大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

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☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

霧の狐道221

2009-04-30 19:56:17 | E,霧の狐道
 俺は龍平に同意を求めた。

「 大丈夫だよな・・?」
「 どうかなァ、手術、ヘタだけど・・、するのは好きだよ・・・。」
「 ヘタだけど、するのは好きって!?
 龍平、クビにしろよ、そんなヤツ!」
「 そんな力は、まだ無いがな。」
「 ああ、もう、どうしたらいいんだ・・・・。
 ああ、不幸だ、不幸が雨の様に俺に降り注ぐ。
 どうしてくれるんだよ!」
「 どうもこうも、貴志が救急で入院したとき、狸小路しかいなかったんだよ!
 もう、優秀な方の吉田先生は入院患者を山ほど治療しているからな。
 それも、狸小路には入院患者を担当しないようにしているんだから、それは
 仕方ないだろ。
 吉田先生は手一杯なんだよ!
 外来の簡単な怪我人を捌く担当が狸小路、難しい患者は吉田先生。
 とにかく、おまえは、運が悪いんだ!」
「 まさか、狸小路の担当する入院患者は俺だけかァ?」
「 まさか、じゃなくて、そうだよ。」
「 そんなァ~。
 ああ、もう不幸が土砂降りだ・・・・。」
「 もう、幸せでも不幸でも、どっちでもええがな。
 固定して、手術さえしなければ自然とくっ付いて治ってしまうがな。
 湿布の交換だけなら、どんな医者でも出来るわい。」
「 そんなァ~。」
「 もう、ゴチャゴチャ言うな!
 もう眠いから、2時に備えて、わいはひと寝するで・・・。」
「 お~い、チョット待てよォ~。」




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霧の狐道220

2009-04-28 20:25:13 | E,霧の狐道
「 女の子より狸小路の方が怖いかも知れへんで。」
「 どうして?」
「 抱き合わせ人事って知ってるか?」
「 知らないけど・・・・。」
「 A病院に優秀な外科医がいる。
 B病院はそいつを引き抜こうとする。
 引き抜くには多額の現金がA病院と外科医に必要だが、それ以外にも引き受
 けなければならないこともある。
  医者にも問題を持った人がいるが、大学や他病院との人間関係でクビに出
 来ないんや。
 そこで、優秀な外科医にくっ付けて転勤させる。
 これが、抱き合わせ人事やがな。」

“ どう考えても、タヌキが優秀な外科医とは思えない。”

俺は呟いた。

「 タヌキか・・・・。」
「 アハハ、分かったんか!」
「 アハハじゃないよ。
 でも、優秀でなくても普通だろ。」
「 いや・・・・。」
「 いやってなんだよ、教えろよ!!」
「 前に、狸小路、足の骨折手術をしたんや。
 左足を事故で骨折して、手術して直そうとしたんやけど、手術の後、固定し
 たのはええんやが、なかなか左足がくっ付かない。
  おかしいな、おかしいなって思っているうち、一ヶ月近く予定を過ぎて、
 ようやく治ったんや。
 それで、立ち上がって歩いてみるとどうも歩き難い。
 おかしいなってんで、調べると左足が3cm長いんやがな。
  普通、事故した足って短くなることはあるんやけど、長くなるって変やろ。
 長さを間違えて固定してしもたんや。
 もう、ビックリやで。
  左足を引っ張り過ぎて、長くして固定したから、なかなか骨が出来なかっ
 たんや。
 体の不自由な人になってしもて、まあ、お金で示談にしたんやけど。
 でも、高速道路は無料で走れるって、変な感謝をされたけどな。
  貴志も左肩、長くなるんとちゃうか?
 バスケット、左手でシュートしたら入り易いで。」
「 あのなァ~、止めてくれ!
 手術はしないって言ってあるから・・・・。」



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霧の狐道219

2009-04-26 19:02:21 | E,霧の狐道
「 それに女の子からお守りなんて貰って、ええなァ~。」
「 ああ、由紀ちゃんか。」
「 吉沢由紀やろ。」
「 龍平、よく覚えてるなァ~。
 俺、一回、名前言っただけなのに・・・。」
「 当たり前やろ、毎日、勉強してんにゃから。
 それに、幼馴染ってええなァ。
 憧れるなァ~、そんなの。」
「 そうか、憧れるか。
 ムフフフフフ、お金持ちに勝った気分。
 メッチャ、ハッピーじゃん。」
「 何か、妙に喜ばしてしもたな。」
「 むふふふふ、幸せ・・・。」
「 そんなの言っているのは、今のうちだけやな。
 貴志の相手は、あの女の子だろ。
 遊ぶって約束したんやから、ハハ、楽しみ!」
「 ゲッ、ヤバイ!」
「 約束は、守るもんやで。」
「 うううう・・・。
 不幸だ、俺は、不幸だったんだ。
 うううううう・・・。」
「 ついでに、もう一つ不幸な話をしたろか。」
「 何だよ、もう一つって・・・・。」
「 貴志の主治医は狸小路やろ。」
「 ああ、そうだよ。」
「 フフフフフ・・・。」
「 何がおかしいんだよ!」



