大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 6月30日 仮住まい(2)

2016-06-30 20:37:11 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 6月30日 仮住まい(2)




 そんなある日、俺が学校からマンションに帰ってくると、なにやら奇妙な視線を感じた。

“ 友達が来てるのかな・・・。”

と思って見渡しても誰もいない。
 おかしいなと思っていると、あることに気が付いた。
隣の部屋、Aの住んでいた部屋の扉が少し開いているのだ。
 そのマンションの扉はドアクローザーが付いていて勝手に閉じる仕組みになっていた。
なので少し空いてるということは、誰かが裏で押えて開けているか、何かがつっかえて閉じないかのどちらかということ。

“ 何だろうな・・・・・・。”

って思ってジーッと扉を見てると、急に、

“ バタン!”

と扉が閉まった。
 その時は驚いたけど、マンション古いし建て付けが悪くなって閉まんなかったんだろうと自己解決してしまった。
 ところが翌日再び学校から帰ってくると、また扉が少し開いている。

“ やっぱ建て付けが悪いのかなぁ・・・。”

と思ってその扉の前を通り過ぎようとしたら、今度は、

“ キィッ。”

と少しだけ扉が閉まった。
その時になって初めて、誰かが扉の向こう側にいるって気が付いた。
 でもその時俺は隣のおばさんらは引っ越したと思い込んでいたので、泥棒が潜んでいると勘違いして慌てて家に逃げ帰った。
 そして両親が帰ってくると、

「 隣の引っ越したはずの部屋に誰かいた!」

と訴えた。
 ところが、

「 お隣は○○さんでしょ? なに言ってるの?」

みたいにすんなり返されたのを覚えている。
 どうやら姿を見かけなくなってはいるものの、時々隣の部屋から生活音が聞こえていたらしい。
だから両親はまだ隣にAの家族が住んでいると知っていたんだろう。












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日々の恐怖 6月29日 仮住まい(1)

2016-06-29 19:06:58 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 6月29日 仮住まい(1)




 今までで一番怖かった話です。
小学校3年くらいだった頃、一時期俺は小さなマンションで暮らしていた。
爺ちゃんから譲ってもらった家をリフォームするとかで、期間としてはだいたい半年くらいだったかな。
古くてかび臭いマンションだったけど、家の近くでかつ値段が安いとかで決めたらしい。
 そして当然のこと安いってことで入居者はそこそこいるみたいで、俺の住んでた部屋の両側にも入居者がいたと覚えてる。
片方は優しそうな老夫婦が住んでいて、もう片方がずんぐりした陰気な男Aとその母親らしきおばさんの2人が住んでいた。
おばさんの方は、朝にいってらっしゃいと声を掛けてくれたり、母さんと談笑していたりとかなり愛想のいい人。
 しかし一方で、Aはちょっと表情が変で奇行が目立っていた。
例を挙げると、夜に廊下を意味もなくウロウロしていたり、エレベーターの中でブツブツと呻きながら寝転がっていたり。
 そんなだからウチら家族を含め、マンションの人らはおばさんとは仲良くしながらも一定の距離を保っているようだった。
だからなのかは分からないけど、引越しから1月もすると次第におばさんを目にする回数が減っていった。
 そして越してきて3月くらい経った頃、何故か完全におばさんを見なくなり、それに伴ってどういう訳かAも姿を消した。
なので、多分引っ越したんだろうとその時は思っていた。










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日々の恐怖 6月28日 配膳室

2016-06-28 19:43:42 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 6月28日 配膳室




 親父が出張先で倒れて、現地の病院に入院した。
お袋と2人で慌てて駆け付けたら、親父は案外元気で、過労でしょうということだった。
ひと安心して、部屋にお袋を残して、俺はオヤジの昼飯の食器を下げに部屋を出た。
 清潔だが古い病院で、どことなく暗い感じがする長い廊下の突き当たりに配膳室があった。
小さな出窓に食器を置いて、

「 すいませーん。」

と声をかけたら、スッと細い女性の手が出て来て、食器を下げた。
 びっくりした。
磨りガラス越しに見える室内は電気も付いていないようだし、人の気配も無かったので、誰もいないのかと思っていたのだ。
 しかし、気を取り直して、

