限りの千円札に口付けをしていく、そんな光景。
どんな理由があろうとも、それは想像するだにおっかない情景では無かろうか。

「 そのキスマークにどんな意味があるのか知れないけど、仮に呪いを込めてるとして・・・。」

友人が最後にこう締めくくった。

「 そいつはお前や店を呪ってるんじゃ無い。
しばらくは、それが流通するであろうお前の町全体を呪ってるんだと思うよ。」

 ともあれ、僕が体験した一番不気味な出来事は、僕自身には一切害のないまま幕を閉じた。
キスマーク付きの千円札は、それ以来見かけない。












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日々の恐怖 7月17日 千円札(2)

2016-07-17 19:25:46 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 7月17日 千円札(2)




 この紙幣は確かにこの前、郵便局に送金したはずだ。
こんな紙幣をお客さんに出す訳には行かないのは、コンビニも郵便局も変わらない。
その同じ紙幣が、数日経たとは言え、なんで同じ店から出てくるんだ?
 鮮やかな色の口紅は、何だか笑っているように見える。
とてつもなく嫌ぁな気持ちになりながら、とにかくその紙幣は前回同様に送金袋に突っ込んだ。
 三度目は十ヶ月ほどブランクを空けてから来た。

“ そういえば去年、あんな事があったなあ。
でもまあ、タチの悪い偶然だったんだろうなあ。”

そう思い始めた矢先の出来事だったから、見つけた瞬間は思わず凹んだ。
正直、虚空に向かって、

「 何でやねん!」

と小さく叫んだ僕も、ハタから見るとちょっと恐かったかもしれない。
キスマーク付きの千円札、見れば見るほど不気味なブツであり、持っているだけで不幸になりそうな、そんな予感がある。
どう始末を付けたかは、過去二回と同様である。
 それで、ある日、久しぶりに友人に会ったとき、世間話的に尋ねてみた。

「 お金に呪いとか何か込められるのかねぇ?」

 キスマークの千円札が出てきた前後に、自分や店に不幸があった訳ではないが、明らかにあの紙幣は意思を持っているように感じたのだ。
そして、アレに意思があるとしたら、それは決して良いものでは無いと思うのである。
 友人は言った。

「 聞いた事無いけど、出来たとしてもしょうがねぇよなぁ。」
「 しょうがない?」
「 人間に食べられる為に殺される動物達の霊はどうなってんだ、って疑問と一緒でな。
在ったとしても、何の手立ても無い訳だしさ。」

 家畜の霊が恐いから肉食を止める事は出来ないし、呪われたお札があるからお金を使うのを止める訳にもいかない、と言う事か?

「 考えてみると金ってやつは、確かに呪いとかには便利だよな?
赤の他人同士がやり取りするのに何の疑問も抱かないのは、これぐらいのモンだし。」
「 いや、そうでも無いだろ。」

友人はちょっと考えてから返答してくる。

「 赤の他人同士簡単にやり取りするんだから、呪いたい相手がいつまでその紙幣を持ってるのか判らないんだぞ?
仮に誰かがお前のコンビニを呪いたいからって、そんな事をしたとして、実際、一日経たずに紙幣は郵便局に送られちゃってるんだしさ。」












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