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霧の狐道218

2009-04-24 19:08:22 | E,霧の狐道
 俺は、マズイことを聞いたかなと思って話を変えた。

「 えっと・・・・、ここ大きい病院だな。」
「 ああ、そうやろ。
 親父があちこちで経営してる。
 チェーン店みたいなモンや。
 親父は外科が専門なんやけど、最近は医学よりも経済学や。」
「 一人っ子だったら、医者になるの?」
「 そうやな、医者やな。」
「 じゃ、勉強、大変なんだァ。」
「 ああ、毎日、塾や。
 医学進学コースやで。
 休みは土日だけやから、結構、大変なんや。」
「 俺、そんなに勉強するのイヤだなァ~。」
「 アハハ、わいは力を付けて、親を頼らず一人で生きて行くんや。」
「 ふ~ん、お金持ちにはお金持ちの苦労があるんだな・・・。」
「 貴志は、学校から帰ったら、いつも何してるんや?」
「 えっ、俺・・・・。
 えっと、学校から帰ったら・・・・。
 玄関に鞄を放り出して、友達の所に遊びに行くか、コタツから首だけ出して、
 テレビマンガの再放送を見るか、どっちか・・・。」
「 おまえ、幸せな奴っちゃなァ~。」
「 そうかなァ~。」
「 そう言うのを、何気ない幸せちゅうんや。」
「 そうかァ~、俺って幸せなんかァ~。
 そうかァ、そうなんだ、ふふ!」




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霧の狐道217

2009-04-22 18:55:47 | E,霧の狐道
 俺は、まだ、眠くないので龍平に話し掛けた。

「 龍平、田中さんから聞いたんだけど、この病院の院長の子?」
「 ああ、そうやで。」
「 それって、お金持ち?」
「 ああ、金はあるな。」
「 いいなァ~。」
「 お金があっても、いいとは限らんで。」
「 どうして?
 俺なんて、ズ~ッと貧乏だよ。
 食べ物だって、チクワばっかり・・・。
 体に、縦に穴が開きそう・・・。」
「 アハハハハ。
 まあ、食い物は取り寄せられるけど・・。
 でも、貴志には家族が揃ってるだろ。」
「 揃ってるって?」
「 親とか・・。」
「 両親と妹がいるけど・・。」
「 夕食とか、一緒に食べるやろ。」
「 そうだよ。」
「 わいは、いつも一人で食ってる。」
「 どうして?」
「 親父は忙しくって夜にしか帰ってこないし、母親とは話が合わへんにゃ。」
「 兄弟は?」
「 妹が一人いるけど・・・。」
「 じゃ、俺の家と同じだな。」
「 いや、違う。
 今の母親は、本当の母やない。
 妹は親父の子やけど、今の母の子や。
 わいの母は、死んだ。」




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霧の狐道216

2009-04-20 19:35:18 | E,霧の狐道
 俺と龍平は、ベッドに二人並んだ。
左が龍平で俺は右だ。
俺は右の白い壁を見ながら思った。

“ お揚げ婆さんに接近してるけどなぁ・・・・。
 でも、単に夢だったかも知れないし・・・。
 いくらなんでも、カエルに跨って出て来るなんて、マンガの世界だろ。
  やっぱ、ありゃ夢だな・・・・。
 夢だったら、全然影響無いよな。
 まあ、気にせずにおくか・・・・。
 それに、今日は隆平もいるしな・・。”

俺は寝転んだ。
 布団を首まで被って、二人並んで顔を出す。
布団一つでは、体の何処かが布団からはみ出す。
龍平が俺に文句を言った。

「 狭いなァ~。」
「 あのなあ、龍平。
 これは俺のベッドだぞ。
 おまえ、あっちの空いているベッドで寝ろよォ!」
「 おまえなァ・・・、あれはイヤやちゅうたやろ!
 おまえこそ、寝ろ!」
「 イヤだよ、まだ、死にたくない。」