「 ごちそうさまでした。」

と言ったが返答は無し、相変わらずしーんとしている。

“ なんだよ、陰気くせえな・・・。”

と思いつつ、戻ろうとしたら、看護師さんが1人、廊下をパタパタと駆けて来て配膳室のドアを開け、

「 ○○さーん!」

と呼んだ。
 しかし、応答無し。
看護師さんが部屋に入って行って、

「 ○○さん・・・?
あら?誰もいないの・・?」

などと言っている。
 俺は、

“ いや、たった今、手が出て来て食器下げ・・・。”

と言い掛けたがやめた。

“ まあいいや・・、親父、早く良くなってここ出ような・・・。”











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日々の恐怖 6月27日 北京にて2007

2016-06-27 18:51:12 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 6月27日 北京にて2007




 数年前、北京に出張してたときの話だ。
ちょうどその頃、上海なんかで反日デモが盛り上がってた。
 今までに何度も利用したホテルに泊まったから、特に気にしてなかったんだ。
説明になるが、中国のホテル(宿泊施設は本当にピンきり)であるレベル以上だと、ホテル内にサウナとか垢すりとかマッサージとかするフロアがある。
 でかいソファーが30人分くらいある結構広い部屋で、その日も疲れを取るためにそこで足ツボマッサージ受けてた。
カウンターの兄ちゃんとは顔なじみになってたから、拙い中国語で会話してた。
 すると部屋の奥から怒声が聞こえてきたんだ。
部屋の奥にスクリーンがあって、それが見られるようにソファーが並んでるんだけど、スクリーンの前(俺から見て前列)に座ってた中国人が3人立ち上がって俺を囲んだのよ。
 その時気が付いたんだけど、ちょうどスクリーンで反日戦争の映画やってて、バタバタと中国人が死んでいく真っ最中。

「 アレを見てなんとも思わないのか。」
「 俺たちに謝れ。」

と、どうやら俺に抗議しにきたらしい。
 カウンターの兄ちゃんは、

「 そいつは中国語がよくわからない。
いい日本人だから。」

と中国人たちに説明してくれて、とりあえずは事なきを得た。
 それで、泊まった部屋は結構なデカイ部屋で、入ってすぐ10畳くらいのリビング、入口からみてすぐ左側にバスルーム、その隣に台所、その隣にクローゼットルーム、部屋の奥に寝室があった。
 で、寝室で寝てると、誰かがドア叩く音で目が覚めた。
覗き窓から外を見ても誰もいない。
チェーンかけてドアを開けてみたけど同じ。
 おかしいなと思いながら寝室に戻るんだけど、同じ事が続いた。
俺を囲んだ中国人だなって思って、ノックしたらすぐ確認してフロントに文句言うつもりだった。
 で、リビングのソファーで待ってたんだ。
でも疲れがたまってたからウトウトっとした時、ノックが聴こえた。
その時、目がハッキリ覚めたんだけど、同時にもう一つのことがわかった。
 ノックされてるの、バスルームのドアなんだ。
バスルームの内側から聞こえるの。
寝る前にシャワー浴びたけど、窓なんか無い部屋なのよ。
 消してた電気をつけて、思い切ってドアを開けたら何もいなかった。
ただ、フックに掛けてたバスタオルが、バスタブの中に入ってた。
バスタブの中には水がないんだけど、タオルはさっきまで水に使ってたような濡れ方だった。
 背中に視線を感じたんで振り返ったけど何も無い。
部屋を替えてもらおうと外に出ようとしたんだが、リビングに入ったとき誰かがソファーに座ってた。
 髪の長い女の人みたいなものが、もの凄く透明に見えた。
見間違いかと一瞬目を閉じた瞬間、部屋の電気が消えてTVが勝手に点いた。
 その後はよく覚えてない。
隣室からウルサイと苦情があって部屋を見に来た従業員が、気絶していた俺を見つけた。
気絶する前に何があったのか、まったく覚えてない。
 詳しい話を聞けるよう日本語ができるエージェントに頼んだんだけど、その件に関しては途中から通訳を拒否された。
エージェントの手配でホテルもチェンジした。
 最近ホテルの近くを通ったが、普通に営業している。
オリンピックで誰かが泊まるんだろうな、あの部屋。











