日々の恐怖 11月2日 ストレッチャーだけ
小学生の時、父親が心臓病で深夜に病院にかつぎこまれました。
秦野の山の上にある病院です。
緊急治療室に運び込まれたのが、多分0時過ぎ。
とりあえず、一命をとりとめ、母親と駆けつけてくれていた叔母は担当医に呼ばれて同じフロアの別室に行きました。
おいらは廊下のベンチで待っていました。
“ 今、思うと、何で一緒にいかなかったんだろう・・・。”
廊下の先を眺めていると、ストレッチャーがカラカラと通り過ぎていった。
廊下の突き当り、T字になってるところを右から左へ。
記憶だと5mくらい先だったかな、座ってた場所から。
顔に白い布かぶせた方が乗せられていました。
ただ、ストレッチャーって押しますよね。
おいらが見たのは廊下に消えていくストレッチャーだけ。
誰も押していないストレッチャー。
廊下を横切っていくとこを、最初から見てました。
そのときは怖いとも感じなかったんだけれど、母親と叔母が戻ってきたら、急に体が震え始めたのを、今でも憶えてます。
もう、おれもおっさんだから30年近く前の話です。
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