 俺たちは空きベッドを見た。
隆平がベッドを見ながら俺に訊いた。

「 出るのは、何時ごろや?」
「 昨日は、2時ごろ女の子が来た。」
「 それで?」
「 で、女の子がベッドを触ったら、ムクムクと黒いヤツが出てきたんだ。」
「 ふ~ん、2時ごろかァ。
 女の子と黒いヤツのダブルやな。
 どっちも、ちょっと手強そうやな。
 女の子って、黒いヤツを呼んでるのかな?」
「 どうかな・・?」
「 まあ、その時間までは、どっちも出てこないよな。」
「 どうかな・・?」
「 同じ返事ばっかりするなよなァ。」
「 だって、分からないからさァ・・・。」
「 う~ん、そうか・・・。」

龍平が黙ると部屋は静かになった。




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霧の狐道215

2009-04-14 18:56:22 | E,霧の狐道
    消灯2


 消灯を過ぎ、看護婦さんの見回りが終わったころ、龍平が病室に忍び込んで来た。
黒い上下のジャージを着て、黒っぽいスヌーピーの枕を持っている。

「 よっ!」

龍平は右手を挙げて挨拶した。

「 看護婦に見つからないように黒尽くめで来たんや。
 どや、見えへんやろ。」

龍平は枕を持ったまま、病室の白い壁にゴキブリのようにピッタリと体を付けた。

「 白い壁に、黒は見えるけど・・。」
「 あ、そやな。
 でも、夜はやっぱり黒やで・・・。
 ほれっ!」

龍平は壁から離れ、枕を俺のベッドに放り込んだ。

「 あらよっと!」

そして、掛け布団を引っ張って尻から体を俺のベッドに入れて来た。

「 ベッド、詰めろ、詰めろ。
 わいも、入るで。」
「 イデデデデ、押すなよ。
 俺は、病人だろ。」
「 もうちょっと詰めろよ。
 狭いんだから・・・。」
「 仕方が無いなァ~。」




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霧の狐道214

2009-04-10 20:01:35 | E,霧の狐道
 それで、俺と田中爺が果物カゴを見たのだ。
すると、山本爺が既にカゴからリンゴを取って齧っていた。

“ シャリシャリシャリ。”

俺は驚いて言った。

「 わっ、もう、食ってる!!」

山本爺は無表情なまま、クルッと向きを変えてベッドに戻り、布団を被った。

“ シャリシャリシャリ。”

 俺は盛り上がった山本爺の布団を見た。
布団の中からリンゴを齧っている音が聞こえる。

“ どうせ、一人では全部食べられないし・・・。
 どうも山本爺の行動は予測できないなァ・・・。”

田中爺は俺の唖然とした姿を見て笑いながら言った。

「 わしも、リンゴ、貰うでェ~。」

 田中爺はカゴからリンゴを一つ取ってパジャマの裾でゴシゴシ擦った。
そして、ニヤッと笑ってリンゴを齧った。

“ シャリシャリシャリ。”

俺は田中爺の満足そうな顔を見て思った。

“ ま、取り敢えず話題は逸らしたな・・・。”

 で、龍平との話の続きだ。
俺はベッドの足元でリンゴの成り行きを見ていた龍平に訊いた。

「 それで、龍平、今日の夜、何時に来る?」

龍平はチョット考えてから質問に答えた。

「 そうやな。
 消灯が過ぎたら、看護婦に分からないように忍び込んで来るわ。
 看護婦、ウルサイさかいな。」
「 分かった。」
「 じゃ~な。」
「 ああ。」
「 これ、貰っておくからな。」

龍平はリンゴを一つ持って部屋から出て行った。

“ シャリシャリシャリ・・・・。”
“ シャリシャリシャリ・・・・。”

部屋には田中爺と山本爺のリンゴを齧る音が響いていた。



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霧の狐道213

2009-04-08 19:08:57 | E,霧の狐道
 田中爺が横のベッドから俺に声を掛けた。

「 よっ、色男!
 いい物、貰ったやん。
 憎いねぇ~、女の子から貰うなんて!
 それも、みんなに分からないように、そっと貰って。
 あれは、おまえの女か?」

龍平はそれを聞いてアハハと笑った。
 俺は田中爺を困った顔で見た。

“ 田中爺よ、それが小学生に言う言葉か・・・・。”

そして田中爺に説明した。

「 いや、クラスの友達です。」
「 ふ~ん、イヤに親しそうな感じやったでェ~。」
「 小さい頃からの幼馴染で・・・・・。」
「 ほう、それで、それで、・・・・。」
「 ・・・・・。」