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日々の恐怖 6月26日 お盆(2)

2016-06-26 20:27:59 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 6月26日 お盆(2)



 母を見ると、みるみる表情が変わっていく。
そしてボロボロと大粒の涙を流し泣き始めた。

「 じいちゃんがそう言ったの?」

母が尋ねると長男はコクリと頷き、テレビに視線を戻した。
母は30分近く泣き続け、意味の分からない俺達に事情を話し始めた。
 父と母は大の旅行好きで、小さい頃は家族でよく旅行に出掛けた。
俺を始め子供達が大きくなって部活などで忙しくなっても、夫婦二人でよく旅行に行っていた。
質素な生活の中でそんなちょっとした旅行が両親の趣味だった。
 父が亡くなる前の晩、母は父に何気なく尋ねたそうだ。

「 今まで行った所で、どこが一番楽しかった?」

父は、

「 いろいろ行ったし、どこも楽しかったからなぁ・・・。」

と明確に答えなかったらしい。
そして翌日の夕方、事故で亡くなった。
 父はずっと保留していた返事を、初孫である長男に伝言を頼んだのだろうか。
母は、

「 どうして私に直接言ってくれないんだろうねぇ。」

と泣き笑いだった。
 祖母はニコニコしているだけだった。
しかし父が出てきたのはその時だけで、見たのは長男だけだ。
 後日、長男に父の事を聞いてもいまいち要領を得ないし、中学生となった今ではその時の事は全く覚えていない。
それから毎年お盆の期間には俺達夫婦を始め俺の弟達も帰省して、みんなで両親のアルバムを見るのが恒例となった。
 長崎のどこが楽しかったのかと母に聞いた事がある。
母は、秘密とニコニコして答えるだけだ。
新婚旅行で訪れた長崎でどんな思い出があったんだろうか。
今年もお盆が近づいてきた。











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日々の恐怖 6月25日 お盆(1)

2016-06-25 18:58:39 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 6月25日 お盆(1)




 お盆が来る度に思い出すことがある。
今から10年ぐらい前、長男が4才の時の夏だった。
俺達家族は例年のごとく俺の実家に帰省していた。
 父は10年以上前に事故で亡くなっていて、実家には祖母(父の母)と母の二人だった。
長男も4才になり、おもちゃなどがあれば一人で遊ぶ事が出来るようになっていた。
 実家は古い家屋で部屋数も多い。
長男は持参したおもちゃを持って空き部屋で遊んでいる。
 しかし様子が変だ。
誰かに話しかけるような言動や、突然笑い出す事を繰り返していた。
 夕食の時に妻が、

「 何して遊んでたの?」

と聞くと、長男は、

「 じいちゃんと遊んでた。」

と答える。

“ んん・・・?”

っと思い、

「 じいちゃんって誰?」

と聞き直すと、長男は仏間へ行き、父の遺影を指さした。
俺も母も妻も意味が分からなかった。
 祖母がニコニコしながら、

「 お盆だから○○(父)が帰ってきてるんだね。」

と言っていた。
 翌日も一日中というわけではないが、長男が一人になるとまた誰かと遊んでいる。
それは部屋だったり庭だったり、何か話していたり格闘のまねごとしていたりだった。
 俺達が近づくと長男は我に返ったように大人しくなる。
祖母以外は、不気味というより不思議な気分になっていた。
 そんな事があって自宅へ戻るのを翌日に控えた四日目の夕食の時だ。
長男が突然母に向かってこう言った。

「 長崎が良かったって。」

俺と妻は何を言っているのか分からなかった。













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しづめばこ 6月24日 P438

2016-06-24 21:48:23 | C,しづめばこ



しづめばこ 6月24日 P438  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。



小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。
小説“しづめばこ”




大峰正楓の小説書庫です。
大峰正楓小説書庫


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日々の恐怖 6月23日 捕まえようぜ(3)

2016-06-23 18:31:16 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 6月23日 捕まえようぜ(3)




 今いる場所はてんで見当もつかないが、とりあえず登って行けば山頂の草原に出るはず。
返事は期待せずに、とりあえず林の中に向かって、

「 神社に行っとくぞー!」

と叫ぶ。
 途端、声がぴたっと止んだ。
こっちのやることに反応があると、余計に怖い。
俺は急いで山を登った。
 どうにか山頂にたどり着き、岩を登って神社のところへ行くと、友達三人がすでにそこにいた。
三人とも、俺と同じように声に振り回されて迷子になり、最後は神社に頼ろうと思い至ったらしい。
 とりあえず今日はもう帰ろうと言うことになったが、帰り道にまた何かあると怖いので、 神社に供えてあった五円玉を、お守りとしてもらうことにした。
タダで持ってくのは申し訳ないから、と代わりにみんなで十円玉を供えた。
 お守りが効いたのか、そもそも怪奇現象など最初からなくて、あれは俺らの気の迷いだったのか、帰りは拍子抜けするくらい何事もなかった。
 友達の一人がぽつりと言った。

「 なあ、最初に、“ 捕まえようぜ!”って言ったの、誰・・・?」

俺らは顔を見合わせて、

「 俺じゃない。」
「 俺も違う。」

と言い合った。
 よくよく思い出してみると、あの声は誰の声でもなかったような気がする。

“ ひょっとして、はなから俺らを道から外そうとしていた?”

そして、別の友達が言った。

「 捕まえようって、雉のことだったのかな?」











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日々の恐怖 6月22日 捕まえようぜ(2)

2016-06-22 19:52:01 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 6月22日 捕まえようぜ(2)




 俺はあっと言う間に雉を見失ったけど、

「 いた、こっち!」

とか

「 うわ、逃がした!」

と言う声が方々から聞こえてくるから、獲物を追い詰めていると言う妙な確信があった。
 しかも、声はどんどん近付いてくる。
つまり雉も近くにいるはずだった。
 そうやって声に振り回されて、かなりの時間を走り回ってから、俺はふと妙な感じを覚えた。

“ 山に入ったのは俺も含めて四人だ。
なのに、どうして四方八方から声がするんだ?”

 それも、どれもこれも聞き覚えはあるのに、誰の声だかわからない。
少なくとも、一緒に山に入った友達の声じゃなかった。
何かがおかしいと思った途端、俺は急に怖くなってきて、大声で友達に呼びかけた。
 俺は、

「 おーい、おーい!」

と林の中に向かって叫ぶ。
でも、友達からの返事はない。
その代わり、そこらじゅうから、あのよくわからない声がザワザワと聞こえてくる。
 お祭りの時みたいに、かなりの数の人がいる雰囲気なんだけど、声の主は全く見えない。
これはもう、何か奇怪なことが起こっているに違いないから、神様に頼るしかないと思った俺は神社へ向かうことにした。










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日々の恐怖 6月21日 捕まえようぜ(1)

2016-06-21 18:50:56 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 6月21日 捕まえようぜ(1)




 俺も含めて地元の子供たちが遊ぶ小さい山があった。
その山頂は、ちょいちょい山火事があるせいで高い木が一本もなく、だだっ広い草原になっていた。
大人の目が届かない、とんでもなく広い場所だから、そこは子供たちの格好の遊び場だった。
 草原の端っこの方には、ばかでかい岩があった。
岩のてっぺんには○○神社と書かれた小さい祠が建てられていて、中にはサッカーボールより一回り小さいくらいの、しずく形の石が祭ってあった。
それは風化してボロボロだけど、丸いニコニコ顔で、稲穂のようなものを持った神様の像だった。
俺らは岩登りをして遊んだついでなどに、神社を拝んだり五円玉を供えたりしていた。
 この山で遊ぶ子供たちの間には、

“ 登り下りの途中、山道から外れてはいけない。”

というルールがあった。
それは、親や先生に言われたからではなく、みんながみんな、なんとなく知っていることだった。
 実際、山頂までの道の両脇は、大人でも余裕で迷子になるくらい雑木が茂っていたから、うかつに入り込めばかなり危険なことは、子供でも常識的に理解できた。
それでも、子供は基本的にアホだから、テンションが上がると大事なことをすぽーんと忘れてしまうことがある。
 俺と友達の合わせて四人で、いつものように山道を登っていたときが、まさにそれだった。
山道を登り始めて三十分、山の中腹くらいで道の脇の藪が、ガサガサっと音を立てた。
猿か、それともイノシシかと俺らが身構えると、藪から出てきたのは雉だった。
滅多に見ない生き物だから、俺らのテンションはマックスになった。
 誰かが、