俺は言うのを止めた。
田中爺はニヤニヤして俺を見ている。
 で、俺は話題を逸らそうとした。

“ そうだ、果物だ・・。”

俺は田中爺に果物をお裾分けして黙らせようとした。

「 いやァ、まあ、お見舞いの果物でも・・・・。」
「 おお、そうかい、そうかい。
 リンゴでも食って、ゆっくり聞くことにするかのォ。
 その幼馴染の馴れ初めってヤツをのォ~。」

俺は、“これは却ってマズかったかな”と思った。



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霧の狐道212

2009-04-05 20:15:26 | E,霧の狐道
 俺は由紀ちゃんの後ろ姿を見ながら、お守りを握った。
由紀ちゃんの温もりが残っているような気がした。
龍平が俺に言った。

「 カワイイ子やん。」
「 クラスの子だよ。
 俺の隣の家に住んでるんだ。」
「 で、風呂の件ってなんや?」
「 いや、覗いたって疑われて・・・。」
「 風呂を?」
「 そう。」
「 ま、やりそうやけど。」
「 ち、違うって。」
「 怪しいな。」
「 ホント、ホント。」
「 ふ~ん・・・・・。」

そして、手に持ったお守りを見て龍平は言った。

「 ちょうど良かったやん。
 これ持ってたら、今日の晩は大丈夫なんとちゃうやろか。」
「 そう、そう言う気がする・・。」

俺は由紀ちゃんのくれたお守りを見た。

“ お守りか・・・。”

 俺は今までお守りなんて持ったことも無かった。
でも、持っていれば、安心なのかも知れないとも思えた。
お守りの絵を見ると、キツネがちょこんと座っている。

“ このキツネ、あのキツネかな?”

イタズラされて困った、あのキツネの顔が頭に浮かぶ。

“ でも、鍵は咥えてなかったよな・・・。”

俺はお守りをそっと枕もとの引き出しに入れた。



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霧の狐道211

2009-04-03 19:00:26 | E,霧の狐道
 俺は由紀ちゃんの婆さんに以前会ったことがある。
うちの婆さんも強烈だが、由紀ちゃんの婆さんも、また、ちょっと異質な強烈さがある。

「 あの神社のだろ。」
「 そうよ、私の家の氏神様よ。」

故郷にある唯一の神社のお守りだ。

“ これ、効きそうだな・・・。”

俺は有難く頂いた。

「 ありがと・・。」
「 早く治ってね。」

俺が頷くと由紀ちゃんは言った。

「 じゃ~ね、みんな待ってるから・・。
 あ、それから風呂の件は無実が分かったわ。
 貴ぴ~のお父さんに聞いたから。
 アリバイ成立ねっ!」
「 そうだろ。
 言った通りだろ。」
「 疑ってゴメンね。」
「 いいよ。」
「 じゃ・・・・。」

由紀ちゃんはニコッと笑って右手を小さく振った。
 龍平が由紀ちゃんに馴れ馴れしく言った。

「 また来いよなァ~。
 今度来る時は、わいの分も持って来るんやでェ~。」

由紀ちゃんは笑いながらクルッと向きを変えて病室を出て行った。



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霧の狐道210

2009-04-01 19:14:53 | E,霧の狐道
俺は話をもとに戻して由紀ちゃんに言った。

「 それで、何?」
「 あ・・・・。」

由紀ちゃんは、ポケットをゴソゴソした。
そして、俺に言った。

「 あの、これ・・・。」

由紀ちゃんは、小さなお守りを差し出した。
 俺はお守りを受け取って見た。
赤地に金色の宝玉と稲穂の模様が入っている。
裏を返すと鍵を咥えた金色のキツネがチョコンと座っている絵がある。

“ このキツネ、どっかで見たことあるような・・・。”

お守りには紫の紐が輪になって、ぶら下げられるようになっている。
俺は由紀ちゃんに聞いた。

「 神社のお守り?」
「 そう、突然、うちの婆ちゃんから電話が掛かって来たの。
 貴ぴ~の婆ちゃんから、連絡でもあったのかしら?」
「 昨日、親が来たときは、連絡するとは言ってなかったけど・・・。」
「 それで、お見舞いに行くって言ったら、おまえが持っているお守りを持っ
 て行って渡せって言われたの。
 私の分のお守りは、後で郵送するからって・・・。」
「 ふ~ん・・・・。」




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