「 捕まえようぜ!」

と言ったとたん、俺らは雉を追いかけて雑木林に突入していた。












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日々の恐怖 6月20日 ミステリー

2016-06-20 19:46:03 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 6月20日 ミステリー



 2年前の冬に男2人でA市内のビジネスホテルに泊まった。
部屋は上層階の隣り合わせのシングル。
 翌朝の7時前オレがまだ部屋で寝ていると、激しい音でドアを叩く音がした。
眠い目をこすりながらドアを開けると、そこにはオレの相方が浴衣姿で真っ青な顔をして立っていて、その横には困惑気味の表情をしたフロントマンがうつむき加減で立っていた。
 事情を聞くと、こんな話だった。
相方が6時半頃に目を覚まして、部屋の中を見渡すと何か様子がおかしい。
ハッと気付くと、まず荷物が無い。
ハンガーに吊るしてあったスーツがない。
まさか泥棒でもあるまいしと思った相方は、取り敢えず廊下に出て部屋番号を確認してとんでもないことに気付いた。
部屋番号が昨夜寝た部屋番号と違うのだ。
 はっきりとした部屋番号はオレ自身記憶してないのだが、仮にオレの部屋番号が1025だとすると、相方は1026号室で寝たはずだ。
それが朝出てきた部屋のドアに表示された部屋番号が1027だったのだ。
 相方は良く事情が飲み込めないまま1Fに降り、フロントマンに同行を依頼して、合鍵で1026号室のドアを開けてもらった。
するとそこには荷物もあり、ハンガーにはスーツがちゃんと吊るされていた。
そしてベッドのフトンには明らかに寝乱された形跡があった。
 相方は間違いなく1026号室に入り、そこで眠りに就いたことがこれで証明された。
では何故相方は1027号室で目を覚ましたのか?
その場でフロントマンを含めた3人で様々なケースを考えてみた。
 まず相方が夜中に室外に出て、間違って隣室に入ってしまったというケース。
これは当の相方が入室後室外に出た記憶は一切ないと言うし、何よりもフロントマンの話によると、その夜1027号室は空室でオートロックのために、中に入ることはまず不可能だと言う。
 次は、相方が寝ぼけてベランダづたいに隣室に入り込んで、そこのベッドで寝込んでしまったという馬鹿げたケースだが、そもそもこのホテルは月並みなビジネスホテルでベランダなどない。
それどころか窓をあければ垂直に30m以上切り立った外壁だ。
 ではどうやって相方は隣室に入ることができたのか?
寝ている間に隣室のベッドに瞬間移動したというのでも言うのか?
 チェックアウト時に支配人の方が来られ、

「 このことはあくまでもご内密に・・・・。」

ということで5泊分の無料宿泊券をいただいたが、その後、A市出張は何度かあったものの、2度とそのホテルに泊まったことはない。
勿論当の相方もだ。
 1027の部屋が使われた形跡の確認はどうだったかと言うと、まず、不審に思った相方は、廊下に出た。
その時ヤツの頭の中には、ルームキーのことなどはすっかり抜け落ちていた。
廊下に出てルームナンバーを確認したときに、1027号室のドアが閉まってしまい、オートロックがかかってしまった。
 この時点で、彼は1026号室にも1027号室にも入れなくなった。
仕方がないので1Fのフロントへ降りて、フロントマンに事情を説明し、相方とフロントマンの2人は、1026の合鍵と1027のルームキーを持って10Fに戻った。
 相方とフロントマンは、まず1026の室内に入った。
そこで2人が見たものは、前述のように相方の荷物とハンガーにかかったスーツ、明らかに相方が就寝したと思われるベッドのフトンの乱れ。
そして何よりも重要なのは、ルームデスク上に置かれていた1026号室のルームキーだ。
 続いて相方が朝目を覚ました1027号室に2人は入った。
そもそも前夜は空室だった1027は、前日昼間の掃除でベッドメーキングはちゃんと行われていたはずだ。
しかしベッドには明らかに誰かが寝た形跡があった。
多分相方が寝ていたのだろう。
ちなみに当然のこと、1027のルームキーは室内には見当たらなかった。
ルームキーはその時、フロントマンの手に握られていた。











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日々の恐怖 6月19日 固定電話

2016-06-19 18:59:10 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 6月19日 固定電話



 引っ越して来てから8年。
自宅電話に渋~いオジサマの声で、

『 あ、ともちゃん?』

といきなり尋ねる電話が月1程度で続いてます。
 ナンバーディスプレイで相手の番号はわかっています。

「 いいえ、違います。」

と答えると、

『 ああ、失礼しました。』

とあっさり切るのです。
 ちなみに夫が出ると、

『 ともちゃん、いらっしゃるかな?』

と尋ねるそうです。
 夫がその電話を受けた時は、

「 うちにはともちゃんはいませんよ。」

と言うのですが、やはり

『 ああ、それは失礼しました。』

とあっさり切れるそうです。
 気になった私と夫は、ある日とうとうその電話番号にかけてみました。
どうせ知られているのだし、と、番号通知で。
 でも受話器から聞こえてきたのは、

“ お客様がおかけになった電話番号は、現在使われておりません。”

それでもオジサマからの電話は相変わらず月1程度でかかってきます。
 最近は、

『 あ、ともちゃん?』
「 はい。」

と答えたらどうなるのかな~と、好奇心が芽生えてきてしまいました。
答えませんけど、ね。

 その後、例の電話への対応パターンを夫とあれこれ想定したりしていました。
そして昨日、かかってきました、例の電話。
 まずはナンバーディスプレイの画面表示で番号を確認し、夫が電話をとります。
かねてよりの想定通り、受話器を上げた直後に電話機内蔵の機能で録音し始めました。
 以下は通話の内容です。

夫 「 もしもし。」
相手『 ともちゃん、いますか?』

無言で私に受話器を渡す夫。

私 「 もしもし。」
相手『 あ、ともちゃん?』
私 「 どちらさまですか?」
相手『 ともちゃんじゃないのかな?』
私 「 そちらはどなた?」
相手『 ともちゃんと、話がしたいんですが。』
私 「 どなたさまでしょう?」
相手『 ともちゃんなのかな?ともちゃんじゃないのかな?』

 そばにあったメモに【ラチがあかない】と走り書きして夫に見せると、夫が無言で受話器を取りました。

夫 「 もしもし。」
相手『 あ、ともちゃん、います?』
夫 「 あんた、前から何度もかけてきてますけどね、いったいなんなんですか?」
相手『 ともちゃんと、話がしたいんです。』
夫 「 そっちの番号はわかってるんですよ、****ー****ですよね?」
相手『 ともちゃん、いないのかな?』
夫 「 番号を、しっかりと確認してみたらどうですか?」
相手『 ΧΧΧΧーΧΧΧΧにかけているんですが。』
夫 「 それは確かにうちの番号です。
   前から何度も言っていますが、うちにはともちゃんはいません!」
相手『 そうですか、それは、大変、失礼しました。あの・・・。』
夫 「 はい?」
相手『 ご存知ないですか?ともちゃんの』

そこで唐突に通話は切れました。
 すぐに表示されていた番号に電話をかけてみましたが、

“ おかけになった電話は、現在使われておりません。”

でした。
今日、番号変更の手続きをしようと思います。











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日々の恐怖 6月18日 狐憑き

2016-06-18 20:17:46 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 6月18日 狐憑き



 昔働いていた病院での話です。
神経内科もある内科病棟だったんだけど、髄膜炎という名目で一人の女性が入った。
でも、検査では病気を示す値はほとんどでなかった。
 目は完全にいっちゃってて、ずっとうなり続けていて言葉が通じない、たまにしゃべると意味不明、点滴を引きちぎる、拘束の紐も引きちぎる、医者にも看護婦にも家族にも噛みつく、夜中に遠吠えする、いきなり誰も追いつけないようなスピードで廊下を走り出すと、もうむちゃくちゃ。
 スタッフ全員、はっきりと口には出さないけれど、

“ これはもう医者の領分ではないんじゃあ・・・。”

と感じていたそうだが、医局長だけが、

「 あれは髄膜炎だよ。」

と言い張り、坊さんも祈祷師も呼ばれることなく治療を続けた。
 それで、ある日突然、文字通り憑き物が落ちたように正気に戻り、あっという間に退院していった。
 後日、病院に挨拶に来たところを、ちょうど私も見かけたんだけど、着物着た上品そうな奥様で、かつてあったような気配は微塵もなかった。
もしかしたら本当に髄膜炎で、治療が功を奏してよくなったのかもしれない。
 でも、夜中にらんらんと光る目で、

「 お前の背後に狐がおるぞ!」

と言われてしまった先輩は、 挨拶されても、引きつった笑いしか返せなかった。











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しづめばこ 6月17日 P437

2016-06-17 21:51:21 | C,しづめばこ


しづめばこ 6月17日 P437  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。
小説“しづめばこ”




大峰正楓の小説書庫です。
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日々の恐怖 6月16日 お守り

2016-06-16 20:05:15 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 6月16日 お守り



 小学校2年生くらいのときから、妙な光の玉を度々見るようになった。
家族にその話をしても嘘つき呼ばわりされるので、今度その光の玉を見たときは、証人となる人を連れてきて、一緒に見ようと頑張った。
 あるの夕方、近所の神社の前で光の玉を見つけた。
自分は急いで家に帰り、母親を連れてやってきた。
 母親は、

「 何?これ?」

と、信じられない物をみるようにそっと手を伸ばしたが、急に、

「 帰ろう。」

と言って、自分の手を引いて家に帰った。
 夕食の時間、自分は光の玉の話を持ち出した。

「 お母さんも見てるんだから、嘘じゃないよ、ね。」

と母親の方を見たが、母親は無反応だった。
無反応と言うより、何か怒っているようにも見えた。
 兄貴が、

「 嘘だ、嘘つき。」

と冷やかしてくるので、

「 お母さんも見たじゃん。
ねぇ、見たでしょ?」

と母親に証言してもらおうとすると、

「 いいから早く食べなさい!」

と怒鳴られた。
 暫くたって、伯母さんが家に遊びに来て、自分にお守りをくれた。

「 ○○ちゃんが、事故や病気をしないようにってお守りだから、いつも持っているんだよ。」

と言って、首からさげてくれた。
それから、風呂に入ったり、プールに入ったりする以外は、いつもお守りを身につけた。
 ある日、家に帰ると、伯母さんが遊びに来ていた。

「 ○○ちゃん、お守りどうした?」

と聞かれて、初めて無くなっていることに気が付いた。

「 あれ?どこかに落としちゃったのかな?
探してくるよ、多分学校かな?」

と出かけようとすると、伯母さんは、

「 あぁ、いいよ、いいんだよ。」

と出かけるのを止めた。

「 また持って来てくれるの?」

と聞くと、

「 もういいよ、役目が終わったんだからね。」

と、無くしたことは怒られなかった。
母親も怒っているかと思ったが、何も言わなかった。
 その後、妙な光の玉を見る事は極力少なくなったが、光の玉の話をすると、伯母さんがやって来てお守りを渡された。
中学生くらいの頃から、妙な光の玉を見ることは無くなった。
そして、伯母さんからお守りを渡されることも無くなった。
 母親が何を見たのかは、今でも分からない。
高校時代に一度聞いたことがあるけれど、

「 そんなこと、あったかねぇ。」

と忘れた風を装っている。
母親は四姉妹の一番末っ子で、母親の実家に住んでいる長女が、近くのお寺からもらって来たお守りを三女の家に郵送で送り、ソレを三女の伯母さんが自分に持って来てくれるのです。
 子供心に、なぜ長女の伯母さんが直接家に郵送しないのかが不思議でした。
米やら野菜やら色々送ってきてくれるから、住所を知らなかった訳でもない。
 夏休みに長女の伯母さんの家に遊びに行った時に、聞いた事もありましたが、ただ笑って、質問の答えは返って来ることはありませんでした。
それに、そばにいる他の伯母さんたちが、話を逸らすふうにも思えました。
なんとなく聞いてはいけないことなんだと子供心に思いました。










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